4  分権時代の現業職場活性化とコミュニティサービス

  大阪市従業員労働組合 三 好   薫

 

1. はじめに
 地方分権の趣旨を踏まえた行政システムの大改革の時代に突入した現在、新たなかつ大胆な発想で自治体改革を推し進める必要があります。
 今日の地方分権時代における行政システム改革は、国からの指示・指導のもとでの従来型の縦割り行政執行ではなく、市民参画を柱に多様な市民ニーズを的確に把握し、市政に反映させることで、より市民の意向に即したサービスを提供できるような業務執行体制を構築することであるといえます。また、市民の視点から業務のありかたをどう考え、どう作り上げていくのかがポイントであり、分権型行政システムを構築していく上での第一歩となるべき取り組みであるといえます。
 大阪市従はこうした社会背景の中で、自治労の提起する現業職場活性化運動を積極的にかつ創造的に推し進めてきました。とくに、前回の自治研集会(米子)で提起した「コミュニティ労働」の創造については、現業労働者のあるべき将来の方向性を示す重要な課題として実践し、取り組みの強化を図ってきたところです。
 現業労働運動の歴史は、行政事業における重要な第一線職場にありながら、賃金・労働条件が非現業に比べて厳しく差別されてきた過程の中での、日々の現業労働者の社会的・身分的な向上と改善闘争であったといえ、さらには現業労働者や労働に対する差別と業務改善、作業環境改善に向けたたたかいであったといえます。
 その伝統を継承しつつ21世紀を展望するとき、その時代、時代の中での社会情勢を的確に捉えた現業労働運動の歴史を見据える必要があるといえます。
 しかし、大阪市従に限らず日本の労働運動全体が歴史的には、労働者の賃上げや労働条件向上を重視してきました。このこと自体間違いではなく、働いた成果に応じた賃金を獲得するさらには、組合員の労働条件の向上を求めていくことは労働組合として当然のことであるといえます。その一方で「労働のあり方」「働きがい」という観点にたつとき、私たちの業務が市民にどう役立つか、市民はどのようなサービスを求めているかなど、市民の側に立った業務のあり方の検討を軽視してきた側面もあったといえます。労働組合として、大胆に自治体改革を進める立場から、こうした運動の不十分性を自己変革とともに真摯に総括することが重要です。
 現在、中央集権から地方分権時代への移行の中で、地方自治体として市民とのパートナーシップをどう作り上げていくのかが問われていますが、その前段として、市民と行政の関係というものをもう一度原点に立ち返って見据える必要があります。
 国が国民を統治していたという戦前の体制、それが戦後「民主主義」になっても残存している側面がありますが、そういった関係を払拭し、それを踏まえた上で新しくどういう関係を作るのかという視点が必要だといえます。要するに、一人ひとりの市民が生活を営んでいく上で、自分一人で解決できない問題を自治体という組織に委託し、その費用は自分たちが税金で納める。自治体はそれを受けて、その財源を使って市民に対して効果的に遅滞なくサービスを提供していく。このことは当たり前といえば当たり前のことですが、現在の行政サービスが本当に市民に役立つサービスを実施しているかどうか、行政サービスの質と内容を真剣に検討していかなければならない時代になってきているといえ、従来の市民苦情を「処理」するという問題解決型から、市民ニーズに応える新しい政策を創っていく政策創造型の自治体に転換することが必要であり、そのことが市民と行政とのパートナーシップ、信頼関係を築くことにもつながると考えるところです。
 また、コミュニティサービスを考えるとき、市民ニーズが多様化している現在、個々の市民がサービスを希望する時間や日、週、季節には違いがあることも当然です。しかし、サービスはストックすることが不可能であることから、定時的な対応のみで応えきれるのか、こうしたことも自治体として真剣に考えるべき時期がきているといえます。さらに、従来型のタテ割行政的なサービスではなく、「ふれあい作業」にみられるごみ収集事業の目的に福祉の役割を加えるサービスや、地域に出向いた相談業務など、事業と事業の横のつながりの中で事業目的を組み合わせて、サービスの質を向上させていく取り組みも必要性が高まっているといえます。

