【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 第12分科会 新しい公共のあり方「住民協働」理想と現実 |
人口減少、学校の統廃合、商店の撤退、耕作放棄地の増加など、中山間地域が抱える問題を多分に漏れず抱える"比田地域"。そんな地域に2017年3月に、他に例を見ない地域活性化を目的とする株式会社として設立された「えーひだカンパニー株式会社」。その立ち上げには、地域に住む自治体職員の関わりがかかせなかった。立ち上げまでの軌跡とその後の比田について報告します。 |
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1. 現 況
(1) 地域の特性
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(2) そんな比田地区は今
今後も地域の人口は減りつづけ、25年後には現在の半数500人を割り込むとの推計も示されており、各集落はおろか地域の存続さえ危ぶまれる状況が目に見えるところまで来ていました。 |
2. 比田地域ビジョン (1) プロジェクトの立ち上げ 集落ビジョンは、集落内の意識醸成や仕組みづくりには効果はあるものの、人口減少などといった大きなテーマは、集落で解決することはできません。多くの住民が地区の将来に漠然とした危機感を持っていたところ、個人や集落単位では対応できない課題の解決に向け、市からのアプローチで18自治会からなる小学校区を範囲とする地域ビジョンの策定に向けたプロジェクトが立ち上がりました。 プロジェクトのメンバーは地元の有志27人+行政機関等で構成され、その中には地元在住自治体職員が5人、地域おこし協力隊2人が含まれていました。 |
(2) より地域を巻き込んで
○アンケート回収率 世帯用:86%(304/352戸)、個人用:90%(848/941人) 生活環境では、現役リーダーや次世代の比田を担うリーダー候補を育てるため、リーダー養成研修などを行う「地域のリーダー人材育成」や、現在のバス路線ではフォローできないような箇所を運行する「デマンドバス」などがありました。 産業振興では、「オール比田の農業法人」や「中山間直払の一本化」、「農家レストラン」など地域の基幹産業である農業分野ではそれなりにリアリティが高いものが多く、その他にも「キノコ園」や「比田温泉水で特産品づくり」など、林業、畜産業、商業などのアイデアがありました。 地域魅力では、各種情報発信ツールとして、比田の公式ホームページを作成する「比田のホームページ開設」や、ステッカーやマグネットなどを車に貼って比田をPRする「みんなの車に比田PRステッカー」、小学生から出たアイデアである「道路沿いにイルミネーション」やイベント系アイデア「ポテトフェスティバル」「ハロウィン祭」などがありました。 定住促進では、比田の人脈を活かした企業をつなぐ「比田版ハローワーク」や子育て支援を目的とした「地域から出産おめでとう祝い」、比田女子のタテヨコのつながりを作るための「比田女子会結成」など、住まいや暮らしのアイデアがありました。 これらたくさんの住民のアイデアと思いが詰め込まれたビジョンは2016年3月に完成し、計画期間の10年で、一年間に8~9個の項目を達成していき、これらの88の項目を10年で全て実現させていきたいと考えています。 |
(4) ビジョンの実現に向けて 3. 地域活性化を目的とした"えーひだカンパニー株式会社" (1) 任意組織"え~ひだカンパニー"の創設 この任意組織の立ち上げにあたっては、前述のとおり、さらなるメンバー集めが必須となっていました。広報誌などを活用して広く地域全体にメンバーを公募するとともに、総務部、生活環境部といった具体的な立ち上げ後の組織とその役割をイメージしながら、部のリーダーや中核となる者の人選と内諾を先に進め、各部で取り組みやすいメンバーを個別にあたってもらうようにしました。 その結果、部間で慎重に調整を進め、各部ごとに20~50代の比較的若い、気心知れた仲間でメンバー集めが進み、これに"相談役会"のメンバーを加え、趣旨に賛同する総勢73人で、2016年8月に任意組織「え~ひだカンパニー」を創設しました。 なお、73人全員が自治体職員を含め会社員、自営業など、企業等にお勤めの方で主たる仕事を別に持つ方ばかりです。 |
(2) 組織の特徴"相談役会" そこで、カンパニーの取り組みを円滑に進めていくため、交流センター長や自治会協議会会長など、地域内の大御所の方々に参画してもらい、助言、支援、地域の取りまとめ、各種団体との調整を担うポジションとして位置づけ、カンパニーの後方支援を担ってもらう体制をつくりました。 |
(3) 持続可能な組織をめざし、任意組織から株式会社へ カンパニーが取り組む88のビジョン項目は、農業分野など、それ自体が収益を生む事業もありますが、定住促進や地域交通など採算が取れないものが大半を占めています。収益事業でしっかり収益を出しながら、その収益を、収益性のない地域貢献事業の事業費や人件費などに充て、確実な事業の実施と脱ボランティアを図っていきたいことから、必然的に収益事業を優先して取り掛かることになります。 収益事業を実施するとなると、税制上の観点や各種補助制度を利用する場合に任意組織では不利なことが多く、法人化の検討に取りかかりました。検討を始めるにあたり、NPO法人、農事組合法人、合同会社など、選択できる法人の形態がいろいろなものがありましたが、多分野にわたるビジョン項目に対応するため、事業の制約を受けず、社会的信用性の高い株式会社とすることで協議が整いました。度重なる勉強会や協議、公証人役場や法務局に足を運び、2017年3月1日に"えーひだカンパニー株式会社"を設立することができました。 カンパニーの定款の目的欄には、"比田地区の活性化に関する事業""比田地域ビジョンの取り組みに関する事業"を1番2番に明記しています。個人の努力、既存の集落や行政の力では解決できない課題に対応できる会社をめざし、比田地区全体を包括しながら、88のアイデアを実行していくとともに、自治機能(行政に頼らず地域で町づくりを行う機能)と生産機能(必要となる財源を自立的に生み出す機能)を合わせ持った地域活性化を目的とする株式会社として動き出しました。 |
4. 今思うこと、そして地域は…… (1) 実績と積み重ねによる信頼関係 また、水稲の育苗事業やドローン防除など新たな事業も立ち上がり、雇用の創出など、カンパニーの存在による地域還元も目に見える形で現れてきました。 会社だけを創ることが目的であれば、気の合う仲間だけで進める方が圧倒的に簡単です。より多くの人を巻き込みながら、手間をかけてビジョンづくりから丁寧に進めてきたことで、地域の一体感が生まれ、意識醸成が進んだといえます。 それは、えーひだカンパニー株式会社のプライスレスな資産であるといえます。 |
(2) 絶対ではないが、いる方が良い |