男女共同参画による出雲市まちづくり条例
平成12年出雲市条例第1号(平成12年3月24日)
目 次
前 文
第1章 総則(第1条-第7条)
第2章 推進体制(第8条-第10条)
第3章 行動計画等(第11条・第12条)
第4章 雑則(第13条)
附 則
前 文
我が国は、長い歴史と伝統の中で、武家社会がもたらした家父長制や儒教思想などの影響もあり、男尊女卑の性別役割意識や社会慣行が永年にわたり根強く残存し、政治・社会・経済・文化の諸活動における女性の役割や行動がとかく多様な制約を受けてきたところである。
我が出雲市も、東は神話の舞台斐伊川に、西は白砂青松の長浜海岸に、南は豊かな水を育む中国山地に、北は急峻な北山山系に、四方を囲まれた出雲平野にあり、外部からの影響や刺激も少なく、人々は往古から営々として、清流に緑滴る豊饒の地で自給自足の温和な地域共同生活を営んできた。こうしたことから、今日においても、旧来の社会慣行やしきたりのなかで、女性の家庭、地域、職場などでの活動が往々にして制約を受ける状況が見られ、各人の能力や個性、適性に応じた自己実現の機会がややもすれば阻害されてきたところである。
かくのごとき状況下において、我が国でも、戦前の参政権の獲得を中心とした女性解放運動など幾多の変遷を経て、戦後、日本国憲法において、法の下の平等を基本に、個人の尊厳と男女平等を旨とする基本的人権の尊重が謳われ、その後の国際的な女性運動や女性会議・フォーラム等の開催とあいまって国連の女子差別撤廃条約やILOの家族的責任条約が批准されてきたところである。これに対応し、国内でも男女雇用機会均等法、育児休業法及び介護保険法があいついで施行され、さらに、平成11年6月には男女共同参画社会基本法が成立し、女性の地位向上を目指す法体制が急速に整備されてきた。
このような動きのなかで、本市では男女共同参画によるまちづくりの指針を定めるべく、平成11年7月に発足した出雲市男女共同参画のまちづくり懇話会において、公聴会等での意見を含め幅広い市民の多様な考えを集約した意見書が取りまとめられたところである。
本市は、この意見書を踏まえ、男女の対等なパートナーシップによる真に心豊かで活力ある21世紀都市・出雲の創造を目指し、ここに、男女共同参画による出雲市まちづくり条例を制定する。
第1章 総 則
(目 的)
第1条 この条例は、男女共同参画によるまちづくりの基本理念、実現すべき姿及び責務等を明らかにするとともに、施策の基本的な事項を定めることによって、市民一人ひとりの個性が光り輝き、活力に満ちた、にぎわいのある出雲、男女がのびのびとまちづくりに参画し、青少年が夢と希望と明日を語り合う出雲、そして商工業、農業、いわゆる新ビジネス等あらゆる産業に従事するすべての市民の努力が報われ、発展が約束される心豊かな21世紀都市・出雲の継承・創造・発展を目指すことを目的とする。
(定 義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 男女共同参画 男女が、社会の対等な構成員として自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことをいう。
(2) 事業者等 市内において公的機関、民間を問わず、又は営利、非営利を問わず事業を行うものをいう。
(3) 積極的改善措置 第1号に規定する機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。
(4) ジェンダー 生物学的・生理学的な性別と異なり、男女の役割を固定的に捉える社会的、文化的に培われ形成されてきた性別をいう。
(5) セクシュアル・ハラスメント 市民生活のあらゆる場において他の者を不快にさせる性的な言動をいう。
(基本理念)
第3条 市、市民及び事業者等は、次の各号に掲げる事項を基本理念として男女共同参画によるまちづくりを進めるものとする。
(1) 男女の個人としての尊厳が重んぜられ、性別による差別的取扱いを受けず、個人として能力を発揮する機会が確保されるなど男女の人権が尊重されるまちであること。
(2) 男女がそれぞれ自立した個人として、一人ひとりがその能力を十分に発揮できることによって、多様な生き方が選択でき、かつ、その生き方が尊重され、自己決定権が確立されるまちであること。
(3) 男女が、家族的責任及び社会的責任を共に担うことによって、家庭、地域、職場、学校その他のあらゆる場における活動に平等・対等な立場で参画し、責任を分かち合うまちであること。
(4) 市や事業者等における政策又は方針・計画の立案及び決定に男女の個人としての能力が尊重され、共同して参画する機会が確保されるまちであること。
(実現すべき姿)
第4条 市、市民及び事業者等は、次の各号に掲げる事項を男女共同参画によるまちづくりにあたっての実現すべき姿とし、この達成に努めるものとする。
(1) 家庭において実現すべき姿
ア 「男だから」・「女だから」といったジェンダーではなく、それぞれの個性を重視し、「その人らしさ」を大切にする家庭になること。
イ 家族それぞれが多様な生き方を選択でき、その能力、適性をみんなが認め合い、明るく豊かで充実した家庭になること。
ウ 「男は仕事」・「女は家庭」の意識を超えて、家事、育児、介護などの家庭のいとなみに家族全員が関わり、苦楽を共に分かち合い、家族のつながりが深まること。
(2) 地域において実現すべき姿
ア 男女が連帯して地域の諸活動に参画し、企画や実践に関わることによって満足感と達成感が得られ、生きがいと活力のあるまちづくりが進められること。
