新たな行政手法(行政システム改革)と県の未来像
Ⅰ はじめに
北川知事の就任以降、事務事業評価システムをはじめ三重県の行政改革がマスコミでも多く取り上げられるようになった。事実、三重県では行政システム改革を中心に多くの改革が実施に移され、組織・機構の改革はもとより、グループ制や1人1台パソコンの導入など仕事のやり方そのものも随分様変わりをしてきた。
同時に、1996(H8)年9月に公表された旅費の不適正支出問題(いわゆる「カラ出張問題」)とその反省に立った情報公開の推進は、透明度の高い行政運営に止まらず、行政の説明責任を問うものとして、行政システム(ハード)とともに職員の意識(ソフト)改革を加速させてきたといえる。
三重県の行政システム改革は、「生活者起点」を理念に「住民満足度の向上」を目指した行政への転換としており、このことについては多くの職員が理解を示しているものの、一方で、知事の強いリーダーシップの下、総務局(部)主導で急激に進められる改革に戸惑いや不満を感じていることも事実である。このことは、1998(H10)年に行政システム改革が実施に移されて以降、県職労が実施した全職員アンケートにおいて、職員の意見反映やグループ制の導入などについて7割以上が否定的な回答を寄せたことからも窺うことができる。
県職労もこれまでの間、行政システム改革をはじめとする様々な改革に対し、「芦浜原発白紙撤回」に象徴される生産者の論理から生活者を起点とする県政運営への転換、県独自の判断や政策の打ち出しなど分権自治の推進、確立に向けた理念と方向性については評価しつつ、簡素で効率的な運営については、セーフティーネットやシビルミニマムの縮小・低下はもとより自らの労働条件にも大いに関わるものとして是々非々の立場で取り組みを進めてきたところである。
以下に三重県の新たな行政手法(行政システム改革)の概要と県民局(地域機関)を中心とした県民・市町村との関わりなどについて報告するとともに、今後の「県の未来像」を探る上での一助としていきたい。
Ⅱ 行政システム改革の概要
1. 改革の理念と方向 (資料1)
すべての公共サービスにかかる費用が住民の税金等によって賄われているとの原点に立ち返り「住民満足度の向上」を理念に公共サービスを受ける住民の立場に立った「生活者起点」の行政へと転換を図る。
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○ 分権・自立:
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住民ニーズに合ったきめ細かなサービスを提供するため、できる限り住民に近いところで各々責任を持ってサービスを提供する。
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○ 公開・参画:
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税金の使途等を明らかにするなど情報公開を進めるとともに住民の参画を促し、住民の意見等を公共サービスに反映させる。
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○ 簡素・効率:
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官民の役割分担を明確にして、民間にできるものは民間に委ねるなど行政のスリム化に努めるとともに、効率的な行政を確保し、最小の費用で最大の効果をあげる。
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2. 具体的な方策
(1) 事務事業の見直し
県のすべての事業(約3,200)を「公的関与の考え方」に添って見直し202の事務事業について廃止。
(2) 民間の自立自助
① 規制緩和の推進:県の持つ規制について年次計画に基づき廃止または緩和。
② 住民の自立:ボランティアやNPO活動の推進。
(3) 民営化・外部委託化
外部委託化のガイドラインを策定し可能なものから進める。
(4) 市町村への権限委譲
年次計画に基づき事務を市町村へ委譲する。
(5) 事務処理方法の見直し
① 行政手続き条例により行政運営の公平性の確保と透明性の向上。
② 押印の廃止や各種書類の簡素化等。
(6) 事務事業評価システムの定着
