【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第12分科会 新しい公共のあり方「住民協働」理想と現実

 東日本大震災以降の水戸市の大型プロジェクト(4大プロジェクト)の実施に伴い、莫大な市債発行による後年度負担等の財政出動が、会計年度任用職員制度設計にどう影響するかを考察することにより、非正規職員の処遇改善を目的とした会計年度任用職員制度を2020年4月より確実に実施させる提言になることを期待する。



水戸市4大プロジェクトによる中長期財政の見通しと
会計年度任用職員制度設計への影響について

茨城県本部/元水戸市職員組合・書記長 海野 敏明

1. はじめに

(1) 水戸市4大プロジェクトとは
 市役所新庁舎、新ごみ処理施設、新市民会館及び東町運動公園新体育館建設事業を総じて4大プロジェクトと称している。
 新市役所新庁舎については、市民サービスや総合防災の拠点として、東日本大震災で被災し、使用不能になった市役所本庁舎の再建を推進している。
 新ごみ処理施設については、老朽化が進む小吹清掃工場の移転及び最終処分場の整備を推進している。
 新市民会館と東町運動公園新体育館については、東日本大震災で被災した市民会館とともに、街中に整備するこれらの施設を拠点として、市民の芸術文化・スポーツ活動の進展と大規模コンベンションの誘致を図り、交流人口の増加と地域経済の活性化に取り組むとしている。
 特に、新市民会館建設に対しては、全国規模の大会や式典、大規模イベントが開催できる及び3,000人規模のコンベンションに対応できる施設等が計画されている。また、3,000人規模のコンベンションに対応する駐車場整備がなされない等から、身の丈に合った計画見直しを求め、市民団体から新市民会館建設の是非を問う住民投票を求める運動が提起され、議会を巻き込んだ論争に発展していた。
 住民投票条例が議会の反対多数により否決され、また、市街地再開発事業として事業計画が認可され着実に事業推進が図られている。しかし、引き続き身の丈に合った施設計画と事業地変更を求める運動が継続されている。
 通常事業に加えこのように4大プロジェクトを推進している水戸市の財政をチェックすることにより、2020年4月より施行される会計年度任用職員制度の財政負担を予想し、制度が着実に実施されるためには国による財政支援(交付税措置)がどの程度必要か検証することで、非正規職員の処遇改善に結びつけられるか提言したい。

2.水戸市財政の中長期の将来見通し

(1) みと財政安心ビジョンによる見通し
① 4大プロジェクトの事業費
 4大プロジェクトの事業費は、市役所新庁舎が197億円、新ごみ処理施設が365億円、新市民会館が192億円、東町運動公園新体育館が99.5億円であり、全体で853.5億円を見込んでいる。

年度別事業費
(単位:百万円)
事業名称2017年度まで2018年度2019年度2020年度2021年度合 計
市役所新庁舎16,6522,76627919,697
新ごみ処理施設7,39211,14916,2431,71636,500
新市民会館4611359,1549,95419,200
東町運動公園新体育館5,7404,2109,950
合 計29,83018,13616,55710,8709,95485,347



震災復興特別交付税11,4935,8776,24090924,519
国支出金3,1405,0873,5451,07860013,450
県支出金1,0001,0002,000
市 債11,4554,4424,4447,6557,41035,406
その他8311,2693172,417
一般財源1,9114612,0111,2281,9447,555

 総事業費853.5億円に対し震災復興特別交付税や国・県補助金等の確保や交付税措置のある財源的に有利な市債を優先的に発行することによって、4大プロジェクト全体の市実質負担額は、約279.4億円に抑制できる見込み。
 市債発行額は354.1億円を見込んでいるが、将来の元利償還に対し、地方交付税が7割措置される被災施設復旧関連事業や合併特例債などを最大限活用し、150.2億円の交付税措置を見込み市債の実質負担額は203.9億円に縮減される。この額を15年から30年の期間で返済する予定になっている。なお、市債発行に伴い発生する利子負担を8.9億円見込んでいる。
② 中長期の財政収支見通し