2. 現業職場活性化とコミュニティ労働の概念
 全国の自治体現業職場については、地方行革という形で民間委託などが進み、年々減少し、行革の矢面に立たされている状況は現在でも続いているといえます。こうした現業職場の切り捨ては、行政責任の放棄ばかりか住民に対しての行政サービスの低下をきたすものとして、非常に危惧するところです。
 大阪市においても、こうした状況は変わらないわけであり、大阪市従の運動の中で「現業切り捨て」攻撃に対抗しようと、「自らの意識変革」を含めて86年より「現業管理体制」を多くの議論を経て導入してきました。
 「現業管理体制」は、今までの現業労働は職制からの指示で“与えられた仕事だけをやっていればよい”というような発想から、私たちの業務は地域住民と直接的・密接にかかわる仕事であり、行政の最先端で働く有意性やこれまでの経験を生かし、“私たちの現業職場は私たち現業労働者で担いきる体制を作っていこう”ということから始まり、市民サービスの担い手であるという意識変革とともに多様化する市民ニーズに的確に対応でき得る業務を模索・点検することが現業職場総体の活性化につながるものと認識しながらさまざまな取り組みを進め現在に至っています。
 しかし、依然としてところどころで「お役所仕事」という古い意識は残っており、こうした意識の払拭に向け、組合としても政策理念・政策課題を掲げ取り組みを行っていくことが重要になっています。
 コミュニティ労働の概念については、地方分権時代の行政システムのあり方を考えるとき市民参加なくしてはなりえず、地域に働く第一線労働者として日常作業を通じて、市民とのふれあいの中で、人(市民)と人(行政)との信頼関係を作っていこうというものです。
 また、常に行政の最先端で作業しているという意味では、そこには市民があり地域があるという認識の中で、現業労働者が行政のスポークスマン的な役割、すなわち知識・ノウハウを市民に提供するプロデューサー、コーディネーター、あるいはアドバイザー的な役割を果たしていこうというものです。これまでは、行政サイドがすべて何もかもやりきり、市民にサービスを提供するということが、行政の姿といえました。しかし現在では、NPO活動をはじめ「自分たちも主体的に行動を起こしたい」という市民の声に応えるべきことは当然であり、行政の役割としてそれをサポートし、「公」と「民」をつなぐ「共」の領域のパイプ役的な仕事を新しい業務として位置づけることが必要であるといえます。
 そういった中で自分たちの仕事というものを変えるべきところは大胆に変え、積極的に自分たちの仕事や役割を市民に理解してもらうことが重要であるといえ、そのことを通じて市民のための身近な行政の政策を現業労働者が積極的に企画・立案し提起していくことが必要であると考えます。

