1. はじめに
私たち自治労白老町職員労働組合は組合結成以来、労働組合としての地域との関わり、自治労運動を地域の中でどのように展開してよいか執行部で議論してきました。
単に地域の中で単純な労力奉仕をするのか、労働組合である白老町職が主体となって地域住民と連携した活動をどうなすべきなのか、あらゆる角度から意見が出されました。
この結果、失敗を恐れず積極的に地域の中に労働組合として出ていこうという結論になりました。
2. どさん子夏祭りへの参加
上記のような組合内部の論議を深めているとき、庁舎所在地区をメイン会場にし、庁舎正面の町道などでも様々なイベントが組まれている白老町の夏祭りを代表する「白老どさん子祭り」に参加をしてはどうかということになりました。
91年8月、イベントヘの参加については「手伝う人も楽しく、参加する人も楽しい」イベントでなければならないとの組合員の声を受け、自分たちが自ら企画し、運営し、更に地域との関わりを深めようとの「白老どさん子祭り」に参加することとなりました。
夏祭りのメイン会場の近くとはいえ、人通りも少なく、盛り上がりに欠ける役場庁舎正面の広場を利用し、子ども達が喜んでもらえることをという考えで、ゲームを主体としたちびっ子イベント広場を開くことになりました。
当初、「役場職員」がイベントを主催し運営することに町の人達も冷ややかな目で見ていたこともありましたが、青年女性部を中心とした組合員は一生懸命取り組みました。
このような若さと熱血漢に燃えた取り組みが回を重ねるごとに祭りの地元地区の人たちだけではなく、多くの町民から理解と称賛をうけ、3年間にわたり取り組みが続けられました。
しかし、私達が「手伝う人も楽しく、参加する人も楽しく」を基本としていたことが、一部祭りの地元住民に理解されない事態が起きてきました。
若い組合員を動員し、祭りを運営するに当り、自分達自身が祭りの雰囲気で楽しんでいることが、地元商店街の関係者から「役場の職員が酒を飲んで露店をやって金もうけしている」との声が上がりました。
私たちが身銭である組合費を使い、地域還元として地域の子ども達に喜びを与え、組合員親睦を図ることが、商業主義に走ることだけを主眼としている人達に全く理解されない状況に陥り、執行部との祭り関係者とのトラブルに至りました。
これを契機に「白老どさん子祭り」への取り組みは一定の成果を上げたものとし終了することとし、新たな取り組みについて論議をすることとなりました。
3. 白老牛肉まつりへの取り組み
「白老どさん子祭り」への取り組みは組合としては予想もしない方向性で終了することになってしまいました。
今後、組合としてイベント行事に取り組むのか否か、また、地域との関わりをどう整理していくのかといった論議が組合内部でなされました。
その結果、当初の目的どおり、失敗を恐れずに積極的に地域の中に入って行こう、地域でがんばっている人たちを応援しようじゃないかということになりました。
そんな時、白老町農協青年部が主体となって開催される「白老牛肉まつり」を応援してはとの声が組合員から上がり、どのように関わっていくかを論議しました。
「白老牛肉まつり」は今年12回目の開催を迎え、白老牛のブランドを世に広めるために大きな役割を果たしています。
しかし、組合がこのイベントに取り組みを検討した93年頃は、まだその歴史も浅く集客力にも今1つのところもあり、組合としても農協の青年部を積極的に応接しようということになりました。
4. 白老の黒毛和牛
「白老牛肉まつり」を語るためには、白老町の農業と島根から導入された黒毛和牛の話をしなければなりません。
白老町の土壌は火山灰質で土地の生産力が低く、6月から7月にかけて海霧が発生し、気温も低く、水田、畑作には適していません。
このため、戦前から農業生産の主体は畜産でした。戦前は馬産が盛んでしたが、戦後は馬の需要が無くなり、当時の白老村理事者は農業の実態から肉牛の導入を進めていました。
このような状況で、昭和29年、肉牛として最も優れている「島根和牛」の導入を図ることになり、同年10月北海道に初めて44頭が白老にやってきました。
その後、島根県から技術者を招き、草地造成、肥育技術の普及、人工授精による優良素牛の生産及び繁殖牛の改良に努め、農家経営の安定を目指して肉牛生産が行われてきました。
99年度における肉牛の出荷頭数・出荷額は素牛773頭、肥育牛133頭、老廃牛179頭、合計1,085頭で金額的には3億6千7百万円となっています。
5. 白老牛肉まつりとは
このように黒毛和牛を生産し、農家経営の安定を図るためには「白老牛」ブランドの確立と消費拡大を図らなければなりません。
