あらまし
平成11年度決算見込による町の財政状況として、歳入は普通交付税で対前年費5,580万4千円2.9%の減額交付となり、歳出では、各特別会計等への赤字補てん分の繰出金及び公債費の償還が年々増嵩傾向となってきている。
また、財政の硬直化を示す経常収支比率や公債費負担比率は確実に上昇を続けており、地方債の残高が増加している一方、積立金は減少を続けており、財政状況は一段と厳しさを増してきている。
1. 決算規模
決算規模は、歳入が37億5,838万円で対前年比9.6%減、歳出が36億7,781万9千円で対前年度比7.2%の減となっており、歳入、歳出ともに前年度の伸び率(歳入10.2%減 歳出12.6%減)を上回っているが、普通会計の規模は平成9年度をピークに減少傾向にある。
これは、主として歳入において、地方交付税が1.4%、国庫支出金が33.0%、道支出金が18.9%、地方債が38.6%減少したこと、また、歳出において、義務的経費が1.1%増加したが、投資的経費が35.9%、その他の経費のうち、維持補修費15.9%、物件費が1.1%減少したことなどによる。
2. 決算収支
実質収支は見込額として7,036万1千円の黒字であり、実質収支比率(実質収支額の標準財政規模に対する割合)は3.3%と前年度より2.4%減少しているが、一般的に望ましい範囲となっている。
3. 自主的・主体的な町づくりの取り組み
地域の特性を生かした自主的・主体的な町づくりのための事業を積極的に展開しているが、町の厳しい財政状況から普通建設事業費のうち単独事業費は7.0%下回っている。
4. 財政指標
(1) 経常収支比率(人件費や公債費などの経常経費に充てられた一般財源の、経常的に収入される一般財源に対する割合)は見込数値として83.2%で、前年度の80.6%より2.6ポイント高くなっており、財政構造の硬直化が急激に進んでいる。
(2) 公債費負担比率(公債費に充てられた一般財源の、一般財源収入総額に対する割合)は見込数値として19.6%と危険ライン(20%)に近い率となり、財政運営の硬直性の高まりを示している。
(3) 起債制限比率(標準財政規模に対する元利償還金の割合(一部特財等は除く))は見込数値として11.2%と前年度より0.3%増加し、警戒ライン(15%)に接近してきている状況にある。
5. 将来にわたる財政負担等
(1) 地方債現在高(平成11年度末見込)は48億9,192万7千円となっており、今後の財政運営にとって大きな負担となることが懸念される。
(2) 積立金現在高は12億1,460万8千円、対前年度比3.6%の減となっており、平成7年度から引き続き減少している。
● 今回の財政分析のポイントを財政指標として今後の推移や見込等につき以下のとおりまとめました。
① 経営収支比率
平成11年度の経常収支比率(加重平均)は、83.2%(減税補てん債相当額を経常一般財源に加算した場合は83.1%)となっており、前年度の80.6%と比べると、2.6ポイント増加している。
平成11年度においては、経常一般財源が普通交付税の大幅な減額で減少し、逆に公債費の増加などにより、経常経費に充当された一般財源が伸びたため、経常収支比率が急激に増加した。
また、平成12年度の見込数値としても、前年度に引き続き普通交付税の減少(合併市町村優遇措置等により)と、公債費の償還額の増加により危険ライン(85%)を超え、財政構造の硬直化が一段と進み、今後一層の弾力性の確保が大きな問題となる。
最近5年間の経常収支比率推移は第1表のとおりである。
第1表 経常収支比率の推移
② 公債費負担比率
平成11年度の公債費負担比率は(加重平均)は、19.6%となっており、前年度の18.9%と比べると、0.7ポイント増加している。
平成11年度は交付税の減少等により前年度と同様に比率が大幅に上昇し、平成12年度以降についても町税の減収及び交付税の減少により、一般財源総額が微増ないしは前年度を下回る可能性が強く、危険ラインとされる20%を超え、財政運営の硬直性の高まりが懸念され、今後新たな自主財源の確保等が必要となってくる。
最近5年間の公債費負担比率推移は第2表のとおりである。
第2表 公債費負担比率の推移
③ 起債制限比率
平成11年度の起債制限比率は(加重平均)は11.2%となっており、前年度数値より0.3ポイント増加となっている。単年度数値としては、11.9%となる。
平成8年度、平成9年度に大型事業があり、普通会計で多額に借入した起債の償還が平成12年度より元金分の償還が開始となり、今後は比率の上昇が予想される。
最近5年間の起債制限比率推移は第3表のとおりである。
第3表 起債制限比率の推移
(参考資料)
上記3指標に多大な影響を及ぼす地方債現在高(グラフ表示)について
未償還元金(折線グラフ)及び元利償還金(棒グラフ・左は元金・中央は利子・右は合計)については、平成11年度債借入までのデータ入力ですので、平成12年度以降の起債借入額によっては、ピーク年度が後年度へ変更になる見込である。
地方債現在高は年々増加傾向にあり、後年度において元利償還金を行わなければならないことから、将来の財政運営にとって大きな負担となることが懸念されている。
別償還推移グラフ
◎3項目についてのまとめ
経常収支比率……財政運営上は、臨時収入が不確実である以上、臨時支出の財源に充てるため、経常収支は常に余剰をもたねばならない。
しかも、町税、普通交付税等の経常一般財源収入は、景気の状況や国の方針等により左右され、今後は下降傾向が予想される。
一方、歳出においては人件費・公債費等の経常経費の占める割合及び各特別会計への繰出金が大きくなり、歳入の減少に対応して縮減できる経費が乏しい。このように、町財政は構造的に比弾力的要因をもっている。
このような財政事情の下においては、財政構造の弾力性をひと度失えばその回復は容易ではなく、財政運営臨時的経費の大半を占める建設事業を極力抑制するか、あるいは経常的な事務事業をも切り込んだ択一性が求められる。
したがって、財政構造の弾力性が確保されてこそ、経済変動や地域社会の変化等のいかなる外的要因の変化にも耐えて、収支の均衡が保持できるのであり、また、町民の行政需要にも適切に対応した、健全にして意欲的な行政活動が目指される。
公債費負担比率・起債制限比率……地方債の発行等による後年度の財政負担を増加させるような財政運営については、今後の財源の見通しや財政負担の限度等を考慮し、慎重を期さなければならない。
このようなことから、後年度に於いて財政措置がある起債を選択しながら適債事業を選定し、また既往の地方債を繰上償還、あるいは発行条件のよい地方債に借り換える等の措置をし、起債残高の圧縮に努力して財政の健全化を図らなければいけない。
最後に、町の財政はこれまでも健全化のために各種の努力が重ねられてきたところですが、なお、累積した多額の借入金を抱え、公債費負担比率が高い水準にあるなど、依然として多くの課題を抱え、今後5年間が財政構造上特に厳しい時代となる状況にあります。
しかしながら、こうした財政状況においても町は、生活関連の社会資本の整備や急速に進展する高齢化社会などの課題に対応した諸施策を推進するとともに、町の特色を生かした自主的・主体的な活力ある町づくりを積極的に展開していく必要があります。
このような状況の中で、町が適切にその役割を果たしていくためには、今後の行財政需要に対する柔軟性を損なうことがないよう健全財政を維持していくことが不可欠であり、事業を計画的に実施するなど適切な財政運営を行っていくとともに、簡素効率化や経費の節減合理化など一層の改善を図っていく必要がある。 |