【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第12分科会 新しい公共のあり方「住民協働」理想と現実

 これまで、外郭団体間の日常的な連携は行われていなかった。今回、豊田市職員労働組合連合会と県本部が協力して、豊田市の外郭団体を集め「豊田市協会公社等実務担当者連絡協議会」を立ち上げ、会議の開催など取り組んできた。これまでの成果と課題を整理し、外郭団体が市民とともに「地域への愛着や帰属意識」を醸成し、地域の再生や相互補助機能を持続可能なものとしていくことで、本来業務はもちろんのこと、地域の中での活動領域を広げ、公共サービスの一端を担い続けられるよう市民・地域と連携した取り組みを進める。



外郭団体による公共サービスの安定、安心な提供
―― 市民・地域との連携 ――

愛知県本部/豊田市職員労働組合連合会

1. はじめに

(1) 住民の福祉の増進をはかるとは? 最小の経費で最大の効果を上げるとは?
 「地方自治法第2条14」にある「最小の経費で最大の効果」は「住民福祉の増進」に優先するものではない。公共サービスは、安心、安全、安定的に供給されてこそ、住民福祉の増進を図れる。そのために、行政はもちろんのこと、外郭団体、公共サービスに参入する企業は「公共サービスを提供する責任」を十分に自覚し、事業実施に当たっては、関係団体との連携により少子高齢化対策や地域振興など提案型の事業展開をする必要がある。加えて、事業を個別に推進するのでなく関連する事業をまとめて推進することで、より効率化を図り限られた財源を有効に活用することができる。

(2) 豊田市で起きたことを事例に考える
① こども園などの「給食調理と配送」を受託していた業者が経営破たん
 昨年、豊田市がこども園など給食調理を委託していた豊田食品(株)が2017年5月に破産手続きに入り、1日当たり2,165人の幼児の給食の提供に影響が出た。市は、直後の2週間は保護者に弁当の持参をお願いし、以降11月初旬までは(株)トフス(市内の給食調理、配達業者)が調理したおかずとともに、ごはんまたはパンと牛乳を別業者から提供した。そして、2018年3月末までは学校給食協会(以下、「協会」)と(株)トフスが1日当たり2,165人分(参考:市全体98園12,053食/日)の給食を作り、こども園など14園に供給することとなった。
 この事例は、幼児に供給していた給食が、突然、提供できなくなった事例である。その後、市の対応で、2017年11月には正常に戻っている。
 この事例において、直後の2週間は保護者の協力をお願いし、その後は豊田食品(株)以外の市内の民間業者や協会の協力を得て豊田市は緊急対応を行ってきており、こども園などに通う子ども達は昼食が取れなくて困ったということはなかった。以下の②の経過の中で豊田市職員労働組合の役員として関わってきた者として、社会経済情勢などの変化によって民間活用の促進など市の方針を変更する場合は、直営、協会・公社、民間それぞれのメリット、デメリットを押さえたうえで、方針は変更されるべきであると考える。例えば、PFIは数度にわたり改正が行われ、運営に係る民間の自由度の拡大と採算性が確保されてきているが、あくまでも採算性が担保される事業規模、事業のパッケージ化などが必要となっている。また、PFIは、行政が民間の資金とノウハウを活用し、行政の財政負担を軽減するための方策であるが、市民も市も受託業者もリスクを抱えつつ、公共サービスの担い手を選択していることを、大前提として認識しておくべきであることを強く感じる。
② 直営の給食センターから、協会へ、そして民間参入へ
 協会設立の前は、豊田市が直営で給食センターを運営していた。市当局から正規調理員の退職不補充が労働組合に提案され、組合は採用するよう何回も交渉してきたが、職員削減の流れを止められず、非正規調理員で人員を補充しつつ直営を守るという苦渋の選択をせざるを得なかった。そして、数年間は直営を堅持できたが、正規調理員の新規採用がされない中で、正規調理員の比率は高齢化と定年退職で減少を続け、直営は段階的に廃止されることとなった。豊田市が100%出資の財団法人である学校給食協会が、1976年8月1日に豊田市東部給食センターの開設を契機に設立され、豊田市から委託を受け給食調理業務を担うこととなった。正規調理員の皆さんは、学校給食協会に給食センターが順次委託されるのに合わせて、そのままセンターに残るか、幼稚園、保育園の単独調理職場や小中学校の公務手職場に異動していった。
 学校給食協会は、これまで最大で5つの給食センター、豊田養護学校の給食業務を受託して、幼児、児童、生徒に給食を提供し、次代を担う子どもたちの健やかな成長を促し、食の大切さを実感してもらう責任を持って、公共サービスを担ってきた。2009年には、豊田市東部給食センターの建て替えを契機にPFI方式による民間委託が開始された。続いて、北部給食センターの建て替えに伴い、PFIによる特定事業の選定が行われてきている。
 これからも地方の財政難と内閣府のPFI推進室主導でPFI法が改正され環境が整備され、民間がより参入しやすくなり、民間活用がさらに進む状況にある。協会・公社など外郭団体は民間との競争にさらされており、その特性を最大限に活用しつつ、事業の効率化をはかる必要に迫られている。

