1. 部落解放共闘大分県民会議の結成と活動
(1) 「部落解放共闘大分県民会議」結成に至る経過
1992年9月28日に大分県評センター第4回定期総会が開催され、県評センターの解散方針が提起された。これに伴い、県評センターと部落解放同盟大分県連合会が中心となって組織されていた『部落解放大分県共闘会議』から連合大分に対し、新たな共闘組織の結成要請がなされた。
連合大分は、第17回執行委員会(92.11.9)で、部落解放大分県共闘会議からの要請内容を踏まえ、新たに『部落解放共闘大分県民会議(仮称)』の結成を行うことと、そのための「結成準備委員会」を設置をすることを確認した。また、部落解放同盟大分県連合会も、第2回県委員会で同様の方針を決定した。
第1回結成準備委員会は1992年11月13日に開催し、12月17日に結成総会を予定し、それに向けて具体的な準備をすすめた。
準備委員会の構成は、次の通りである。
準備委員会の構成
準備委員長 |
新 谷・連合大分会長(情報労連) |
副委員長 |
山 崎・解放同盟県連委員長
国 清・連合大分会長代行(全逓) |
事務局長 |
齊 藤・連合大分事務局長(鉄鋼労連) |
事務局次長 |
清 田・解放同盟県連書記長
安 東・連合大分副事務局長 |
委 員 |
山 本・解放同盟県連財務委員長
高 洲・解放同盟県連執行委員
松本(初)・解放同盟県連執行委員
西 川・解放同盟県連執行委員
松本(ま)・解放同盟県連執行委員
江 藤・連合大分副会長(自治労)
藤 元・連合大分副会長(鉄鋼労連)
吉 岡・連合大分副事務局長(電力総連)
後 藤・連合大分副事務局長(日教組)
木 部・連合大分副事務局長(情報労連) |
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部落解放共闘大分県民会議の結成総会は、予定通り1992年12月17日に、大分県総合社会福祉会館(大分市大津町)で開催し、「結成に至る経過の承認」と「会則」「基本方針並びに活動方針」「予算」等を決定、最後に新谷高己議長(連合大分会長)をはじめとする新役員が選出された。
これを機に、民労協・友愛会議も部落解放運動に参加した。
結 成 総 会 ア ピ ー ル
人権擁護と差別をなくす取り組みの輪は大きく広がってきました。
「同対審答申」以来、27年が経過し、今春には「地対財特法」が改正され、引き続き具体化に向けた取り組みがすすめられています。
しかしながら、国内外をはじめ県内においても依然として各種の差別事象が発生しています。そのため、政治的、経済的、社会的に弱い立場に置かれ、様々な差別と人権侵害を受けている人びとの運動は、今や反差別・人権確立をめざすすべての仲間との連帯を強化しながら、世界的な規模での「反差別国際運動」としての取り組みが強く求められています。
私たちは、「部落の解放なくして労働者の解放なし」「労働者の解放なくして部落の解放なし」をスローガンに、あらゆる差別をなくし、人権の確立をめざした取り組みを進めます。
そのため、あらたな「部落解放共闘大分県民会議」の結成を機に、真に公正で民主的な、そして平和な社会の実現に向けて全力で運動を進めていくことを宣言します。
1992年12月17日
部落解放共闘大分県民会議結成総会
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結 成 総
会(92.12.17)写真
(2) 地区共闘会議の結成と活動
県民会議運動の発展のためには、県下各地域での活動が重要であるため、翌年より連合大分の11地協・3地区協で地区共闘会議結成に取り組んだ結果、1993年10月から1997年6月にかけ、連合地協単位に10の地区共闘会議が結成された。
各地区共闘会議の活動内容は、年1回の総会・学習会開催、県民会議からの要請事項などに積極的に応えている。
今後は、大分市、佐伯市、大分郡での地区共闘会議結成が重要課題である。
結成された地区共闘会議名・結成年月日は次のとおり。
県下10地域で共闘会議を結成
<結成年月日> |
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1993年 |
10月1日 |
部落解放共闘臼津市民会議 |
1994年 |
9月28日 |
部落解放共闘西高市民会議 |
9月30日 |
部落解放共闘日田市民会議 |
1995年 |
2月28日 |
部落解放共闘中津下毛地区会議 |
8月3日 |
部落解放共闘玖珠地区会議 |
11月10日 |
部落解放共闘大野郡民会議 |
11月10日 |
部落解放共闘竹田直入地区会議 |
1996年 |
7月13日 |
部落解放共闘別府杵築速見地区会議 |
7月17日 |
部落解放共闘宇佐地区会議 |
1997年 |
6月4日 |