白老町では黒毛和牛を生産から肥育まで、良質な肉牛の一貫生産体制づくりに取り組んでおり、このことを消費者にアピールするため農協青年部が実行員会を組織して「白老牛肉まつり」を初めて開催したのは1988年6月のことでした。
今でこそ、祭りの予算額が2千2百万円を越え、3万2千人を越える来場者となる大きな祭りとなりましたが、最初の頃はまだささやかな祭りでした。
祭りそのものは、肉部門(白老牛の直販・牛の丸焼き・ステーキ、ハンバーグの販売・牛汁の販売)とイベント部門(99年はカウボーイトライアスロン・牧草投げ大会・牛肉早食い競争など)とにより構成され、年々人気が高まり、白老町を代表する「産業まつり」に成長しました。
6. 白老牛肉まつりにおける白老町職の役割
白老牛肉祭りは白老町農協の青年部7名のグループで始まりました。当然彼らだけでは運営できるものでなく、農協や行政に協カを依頼する年が続いていました。
白老町職はこのような少数の農家の青年が自主運営している姿を見て、また、当時の自治研論議を踏まえ、微力ながら協力できるものと判断し94年から現在まで毎年、協カしています。
牛肉祭りのおけるイベントのお手伝いは実行委員会段階から参加し、来場者がすべて楽しめる祭りをつくるために意見を述べております。
その中で、白老町職が単独で企画し、運営するイベントを2日間の祭りの中にどこかで組み込むことが求められました。
牛肉祭りに来場した人が誰でもが参加できること、そしてなんと言っても参加する人も、イベントを運営する人も、誰もが楽しいこと、それが私たちの行うイベントのコンセプトでした。
イベントは、94・95年にはサッカーのPK合戦、96・97・98年にはバスケットのフリースローゲーム、99年にパーグゴルフのホールインワンゲームを開催してきました。
イベントに参加した人たちのためには、牛肉券はもとより白老の特産物でもある卵や椎茸、そのほか障害児を援助する親たちの会が作るお菓子を用意するなど、白老名産の売り込みを考えて豪華景品を多数用意しました。
このため、毎年この祭りに参加する町民や観光客は豪華景品を持ち帰ろうと500人を越す人達が長い行列をつくって白老町職が主催するイベントに参加しています。
これらのイベントの運営経費(景品・動員費)はすべて白老町職の持ち出しで、毎年、約25万円が自治研活動推進費として予算計上され支出されております。
7. 自分たちも楽しもう
さて、白老町職ではイベントヘの参加については「手伝う人も楽しく、参加する人も楽しく」をモットーとしています。
イベントのお手伝いをしたり、イベントそのものに参加したりする組合員や家族は「白老牛肉まつり」を楽しむことはできますが、もっとより多くの組合員とその家族にこの祭りを楽しんでもらうとともに、祭りそのものをもっと盛大にしようと、この祭りに併せ組合員とその家族のために、組合としての福利厚生事業を計画しました。
この福利厚生事業は約60万円をかけ牛肉まつりの会場内で、会場に来た組合員とその家族が牛肉が食べることが出きるよう無料の牛肉券を配布することです。
組合員の家族全員に無料の牛肉券を配布する事業のため、毎年600名を超える家族がイベント会場に来ることになり、地元住民のイベント参加にも一役を担っております。
まさに、組合員家族への福利厚生対策とイベントヘの動員効果を兼ねた事業だと考えています。
8. まとめ
このように白老町職のイベント参加は農協青年部をはじめとする実行委員会から行政の一員を超えた取り組みとして高く評価されております。
既に恒例化し、毎年欠かすことの出来ない白老町職のイベントとして定着してきています。
また、イベント参加へのマンネリをなくすためにも、この取り組み以外にできるものはないかと、論議し、白老町以外でのイベントキャラバンをすることとしました。
第一段としてJR札幌駅構内で「白老牛肉まつり」のキャラバンを決行しました。はっぴ姿やヌイグルミで白老牛のPRをすることで、白老牛のイメージアップと集客の拡大を目的に組合員50名ほどがチラシ配りに汗を流しました。
第二段は苫小牧駅前で同様のキャラバンを実施してきました。
農協青年部は人数も少なく、今後、大幅に部員が増えることも期待できなく、「白老牛肉まつり」をより盛大なものにするためには、白老町職のこのような取り組みを続けていくことが期待されています。
自治労運動を地域の中で展開するため、また、白老町職が地域に定着した活動を展開していくためにも、今後も継続した「白老牛肉まつり」への取り組みを行っていきます。
「白老牛肉まつり」PRチラシ |