1. 発注者と受注者との仲間づくり
(1) 岡崎市の公共サービスを担う仲間の紹介
岡崎市に設立されている自治体単組・公共民間単組については、自治労を産別とする、岡崎市職員組合(以下「市職」)、岡崎市従業員労働組合(以下「市従」)、岡崎市学校給食協会従業員労働組合(以下「学食労」)、岡崎市社会福祉団体職員労働組合(以下「社福労」)、岡崎市福祉事業団職員労働組合(以下「事業団労」)、岡崎市関係施設労働組合(以下「関係施設労」)の6単組及び全水道を産別とする岡崎市水道労働組合(以下「岡水労」)があります。
市職及び市従は岡水労(いずれも1950年結成)とともに岡崎市役所職員労働組合連合会(以下「市労連」)を構成しています。一方、学食労、社福労(1980年結成)、事業団労(1995年結成)、関係施設労(1989年結成)で岡崎市関係団体労働組合連合会(以下「関係労」)を構成しています。
(2) 「自治労岡崎」の設立
この2つの連合体が結集して設立されたのが、自治労岡崎市労働組合連絡協議会(以下「自治労岡崎」)です。関係労組合員の職場はもともと所謂、「外郭団体」であったこと、日ごろから仕事の中でも付き合いもあったことから、自治労岡崎については比較的歴史も古く、関係労の各単組が結成されて間もなく1991年に結成されました。
自治体単組と公共民間単組、しかも直接の発注者と受注者という複雑な関係の中で、公共サービスの担い手という共通点で結束されている全国でも珍しい組織体ではないかと思っています。
2. 取り組み内容
(1) 私たちの声を議会の場に
結成当初は目立った活動は特にしていなかったものの、私たちを取り巻く諸課題のほとんどは議会の場で決定されることから、私たちの声を直接議会に届ける必要性を感じ、市議会に組織内議員を擁立する動きが具体化しました。そして2000年の岡崎市議会議員選挙において学食労の委員長であった、北村浩二を組織内議員として擁立したところから自治労岡崎としての活動が活発化してきました。
当時の自治労岡崎の議長であった加藤学(現岡崎市議会議員、出身単組:市職)の指揮のもと、見事、3,787票(45人立候補のうち18位)を勝ち取り、組織内議員として市議会に送り出すことに成功しました。
しかし、その当選の翌年、北村市議が志半ばで急逝され、2004年の選挙に現在の加藤学市議が北村市議の遺志を継ぎ出馬、当選し現在に至っています。これらの選挙活動は自治労岡崎と岡水労も加わり一体となり、自治労愛知県本部の応援のもと活動に取り組んできました。
例えば市職だけでは地公法や公選法の壁があり成し遂げることのできない、この組織内議員擁立の取り組みも、自治労岡崎のメンバーがそれぞれの立場で主体的に行動できることがこの組織の強みと考えています。
(2) 良質な公共サービスの実現のために
選挙の際に打ち出した「良質な公共サービスの実現」は選挙の時だけ、議会からの発信だけでは真の目的を達成することができません。発注者と受注者一体となり、良質な公共サービスの実現を掲げ、連携した取り組みを展開しています。
これまでに公共サービスの質の低下を招かないよう公契約条例の制定を進める取り組みを行うほか、直面する共通的な課題として指定管理者制度の契約期間(5年以内)の撤廃・延長、公共サービスに携わる労働者への公正なワークルールの確立やモチベーションアップを盛り込んだ要望書の提出、これらの取り組みを強く推進するため、連合愛知三河中地域協議会に市職の委員長が副代表に就任し、組織内議員とも連携を図り強く推し進める等の活動を行っています。なお、要望書の提出は従来選挙の年に政策協定として行っていた経緯があったものの、2018年春闘期には、市労連の春闘要求書提出時期と同一タイミングで要望書の提出を行いました。
その長年取り組んできた成果もあり、2018年度岡崎市では公契約条例に関する具体的な検討が開始されることになりました。もともと岡崎市には入札案件に限り「労働条件審査」制度があり、市から工事や業務を受注した事業者のもとで働く従業員等の適正な労働条件の確保、労働環境の整備が適正に行われているか審査するものであり、現在も運用されていますが、更に一歩前進したと実感しています。
これらの取り組みについては、どちらかといえば公共民間労組の視点が多くなりがちですが、「良質な公共サービスの実現」という観点での要望なので、市職、市従の自治体単組側からの視点でも、特に違和感があるものではありません。
(3) 単組間の交流と仲間づくり
何を取り組むにも、理念・理想だけでは結束は強くなりませんし、成就もしません。また、どうしても発注者・受注者という関係上、仕事上の気遣いも無意識に発生してしまうこともあると感じています。自治労岡崎の結束力を強くするためには、同じ公共サービスを提供する仲間としての意識を高めることが必要と感じ、その一つの方法として、仕事上の関係ではない交流を図り一丸となることができる下地を作る取り組みを行っています。
今までに単組対抗のフットサル大会「ゴリラカップ」、組合員に出会いの場を提供し、中心市街地活性化にも活動を展開した「くみ合コン」をはじめ、単組間の交流にも取り組んでいます。その他にも地域のイベントへのボランティア参加や自治労・地協の活動にも同じ面々で参加をしています。組合員の交流も当然ですが、こうしたイベントを通じ、役員同士が力を合わせて運営することにより組織強化にも繋がっています。
また、様々な職種、勤務環境の違いが活動の停滞を招かぬよう、また単組間の情報格差が生じないよう、2016年より自治労岡崎の各単組間を繋ぐグループウェアシステムを導入したことにより、事務局から様々な情報や資料の配布、簡単な電子会議の実施や日程の共有、スケジュール調整が容易に行えるようになりました。