3. 現状と課題
 自治省は、97年11月に「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針(新・新行革指針)」の事務次官通知を出し、「給与の適正化」はもちろんのこと「新たな地方行革大綱」の策定を求めてきました。全体的には分権時代の自治体の活性化に逆行する削減・スクラップ、民間委託などが全面に貫かれており、定員・給与についても単なる縮減方法に終始しているなど、自己決定・自己責任という地方分権の趣旨に反した、極めて問題の多いものであるといえます。
 また、行財政改革推進本部は97年からの3年間を集中改革期間として人員削減、給与の切り下げなどを中心に総人件費抑制を強力に推進し、そのもとで規制緩和委員会は99年3月「規制緩和3ヵ年計画の改定」を発表し、新しい手法として議員立法による「PFI推進法」が提案されるなど、自治体現業部門に対する攻撃はこれまで以上に強められようとしています。 
 民間委託とは、自治体の事務や事業の一部を契約によって民間企業などに行わせることですが、本来自治体は正規の職員による事務や事業の執行を行うべきであり、たとえば施設の場合、企画、設置、運営、管理にあたる主体はすべて直営で行うことが望ましいのは当然のことといえます。しかし、自治体の職場の実態として、単に民間委託化反対を唱えているならば、解決する段階ははるかに越えて、さまざまな手法で民間委託が実施されているのが現状であるといえます。
 こうした実態の背景には、直営の問題点として、直営業務が市民にアピールする力を弱めたこと、あるいはコスト論にもとづく民間など財政的問題があげられますが、もともと民間は営利本位であり直営とのコスト論は比較できない要素としてあり、もし「直営は公共サービスだから経費が高くてあたり前」ということであれば、それを裏付けるなんらかの長所、すなわち付加価値をどう市民に説明、アピールするのかなどを積極的に考える時期がきたといえます。このことは、民間委託になった事務や事業自体が自治体の仕事として、不必要になったという意味ではなく、そこでのパイプ役としての民間への指導・監督・管理業務の要員、新たな管理業務の人的・組織的体制づくりが必要になるということにもなります。
 いま、必要な行財政改革は21世紀の日本のあるべき姿を示し、国民生活の安定と質の向上をめざした公共サービスの充実、さらにはそのことを可能とする行政システムの転換を図ることです。
 大阪市においても自治省の圧力や中央の動向いかんに関わらず、地方分権の理念に沿った自主的・主体的な大阪的実情を加味した独自の自治体改革を行うべきであり、そのことが「市民自治」を可能にでき得るものであると考えるところです。
 大阪市は、21世紀を展望したまちづくり15ヵ年計画(総合計画21)を1990年に策定し、その後、人と自然の共生など多様な社会ニーズに対応するため「総合計画21」の中期である96年からの5年間で取り組む主要施策を明らかにした、「中期指針」を96年3月に策定しました。
 また、その施策を推進するための「行財政基本指針」および「行財政改革実施計画」を策定し、4年間が経過し最終年となっています。
 大阪市従は、今回の大阪市の行財政改革は「85行革」の様な単なる事務事業の見直しや効率的運営のみを目的としたものではなく、中期指針の趣旨を尊重した“市民とともに進めるまちづくり”“市民が主役となる行政づくり”など常に市民の視点に立った施策の推進を基本にまちづくりを進めるべきであると主張し、その施策実現を可能とする行政のシステム改革を「今回の行財政改革」と位置づけながら、「中期指針」との整合性を求め、一連のものとして取り組みを展開してきました。
 また、地方分権の時代を迎える中で、行政自らが企画立案能力や政策形成能力を向上させ、行政サービスの質の向上を図るとともに、市民への説明責任を果たしていくことが求められています。具体的には、各局、各職場において、実施している事業が市民ニーズに答えたものになっているのか、社会経済情勢の変化に対応したものになっているのか、行政としての役割を踏まえたものであるのか、という視点で点検されるとともに、各局において、事業評価の結果が政策的観点から分析され、市民と実際に接して事業を行っている職場の意見が反映されて、事業改善のための方策が検討され、創意工夫により改善策を提案・実施し、分権型行政システムを構築していくことです。
 こうした視点から事業評価システムを考えるとき、この事業評価が単なる人員削減や財政支出抑制の手段として使われるといった可能性を残しつつも、消極的な立場でなくむしろ積極的に市民生活に直結する公的役割をもつ現業労働を通じた事業、すなわち事業の特性からも数値に表しきれない行政の役割として欠かすことのできない公的事業や市民サービス(コミュニティ労働)の必然性を行政に評価させていくことが重要です。また、説明責任を果たすことで、より事業の必要性を市民に理解してもらうことも必要であり、このことが単なる合理化の手段として使われる危惧を払拭することにつながるものといえます。