4大プロジェクトの財政収支(一般財源ベース)
(単位:百万円)
項 目2018年度予算2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度
施設整備費市役所新庁舎2714
新ごみ処理施設1521,96284
新市民会館11351,1441,944
東町運動公園新体育館271
合 計 A4612,0111,2281,944
公債費公債費2032412804879231,314
交付税措置見込み額396271122358463
実質負担額 D164179209365565851
一般財源不足額 -(A+D)E△625△2,190△1,437△2,309△565△851

4大プロジェクト以外の財政収支(一般財源ベース)
(単位:百万円)
項 目2018年度予算2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度
歳入市 税41,96542,23641,50941,57342,00742,385
地方譲与税等6,7976,7958,6198,6148,6098,602
地方交付税7,8498,1509,2939,7599,4969,279
市 債4,2274,2273,9473,9473,9473,947
その他の歳入1,3691,1881,2031,2031,2031,203
計 a62,20762,69664,57165,09665,26265,416
歳出義務的経費33,73433,99533,97534,69834,07633,787
人件費15,39415,49415,43115,40315,28115,046
扶助費8,9029,2129,4019,5899,7489,908
公債費9,4389,2899,1439,7069,0478,833
普通建設事業費4,6433,3003,3003,3003,3003,300
繰出金12,57612,41012,42212,43012,40912,203
その他の経費14,26714,72614,40714,35014,91215,275
計 b65,22064,43164,10464,77864,69764,565
歳入歳出差額(a-b) c△3,013△1,735467318565851

一般財源不足額
(単位:百万円)
項 目2018年度予算2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度
4大プロジェクト・
通常分合計(E+c)
△3,638△3,925△970△1,991
 一般財源不足については、財政調整基金から取崩す。

③ 財政調整基金
 基金残高の適正規模は、標準財政規模の5%~10%とされており、水戸市の標準財政規模は約560億であることから、28億円から56億円の残高の確保が必要になる。2018年度から2021年度までの間に、合計105.2億円の基金取り崩しが必要になるが、決算余剰金の積立てを行うことにより、基金残高を適正規模範囲内に収める。

(単位:百万円)
項 目2015年度2016年度2017年度2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度
前年度末残高9,9919,7699,6897,5785,4403,0153,5453,0544,554
取崩し額1,6502,3903,2873,6383,9259701,991
積立額1,4282,3101,1761,5001,5001,5001,5001,5001,500
当年度末残高9,7699,6897,5785,4403,0153,5453,0544,5546,054

 決算余剰金の過去5年間の推移として、実質収支及び単年度収支等の状況を決算カードから調査する。

(単位:千円)
項 目2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度
実質収支4,846,0634,375,2263,075,2984,398,1352,341,617
単年度収支△883,743△470,837△1,299,9281,322,837△2,056,518
積立金2,848,9072,488,8462,178,5131,427,9542,309,808
繰上償還69,835144,16750,00050,000112,400
積立金取崩し30,0721,045575500,0001,650,0002,390,000
実質単年度収支2,004,9271,116,601428,5851,150,791△2,024,310
実質収支比率8.9%7.8%5.5%7.9%4.2%

 実質収支は過去5年間黒字を示しており、実質単年度収支についても黒字を示している。ただし4大プロジェクトの推進により2016年度から積立金取崩し(上記③財政調整基金)が大きくなりピークが2019年度に予想されている。
 上記のように基金取崩しが2021年度まで継続されることから、実質単年度収支については赤字が継続されるものと推測される。
 ただし、実質収支については、黒字幅は減少するが赤字団体になることは想定しづらい。
④ 公債費及び市債残高の見通し

