【自主レポート】 |
第37回土佐自治研集会 地元企画分科会 「ふるさと」を次の世代へ~「犠牲者ゼロ」の防災まちづくり~ |
災害時や復興時における自治体職員の役割は重要である。しかし、大規模災害が発生する度に、業務の多忙さ等からメンタル疾患に陥ったり、退職する職員が少なからずいる。しかし、今までこうした被災職員自身の課題等に対する対策の検討はなされていない。 |
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1. はじめに
高知県は、近い将来発生すると言われる南海トラフ地震において、甚大な被害を受けると予測されている。そのため、行政においても地域においても、防災や減災に向けての取り組みが熱心に進められている。 |
2. 被災した職員が抱える課題
7月に起きた西日本豪雨災害の際にも、2日間十分な休息や食事もとらないまま被災者の対応に当たった職員や、避難所運営のため何日間も泊まり込み対応をする職員がいたという話をあちこちで聞く機会があった。また、災害対応時の組織体制が十分に周知されていないなどの理由から、他県からの応援職員がスムーズに支援に入れないことや、行政と関係機関の連携がうまくできていないといったことがあったようだ。
こうした葛藤の多くは、あまり報道されることはなく、被災した自治体職員の声もあまり目にする機会がないのではないだろうか。 |
3. 高知市職員の抱える不安
高知市は南海トラフ大地震をはじめ、台風や豪雨災害など、災害リスクの高い地域である。高知市役所においては、防災担当職員以外も水防要員としての毎年6月に辞令を受け、各々避難所の運営や災害対策本部の業務にあたることとなっている。 (1) 職場での課題や不安
③ 避難してくる住民との関係 (2) 生活面での不安 |
4. 課題や不安の解決に向けて (1) 防災女子会の立ち上げ それぞれの場面にそって、戸惑いながらもそれぞれの知識や各職場での経験をもとに、「高齢者は寝起きがしづらいので、ベッドの代わりになるものを学校の机やマットで作る」「そうすると床のホコリも吸わなくて病気になりにくいよね」等々、さまざまな意見が出された。参加者が正解のない災害対応の場面において、一生懸命に考え意見を出す中で、災害が起こる前にこうしたことについて考えておくことが大事であることに気づくことができた。 また、災害対応の場面では、困難な状況下において迅速な判断が求められるため ① 一人ではなく多様な職種や職場の人で考えることで、さまざまな解決策が生まれること ② 自分たち自身が被災したときのための支援体制が必要であり、そのことで自分たちは仕事において持てる力が発揮できること ③ 職員一人一人の防災に対する知識次第で住民の方の被災後の生命や財産への影響の大きさを左右する可能性があること を改めて実感した。 講師である浅野さんからは、災害時のことを適切にイメージし、現状を理解し、そのときどきで適切な行動をとる判断力が大事であり、そのためには多様な立場の人と日頃から災害時のことについて意見交換し、お互いに助けあえる関係性をつくることが大事とのアドバイスもいただいた。 (2) 被災する前にできること 合わせて、「OBや職員間の共助による職員向けの臨時保育所の開設」「育児や介護で出勤できない人に対するケア」「プロジェクトチームを立ち上げ、事前に災害時の横のつながりをつくる」といった新しい制度や仕組みについての意見が出された。 こうした意見からは、災害対応をしなければいけないと理解していても、具体的に何をしたらいいのかがわからないことへの不安が大きいことが感じられた。そして、その不安の解決のためには、災害時の対応について正しく知り、職場や仲間と話し合い、新たな制度や仕組みを考えていくプロセスが必要になることがわかった。 さらに、災害後のことについてシミュレーションを行っていくことが、何が課題なのかについて考えるきっかけになったという意見が多く、災害時のことについて職員間で話し合い課題を共有していくことが重要だということに気づかされた。災害時のことについて具体的にイメージをしていくことができれば、必要な心構えや準備について主体的に動くことができるのではないだろうか。 (3) 今後に向けて~災害時に自分自身で考え、行動するために~ |
5. 最後に
公務員として、災害が起きたときに住民の生命と財産を守ることは当然のことである。しかし、公務員は被災者である住民であり、労働者でもある。このことは災害時に平時以上に大きな葛藤となって職員自身の困難や課題を生み出すことがわかった。これまでの活動を通じて、高知市職員が感じている課題を具体的に把握することができた。 |