事務事業目的評価表によりすべての事務事業の見直し。
(7) マトリックス予算の編成
従来の縦割り行政の弊害を打破し、総合的に政策を進めていくため横断的な視点を取り入れた予算編成に取り組む。(例:「情報化」「いじめ対策」など)
(8) 組織・機構の改革
① 本庁組織の再編
企画・実施・評価の各機能を充実しつつ総合行政を展開するため各部を横断的に所管する部門を「局」とし、個別のサービスの提供を担当する部門を「部」とすることにより、マトリックス体制を明確にする。
② 県民局(地域機関)の充実強化
地域における県民局長の総合調整機能を強化するため、これを支援する部門(企画調整部)を設けるとともに本庁組織再編の考え方に沿って県民局各所を再編し部制にする。
(9) 組織の運営方法の見直し
① グループ制の導入
組織階層のフラット化により意思決定の迅速化を図るとともに、柔軟な組織運営を行うため、原則として係制を廃止し、グループ制を導入。
② 総務部の権限縮小
組織・定数、人事及び予算に関する現行の総務部の権限を縮小し、各部局の裁量に委ねる。
③ 庶務経理事務の集中化
本庁各部の庶務事務を各部主管課に集中、県民局各部の庶務・経理事務についても集中化・簡素化を図る。
(10) 外郭団体の整理縮小
外郭団体、県出資法人等についての見直し。
(11) 定員及び給与
① 定員管理の適正化
業務量に応じた定員適正化計画を策定。(6年間で一般行政部門の定員を4%程度(約210人)削減)
② 能力・成績を反映した人事・給与システムの導入
職員の能力及び適正を客観的、合理的かつ適正に評価するため新しい勤務評価制度の導入を図る。
(12) 人材の育成・確保
① 職員の育成
研修予算の大幅な増額。
② 多様な人材の確保
民間企業等の経験者の別枠採用、行政職中級試験の上級職試験への統合、職種区分の見直し。
(例:農業土木と土木を総合土木職に統合)
(13) 県民サービスの内容等の公表
公共サービスのあり方や内容の公表。
(14) 情報公開の推進
事務事業目的評価表の公表など情報公開の一層の推進。
(15) 監査・検査システムの見直し
外部監査制度の導入など監査方法や制度の改善。
(16) 経費の節減・合理化等財政の健全化
① 中長期的な財政見通しの公表
② 補助金及び委託費の交付等における競争原理の導入
外部の事業者に対して補助金等を交付する場合に費用対効果を高めるため、競争原理を導入。
③ 予算節約の奨励
特定の経費について、予算を節減した額の2分の1に相当する額を財源として翌年度新規事業を主体的に創設できる。
④ 発生主義会計の導入
従来の会計方式にあわせ、発生主義会計(企業会計)によって財務内容を公表。
(17) 「ハコ物」建設の抑制
今世紀中の3年間は新規の「ハコ物」建設の計画は抑制。
(18) 公共工事のコスト縮減
公共工事のコストを少なくとも10%以上縮減することを目指し具体的施策を講じ最大限努力する。
(19) 地方分権の推進
地方分権推進委員会の勧告内容を尊重し、所要の法改正等を行い地方分権の実現を図るよう引き続き国に働きかける。
広域的な見地に立って企画・調整や処理が必要な事務事業について積極的に広域連合の活用を図るなど広域行政を推進する。
3. 行政システム改革のスケジュール
平成10年4月1日に対応が困難なものについては、これらを実施に移すための年次計画を作成し、遅くとも平成15年度までに実施することとする。特に今世紀中の3年間を集中改革期間とし、強力に推進する。
Ⅲ 県民・市町村との関係と県民局(地域機関)の役割
三重県では、「行政システム改革の概要」で記述したとおり、県行政全般にわたるシステムの改革・見直しを一度に進めてきたため、多くの課題が存在するのも事実である。ここではとりわけ、県民や市町村との関係、本庁及び地域(出先)機関を含む行政組織と機構の見直しなど本分科会のテーマである県独自に進める分権型システムの具体例などについて触れていきたい。
1. 県民との協働
「生活者起点」の行政運営には県民との協働を目指すこととしており、そのためには情報の共有化が不可欠であるとの考え方に立ってあらゆる情報の公開を進めていくこととしてきた。具体的には、本庁の生活部に「情報公開室」(http://www.pref.mie.jp/koukai/)を設置し、公文書はもとより県の行うすべての事務事業について作成した「事務事業目的評価表」についても公開するとともに、県民サービスのあり方や内容については個別行政サービスの内容を「県民の皆さんへ」との形で公表をしている。(http://www.pref.mie.jp/SEIHYO/gyousei/MINASAN/)
