鶴岡市における財政分析と市職労の取り組み

山形県本部/鶴岡市職員労働組合

 

1. 決算規模

 平成10年度普通会計の総計決算額は、
  歳 入  391億4,086万2千円(前年度361億3,463万6千円)
  歳 出  376億8,081万9千円(前年度351億1,350万1千円)
となり、この決算額を前年度と比べると、歳入(8.3%)、歳出(7.3%)の増となっている。また、歳入歳出差引額(形式収支)は14億6,004万3千円、翌年度への繰越額を除いた実質収支は11億2,669万7千円の黒字となり、平成10年度単年度だけの収支を比較した場合(単年度収支)では、1億6,773万6千円の黒字となっている。

2. 歳 入

 平成10年度の歳入決算額は391億4,086万2千円で前年度と比べて30億622万6千円、8.3%の増加となっている。
 決算額の主な内訳をみると、
 ① 市   税  112億2,235万9千円  (構成比28.7%)
 ② 地方交付税  100億6,302万4千円  ( 〃 25.7%)
 ③ 市   債   58億8,760万円  ( 〃 15.0%)
 ④ 国庫支出金   36億4,699万7千円  ( 〃  9.3%)
 ⑤ 諸 収 入   21億1,201万2千円  ( 〃  5.4%)
 ⑥ 県 支 出 金   14億 832万1千円  ( 〃  3.6%)
となっており、個人市民税の減税、景気の低迷による法人市民税の減収などにより、市税が大幅に減少したことから上記のような結果となった。
 次に、歳入における主要な科目ごとの状況は以下のとおり

(1) 市 税
  平成10年度は、市全体では前年度比4億2,125万5千円3.6%の減となったが、これは、市民税、特別土地保有税が減少したことが原因となっている。市民税では、個人市民税が前年に比べ5億3,283万円13.8%と大幅に減少している。これは、住民税等特別減税措置が行われたことが大きな要因となっている。
  一方、法人税においては、景気の低迷を起因とする法人収益の減により1億3,148万3千円10.4%の減少となっている。
  また、固定資産税では家屋の新築等により、全体では4.0%の伸びとなった。また、市税総額における現年度課税分は前年度比4億3,387万円3.7%の減となった。

(2) 地方交付税
  国における地方交付税総額の伸びが対前年比2.3%(平成9年度1.7%)の伸びを示している中で、本市の決算額は100億6,302万4千円で、前年度(92億9,029万2千円)に比べて、7億7,273万2千円8.3%の増となり、前年度の伸び率4.0%を上回った。

(3) 市債の決算額
  市債の決算額は、58億8,760万円で、前年度(50億5,580万円)に比べて8億3,180万円16.5%の増となり、歳入に占める市債の割合も14.0%から15.0%へ上昇している。その要因としては義務教育施設整備事業債、特別減税補てん債、減収補てん債、都道府県貸付金などの発行が上げられる。

3. 歳 出

 平成10年度の歳出決算額は、376億8,081万9千円で、前年度に比べ25億6,731万8千円7.3%の増加となった。
 歳出決算額に占める性質別の主な構成割合を見ると、普通建設事業費21.5%(前年度20.0%)人件費16.9%(同18.0%)補助費等(同13.1%)公債費11.1%(同11.7%)物件費10.9%(同11.0%)扶助費11.7%(同11.4%)となっている。

