【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
地元企画分科会 「ふるさと」を次の世代へ~「犠牲者ゼロ」の防災まちづくり~

 教育委員会交渉で勝ち取った防災研修を活かし仮設トイレの設営・地下式給水栓アドバイザー資格取得・応急手当普及員資格技能長全員が取得ならびに、一般市民の人命を救助。



学校用務員として、緊急時に何ができるのか
―― 災害時避難拠点に勤務する
用務員の防災に対する取り組み ――

愛知県本部/自治労名古屋市労働組合・学校支部 荒木 善春

1. 避難時における位置付け

(1) 飲み水の確保と避難所のトイレの設営
 大規模災害時、名古屋市立の小学校は市民の避難所になっているにもかかわらず、そこに勤務する学校業務士(用務員)は、災害時における位置づけが明確になっていないのが現状です。
 しかし避難所となる学校に勤務する用務員として、災害時にできることはないかと考え、10年前から実際に役立つ研修を自主的に企画・立案し、災害時に非常に重要となる「飲み水の確保」と「避難所のトイレの設営」の研修を行ってきました。

▼地下式給水栓の実施研修 ▼避難所のトイレの設営

(2) 教育委員会主催の防災研修実現
 同時に教育委員会に対し「防災・災害時避難拠点として学校の機能を充実させると共に、学校業務士の位置付けを明確にし、教育委員会の責任において、定期的な研修を行うこと」を強く要求してきました。その結果2012年、教育委員会主催の講和による防災研修を実現させました。また2013年度には、自主的に行ってきた実地研修を教育委員会に認めさせ、用務員の技能長が主となり、正規の用務員・調理員の全員参加で、学校付近に設営されている地下式給水栓の操作方法、学校の災害倉庫に保管されている震災用仮設トイレの組み立て研修を実施しました。

(3) 応急手当普及員資格技能長全員が取得
 学校支部は、防災研修の内容について更に交渉を重ね、2015年度より心肺蘇生からAED装着までの講習を新たに加え、学校に勤務する応急手当普及員資格を有する養護教諭を講師とし研修を行いました。
 しかし救急救命講習の講師は、養護教諭でなく用務員が自ら講師となり研修をすべきとし、全ての用務技能長に応急手当普及員資格を取得させるように要求。交渉団からも「防災研修を必要であると認めたならば、受講させるべき」「緊急時・災害時には必要だ」と強く訴え、「すべての用務技能長にAEDの指導資格を取得するための講習を受講させる」という満額回答を得ました。
 2017年2月、消防局による応急手当普及員資格受講講習が終了。技能長全員が資格を取得しました。

▼AEDの実施研修

(4) 一般市民の人命を救助
 そんな時、この研修を修了した組合員が「一般市民の人命を救助」ということが起こりました。
 7月3日、業務のため市役所に向かう地下鉄車内で、近くの座席に座っていた男性が突然、顔から床に倒れこみけいれんをおこしました。その顔はみるみる青ざめ、けいれんが止まった後は目を見開いたまま動かなくなりました。騒然とする車内。私と同席していた用務員は男性の元に駆け寄り、意識と呼吸がないことを確認しました。私はすぐに心肺蘇生を開始し、もう一人の用務員は次の停車駅でAEDの用意と救急の手配をするよう車掌へ緊急連絡すべく奔走しました。駅に到着後も胸骨圧迫をし続けAEDを待ちました。AED装着後は心臓の解析をしたAEDの指示通り胸骨圧迫を続け、もう一人の用務員は担架を運び込む駅員の誘導にあたりました。
 その後、呼吸の確認ができ駅構内で男性を待つ担架へと運び乗せた時、声を掛けながら握る手に、かすかに握りかえす反応が感じられました。その後男性は、駆けつけた救急隊により病院へ搬送され、翌日、交通局から2人が所属するそれぞれの学校の管理職に、お礼と男性の命に別条がないとの連絡がありました。防災研修で培った経験を生かし、敏速かつ冷静な救急の連携で命を救うことができ、研修の成果を示すことができたと思います。

(5) 国のトップランナー方式や定員管理計画
 国のトップランナー方式や定員管理計画等、今後もさらに現業職が減らされる方向にありますが、今職員としてできる事、やらなければいけない事を考え訴えていく事が大切です。
 避難拠点となる学校に勤務する現業職員の必要性、災害時の備えとして用務員の位置づけの必要性を今後も訴え続けていかなければなりません。
 市民が安心して暮らせるよう防災の観点から、職員として用務員として今できる事を行い、積極的に市民アピールをし、市民から「必要だ」と言われる用務員であり続ける努力をしていきます。