2. ジオパークとは
ジオパークとは、「大地(Geo)」と「公園(Park)」を合わせた造語で、「大地の公園」と訳され、大地(つまり地球)を感じ、学び、楽しめる場所のことを言います。そもそも、私たちが暮らしている所こそが「大地」や「地球」ではないかと思われるのではないでしょうか。ジオパークは、私たちが暮らすその土地の地形・地質等の大地の成り立ち、動植物等の自然環境をはじめ、歴史や伝統・文化との関わりを学び、価値を認識し、自分たちの子どもや孫、そして後世にいたるまでそれらを守り続け、教育や防災等の地域活動に役立てること、そして、多くの人に知ってもらい体験をしてもらうことで、地域の活性化に繋げる取り組みを言います。
「ジオパーク」の認定条件は、その地域の見どころとなる「ジオサイト」と呼ばれる地形・地質などの遺産だけではなく、それらの保全や教育活動などの活用、地域の活気づくりや経済発展につながる取り組みなども必要となります。つまり、ジオパーク活動を地球の科学的価値とその地域の風土や文化、また人を繋ぐ必要があり、その繋がりが「ジオストーリー」となり、ジオストーリーを用いた活動を行うことで、教育活動や経済発展、活気づくりなど様々なことに広げていこうとしています。
日本ジオパークに認定されるには、ジオパークをめざす地域団体がJGN(日本ジオパークネットワーク)の準会員として登録し、JGNへ加盟申請を提出します。そして、JGC(日本ジオパーク委員会)において、書類審査及び新規加盟プレゼンテーションを行い、現地審査を経て合格となると正会員となり、「ジオパーク」と名乗れるようになります。
現在、日本ジオパーク委員会に認定された日本ジオパークは43地域あり、そのうち9地域はユネスコ世界ジオパークにも認定されています。
3. 土佐清水ジオパーク構想とは
(1) なぜ土佐清水はジオパーク構想を進めるのか
土佐清水市は、1955年に指定を受けた足摺宇和海国立公園を契機に、足摺・竜串地域などの地域は、観光産業も栄えていましたが、近年の観光ニーズの変化や施設の老朽化などにより観光客は減少し、さらに少子高齢化や若者の流出などにより地域の活力は低下の一途をたどっています。また、90~150年程度の間隔でくると言われている「南海トラフ地震」への備えも喫緊の課題となっています。
そのような中において、土佐清水ジオパーク構想では、土佐清水の大地や、そこから生まれた生態系、地域固有の歴史や文化を守り続け、持続的な発展を促すことが目的となっています。また、その発展のためには、地域を支える人づくりも大切であり、50年、100年先まで土佐清水を残し、また発展させるために取り組んでいます。
(2) 土佐清水ジオパーク構想の活動内容
土佐清水ジオパーク構想では、これまでも講師による講演会だけではなく、「まちあるき」やジオ関連商品の開発、様々な年代の方々と衣食住から子どもの頃の遊びを掘り起こす活動など、様々な活動をしてきました。
① まちあるき
「まちあるき」では、かつての土佐清水市の地形などを知るとともに、その地域での暮らしや文化なども学んでいます。江戸時代の地図と現在の地図を見比べ、かつては海の底であった地域が今はどのように活用されているのか、また、近い将来必ず起こると言われている「南海トラフ地震」の対策として、昔の人が残してくれた地震の石碑や文書、津波が来た際の言い伝えなども多く残っており、防災・減災対策にも役立てようとしています。
② 関連商品の開発
土佐清水ジオパーク構想では、ガイドを中心に、関連商品の開発にも力を入れています。
・ジオ焼き
地域の産業祭やイベントなどで、タコの代わりに土佐清水市の岩場に住む「ニナ」や「クボ」といった貝を入れた新たなグルメを開発し販売しました。味はタコ焼き、でも、食感はタコとは違う不思議な感触。そして中には土佐清水産の宗田節を隠し味にするなど、とても美味しく大好評で、リピーターが続出するなどあっという間に完売しました。
・ジオ弁当