また、一方では県民との協働を進める上で、行政とボランティアやNPO活動の接点として本庁生活部に「NPO室」を設け、各県民局にもNPO担当を配置するなど積極的な関わりを行ってきている。(http://www.mienpo.net/npooffice/)
民主的な行政運営に情報の公開と共有化は極めて重要なものであることは当然であるが、これまでの情報非公開時の事前調整型システムに比べ、情報公開を前提とした事後調整型システムは課題解決にこれまで以上の時間と労力を費やすことも多く、なによりも行政の明確なスタンスが求められるものとなってきている。
ボランティアやNPO活動の重要性は敢えて触れるまでもないが、一方で、本来行政が行うべきシビルミニマムやセーフティーネットの確保を安易に押しつけるものであってはならない。行政に限界があるのも事実であるが、両者が信頼関係を持った相互補完的な役割を明確にしていくことが重要である。
また、ボランティア活動が活発化することで、県など地方自治体の行うイベントや環境美化運動などへボランティアの名の下に職員が率先して駆り出されるケースが多くなっているが、業務とボランティア活動の区別が曖昧であり、組合としても一定の整理を行うべき課題でもある。
県は市町村と比べ、直接住民と接する窓口や業務は限られており、その意味では住民・県民との直接的な協働を進めるためには市町村の理解と協力が不可欠であり、市町村や地域住民に最も近い県の機関である県民局(地域機関)の役割が大きいといえる。
2. 市町村との関係
地方分権の理念のひとつに国と地方の「対等・協力」関係が謳われているが、このことは県と市町村の関係においても同様であり、そのための税財源及び権限の委譲が急がれるところである。
行政システム改革の具体的な方策においても県の持つ規制緩和の推進や市町村への権限委譲を進めることとし、具体的には県の持つ32の経済的・社会的規制の緩和(資料2)と10件の事務を年次計画に基づき市町村へ権限委譲(資料3)を行ってきた。また、市町村への権限委譲にあたっては押しつけとならないよう、市町村の要望や意向を取り入れる形で進めることで円滑な委譲を目指すとしてきたが、要望中心の委譲には大幅な権限委譲を進める上で限界があることも事実である。とりわけ、大規模な市と小規模な町村では自ずと事務処理能力に物理的な差が生じることは明白である。今後さらに権限委譲を進めるにあたってはこのことをいかに克服するかが今後の分権推進の大きな課題であることは論を待たない。
三重県では、ごみ処理業務や学校・福祉施設の運営などでの一部事務組合(県下64組合)に加え、介護保険制度の導入などに伴い県下のほぼ全域にわたり10の広域連合が設立(資料4)をされた。しかし、これらの広域連合はし尿やごみ処理、介護保険にかかる事務に限定されており、広い範囲に及ぶ行政全般の事務を行うためには限界があることも事実である。
現在、国を中心に市町村合併を促進する動きが加速されつつあり、三重県でも「市町村合併に関する懇話会」や「市町村合併推進要綱策定委員会」などが設置され一定の議論が進められている。しかし、現実的にはこれまでも「志摩市」や「伊賀市」など具体的な構想は描かれつつも当該市町村の思いや温度差はそれぞれであり、今後も市町村合併には曲折が予想される。
3. 組織・機構改革と県民局(地域機関)の機能強化
行政システム改革の理念のひとつである「できる限り住民に近いところで各々が責任を持ってサービスを提供する」ことや、県の組織内分権を確立していく観点から本庁の組織再編と併せ、県民局(地域機関)の充実強化を図ることを目的に大幅な組織・機構の改革が行われた。
(1) 本庁の部局再編
本庁を企画(Plan)・実施(Do)・評価(See)のマネージメントサイクルから各機能を充実し、総合行政を展開する組織とするため各部を横断的に所管する「局」と個別のサービスを提供する部門を「部」とし、マトリクス体制を明確化した2局6部制(資料5)に再編を行った。
本庁の組織・機構再編を巡っては、当時、橋本総理の下で国の省庁再編を中心とする行革議論が盛んに行われていたこともあり、当初は農林水産部を廃止し産業経済部とすることや広域農林道や漁港整備事業などの農林水産関係公共事業を県土整備部に集約する方向が示されたが、議会をはじめ関係団体などからの異論も多く出され、最終的には1月に異例の臨時議会を開き、部制条例を現行の形で可決することとなった。