4. コミュニティ労働の実践
 地方分権時代に対応した地方自治の確立が求められていますが、これらは市民の意思が環境問題や人権問題、少子・高齢社会、高度情報化、景気の不安定や社会保障制度問題など社会状況が急速に変化する中で、より身近な「地域社会」を求め、「ものの豊かさからひとの心の豊かさ」へ生活意識が移行してきていることに連動しているといえます。
 こうした時代の要請に対して、「公共部門」「民間部門」それぞれの特徴を生かしたサービスの提供と向上を図る必要がありますが、その中でも公共部門における「役割」を明確にし、自治体事業全体の質を高めることが重要な課題です。
 行政改革においても、その理念・方向性としては単なる人員削減ではなく、市民の参加による「地方自治」をどのように確立していくのかが問われているのであり、同時にそのことを成し遂げられる行政システムの改革をめざすものとして議論されなくてはなりません。  
 とくに、私たち現業労働者の場合は常に地域・市民と接しながら、日々行政の先頭で額に汗し、市民と最も近いところに位置し、市民要望を把握できることから、その役割は非常に重要であるといえます。
 現業労働はその性格上、非常に社会的に見えにくい場合が多いものですが、現業労働の中身や役割を市民にどう受け止められているのか、あるいは自分たちの仕事をどう見てもらうのかということを議論し、 積極的に行政にも市民にも提起していくことが必要であるといえます。
 一方、自分達もコミュニティ労働の担い手であるという認識の中で、地域コミュニティの中で働いているという自覚を持ち、地域コミュニティの中で自分達がどういう位置付けにいるのかということを正確につかんでいく中で、「なぜ直営でなければならないのか」「直営による自治体責任の明確化」などの理論的根拠を明らかにするとともに、自治体現業労働というものを捉え直すべきことは捉え直し、新たに創っていくべきところは大胆に創造していくことが求められています。 また、自治体が、地域・市民のニーズにあったサービスを提供していくには、現業部門が市民の日常的な要望を受け止め、迅速に対応できる体制を確立し、さらに現業労働者が主体となり地域の実情に応じた政策を提起できる体制を確立することが重要です。
 こうした視点のもと、市民のさまざまなニーズに応えきれる責任ある業務執行体制の確立を図るため、現業労働者(現業職場)が主体に業務の企画・立案に参画し、「職の確立」を図っていくことが、コミュニティ労働の質的向上につながるものであり、「多様化する市民ニーズに応える公共サービスとは何なのか」を真剣に考え、市民のニーズとそれに伴う仕事に見合った賃金・労働条件を確立する取り組みが必要といえます。
 現在、大阪市従は「その時代の社会背景の中での的確な運動展開が必要である」という認識のうえに立ち、労使検討委員会での論議を踏まえ、当局確認も行った「現業職員人事・給与制度検討委員会指針」の組織討論を大阪市従組織の「第2次現業職場活性化運動」、さらには新たな現業管理体制確立運動として位置付けながら、現業労働者の将来像を見据えた視点から取り組みの強化を図っているところです。
(別添資料参照)
 私たちは、地方分権時代における地域公共サービスの担い手として、多様化する市民ニーズに応えきれる自治体現業労働をコミュニティ労働と位置付け、現業職場(現業労働者)がもつ豊富な知識・技術・技能・経験等を最大限に発揮することが現業職場の役割であることを肝に銘じ、取り組みの強化を図っています。

5. むすびに
 現業職場活性化の取り組みの主要な課題は、現業労働者が自信と責任をもつことであり、同時に働きがいをもてるのかどうかにかかっているといっても過言ではありません。   
 地方分権の推進を視野に入れ、現在の現業職場の職域にとどまらず、分権自治体改革の視点からの政策提起と政策実現に向けての現業職場の活性化、現業管理体制のさらなる充実が必要であり、そのことを達成し得る組織体制の確立と強化に向けての取り組みが重要になっています。
 「お役所仕事」の担い手から「コミュニティサービス」の担い手へと現業労働者の意識改革はもとより、真の「分権自治体改革」をめざし、自治体行政システムそのものの大胆な改革を成し遂げる運動が必要です。

 

1. より優秀な人材の確保

 地方公共団体において、 市民ニーズを的確に反映し、 地域の実情に応じた施策を自主的・総合的に推進し、 きめ細やかな行政運営を図っていくためには、 自治体職員の果たすべき役割、 責任がこれまでにも増して重要となっている。
 本市においても、 より優秀な人材の確保に向けた取り組みを積極的に図っていく必要がある。
 現業職場においても、 多種多様な市民ニーズに的確に対応するとともに、 より高度で責任ある業務執行を図るうえにおいても、 幅広い観点から、 より能力、 意欲のある人材の確保に向けた取り組みが必要である。

 日本経済の危機が深まり、景気低迷による民間企業の雇用情勢の悪化など、近年公務員採用に対する社会的関心が高まっており、また、今日問われている協働・共生社会に向け女性雇用の促進や障害者雇用の促進が求められる状況となっています。
 一方、自治体現業業務においては多種多様なニーズが高まるなか、高度化・近代化による技術開発や労働内容のめざましい発展と多様化などにより職場改善の推進が図られ、そのことによる技術・技能をはじめとする労働のあらたな評価が求められています。
 これまで、私たち現業職員は、その職種・職域により必要とされる所属(局)において、業務の実態から、その都度所属採用(局採用)を基本に、採用されてきましたが、現業職場において多種多様な市民ニーズに的確に対応するとともに、将来の現業職場の確立とより高度で責任ある業務執行を図るうえにおいても、幅広い人材の確保に向け、今後の職員の採用・雇用のあり方について検討が必要です。

