環境保健センターの設置と保健所再編問題について

岩手県本部/岩手県職員労働組合・保健所協議会

 

1. はじめに

 平成9年に保健所の統廃合(15保健所→10保健所、2支所、1出張所、1駐在、廃止1)が行われ、保健と福祉の連携を目指した保健福祉環境部として地方振興局への編入が実施されて3年が経過し、本庁からの大幅な権限委譲や4月からスタートした介護保険法等、職場では確実に業務量が増大しています。
 保健・福祉統合により、保健所本来の業務のほかに介護保険制度関連や地域振興計画策定などの業務が附加されているにもかかわらず、その業務量に見合った人員が配置されていません。
 結果として、恒常的な残業や自宅に仕事を持ち帰る「持ち帰り残業」、土日出勤等が横行している実態にあります。
 また、産休、育休代替職員の配置が認められない事例も多く、その結果、業務が他の職員にしわ寄せされる状況があり、そのやり方に対して職場には不満の声が渦巻いています。
 また、地域保健法が施行され「保健所の機能強化」が言われていますが、その具体的な方向性が示されないまま、所長と部長の二人のトップが存在するという指揮系統の問題、技術職としての所長の機能強化へ向けた取り組み意欲の喪失などリーダーシップ体制に混乱が生じています。また、企画部門の体制強化として設けられた「保健福祉企画主査」の職についても、その権限、予算の問題等が整理されないまま、各保健所ごとに手探り状態で業務を行っている実態にあり、結果的に15~20人の保健婦が削減されたことと同様の結果を招いたことは問題であり、県民の健康、生活衛生、環境を守る拠点として、保健所のその機能を十分に発揮しうる体制にあるとは決して言えません。
 そして、今、保健衛生環境分野の試験研究機関の充実のため、衛生研究所と公害センターの統合整備が進められており、環境保健センター(仮称)として平成12年度完成、13年度移転の計画で工事が進んでいますが、①人員再編の問題、②高度な研究業務、③検査の外部委託などの問題点が明らかになっています。
 また、地方衛研が保健所と一体的に活動を展開していくために、保健所との連携、人的交流、情報共有システムの確立の必要性が言われています。
 協議会としては、今後それらの問題点を改善し、職員が自信を持って業務を遂行できる体制づくりが緊急の課題であると考えています。

2. 保健所協議会の活動

 昨年度は数年ぶりで総会を開催し、新役員体制のもと分会代表者会議を開催して職場の問題点の掘り起こし、13年度に開設される環境保健センター(仮称)についての学習会、組合員アンケート等に取り組んできました。
 また、情報化への対応として、協議会独自のホームページ(http://www6.freeweb.ne.jp/area/hokenjo/index.html)
を開設し、協議会の情報、年度末の人事異動情報等を掲載しました。

(1) アンケート調査結果
 ● 職場の問題点として
  ① 職場実態、業務量に見合った職員数となっていない。過大な負担を強いられる。
  ② 保健婦が半減されている。保健婦の人員不足。
  ③ 産休、育休職員分の欠員不補充による慢性的な人員不足。
  ④ 資料づくりがとても増えた。日中は来客のため、残業や休日の作業になる。
  ⑤ 管轄面積の増大による監視率の低下。
  ⑥ 検査機能の強化、高い技術レベルの必要性が言われているのに、人事異動で簡単に配置換えし、後任者は未経験者というケースが非常に多い。
 ● 2001年度に開設される環境保健センター(仮称)について
  ① 研究能力のあるスタッフ。保健所に対する指導、助言。
  ② 検査機能の強化(人畜共通感染症、ダイオキシン、環境ホルモン)、保健所の依頼に即応できる体制強化。
  ③ 環境教育機能、政策機能、保健所支援機能、研究機能強化、野生動物の調査研究、地域保健の人材育成機能、高度な知識、技術の研修機能。
  ④ 予算が削られたとのこと。10年先20年先を見越してのことか不安。
  ⑤ 知事の言っている世界に通用する研究がこの岩手に必要か疑問。
  ⑥ 人員について、出先機関から吸い上げるのではなく、定員増をすべき。
  などの意見が出ています。

(2) 環境保健センター(仮称)の問題点
 ① 人員再編の問題
  ● 企画調整機能、情報管理機能、普及啓発機能が新たな機能として付加されることとなっており、部門として企画情報部門、保健科学部門、衛生科学、環境等の5つの部門に10数名の人員増が想定されています。
  ● この人員を外部から招聘することは、理想としてはベストでも、現実には相当困難であり、保健所内部の人間を手当てすることが想定されており、結果として保健所職員から人員が減らされ、本庁の業務がドンドン保健所へ降ろされる中で、保健所の業務がますますきつくなることが懸念されています。
 ② 高度な研究業務
  ● 環境保健センターの施設規模は、工業技術センターに比べて全体の広さで約4分の1、建物の面積については、計画の青写真から約3分の1削られたものとなっています。また、備品費についても、30%カットされており、不十分なものとなっています。
  ● こういう状況の中で知事は岩手県において日本の環境首都を目指すと言い、上からの押しつけで国際的にも通用するような高度な研究を要求されています。
 ③ 水質検査の外部委託
  ● 日常業務を外部委託し、研究業務に邁進する計画と聞いていますが、日常業務にこそ予算面で国庫補助の裏付けがありますが、研究業務は県単独予算です。また、職員の頑張り過ぎによる健康面の心配もあります。

3. 今後の活動方向

(1) アンケート調査をもとに、さらに職場で残業に苦しんでいる業務実態を明らかにするため、業務量調査を複数の職場に絞って実施します。
(2) 賃金格付、ワタリ運用、手当、研修などの労働条件、保健所の機能・体制強化について主管課交渉(保健福祉課、総務生活課)を実施します。
(3) 環境保健センター(仮称)の整備に関連して、機能・体制の強化と保健所との連携強化、人員の確保等について申入れしていきます。

4. まとめ

(1) 現在までの取り組み状況は不十分なものでありますが、今後、環境保健センターを含めた保健所職場が県民の健康、生活衛生、環境を守る拠点として県民のためのサービスを行う第一線であるとの視点で、職員みずからが自信を持って取り組めるような業務の体制づくりに向けて、保健所協議会として取り組んでいきます。
(2) 保健・福祉の一本化を受け、職能協議会の組織構成をどうするか、考えてみる必要があります。東北各県と交流し、問題を共有する中で方向性を探りたい。
    また、保健所統廃合、試験研究機関の問題点や課題についても、東北各県、全国の仲間と交流し、情報交換する中で取り組んでいきます。
(3) 盛岡市の特例市指定に向けた流れのなかで、保健所設置を想定した検討が必要であると思われます。秋田などの先行例を参考にして取り組みます。