部落解放共闘国東地区会議 |
(3) 主要課題と取り組み
① 部落解放共闘大分県民会議の運営の基本は、常任幹事会および幹事会で行い、必要の都度学習会など開いている。
② 部落解放「基本法制定」の取り組みについては、県民会議としても早期の制定に向け、県への要請行動、各自治体への部落差別撤廃宣言採択や条例の制定を求める行動をすすめ、各地域で多くの成果をあげた。
現在の「宣言採択」は、大分県をはじめ県下58全市町村で、「条例制定」は、27自治体で実現している。
③ 狭山第2次再審闘争(無罪を求めるたたかい)の取り組みは13年余に及び、1993年に大分県民会議として独自に狭山現地調査を行い、1995年と1999年には「石川一雄」さん本人を迎えての学習会を開催、さらに事実調べを求める署名行動など、長期にわたり、「狭山闘争」を広く理解してもらうための取り組みをすすめてきた。
しかし、東京高裁は、1999年7月8日に抜き打ち的再審請求の棄却を決定。弁護団は、7月12日に東京高裁に対し異議申し立を行い、異議審闘争スタートさせており、今後のたたかいがさらに重要となる。
99年度学習会(99.9.14)写真
④ 人権教育のための国連10年「大分県行動計画」の策定については、県民会議は1997年4月22日に「人権教育のための国連10年大分県推進連絡会」を結成。大分県は、1997年10月に「大分県推進本部」を、同年12月に「人権教育推進懇話会」を設置した。
県民会議は大分県推進連絡会から、人権教育推進懇話会に3名の委員を送り、取り組みの強化に努めてきた。そして、1998年3月に至り、大分県「行動計画」が策定された。これは、全国で3番目のことである。以降は、この具体化と各市町村ごとの「行動計画」早期策定を求め、各地域で取り組みの強化を図った。
⑤ 部落解放共闘大分県民会議としての学習会
県民会議は結成以来、年度ごとの重要課題をテーマに、中央から講師を招いて年1回400人規模の学習会を開いてきた。
(4) 部落解放共闘九州ブロック県民会議の結成
懸案であった、「九州ブロック県民会議」は、1997年2月28日に福岡市で結成され、初代議長に藤元宏紀大分県民会議議長(連合大分会長)が就任した。
九州ブロック県民会議結成総会(97.2.28)写真
2. 連合大分の政策・制度改善闘争
連合大分は、部落解放共闘大分県民会議の取り組みを行うにあたり、連合の政策制度要求の一つとして、「人権擁護施策に関する要求」を重点課題としてきた。
99連合大分の制度政策要求(人権擁護政策について)
1. 「部落解放基本法」制定の取り組みに対し、県としても引き続き中央に強い働きかけを行うこと。
また、7月下旬に人権擁護推進審議会が「人権教育・啓発」に関する「最終答申」を出すこととなっており、この趣旨に基づいた対応を積極的に行うこと。
2. 県内の差別事件の実態を踏まえ、「同和」問題についての正しい理解と認識を深めるために、より一層の教育・啓発活動の推進に努めること。
また、必要な予算措置を講じること。
3. 「人権教育のための国連10年」に関する取り組みについては、国内・県内行動計画内容を広く県民に周知すること。
また、各市町村の「行動計画」策定にあたっては進捗状況を把握し、県としての対応の強化を図ること。
なお、必要な教材・カリキュラムなどの作成と予算措置を行うこと。
4. 機会をとらえ、マスメディア等を活用した人材教育・啓発事業の充実を図ること。
5. 国連人権規約をはじめとする日本が締結した人権諸条約の普及・宣伝を強化すること。
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政策・制度に関わる改善要請と提言活動については、従来より各構成組織、地協、高退連、労福協、解放同盟、青年・女性委員会等各労働団体からの要請活動の連合大分への集約化と合わせ、連合の掲げる「ゆとり、豊かさ、社会的公正」の実現に向け、要請時期のルール化、交渉や折衝先の拡大を図りつつ、具体的な活動を展開した。
要請の時期については、県としての次年度予算編成に向けた検討が始まる前の「当初予算編成に関する要請活動」と春季闘争時期にスポットを当てた「春季要請活動」とし、交渉や折衝先についても県をはじめ県教委、労働基準局、経営者5団体とその拡大に努めてきた。とりわけ、対県要請における3日間の各部局長交渉は連合大分発足時より取り組んでおり、全国的にも早いスタートであった。連合大分議員懇と連携し実現できた産別・地協要求もたくさんあり、目に見える連合大分の運動に発展している。
また、連合大分としての改善要請と提言内容については、連合本部から提起されている16の政策課題を基本としつつ、より地域、職場、家庭に密着した政策づくりのためにも、90年より秋の要請活動においては「1産別1要求、1地協1要求」をスローガンに、地協と一体となって県下の市町村に対する要請活動を展開している。