《討論の視点》
 (1) 受験資格についての検討
 (2) 女性雇用の促進
 (3) 障害者雇用の促進
 (4) 採用方法のあり方

2. 職種・職務内容の再編整備

 時代の変遷とともに公務労働のあり方についても大きく変化しており、 本市の現業職場においても、 広範多岐にわたる市民ニーズに的確に対応していくためには、 業務遂行にかかわって、 より高度な技術・技能が要求されるとともに、 広範な業務知識が必要となっている。
 現行制度においては、 現業職員が従事する業務内容をもとに、 職種分類表に基づき職種、 職務内容並びに職種分類を定めているが、 職種名称が今日の時代にそぐわない面も見られるとともに、 個々の業務内容と職種が必ずしも一致しているとは言い難い面も見られる。
 実態調査においても、 103の職務を19職種に分類しているにもかかわらず、 兼務職も含めると150の職務、 50職種に分類されるとともに、 現業職場の活性化等の取り組みにかかわって、 かならずしも業務内容と職種等が一致していない面も見受けられ、 現行制度のまま推移すると、 業務の変革に伴い、 ますます職種・職務内容を細分化し整合性を図る必要があり、 制度上複雑化することが予想される。
 また、 本市においては、 業務のあり方を精査しつつ、 より効率的な業務運営のあり方と現業職場の活性化等の取り組みにより、 現業職員の出向をも含め、 効果的な外郭団体等の活用を図ってきたところである。
 各団体においては、 業務の企画・立案段階から参画し、 多様な観点での責任ある業務執行が必要となり、 今後も業務範疇が拡大することが予想されることから、 既存の現業職員の職域では限定し難い業務に従事することになる。
 よって、 現業職場の 「職の確立」 を図っていく観点からも、 職種・職務内容に拘束される限定的な業務に従事するだけではなく、 幅広い業務に従事することによる豊富な知識、 技術、 技能、 経験をもとに、 行政に参画することが、 行政の質を高め、 より円滑で効果的な行政運営につながることから、 現行職種・職務内容について再編整備を図り、 それに伴う初任給、 格付基準の統合化等に向けた検討が必要であると考えられる。

 市長部局における現業業務の職務・職種の分類は、実態調査において150の職務・50職種に分類されています。
 それは、各支部-所属における「仕事と人の見直し」に関わって役割を終えた業務から新たなニーズが求められる業務への転用・転換の取り組み、また現業職場の活性化による現業職域の拡大を求める各支部・職場での積極的な取り組みの中で、職種・職名・格付けを越えての職域の拡大を進めるという、現業労働の役割と位置付けを高める取り組みの成果もあり、職種分類などの制度整備が後追い的になっている実態です。
 とりわけ、市従における現業職場の活性化は、外郭団体の活用も含めて取り組まれ、過去の現業労働・現業職場の考え方では律しきれない改革・改善が進んでいます。
 これらの状況は、80年代以降における第2臨調をはじめとした「地方行革大綱」や自治省指導の「行革指針」などによる現業職場、現業労働者の公務からの切り捨て攻撃に対して、現業=単純労働(与えられた仕事)ではなく、市民ニーズへの多様な対応や業務内容の質的向上をはかり、施策として企画、立案から維持・管理・運営まで「事業運営」を現業労働者として担いきるという現業活性化の成果の現れです。 
 今後、現業職場における「職の確立」を自己完結するためには、コミュニティ労働を担っていく現業業務の全体のレベルアップ(技術・技能の向上)が必要不可欠であり、現業管理体制の確立・充実が求められます。
 この間、1981年の市従独自課題のたたかいでは職種分類・職務限度など一定の整理を図ってきましたが、今日的状況をふまえ、固定・限定し、細分化した職種・職名のままでは、今後の業務内容にそぐわず矛盾を残したままであると言わざるを得ません。
 こうした矛盾を克服するためには、現業職としてのスペシャリストを育成・活用し、国家試験などによる資格を有する業務や、知識・経験・技術・技能を必要とする業務に対して内なる仕事の評価ができえるシステムを制度化することが必要不可欠であります。
 したがって、将来の現業職場を見据えるならば「現業職」としての一本化にむけ大胆な再編整備が必要であり、具体には、格付基準の統合や、より幅広い業務を担えるような職種・職務への再編整備(職種分類の統合、職種職名の再編整備など)を行うための条件整備をも視野に入れておく必要があり、社会情勢に適応した人事・賃金(給与)システムの確立とあわせ議論を豊富化していきます。