(単位:百万円)
項 目2006
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2023
年度
建設事業債(4プロ以外)a10,1976,2516,0466,4696,2555,8716,1595,4285,310
  〃  (4プロ分) b412022412814889231,313
臨時財政対策債等償還  c1,6313,1623,3813,5183,7123,9294,1864,2524,152
一般会計        d11,8289,4159,46810,18910,20810,08110,83310,60310,775
特定財源        e669580558549680658641634630
交付税措置見込み額   f5,1624,8895,0705,3955,5635,6826,0746,1666,147
実質負担額       g5,9973,9463,8404,2453,9653,7414,1183,8033,998
特別会計・企業会計   h10,88110,2029,6869,7669,6509,5499,4499,3318,965
全会計合計       i22,70919,61719,15419,95519,85819,63020,28219,93419,740
 ※ 臨時財政対策債等償還が2006年時16億円であったものが40億円を超える額で推移するが、実質負担額は後年度交付税措置を見込んだ額であることから、机上の歳入を元に推計分析せざるを得ない。

公債費の推計分析
(単位:百万円)
年 度全会計合計
公債費 i
一般会計
公債費 d 実質負担額 g
2006年度(過去のピーク)22,70911,8285,997
2016年度(現状)19,6179,4153,946
2021年度(今後のピーク)20,28210,8334,118
 ※ 公債費については、4大プロジェクトの実施等により2021年度にピークを迎えるが、過去のピー  ク2006年度を下回る見込みをしている。

市債残高の推計(全会計)
(単位:百万円)
項 目2004
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2023
年度
建設事業債(4プロ以外)a82,27550,99757,65758,91258,13559,39458,63158,56158,580
  〃  (4プロ分) b2,9646,10115,68019,94127,39434,44233,63032,444
臨時財政対策債等    c23,67846,52948,22349,19649,95950,20950,18850,08450,065
一般会計(a+b+c) d105,953100,490111,981123,788128,035136,997143,241142,275141,089
建設事業債(d-c)  e82,27553,96163,75874,59278,07686,78893,05392,19191,024
特別会計・企業会計   f126,106114,700111,917109,442106,060103,25799,97295,54291,371
全会計合計(d+f)  g232,059215,190223,898233,230234,095240,254243,213237,817232,460
建設事業債(e+f)  h208,381168,661175,675184,034184,136190,045193,025187,733182,395
 ※ 公債費と同様に、臨時財政対策債が過去のピーク時に比べ倍以上に膨らんでいることから、国の財政事情を考慮すれば素直に後年度での交付税措置がなされるか疑問を感じる。

市債残高の推計分析
年 度市債残高 g建設事業債 h
2004年度(過去のピーク)232,059208,381
2016年度決算(現状)215,190168,661
2021年度(今後のピーク)243,213193,025

 市債残高の推移については、4大プロジェクト実施等により増加現象が続き過去のピーク2004年度を上回るペースで進捗するが、臨時財政対策債を除いた建設事業債はピークを超えないとみている。
 しかし、臨時財政対策債等の2023年度は2004年度と比較し倍以上の501億円の巨額に膨れ上がっており、市債残高減少の障害になっている。また、国の財政力が、前にも述べたが臨時財政対策債の後年度負担に持ちこたえられるのか不安が生じる。
⑤ 財政健全化判断比率の見通し

 単位:%
項 目過去のピーク2016年度2017年度2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度
実質公債費比率2006年度20.59.19.39.810.09.79.59.39.4
将来負担比率2007年度171.893.0104.2122.1127.7131.0134.0128.3123.5

財政力指数及び経常収支比率の推移
単位:%
 2007年2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年
財政力指数0.890.90.90.860.830.820.820.830.840.85
特例市平均0.90.920.920.880.850.810.810.820.82 
経常収支比率88.891.387.684.485.585.385.988.387.989.4
特例市平均91.191.1918990.290.590.491.390.1 
実質収支比率1.90.44.35.410.48.97.85.57.94.2

 実質公債費比率については、早期健全化基準25%及び財政再生基準35%を下回り十分な健全性を保持。
 将来負担比率についても、早期健全化基準350%を大幅に下回り十分な健全性を保持。