一方、我々の掲げる「政策・制度要求と提言」への意思結集を図るため、連合本部、九州ブロックの「討論集会」への積極的な参加とともに連合大分でも独自の「討論集会」や「時短フォーラム」など各種集会、シンポジウム、学習会等の開催、署名、街宣活動、必要な議会対策についても加盟産別と一体となった精力的な取り組みを展開してきた。さらには、経営者協会との定期協議開催等幅広く取り組んでいる。
これらの活動が、議員懇と連携した県・市町村議会での各種意見請願、決議の採択、各種審議会や委員会の設置、政労使の対策会議等につながってきたところである。
連合大分としては、今後も真に勤労者・生活者の立場に立った「公正な社会」を確立していくために、構成組織、連合本部
― 地方連合 ―
地協の連携のもとで政策・制度改善の取り組みを一層強化していく必要を確認している。
3. 連合大分議員懇談会の結成
1995年4月の第13回統一自治体選挙において、連合大分は初めて「県議会議員選挙における連合大分支援基準」を確認し、大分郡選挙区での支援候補のたたかいを行った。また同時に、各構成組織の抱える候補についても「加盟組織推薦候補」として、地方選挙における連合大分の対応が前進したことから、これら自治体議員との日常的な活動の連携が強まることとなった。
そのため、気運が熟するかのように、1995年12月26日、大分県労働福祉会館6階大ホールにおいて、連合大分議員懇談会(議員懇)の結成総会が開かれ、「政策制度の実現」や「連合大分との連携強化」などの活動計画を決定した。
この議員懇は、「平和・自由・民生・人権」を基本に、国民一人ひとりが、ゆとり、豊かさを実感できる社会をめざす連合の運動に賛同し、議会活動を通して具体的な課題を実現するため、「連合大分構成組織内議員と連合の運動に賛同する議員とを結集した会」とされている。
スタート時の会員は、産別の組織内議員約90人で、役員には連合大分副会長(3名)、事務局長が四役に入り、運動をサポートすることとなった。
4. 「条例」「宣言」に関する地域共闘の取り組み
1994年2月28日に開催された部落解放共闘大分県民会議第2回定期総会において、地域共闘会議結成に向けての取り組みを確認した。
地区共闘会議の結成は、県下12地区にある連合大分の地協組織と部落解放同盟の地区組織が中心となり、1995年までに7地区で結成され、1996年に2地区、1997年に1地区の結成が行われ、現在に至っている。
一方、連合大分の政策制度要求の実現をめざす各地協の取り組みも年々強化され、1995年12月に各級地方議員で構成する連合大分議員懇談会(約90名)が発足し、「政策制度の実現」や「連合大分との連携強化」などの活動計画が決定された。各市町村に対する要請行動は、春季の要請と予算編成時の要請があり、自治体議会に対しては年4回の議会開催時の要請がなされている。
大分県下の58市町村議会における部落差別撤廃・人権擁護「宣言」は、1993年3月議会から1995年9月議会までに33市町村議会で採択されていたが、その後進展が見られなかった。県民会議としては、部落解放同盟大分県連の取り組みと平行して、連合各地協に対して連合大分議員懇と連携し、1996年6月の地方議会において、「条例」制定、「宣言」採択の取り組みを行うよう要請した。
この取り組みでは新たに4自治体で「条例」制定、2自治体議会で「宣言」採択が実現し、以降、連合の制度政策要求として各自治体への要請行動が行われ、1999年3月までにすべての自治体議会で「宣言」採択が実現した。
また、「条例」制定市町村は、現在まで27市町村となっており、各年度における実現数は次のとおりである。
各年度における実現数
また、これらの地域共闘の取り組みによって、「狭山事件を考える日田地域住民の会」が1999年1月に大分県で初めて結成され、2000年2月に「大野郡民の会」、5月に「臼津市民の会」が結成された。
(参 考)
部落解放共闘大分県民会議会則
第1条(名 称) |
この会議は部落解放共闘大分県民会議(略称「解放共闘県民会議」)と称する。 |
第2条(事務局) |
この会議の事務局を大分市中央町4丁目2番5号ソレイユ6階「連合大分」内におく。 |
第3条(目 的) |
この会議は、平和・人権・民主主義を基本に、労働者をはじめ全ての県民の課題として被差別部落の完全解放を中心に広く人権を確立することを目的とする。そのため、国および地方自治体の責務である「同対審」答申完全実施実現、ならびに「部落解放基本法制定」とその具体化を目指すものとする。 |
第4条(活 動) |
この会議は前記の目的を達成するため、具体的な運動を推進するとともに、解放運動に関する研究・学習・教宣活動等を積極的に推進する。 |