《討論の視点》
 (1) 限定された職務から、幅広い業務を担える職種・職務への再編(職種分類の統合)
 (2) 職種・職名の再編整備
 (3) 現行職種・職務内容の再編整備を図り、それに伴う初任給・格付基準の統合などに向けた検討

3. 人材育成:知識の涵養とより高度な技術・技能の習得

 今日の地方公共団体において、 限られた人材を最大限に活用するためには、 積極的な人材育成と能力開発に向けた取り組みが、 最重点課題となっている。
 本市の現業職員の研修については、 新採用者研修・中堅研修Ⅰ・中堅研修Ⅱ・指導者研修Ⅰ・指導者研修Ⅱの体系的な研修体制の整備がなされたところであるが、 今後研修カリキュラム等の検証を行い、 更なる充実に向け、 その整備を図る必要がある。
 さらに、 現行業務のレベルアップを図るため、 より高度な技術・技能の習得に向けた取り組みが必要であり、 技術・技能研修体制を確立する必要がある。
 技術・技能研修については、 各所属・職場により業務内容が大きく異なり、 全市的な集合研修の手法にはなじみにくいことから、 業務内容に精通し、 広範かつ高度な知識・技術・技能を有する職員自らが研修を企画・立案し、 実践することが、 最も有効で効果的な手法ではないかと考えられる。
 また、 職員研修と技術・技能研修の連携を図り、 総合的な資質の向上と職員の自己研鑽・能力開発に向けた取り組みが必要である。

 現在の現業職員の研修制度については、96年5月の新規採用者研修からスタートをして、指導者研修・中堅研修と実施し、当面する研修体制の整備を図ってきました。
 研修は、人材育成と能力開発にとどまらず、地域を職場とする現業労働の特性を最大限に生かしたコミュニティ労働の実践に向けた基礎的条件整備としても必要不可欠なものです。
 現在、全組合員を対象とした一般的な知識の修得を基礎としながらも、地域市民に信頼され共に創り上げる行政サービスを提供できえるよう、行政の最先端で働く現業労働者が地域の特性を把握し、今日まで積み上げてきた経験を充分いかしながら、より高度な技術・技能の向上をめざすため現業職員自らが責任ある対応として研修の企画・立案を行い、自覚と責任のうえにたって現業労働者の「職域職」として確立していく必要があります。
 そのためには、とくに、実質的に職場の管理・運営を主体的に担える体制の拡充と継続を図り、企画調整担当主任(スタッフ主任)の研修や各支部-職場における専門性や経験・技能を生かした研修の導入をはかり自己研磨を行うことにより現業労働の意識改革とそれに伴う研修システムづくりが必要であります。

《討論の視点》
 (1) 体系的な研修の充実
 (2) 専門研修の導入
 (3) 所属における業務研修体制の確立

4. 社会情勢に適応した安定した人事給与システムの確立

 今日、 人事給与制度は大きな変革期を迎えつつある。 民間企業においては、 経済構造の転換等に伴う厳しい経営環境のもと、 雇用の流動化、 就業意識の変化、 高齢化の進展など諸情勢の変化に対応するため、 人事管理システムの改革が急速に進んでいる。
 また、 国においても、 こうした動向を受け、 公務員制度全般にわたる見直しの検討がなされている。
 本市においても、 職員個々の能力・資質を最大限に活用し、 行政に反映させるためには、 限定的な業務内容に対応した職種分類による格付・給与調整制度等の現行制度について幅広い観点から検討を行い、 本市を取り巻く社会経済情勢等をも視野に入れ、 職員の持つ能力、 資質、 意欲を十分に発揮できる人事給与システムを確立する必要がある。