(2) 4大プロジェクトによる中長期の財政判断
 水戸市財政安心ビジョンについては、上記記載の通り4大プロジェクト実施に耐えうる試算を行っているが、臨時財政対策債等を見込んだ計画になっていることから、国の財政事情により後年交付税として見込めるか将来に不安を覚えるが、現在の財政ルールに則った計算で試算を行っており現時点では実質収支の黒字幅が減少すると思われるが赤字財政にはならないと思慮される。
 また、過去の決算状況を踏まえた決算余剰金(実質収支額)を毎年30億円と見込んでいるが、4大プロジェクト以前の決算額を参考にしており、4大プロジェクト実施に伴う財政出動が影響した場合には、基金に対する積立額及び年数の見直しが生じる可能性も排除できない。
 財政力指数及び経常収支比率については、これまで類似都市よりは弾力的な財政運営がなされていたが、今後4大プロジェクト実施に伴う財政出動により市民生活やサービスに影響が出ないか監視する必要がある。
 さらに、会計年度任用職員制度実施に伴う財政負担がどのように財政運営に影響するのか次項で検証する。

3.会計年度任用職員制度への影響について

(1) 水戸市に勤務する非常勤職員数の推移等
 水戸市に勤務する非常勤職員については、地公法3条3項3号及び22条に規定する嘱託職員と臨時職員が任用されている。
 下記表による水戸市職員、職員給、非正規職員(嘱託員)給与、物件費中の賃金及び委託料の推移さらに非常勤職員数の推移をみれば、正規職員は集中改革プラン及びその後の水戸市行財政改革による合理化による職員数の減少が進んでいる。
 また、臨時職員の変動は少ないがその反面嘱託職員は増加傾向にある。このことは、非正規職員を嘱託の活用と称し、正規が行っていた業務を非正規に置き換えていったことを物語っている。
 人件費中の嘱託職員給与については、嘱託員数に比例し伸びを示しているが物件費中の賃金(臨時職員)は年度ごとのばらつきが見られる。正規職員に対し嘱託職員の賃金は3分の1であることが明らかになっている。
 さらに、物件費中の委託料は著しい伸びを示しており、合理化攻撃による人減らしと相まって指定管理者制度等の民間委託が進んだことを表している。

決算カード等による職員給及び物件費中の賃金と委託料の推移及び決算書による非正規職員の推移
(単位:百万円)
項 目2008年度2009年度2010年度2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度
職員給11,40610,86810,70610,59610,41510,15810,66610,59410,626
職員数(人)1,8421,8361,8181,7861,7711,7671,7701,7871,786
嘱託職員給与1,1561,2491,3191,4421,5451,463
物件費(賃金)519396411449437390388412417
物件費(委託料)4,8175,2785,1256,3875,4115,3936,2366,3427,003
嘱託職員数(人)396536561601643663703710707
臨時職員数(人)406316499524500486482488462
 ※ 一般会計ベース
 ※ 嘱託職員及び臨時職員数については、各年度10月1日現在です。