土佐清水市内でも地域によって地質や地形の特徴が違っており、またそこで生まれた食文化にも違いがあります。例えば、定置網でたくさん魚がとれる「窪津」という地域では、「魚飯(いおめし)」があります。また、海があり山の斜面が緩やかに階段のようになっていて野菜を育てている「中浜」という地域では、魚と野菜がたくさん入った「いなり寿司」を昔から作ってきました。このように市内の4地区の良い所をそれぞれ詰め込んだ「ジオ弁当」を開発し、産業祭限定ではありましたが、販売しました。
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(写真)ブリの魚飯・ニナのかき揚げ キイチゴの押し寿司 |
また、このような活動以外にも、様々な活動を行っています。
③ ヤブツバキ再生プロジェクト | |
④ 小学生ツアーガイド |
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4. ジオパーク活動によって得られるもの
(1) 人とのつながり
ジオパーク活動を行うということは、人とのつながりができるということだと思います。
まず、様々なイベントに参加することによって、お客さんとしての市民や県外から来られた人と触れ合うことができます。また、様々な活動の中で、今まではほとんど関わりが無かった市内の地域のコミュニティ同士も繋がりを見せ始め、コミュニティの輪が広がってきています。少しずつではありますが、市内外を問わずジオパークというものを知ってもらい、またジオパークに興味を持ってくれる人が増えるにつれ、活動に賛同し参加してくれる人も増えてきているように感じます。
また、ガイドを行うことで、そこに来た観光客とつながることができます。土佐清水ジオパーク構想では、「めぐる大地と黒潮が生み出す不思議な物語」をテーマに、観光客を対象にしたモニターツアーを行っています。プレゼンテーションの際に審査員から「不思議をどう伝えているのか」という質問がありました。たしかに「不思議」と思うためには、少なからず情報や知識が必要となります。都会から初めて土佐清水市に来た人に、ただ見てもらうだけではその場所から見た一面しか見えませんが、情報を与えることによって、内部構造やその裏側、もしくは長い歴史など視点を変えてその場所を見ることができ、ますますワクワクしてもらえるのではないかと思います。
このように、縦や横だけのつながりだけでなく、上や下、斜めといった多面的なつながりを持つことによって、その土地の文化や歴史、風土というものを、土佐清水市全体だけでなく日本全体、または世界全体で未来へ繋げていくということができると思います。
(2) ジオパーク活動を観光へ繋ぐ取り組みと今後の課題
市内においても少しずつ土佐清水ジオパーク構想というものは広がってきており、「ジオパーク」という言葉も違和感無く受け入れられ始めています。また、本市は国立公園に指定されていたことで、地質、生態系などが破壊されずに守られてきており、今のジオパークに繋がっていることも事実です。50年、100年先にも、この土佐清水という地域を残すためには、「国立公園」、「ジオパーク」というそれぞれの趣旨を土台として守りつつ、土佐清水の魅力を伝える手段をこれからも模索することが必要であると思います。
5. おわりに
私は、土佐清水ジオパーク構想を通じて、1人でも多くの人に土佐清水市を知ってもらい、土佐清水市に来てほしいと思っています。ネット社会の現代においては、様々な情報をインターネットを通じて見て、知ることができます。しかし、土佐清水市に来ることでしか体験できないことも多くあります。見て、触れて、聞いて、匂って、食べて、五感を最大限に活用して感じて楽しんでもらうということは、現地でしかできません。また、私は健常者だけでなく、障害を持った人にも土佐清水市を楽しんでほしいと思っています。6年前から勉強を始めた「手話」を使い、聴覚に障害を持っている人にも、「手話」という言語で土佐清水市を紹介したいと思っています。
私は、「自分が楽しくないのに、人を楽しませることはできない」と思っています。ジオガイドとして、そして土佐清水市の職員として、また一市民として、自分自身も楽しくなるようなジオパーク活動を行い、手話など様々な手段を使い「土佐清水の魅力」を伝える取り組みを行っていきたいと思います。
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