 民間企業における人事・給与システムは、労務管理を主眼に、成績主義を目的としてコスト削減と業績評価システムとして導入されています。
 一方、公務労働とは、民間企業と違い、コスト第一主義ではなく多様化する市民ニーズを的確に捉え、サービスを公正に提供することであります。
 しかし、自治体現業労働が行政の補助的・補完的業務に収斂するのであれば、その評価基準は、費用対効果の基準でしかなく、委託議論に終結されるといえます。コミュニティ労働は、現業労働者を地域の住民サービスの提供者として、また公務労働の主体として位置付けています。
 このことにより責任ある体制のもと、実践を通じ社会的に現業労働の価値観の向上を制度化するため、現業労働の資格熟練度の評価を行い、将来にわたり安定した現業労働・職場の確立と現業労働者の社会的向上にむけて、有効性を発揮でき得る人事・賃金(給与)システムを創造して行かなくてはなりません。
 今日求めなければならない人事・賃金システムは、①のより優秀な人材の確保と効果的な配置、②の職種・職務内容の再編整備とそれにともなう現業職場・現業労働の評価と確立、③の人材の育成、技術・技能の習得をはじめとする研修制度の充実、などが有機的に連携することによって、組合員の持つ技術・技能・能力が充分日常業務のなかで発揮でき、また、職場の持つ総合的な連携のもとでの体制が効果的に推進されるが、行政サービス・市民サービスを高めることにつながり、現業労働の役割と責任の明確な評価として位置付けられなければなりません。
 このことを実践するためには、現業管理体制下における自覚と責任を明確化し、その評価システムを構築することによる「現業職域職」の確立と同時に、行政内での資格・熟練度の内部評価制度の確立を行うことによる内的な矛盾点の克服と地域市民が行政に求める安心・安全性などを確保するための現業労働の役割が極めて重要であります。
 現業職としての「職の確立」を図り、地域市民に開かれた、より透明性と公平性のある行政サービスを提供するための条件整備が必要であります。具体には、豊富な知識、技術、技能、経験をもとに、より幅広い業務を担えるよう、現行職種・職務内容について再編整備を図り、それに伴う初任給、格付基準などに向けた検討や人事交流の検討など人事・賃金(給与)システムを現業労働者自らの大胆な発想で構築させなければなりません。

《討論の視点》
 (1) 現業管理体制の評価にともなう人事・賃金(給与)システムの検討
 (2) 資格・熟練度(内部資格制度の確立)の評価にともなう人事・賃金(給与)システムの検討
 (3) 現行職種・職務内容の再編整備を図り、それに伴う初任給・格付基準などの統合などに向けた検討

5. より効果的な業務執行体制の構築

 本市現業職場の業務執行体制については、 昭和61年の現業管理体制発足以降、 現業職員が主体的かつ責任のある立場で業務に従事するとともに、 その充実・強化に向けた取り組みを図ってきたところである。
 しかしながら、 時代の変遷とともに現業職場を取り巻く状況、 業務内容が大きく変化していることを鑑み、 新たな現業管理体制のあり方を視野に入れ、 時代に即したより実効性のある業務執行体制の構築を図る必要がある。

 1986年に発足した現業管理体制は、従前の給与上の処遇を目的とした主任制度から現業職員が主体的かつ責任を持って業務を行う体制に転換したことに大きな意義を持ち、13年を経過した今日、なお目的・意識的に強化・発展に向けた取り組みが続けられていることに、評価を見いだし、現業職場の活性化を進めるためにも必要な体制となっています。
 そのためにも、社会経済情勢、行政ニーズの変化、市民ニーズの多様化など、情勢・状況の変化に柔軟かつ的確に対応できる体制への改善も、日常不断に進めなければなりません。
 現業労働は、現業(現場)活性化を提起し、今日まで実践してきましたが新たな現業管理体制(第2次現業(職場)活性化)とは、自立した自主管理体制のもと、現業労働者が自覚と責任をもって働きがいを見いだし、地域住民の視点に立った「コミュニティ労働」の推進主体として機能し、4層制の確立、積極的な人材の登用、企画調整担当主任(スタッフ主任)の配置などの体制を確立することであり、まさに現業労働の「職の確立」を図ることであります。さらに、長期的展望を見いだすためには「任用などのあり方」をも視野に入れた研究・検討を行います。