これらの経過を踏まえ結果的には、それまでの企画振興部を各部を横断的に所管する総合企画局とし、評価部門を従前の総務部から総務局とした。6部については、主に商工労働部を無くし生活部と農林水産商工部に分割、農林水産部の森林関係業務を環境部へ移行するとともに地域振興部を新設することとし、県土整備部(それまでの土木部)に公共事業推進課を設置し公共事業の一元的な進行管理を行うことや従前は各部に分かれていた研究機関及び公設試験場をすべて科学技術振興センターの下に位置づけることとされた。
この間、県職労も職能協議会を中心に内部で部局再編の議論や取り組みを進めてきたが、理念として県道と農林道などの公共事業の一元化は理解できるが、依然として国からの補助金をはじめとする縦割り行政の締め付けが厳しい中では国の省庁との整合性を保たざるを得ないことや、中山間部を中心とする第1次産業の見直しは地域に重大な影響を与える懸念があることなどから総務部に対して現実的な部局再編を求めてきたところである。ここにきて、公共事業やばらまき型の補助金などについて見直しの機運が高まっているが、これと平行し、行政として第1次産業や地域地場産業の新たな振興や支援策を持たないままでの見直しは現実的に問題点も多いといえる。
(2) 県民局(地域機関)の機能強化
県民局(地域機関)については、県民局長の総合調整機能を強化するために、これを支援する企画調整部を設置するとともに県民局各所を部制に移行した。(資料6・7)
これまで、三重県では昭和51年に県下を7つの地域に分けた県民局制度を導入し、その後、総合庁舎の整備にあわせて単独事務所(県税事務所・保健所・土木事務所等)を総合庁舎内に位置づけてきた経緯がある。しかし、これまでは各県民局には県民局長を配置しながらも、県税事務所や福祉事務所など各事務所長をはじめ職員は本庁各部の本課を頂点とする縦割りの部に属した形で事務事業の遂行をはじめ、定数配分や人事異動等を行ってきた。
今回のシステム改革に伴う本庁から県民局への権限強化では、①グループの設置・改廃や局内定数の配置変更、②定期人事異動時の局長意見の反映と局内の一般職の異動権限、業務補助職員(臨時職員)の任免、③所管地域内の予算要求・執行と主務部への事前協議、局長への一括予算令達や一定範囲内での流用、地域予算の新設などが行われた。また、県民局を部制とし局長の下に各部長を配置したことで局内の統制は強いものとなった。
しかし、現実的には予算の流れは本庁を中心に策定がなされ、各部の全県下統一的な業務についても本課における調整が中心とならざるを得ない。また、本庁と地域機関の各部の連絡調整などについては、従前直接行っていたものをそれぞれが県民局(企画調整部)を通じて行うこととなり、二度手間や屋上屋的な部分が増えたことも否めず、県民局側においても本庁との調整抜きに年度内に定数や人事異動を行えていない現実もある。
以上のようないくつかの課題はあるものの、県民局強化は地方分権の本旨からも大いに賛同をするところである。県民局を中心に管内市町村との連携を強化していくことが、「住民にできる限り近いところで責任を持って行政サービスを行う」ことであり、地域の独自性やニーズに的確に応えることでもある。そういった意味からも現実的に分権型システムの構築に最も近しい手段であるともいえる。今後、各県民局が現状のいくつかの課題を乗り越えて名実ともに地域の総合調整機能を果たせるシステム作りが重要といえる。
(3) グループ制の導入 (資料8)
本庁の組織・機構の再編、県民局の強化に併せて、組織のフラット化を図り意志決定の迅速化と柔軟な組織運営を行うため係制(ライン制)を原則廃止し、グループ制を導入することとした。
しかし、当初グループ構成を7人以上としたことなどから、多くの職場では機能面の議論がないままに単にそれまでの2つの「係」を1グループにまとめたことや、これまで係長や課長が担当者の相談や決裁を組織的に受けていたものを職員個々で責任を持って業務を行うこととしたため、課所内の意志疎通が希薄となった。また、職員各々にグループ制に対する概念や制度の内容が不明確なまま一度に階層を無くしたことで、所属長をはじめグループリーダーにも大きな負担が生じている。このことは、県職労のアンケートでも管理職を含む職員の7割以上が否定的にとらえていることからも明らかであり、現在のグループ制が真に行政組織に馴染むものか疑問のあるところである。