2. 豊田市職員労働組合連合会の取り組み

(1) 「豊田市協会公社等実務担当者連絡協議会」の立上げ、開催
① 連絡協議会の開催
連絡協議会で挨拶する近藤豊田市職労連委員長
 これまで、外郭団体間は日常的に連携をすることがなかった。外郭団体がさらに役割を発揮し、外郭団体で働く労働者の生活を守るために、市との関係を再構築していくことが必要であるとの認識のもと、豊田市職員労働組合連合会主導で、福祉医療分野など7団体に参加を呼びかけ、「豊田市協会公社等実務担当者連絡協議会」を立ち上げて会議の開催を始めとした取り組みを進めてきた。
 これまでに、2017年度中に3回開催してきたが、次回2018年7月開催以降は外郭団体が持ち回りで開催していくこととなった。


【豊田市の公社協会等 2017年度一覧】  ※株式会社を含めると26団体 ※太字が今回参加を呼びかけた団体
No 団体名 設立 市出資率 No 団体名 設立 市出資率
1 (公財)豊田市
国際交流協会
1988.10.1 97.40% 12 豊田市
駅前開発(株)
1997.4.1 67%
2 (株)とよた山里
ホールディングス
2012.6.1 79.70% 13 (公財)豊田
 都市交通研究所
1991.3.1
前身1979.3.22
50%
3 (公社)豊田市
シルバー人材センター
1980.10.1 0% 14 (一財)豊田市
水道サービス協会
1984.4.1 100%
4 (社福)豊田市
社会福祉協議
1975.10.1 42.60% 15 (公財)豊田市
文化振興財団
1975.5.10 86%
5 (公財)豊田
地域医療センター
1977.10.1 100% 16 (公財)豊田市体育協会 1981.3.26 84.80%
6 (株)豊田ほっとかん 1995.2.10 25.00% 17 (株)豊田スタジアム 2000.9.25 34%
7 (社福)豊田市
福祉事業団
1994.4.1 100% 18 (公財)高橋記念
美術文化振興財団
1991.4.1 96.15%
8 (公財)豊田加茂
環境整備公社
1989.1.31 51.50% 19 (公財)豊田市
学校給食協会
1976.8.1 100%
9 豊田まちづくり(株) 1994.9.30 63.90% 20 豊田市
土地開発公社
1964.9.22 100%
10 豊田市
駅前通り南開発(株)
2005.12.21 50.00% 21 (一社)おいでんさんそん 2017.2.1   
11 豊田市
駅東開発(株)
1994.7.22 45.00% 22 (一社)ツーリズムとよた 2017.2.1  

② その成果と課題
【連絡協議会を開催して得た成果】
ア 外郭団体を統括する行政改革推進課の課長を講師に招いて現状と今後の考え方をお話しいただき、個別の対応ではなく直接、市の担当課長と話ができたこと。
イ 団体間の情報交換ができ、労働条件などの違いを平準化するために4団体の常務理事名で市の総務部長に3月6日に要望書を提出できたこと。
ウ 豊田市職労連主導から、外郭団体が主体的に連絡協議会を開催、運営することができるようになったこと。
【今後の課題】
ア 連絡協議会を継続させていくこと。
イ 市に対し、外郭団体の存在意義を示すため、企画立案、実行に向けた合同研修会の開催など具体の取り組みを行うこと。
ウ 実務担当者連絡協議会ではあるが理事者側の連携が図られることに対し、働く側のまとまり、団体である労働組合を結成すること。
エ 外郭団体が安定、安全な公共サービスの提供を担ってきたことを市や市民に改めてアピールを行い、外郭団体の実績を知ってもらうことで、市や市民からの信頼と支持を得ていくこと。