(2) 会計年度任用職員への移行に伴う所要額の算定
 国からの地方財政支援が決定されていない時点での算定になるため、4大プロジェクトに係る財政出
動と併せどう影響するか明確ではないが、現時点での必要額を想定することにより会計年度任用職員制度設計とりわけ給与関係交渉に活かすことを目的とする。
① 議会答弁に見る水戸市の姿勢
 2018年6月議会(市長答弁)
 ・ 多くの非正規職員が会計年度任用職員に該当するものと考えている。今後フルタイム又はパートタイム会計年度任用職員のどちらに該当するか「職の設定」を行っていく。
 ・ 総務省の事務処理マニュアルに示されているスケジュールに則り、採用の方法や勤務条件等の検討を組合と協議しながら2020年4月1日の制度移行に万全を期していく。
② 所要額の算定
 2017年度賃金交渉にて採用した非正規職員の人数を参考に所要額の算定を行う。
 総務省ガイドライン
 嘱託職員から移行
 ・ フルタイム(地公法22条の2第1項第2号)
   高卒直採 行政職俸給法(一)1-1に格付け及び学歴・前歴換算を採用
   学歴換算を平均して4号×2年=8号、前歴換算を平均して4号×5年=20号合計28号とした場合は、1-29号に格付け187,600円となる。
   地域手当10%を加味し206,360円×290人(フルタイム職員)×14.6月(期末手当を含む)=873,728,000円 約8億7千万円+1億3千万円(社会保険料等)合計約10億円
 ・ パートタイム(地公法22条の2第1項第1号)
   フルタイム206,360円の((3/5+3/4)÷2)=139,293円で計算139,293円×500人×14.6月(期末手当含む)=約10億2千万+8千万円(社会保険料等)合計約11億円。
 ・ 臨時職員から移行
   人数は、500人弱と推定される。また、パートタイム会計年度任用職員へ位置づけられると思われるため、上記パートタイム会計年度任用職員と同様な働き方と推定。
   学歴換算を平均して4号×2年=8号 1-9号に格付け 地域報酬10%を加味し166,650円
   166,650円×((3/5+3/4)÷2)=112,489円  112,489円×500人×14.6月=約8億2千万円
   +6千4百万円(社会保険料)  合計約8億8千万円
   したがって、新制度に伴う所要額の合計は約29億8千万円と見込まれる。
   非正規職員に係る諸経費は ①2016年度物件費中の賃金の合計は約4億2千万
                ②2016年度人件費中の非正規賃金 約14億6千万
                              合計 18億8千万
   以上から11億円の持ち出しになる。
 ・ 国からの交付税(給与関係経費又は一般行政経費か不明)措置がされる予定。(法案成立時の付帯決議)ただし、どの程度措置されるかは2020年早々の地方財政計画を待つしかないが、地方の予算決定の時期に間に合わない。一方、法施行に伴う財政負担は地方財政を圧迫することになることから、非正規職員の処遇改善に回せる財源の確保を求めることになる。
③ 一時金(期末手当)に必要な所要額は、約4億9千万円と見積ることができる。この部分が仮に交付税対象となった場合は、現行より6億1千万円の持ち出しになると想定される。
④ 水戸市中長期財政ビジョンによれば4大プロジェクト事業及び通常業務にかかる原資については、財政調整基金と有利な市債の発行及び普通建設債の縮減等を図ることにより、実質負担を縮減しているため公債費償還は微増で推移の予想。
 当初の財政計画と比較し、4大プロジェクトにかかる実質負担が71.3億円縮減されていることから、減債基金の取崩しを見直し財政調整基金の取崩しについても削減されている。
 したがって、減債基金の運用を行うことにより、財政調整基金への積立金を減じることができる。
 また、中長期の財政見通しによれば実質収支が黒字決算を生み出していることから決算余剰金を
 約30億円と見込み、その二分の一を財政調整基金へ積み立てる計画の見直し及び減債基金の活用と併せれば、会計年度任用職員の給与に必要な所要額を生み出し、非正規職員の処遇改善に運用することができる。
⑤ さらに、地方財政の健全性を高めるには、地方財政計画を正規職員と同様に会計年度任用職員を含めた給与関係経費を算定する仕組みに変更し、地方交付税として確実に措置することが重要。

4. まとめ

 4大プロジェクト実施に伴う中長期財政については、公債費比率、経常収支比率及び財政力指数を基に財政の硬直化の進み具合を考えるに当たり、4大プロジェクトの影響を当面受けると思われるが中長期的には、財政面では弾力性を伴った行政運営になるものと思われる。また、会計年度任用職員制度実施に伴う財政負担については、地方財政措置がどのようになるか不明な時点で、会計年度任用職員制度設計を交渉していく困難さは生じる。
 しかし、今までの処遇があまりに劣悪であったことを受け、ワーキングプア状態にいる非正規職員の処遇改善を目的とした法改正であることを踏まえ、財政上の問題とは切り離し協議することが重要である。
 さらに、採用の在り方を会計年度任用職員制度設計の中で協議することになっていることから、水戸市臨時嘱託職員労働組合設立時からの悲願である「雇い止め廃止」を何としてもこの機会に勝ち取りたい。