1. 鶴岡市学校給食センターの経過
(1) 1889年(明治22年)に学校給食
1889年に私立忠愛小学校(男子37名・女子14名)から学校給食がはじまり、1897年に学校の焼失により分散して対応することになりました。
その後、戦争によって中断されましたが、1947年から新しい学校給食(小学校9校)が開始され、小学校全体に広がっていきました。
(2) 1965年に単独校から共同調理場方式
中学校給食の開始とともに、単独校から大型共同調理場の建設計画実施が提案され、大型共同調理場のいろいろな問題点を指摘し、反対運動を展開しましたが、残念ながら大型共同調理場へ移行されました。建設計画を事前に把握することが出来ず、建設後の職場改善に多くの努力と腰痛症など疾病者を出してしまいました。
(3) 1980年に共同調理場建設改善委員会を発足
単独校から大型共同調理場の建設を教訓に、当局が新調理場建設にむけ計画案を出す前に、働く者の考えを十分に取り入れ、子どもたちの立場に立った学校給食づくりが行える調理場の建設にむけた計画を立案し、実現しようと考えました。職場の中でそれぞれの立場から意見が出せるよう、プロジェクトチームを作り、調査研究を進めていくために建設改善委員会を設置しました。委員会の取り組みは、職場を守るだけの運動を遙かに越えて、学校給食内容の充実と食文化を豊かにし、学校給食発祥の地に相応しい新たな一歩をしるしました。
自治体労働者として、学校給食に対する意識を向上させ、たゆまず続けた調査研究は職員の団結力を強固なものにしました。また、子どもたちに喜ばれる学校給食づくりを推進することは、職場環境や労働条件も整備することにつながりました。
(4) 1987年に新学校給食センターに移転
新築移転した学校給食センターの業務内容も時代の推移と共に見直しや改善がなされ、職員がそれぞれの職務に専念しながら、円滑な業務運営を最優先とした視野に立ち、同年に労働安全衛生委員会(職場内だけの)を設置し、91年には作業検討委員会・機械設備委員会を設置し活動を開始しました。
93年に栄養士が担当していた食材料の検収を充実させるため、調理員を含めた検収委員会を設置、98年から献立の組み合わせや納入業者との話し合いを行う調理検討委員会を設置しています。また、2000年から家庭に配布している「おたより」を作成する編集委員会も設置されました。
2. 鶴岡市学校給食センターの取り組み
(1) 農林水産祭り
88年から鶴岡市と共催団体が主催する米消費拡大事業に、学校給食を理解してもらうため、試食会やパネル展示等による参加をしています。
(2) おにぎり給食
1989年から食の重要性を知ってもらうため、学校給食発祥100周年として当時を再現した「おにぎり給食」を実施しました。思いがけず、子どもたちから大変な人気を得たこともあり、毎年給食記念日に実施しています。また、学校・保護者からは教育上での評価が高まっています。
(3) バイキング給食
1992年にバイキング給食の試行、95年から小学校6年生を対象に本格的に実施しています。バイキング担当委員が学校行事との調整や献立内容を検討し、通常業務とバイキング給食の平行作業計画を作成します。
(4) エコピッグシステム
1994年から市環境衛生部・山形大学農学部によるリサイクル試行事業として、学校給食の残食を飼料化するエコピッグシステムの開発研究が取り組まれており、学校給食センターでも実現化に向けて協力をしています。
また、環境衛生部は飼料化するための熱エネルギー源を、発砲スチロール容器のリサイクル化で取り組みを進めています。
(5) HACCP(衛生管理手法)
1998年にはHACCPの考え方に基づく衛生管理手法として、調理行程における微生物検査を実施しました。96年に大量発生した病原性大腸菌O157に端を発し、厚生省が新たな衛生管理の方法として「宇宙食」の製造に基づいたHACCPシステムを調理施設に導入を検討し、鶴岡市がモデル施設として指定されました。
(6) 学校給食祭り
1998年から7月下旬の日曜日に、学校給食センターを会場に「学校給食祭り」を開催しています。調理体験の希望者を事前に募集(検便有り)し、調理員と一緒に行う調理実習体験や、場内を一般開放しての施設設備についての説明等、300人以上の市民が訪れています。
3. 学校給食センターを通して男女平等を考える
(1) 現在の概要について
● 方 式 1棟2調理室によるドライシステム
● 調理能力 14,000食/日
● 実施形態 小学校21校・中学校6校
● 給食搬送 委託(10台)
(2) 職員構成について
現在の職員構成は、所長1・主査1・事務1・栄養士4・ボイラー1・調理員44となっています。
単独校からセンターに移行した当時は調理員46名(後58名)のほとんどが女性でしたが、大型機械の導入などから男性が数名採用されました。その後、退職者があった場合の採用は同性を採用するよう要求が続きましたが、平等という観点から男女の割合が崩れ始め、現在は半々になっています。
業務的にも生理的にも、男女の割合は半々に近いほうが良いと感じます。
(3) 業務内容について
業務の割り振りは、1週間交代の班長ができるだけローテーションするように決めています。大型機械の操作や整備は主に男性が行うなど、固定的な役割分担もありますが、全体の話し合いを基に業務分担を決めています。
(4) 労働条件について
年休や休暇は100パーセントに近い取得率です。生理休暇、育児時間も取得しています。職場闘争委員会を設置しており、労働条件などについては、所属長と確認をしています。
(5) 正規職員とパート職員について
調理員44名の他に、午前中だけパート職員14名が働いており、あくまでも補助的な作業を担当してもらっています。
(6) 労働組合について
労働組合の役員は、性別の割合と担当を決めて選出しています。
(7) 福利厚生について
職場の親睦を深めるため、臨時職員や委託職員を含めたレクリエーションを毎年行っています。
4. よく思うこと
職場の中で性的な差別は同性間でも、職種間でもあると思いますが、これらすべてを平等にしようとするとどこかで矛盾が生じてきます。現状は、均衡をはかって仕事をしているといったほうが良いかもしれません。
男女平等について重要なのは、一人ひとりがその事について考えているのかという事で、男女という意識よりも、個々の意識を高めることが大切だと思います。コミュニケーションをはかり、お互いの意識を理解しあえる機会を多くすることが職場にとって大切なことではないでしょうか。
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