(2) 豊田市における外郭団体の位置付け
① 外郭団体の概況
 市民ニーズや住民福祉の向上を図るためや、国の政策制度によって、市は施設の設置とともに管理運営や事業実施団体を設立してきた。それ故に、豊田市における外郭団体の設立趣旨と設立時期はそれぞれの役割により様々である。2006年の指定管理者制度創設により、「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」である「公の施設」に関係する外郭団体は委託契約から指定管理に移行してきた。一方、賃金、労働条件は、個々の団体ごとに設立趣旨・時期、業務内容が様々であることから、賃金、労働条件は団体によって差があり異なっているのが現状である。
 委託の時代は、企画はあくまで市が担い、外郭団体が行う管理運営や事業は委託契約で決められた範囲に限られてきた。そのため業務が変更になったり増えたりして人員が必要となっても、市の予算が付かなければ人員増には繋がらず、限られた人員で委託業務を遂行してきた。
② 様々な市の計画における気になる記述
 2040年を展望した「第8次豊田市総合計画(2017年度~2024年度)」を始め「第3期豊田市市民活動促進計画(2018年度~2021年度)」などの分野別計画、各年度の政策や予算編成に基づく市政方針には、豊田市のめざす未来像や少子高齢化に対する対応、自動車産業の今後をどのように捉え、公共サービスの提供体制をどのように変革していくのかが説明されている。
 総合計画の「構成と内容」には、「なお、第8次豊田市総合計画では、定常的な継続業務などについて詳細な記載はしませんが、通常業務として必要なことは適切かつ着実に実行していきます。」とあり、「定常的な継続業務」と「基本構想に掲げるめざす姿の実現に向けた実践計画」との関係性を明らかにしておく必要がある。
 また、それぞれの施設の利用頻度、必要性の問題と管理運営費用の財源の問題をどのように整理、調整して住民福祉の向上を図っていくのか、市に明確にさせたうえで、外郭団体側からも多角的な施設利用の提案や運営改善、住民ニーズに対応した事業変革などを提案していくべきである。
 「総合計画」が事業計画であるのに対し、マネジメントとして「第2次地域経営戦略プラン(2016年度~2018年度)」が策定、推進されている。
 そのプランの中に、「1共働の推進(市民力・地域力・企業力の発揮) 1-4民間活力の積極的活用 1-4-2指定管理者制度の活用」で、「①指定管理者制度に係るモニタリング評価の強化、②公設地方卸売市場への指定管理者制度の導入検討、③中央図書館における指定管理者制度の導入」とあり、「同1-4-3PFI方式の活用」で、「②PFI方式による新北部給食センターの整備」が掲げられている。また、「2-2効率的・効果的な事務執行への転換 2-2-1業務内容・プロセスの改善」で「④社会福祉法人・施設の指導監督体制の強化」がある。
 外郭団体として、様々な市の計画の中身で自分たちの団体に関わる内容については、きちんと情報を捉えておくべきである。さらに、計画の立案段階から、自らの団体の考えている役割、位置付けと市が考えている計画の擦り合わせが行え市の計画への意見反映ができれば、具体の政策、事業を指定管理で受けられることに繋げていくことができる。
③ 外郭団体が受託団体として存続していくために
 指定管理者制度の発端は、公共団体や公共的団体、政令で定める出資法人が受託していた「公の施設」の管理を民間開放し、民間のサービス提供能力や民間のノウハウを活用して住民ニーズの多様化に効果的、効率的に対応するためであった。その意味から、協会公社等は、民間と競争するための専門性や地域に根差した活動による役割の拡充を進めることで、継続して指定管理者となることができるうえ、指定管理の更新ごとに委託料を引き下げられずに指定を受け続けられるのではないか。
 また、施設の老朽化による建替えに際して、PFIの活用が浮上してくることも十分に考えられ、協会公社等であっても、将来的に継続して委託を受けていけるかは保障されていない。

3. 新しい公共の再構築

(1) 「市民との共働」の拡充へ
 豊田市において、これまで、「市民との共働」に基づいて、行政経営がなされてきた。超高齢化社会に向けて地域包括ケアシステムや地域共生社会を構築していくためにも、市民一人ひとりや自治区(町内会)のより自発的な活動が必要であり、「市民との共働」をより拡充していかなければならない。
 サービスを受ける側の立場から相互方向の「互助」の活動を地域で育て根付かせる必要があり、市民が自分の住んでいる地域の中にある公共施設を核にして、自らの生活に身近なところから関わりを持てるようにすることを提案したい。
 外郭団体は、市民や自治区がその施設についてより関心を持ち、施設を守り育てる役割を自主的に担ってもらえるよう、施設の建っている地域の住民と協議する場を設け住民の理解と協力を得ていく。そして、その施設が自分たちの住む自治区にあることに住民が誇りと喜びを感じられるよう話し合い、住民とともに施設の管理・運営を充実していく。
 地域住民の協力と言っても、まずは施設を利用し施設の良いところ悪いところを直に感じてもらう。そして、草取りや清掃ボランティアではなく、良いところは伸ばし、悪いところは改善する方向で協力を働きかけ、うまく施設を盛り上げる方向へともっていくことである。

(2) 外郭団体における労働組合結成の必要性
 外郭団体が市に対して企画を立案し、それを提起し行動に移していくためには、「市民との共働」の取り組みを推進する労働組合の存在、役割がとても重要である。その労働組合は外郭団体で働く人の集まりであるとともに、外郭団体の事業運営から一定の距離を置いて、地域貢献の活動ができる団体だからである。
 今後は、豊田市職員労働組合連合会と県本部で連携し、外郭団体の中に労働組合を立ち上げていく。労働組合は、職員の賃金・労働条件の改善に取り組むとともに、外郭団体の活性化にも寄与し、地域の市民との共働の取り組みにも活動の輪を広げていくことで、外郭団体の存在意義を拡大し、市民から支持を得て将来にわたって公共サービスを担う団体として活躍することをめざすべきである。




【参考文献】
① 豊田市ホームページ
② 「豊田市北部給食センター改築整備運営事業 実施方針(2017年2月3日)」
③ 公務労協ブックレット
  「連合国際シンポジウム 質の高い公共サービスと労働組合の役割 講演録(2015年2月24日開催)」