《討論の視点》
 (1) 「職の確立」を実行できる現業管理体制のライン(指揮命令系統)などの再整備
 (2) 企画調整担当主任(スタッフ主任)の配置と活用
 (3) 現業管理体制の政策能力の強化(市民要望の把握・他部局間の現業職場の交流連携)

6. 効果的な人事交流の実施

 現業職場において、 責任ある業務執行体制を確立して行くためには、 より広い観点での業務知識、 技術、 技能、 経験による業務遂行とともに、 職員の能力・意欲を最大限に発揮でき得る人事システムの確立が必要である。
 よって、 現業職員についても、 その業務内容を十分に精査し、 効果的な人事交流を実施することにより、 職員の資質等に基づく適材適所への配置と、 より広い範囲での知識の涵養を図ることが、 職員の能力・意欲を最大限に発揮でき得る条件整備となり、 職員並びに組織の活性化に向けた取り組みとなる。

 先に述べた人事・賃金(給与)システムを実効的なものとする要素に、個々人が持つ知識・技術・技能・経験の組織的な共有化が重要となります。
 コミュニティ労働を全市的に全ての職場で実践するためには、仕事に対する目的意識、地域・職場での経験・交流を通して、地域実践に応じた市民ニーズの把握と行政サービスの向上に向けた取り組みが重要となります。
 さらに、人材の育成と活用は、安定した現業職場をつくり、技術・技能を高め、現業労働者の基礎的な力量を高めることにもつながります。
 今後、市民ニーズが多様化する中、現業職場活性化としての「職の確立」や「直営の完結」に向けた、より幅と厚みのある人事交流が必要不可欠であり、とくに、現業管理体制が、現業職場の自主的な管理運営の機能を担う上でも、計画的・効果的な人事交流の実施が必要であるといえます。

《討論の視点》
 (1) 人事交流の範囲
 (2) 人事交流の方法

7. 自治体職員としての役割と責任の明確化

 自治体職員としての役割と責任を認識し、 常に全力をあげて職務の遂行に専念するとともに、 現業職場の業務の変化に伴い、 業務遂行に関する責任はもとより、 現業管理体制における、 各主任の役割と責任をより一層明確化し、 管理監督する立場である者としての自覚と責任ある業務執行体制の確立を図る必要がある。

 多様化する市民ニーズに対して「公共部門」「民間部門」それぞれの特徴を生かしたサービスの提供と向上を図る必要がありますが、その中でも公共部門における「役割」を明確にし、自治体事業全体の質を高めることが重要な課題です。特に、現業労働者の場合は、常に市民と接し、市民要望を把握できることから、その役割は非常に重要であるといえます。
 現業管理体制の確立と強化をおこなうことにより、その役割と責任ある執行体制の確立が求められることになります。
 現業職場の自主的な管理・運営は、そのことに付随する責任を有することであり、「管理監督責任」も含めて検討して行く必要があります。

《討論の視点》
 (1) 現業管理体制の役割と責任の明確化

8. 職務に即した名称のあり方

 いわゆる 「単純労務職員」 の名称については、 地方公務員法第57条及び地方公営企業労働関係法附則第5項等により定められているものである。
 しかしながら、 本市においては、 いわゆる 「単純労務職員」 の名称については法的な用語として使用されているにとどまり、 「単純な労務に雇用される職員の給料表に関する規則」 による 「技能労務職」、 「職種区分規定」 による 「2号職員」、 「初任給基準表」 による 「技能職員」、 現場作業に従事する職員の総称としての 「現業職員」 等さまざまな呼称が使用されている。
 今日の本市における現業職員が担う役割、 時代とともに変革する業務内容を勘案し、 職務に即した名称のあり方について検討する必要がある。

 自治体現業労働者の法的な整備と名称についての検討は、地方公務員制度調査研究会の「報告」で、「単純労務職員のあり方に関わる総合的検討」として、職員の概念や法制度上の特例のあり方、その呼称等の総合的検討が明記されました。
 法整備を含め、全般的な動きについては、注視しながらも、市従としての今日までの協議経過を踏まえ、業務内容とその役割を示した名称の検討を行うこととします。