また、平成10年4月のスタート時には組織・機構の再編と重ったことで、職員はもとより県民や市町村、関係団体などにも少なからぬ混乱が生じたことも事実である。
公務部門においても迅速な意志決定や階層のフラット化を行う必要はあると考えるが、そのための手法は熟慮する必要があり、加えて組織内の十分な意志疎通のもとに行うことが重要といえる。
Ⅳ その他の課題と問題点
(1) 行政システム改革は、県職員に止まらず、地域社会システム全般に関わる課題でもあり、市町村や住民から見た評価や問題点を的確に把握し、改善する必要がある。
(2) 財政問題とも連動し、県の行う事業の見直しは重要な課題であるが、セーフティーネットやシビルミニマムの観点から弱者切り捨てとならないような明確な基準が必要である。
(3) 国の行政関与が縮小されることに伴い、県にはその補完的役割が増すこととなり、地域間に行政サービスの著しい格差が生じないよう積極的な支援が必要である。
(4) 三重県の行政システム改革は、その再編過程で職員への周知や問題点把握に努めたものの、結論ありきの感は否めず結果的には知事以下総務部の主導によるトップダウンの改革となっている。そのため職員に閉塞感や何を言っても無駄であるとのあきらめ感があり、ボトムアップの改善を早急に図る必要がある。(これまでの仕事のやり方を否定されたとの想いが強い)
(5) 情報公開は当然必要なものであるが、理念は理解するものの各々が仕事を進める上では不安も多く、とりわけ個人訴訟に対しては組織的な対応や法改正も視野に入れた取り組みを積極的に行っていく必要がある。
(6) 事務事業評価システムなどの行政評価については、県民への説明責任や自らの仕事を見直すツールとしての役割、事務事業をやりっぱなしにすることなく事後評価を行う点などは評価できるが、一方で内部評価に止まることやすべての事業を一元的に評価することが難しく、簡素で効率的なシステムとなるようさらなる改善が求められる。
Ⅴ まとめ
行政システム改革に伴う県民や市町村との関係、組織・機構改革などについて三重県の具体的な方策を中心に課題や問題点などについて触れてきたが、県職労では平成9年4月の行政システム改革に対する総務部の基本的な考え方(http://www.pref.mie.jp/SEIHYO/plan/kaikaku/)が示されて以降、連日にわたり関係部局との度重なる交渉や折衝を繰り返してきた。また、平成10年度のシステム改革実施以降も毎年「行政システム改革に関する全職員アンケート」(資料9)を実施し、新たな行政手法の抱える問題点を指摘するとともに、その改善を行ってきたところである。(資料10)
これまでの取り組みや議論を通じ、住民の最も身近なところで責任を持ったサービスを提供していくために、究極的には市町村を中心とする基礎自治体と国との2層制や、また、その中間的な役割を道州制などに求めることは遠い将来あり得ることかもしれない。しかし、税財源をはじめ先の地方分権一括法においても依然国の権限委譲は私達の望むものからは大きく後退した内容となっている。加えて、2層制の分権システムに不可欠とされる一定規模の基礎自治体の構築についても市町村合併には多くの曲折が予想をされる。
このような状況の中で、現実的な分権型システムを目指していくためには、一定の地域を総括的に捉え、恒常的かつ直接的なサービスを現行の市町村で行いながら、地域の総合的な調整や市町村間の格差などを効率的かつ補完的に行うシステムが有望であるといえる。そのためには、県民局に代表されるような現行の県の地域総合機関が最も効率的で有効な手段であると考える。
しかし、前述したように県民局が抱える課題もまだまだ多く存在をする。課題の多くは県の組織やシステムの問題であり組織内の更なる分権化が求められる。また、一方では、今後の県と市町村との更なる関係強化である。精神論だけでは「対等・協力」な関係は構築されるとは考えられず、お互いに意志の疎通を図りながら権限や財源の委譲を進めることが必要である。いずれにしても、より身近なところで行政サービスが行える体制を目指しながら課題の克服をしていくことが重要であると考える。
三重県資料
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