第5条(構 成) |
この会議の構成は連合大分と部落解放同盟大分県連合会、及びこの会議の目的に賛同する労働組合、民主団体等をもって構成する。 |
第6条(機 関) |
① この会議の機関として総会と幹事会をおく。総会はこの会議の最高の決議機関であり、毎年11月に開催する。また、必要に応じて臨時会議を開催することができる。総会は議長が招集し、その構成は別に定める代議員と役員とする。
② 幹事会はこの会議の執行機関であり、総会で選出された役員で構成し、必要に応じ議長が招集する。
③ 総会、及び幹事会で決定した方針に基づいて日常の運営等について協議するため幹事会の中に常任幹事を設ける。常任幹事は、総会で選出する。常任幹事会は、議長、事務局長、事務局次長、常任幹事で構成し、必要に応じ議長が招集する。
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第7条(役 員) |
この会議に次の役員をおく。役員は総会で選出し、任期は1年とする。ただし、再選は妨げない。
議 長 1名 副議長 若干名 事務局長 1名
事務局次長 若干名 常任幹事 若干名 幹 事 若干名
会計監査 2名
この会議に総会の承認をえて顧問をおくことができる。 |
第8条(財 政) |
① この会議の会計は会費・カンパその他で賄うものとする。会費は別に定める。
② 日常の会計事務は解放共闘県民会議の事務局で行う。
③ 会計年度は毎年10月1日に始まり翌年の9月30日をもって終わるものとする。
④ 会計報告はすべての収支の費目及び金額、主要な寄附者、氏名ならびに経理の現況を明らかにして年度末に会計監査を受け、その結果報告書を公表し、総会の承認を受けなければならない。
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第9条(その他) |
この会議の具体的な運営、活動に必要なことは幹事会、及び常任幹事会でその都度決定する。 |
第10条(附 則) |
この会則は1994年3月1日から施行する。会則の改廃は総会において行う。 |
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『講演・学習会等の記録』
1992年12月17日 結成総会
記念講演 「部落解放運動の課題と展望」
講 師 大分県立芸術文化短期大学
教授 小 森 哲 郎 氏
1994年8月19日 94年度学習会
記念講演 「部落解放運動の現状と課題」
講 師 部落解放研究所 中 村 清 二 氏
1994年12月14日 第3回定期総会
記念講演 「部落の歴史に学ぶ(部落の形成と統制、そして解放を求めて)」
講 師 大分県部落史研究会
事務局長 一法師 英 昭 氏
1995年5月22~23日 部落解放共闘大分県民会議『狭山現地調査』の実施
参加者62人(連合18人、解放同盟5人、県同教39人)
1995年8月30日 95年度学習会
講 演 「総務庁実態調査の県内分析」
講 師 大分県立芸術文化短期大学
助教授 吉 良 伸 一 氏
講 演 「部落解放運動の現状と課題」
講 師 部落解放同盟中央本部
執行委員 組 坂 繁 之 氏
報 告 「狭山再審闘争の現状報告」
石 川 一 雄 氏
1996年8月30日 96年度学習会
講 演 「部落解放基本法の制定について」
講 師 部落解放同盟中央本部
財務委員長 羽 音 豊 氏
1996年12月18日 第5回定期総会
記念講演 「大分県部落史とその特徴」
講 師 大分大学教育学部(大分県部落史研究会副会長)
教授 豊 田 寛 三 氏
1997年4月22日 人権教育のための国連10年推進大分県連絡会結成集会
基調講演 「人権教育のための国連10年」の意義と同和教育
講 師 全国同和教育研究協議会
委員長 寺 澤 亮 一 氏
記念講演 「部落差別をはじめとするさまざまな思い違いからの解放」
講 師 曹洞宗円通院
住職 狩 野 俊 猷 氏
1997年12月16日 第6回定期総会
記念講演 「部落史の再発見
― 大分の部落史から」
講 師 大分県部落史研究会
事務局長 一法師 英 昭 氏
1998年10月21日 98年度学習会
講 演 「部落解放運動の現状と課題」
講 師 部落解放同盟中央本部
執行委員長 組 坂 繁 之 氏
1998年12月14日 第7回定期総会
記念講演 「世界人権宣言と日本の課題」
講 師 大阪市立大学名誉教授:部落解放・人権研究所
理事長 村 越 末 男 氏
1999年9月14日 99年度学習会
講 演 「狭山第二次再審棄却決定批判と異議審闘争課題」
講 師 部落解放同盟中央本部
執行委員 安 田 聡 氏
(石川一雄さん参加)
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