さらに2018年より、共済事務の取りまとめなどを行い、組合員に対するサービスの集約を行うことを開始すべく準備を行っている最中です。まだまだ暫定スタートの段階であり、問題点はあるものの単組事情にかかわらず、均一な組合員へのサービスを提供できるような取り組みも始めています。自治労共済については容易に組合員の可処分所得の増加に結び付けられる反面、その専門性や事務の手間が小規模単組には取り組みを積極的に行うことができない要因になっていたことから、それぞれの単組において積極的に検討を行っています。検討を行っていく中で単組間の役員の交流や日ごろ感じえない、他単組の良い点や問題点も見つかり、問題点などはそれらを解決していく困難性もまた結束を強くしていくものだと感じています。2018年中には各単組間で協定を締結し、本格的にサービスを開始するべく協議中です。
こういった仕事上とは関係のない交流や連携が、自治労岡崎の強力な基盤となっています。
3. 現状と課題
(1) スケールメリット・デメリット
自治労岡崎の組合員は総勢で3,000人近い規模になります。その規模からのスケールメリットは未知数の可能性がある反面、それぞれの単組での活動が主体であるため、様々な活動やサービスを自治労岡崎に全て集約できるわけではありません。また、組織が大きければ大きいほど、職場特性や職種の違いにより感覚のズレというのは大きいと思います。そういった問題を逆にメリットにできるような取り組みも必要かもしれません。
(2) 次世代育成・持続可能な体制
自治労にかかわらず、労働組合全般の課題である次世代育成は、喫緊の課題です。単組における次世代育成が進んでいない単組、新規採用等の抑制で組織の年齢構成に偏りがあり次世代育成が行えない単組等々、単組における諸課題も例外なく発生しており、自治労岡崎の存在意義の継承も含め、その影響は今後の自治労岡崎の活動にも影響を及ぼす脅威となっていると考えます。
これは自治労岡崎の成り立ちや発注者・受注者の関係からも、非常に脆弱な部分であると分析しています。将来に渡り組織を維持・継続していけるような仕組みが必要と考えています。
4. 今後の展望
(1) 地域に根差した活動
どの職場においても職員の多くは岡崎市民です。自治労岡崎や市職のこれまでに行ってきた「くみ合コン」や「駅バル」などの活動(詳細は第11回自治労愛知県本部自治研集会レポート集、p.38-40参照)はまさに地域貢献活動であると同時に地域活性化に一役買っているのではないかと自負しています。実際に「くみ合コン」の実施を支援していただいた地域の集まりの方々はこれらのイベントを通じて得たノウハウの発展形として「岡崎泰平バル」を東岡崎・乙川付近を中心に21店舗参加のもと実施され、自治労岡崎も応援の意を込めてチケットの斡旋・補助を行い、イベントを盛り上げました。これは主催者の方々からも自治労岡崎のイベントの運営を手伝う中でノウハウとして蓄積し、今回の実施に至ったと、まさに地域活性化、地域コミュニティの自立の一助として、役立つことができた事例と思っています。岡崎市の関係職員が集まった組合だからこそ、地元に根差した活動が行えるということはまさに強みであり、今後も継続あるいは発展していきたいと考えています。このような活動を行う際にはスタッフとして企画・運営に様々な人が関わりますが、敢えて参加者ではなく、スタッフに立候補する役員もおり、これも交流のきっかけ、結束の強化につながると考えています。
また恒例化している「ゴリラカップ」では、市内の屋外フットサルコートを借り実施をしていたところ、実施時期が梅雨ということもあり、雨天で中止となる回数が増えていました。そこに自治労岡崎の仲間である関係施設労の役員から自分たちが指定管理を行っている屋内運動場での実施を提案してもらうなど議論が行われるようになりました。これは単組がある職場の利益にもつながる話であり、貢献することができます。
これらの活動は皆で考え、そして活動することにより結果として地域の活性化につながり、公共サービスに携わる私たちの組合活動を理解してもらう活動を継続することにより、長期的には何らかの形となって自分たちに還元されるのではないかと考えています。
(2) 継続のために
自治労岡崎を構成する各単組においては当然のように各単組の活動があります。世間では給与アップなどの明るいニュースが飛び交っていますが、自治体・公共民間単組には世間ほど明るい状況についていけていないのが実情だと思います。こういった時にこそ、労働組合の活動で組合員に対し、労働組合ならではのサービスを提供し、存在価値を感じてもらわなければなりません。各単組、市労連・関係労連でそれぞれ行っているサービスなどで陳腐化しているものは見直し、好評なものは拡大するような取り組みも自治労岡崎のスケールメリットを活かせば可能ではないかと考えています。
これは今後自治労岡崎を構成する単組が何らかの理由で存続が危うくなった時でも、組織の大小や役員の熱意にかかわらず、組織が存続意義を失うことなく、活動を継続していくためのひとつの手段と考えており、今後の重要な取り組み事項になると考えています。
(3) 公共サービスを担う全ての労働者のために
同じ公共サービスを提供する仲間を結集し、私たちに求められているサービスの質について議論し、市の業務や指定管理制度の運用の在り方、そして提供しているサービスが「安かろう・悪かろう」になっていないかを検証し、何か問題のあった場合はその改善を市に対し、要望することで自治労岡崎の役割を果たしていきます。そのために仲間の労働環境の向上、高いモチベーションの維持は不可欠な要素です。それが可能である労働組合の横断的組織である「自治労岡崎」らしさを十分に発揮し、仲間のみならず市民や地域を巻き込んだ活動を展開していきます。
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