イ 古い慣習、しきたりなどの制約を克服し、男女の相互理解によってそれぞれの行動や考え方が尊重され、意思が決定されること。
ウ 女性の積極的な社会参画により、女性の多様なリーダーシップが発揮されること。
エ すべての人の人権が尊重され、差別のない、心豊かな地域社会がつくられること。
(3) 職場において実現すべき姿
ア 個人の意欲、能力、個性などが合理的かつ適切に評価され、募集、採用、配置、賃金、昇進などについて性別を理由とする差別がない、生き生きとした職場になること。
イ 効率的かつ効果的な労働によって、長時間労働やストレスがたまる職場環境の改善が図られ、家庭生活や地域活動が活力とゆとりのある充実したものとなること。
ウ 育児休業や介護休業を男女ひとしく積極的に取得できるようになるなど、仕事と家庭が両立するようになること。
エ 妊娠・出産期、更年期など女性の生涯の各段階に応じた適切な健康管理が行われること。
オ セクシュアル・ハラスメントのない、快適で安心して仕事ができる職場環境がつくられること。
(4) 学習・啓発・意識改革により実現すべき姿
ア 「男の子だから」・「女の子だから」というジェンダーにとらわれない、それぞれの個性や人権を大切にする子どもが育つこと。
イ 男女の別なく、育児、介護、ボランティアなどの体験を重視した学習が進むこと。
ウ 進学や就職などにおいて、性別にとらわれない、個人の能力や適性を考慮した選択が尊重されること。
エ 家庭、地域、職場、学校などにおいて、性別にとらわれない係や当番などの役割分担が行われること。
オ 老若男女を問わず、市民ひとしく男女共同参画社会について学習する機会が増進されること。
(性別による権利侵害の禁止)
第5条 何人も、性別を理由とする権利侵害や差別的取扱を行ってはならない。
2 何人も、地域、職場、学校などあらゆる場においてセクシュアル・ハラスメントを行ってはならない。
3 何人も、夫婦間を含むすべての男女間において、個人の尊厳を踏みにじる暴力や虐待を行ってはならない。
(市の責務)
第6条 市は、男女共同参画のまちづくりのため、次の各号に掲げる事項を実施する責務を有する。
(1) 積極的な啓発・学習促進等 この条例が、広く市民及び事業者等の理解を得られるよう啓発・学習促進等に積極的に努めること。
(2) 情報の収集・公表等 男女共同参画に関する情報の収集を行い、分析するとともに、これを市民及び事業者等に公表し、又は提供に努めること。この場合において、個人情報の保護に関しては最大限配慮しなければならない。
(3) 市民等への支援 市民や事業者等が実施する男女共同参画のまちづくり活動を支援するため、情報の提供その他必要な措置を講ずるよう努めること。
(4) 他の自治体との連携・協力 国及び県の施策等と調整を図りながら、他の自治体との広域的連携・協力に努めること。
(5) 国際的な協力等 情報交換、会議参加促進など国際的な協力・連帯の推進に努めること。
2 市は、その人事管理及び組織運営において、個人の能力を合理的かつ適切に評価し、率先して男女共同参画の実現に努めるものとする。
(積極的改善措置の推進)
第7条 市は、男女共同参画のまちづくりのため、政策決定の機会その他において積極的改善措置を講ずるよう努めなければならない。
2 事業者等は、男女共同参画のまちづくりのため、その事業活動に関し、積極的改善措置を講ずるよう努めるものとする。
第2章 推進体制
(推進委員)
第8条 市長は、男女共同参画のまちづくりを推進するため、出雲市男女共同参画推進委員(以下「推進委員」という。)を置く。
2 推進委員は、市民、事業者等その他の者のうちから市長が委嘱する。
3 推進委員は、男女共同参画によるまちづくりに関し、意見・苦情等の情報収集、啓発活動等を行うとともに、その活動に関し、市長に具申するものとする。
4 男女いずれか一方の委員の総数は、委員総数の10分の4未満であってはならない。
(推進委員会)
第9条 市長は、前条の推進委員を構成員とする出雲市男女共同参画推進委員会(以下「推進委員会」という。)を設置する。
2 推進委員会は、男女共同参画のまちづくりに関し、市長の諮問に応じ、調査審議し、答申するものとする。
3 推進委員会は、男女共同参画のまちづくりに関し、市長に随時建議するものとする。
(苦情相談窓口の設置)
第10条 市は、男女共同参画によるまちづくりを阻害する問題を処理するため、苦情相談窓口を置き、他の苦情処理機関等と連携をとり、相談者に対し必要な支援を行うなど解決に努めるものとする。
第3章 行動計画等
(行動計画の策定)
第11条 市長は、男女共同参画のまちづくり実現のため、総合的かつ具体的な施策を取りまとめ、男女共同参画による出雲市まちづくり行動計画(以下「行動計画」という。)を策定するものとする。
2 市長は、行動計画の策定にあたっては、推進委員会の意見を聴取し、市民及び事業者等の意見が反映されるよう努めるものとする。
3 市長は、行動計画を策定したときは、議会に報告するとともに、市民及び事業者等に周知し、理解と協力を促すものとする。
(実施状況の年次報告)
第12条 市長は、毎年、施策の実施状況等を議会及び推進委員会に報告するとともに、市民及び事業者等に周知するものとする。
第4章 雑 則
(その他)
第13条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。 |