(1) 性質別歳出の状況
 ① 消費的経費
   消費的経費の決算額は、200億1,566万8千円で前年度と比べ7億372万3千円3.6%の増となったが、投資的経費の伸びが大きかったため、構成比は53.1%と前年度(55.1%)に比べ若干減少した。
 ② 投資的経費
   投資的経費の決算は80億9,565万円で、前年に比べ9億6,284万9千円13.5%の増となっている。投資的経費の財源については、国庫支出金が2億7,177万1千円29.1%の増、市債が8億4,890円20.0%の増となる一方、一般財源は1億3,377万4千円7.4%の減となっている。
 ③ 義務的経費
   義務的経費の決算額は149億4,525万5千円で、前年度に比べ5億2,622万円3.6%増加しましたが、歳出の総額に占める割合は、投資的経費が前年度に比べ増加したため、前年度を1.4%下回る39.7%になった。また、経費別に見ると、人件費は前年度比5,439万8千円0.9%の増となったが、これは職員給与の定期昇給等の要因はあるものの、事業費支弁人件費の増により義務的経費の人件費の増加が抑えられたことによるものである。
   公債費については9,384円2.3%の増となってるが、繰上償還分(2億4,244万1千円)を控除した通常ベースで比較した場合1億5,686万8千円4.1%の増となっている。

4. 主な財政分析指数

(1) 公債費負担の状況
  地方債の元利償還に充当された一般財源の、標準財政規模に占める割合を公債比率という。財政構造の弾力性を見る場合、義務的経費の中でも特に弾力性の乏しい経費である公債費の及ぼす影響は大きなものといえる。
  また、起債許可制限比率(公債費から事業補正により措置される普通交付背額を除外して得られた数値の過去3年度間の平均値)は、地方債の許可制限に係る比率で、20%を超えると起債許可される種類が制限されるものである。
  本市においては、近年各種投資事業を推進してきたが、これらは地方債への依存によるところが大きいため、その償還が年々累増している。
  公債比率は平成3年度に過去最高の17.6%に達し、その後若干低下の傾向にあったが、ここ数年間の国の経済対策に応じた公共事業の積極的な推進などにより、平成6年度以降は再び上昇傾向にある。
  市債残高を見ると、平成10年度末には410億4,831万2千円となり、前年度に比べ32億7,460万3千円8.7%の増となっている。
  一方、標準財政規模に対する市債残高の割合は、市債残高の伸びが標準財政規模の伸び(4.0%)を大きく上回ったため、前年度の181.6%から189.7%に増加している。
  今後とも、投資事業の計画的推進には、地方債の活用が必要であることには変わりはないものの、財政の健全化を確保していく観点からも、起債発行の厳しい管理などにより、地方債残高の伸びを抑えていかなければならない。

(2) 自主財源比率
  平成10年度の自主財源総額は、前年度に比べ1億1,151万4千円0.7%の増となったものの、国庫支出金、地方交付税、地方消費税交付金、市債といった依存財源が大きく増加したことにより、自主財源比率は41.8%と前年度より3.1%下がった。
  地方公共団体の財源力を示す財政力指数は、平成9年度0.540から0.532となり、依然として低水準にあり今後市の財政運営をチェックし自律的財政運営に参画する必要性がある。

むすび

 平成10年度は、極めて厳しい経済情勢、財政状況下での市政運営になっていることが考察できる。
 市当局としても財政構造の健全化を確保するため、経費の節減合理化、事務事業の効率化のほか市債繰上償還などを実施しているが、依然として、依存財源に依るところが大きい再入構造、再び悪化の様相を示している経常収支比率、公債費比率、累増する地方債残高と後年度財政への圧迫など、財政状況は極めて厳しい状況に立たされている。
 一方、高齢化社会に向けた総合的な地域福祉施設、生活関連の社会資本整備など、地方自治体が益々大きな役割を果たすことが期待されている。
 今、私たち労働組合に、公正なコスト原理を社会的に確立することが求められている。コスト感覚がより研ぎ澄まされる必要がある情勢の中、行政に働く者としての市民、国民の要望に応えなければならない。コストとサービスの関係を明確に説明し、市民の質問に応答すること、そして納得をうることである。
 なぜ、労働組合が財政分析や再建計画を作成するのか、自治体労働者の安定は、市民の信頼確保を前提とした地方自治体の安定、地域社会の安定が大前提であり、これらなくして自治体労働者の安定は維持できない。また自治体労働者が地方自治体の安定、地域社会の安定に全力を傾けることは必然のことである。
そのために労働組合は財政分析を行わなければならない。