自治体のホームページとインターネット

東京都本部/教 宣 部


1. はじめに

 自治労東京都本部では2000年正月の機関紙『自治労東京』新春号で「自治体のホームページとインターネット」と題する座談会を掲載し、好評をいただいた。座談会には都本部傘下の自治労都職労建設支部、同渋谷区職労、町田市職労から実際にホームページ作成に従事している組合員のみなさん、ならびに株式会社UBCのシステム事業部情報企画担当の技術者の方に参加いただき、ホームページ開設に伴う苦労話やインターネット活用の可能性などについて話し合っていただいた。
 自治体のインターネットをめぐる全般的な状況や課題については『月刊自治研』2000年6月号「特集◎インターネット社会に暮らす」に詳しいので、ここでは上記座談会で指摘されたいくつかの課題を整理して報告とする。

2. 東京における自治体ホームページの状況

 座談会に参加いただいた東京都建設局、渋谷区、町田市ともホームページの開設は98年ないし99年で、開設の契機となった事情は第二の広報紙としての位置づけ、商工観光課の情報提供という出発、特定事業への意見募集など、様々であったとのことである。
 さて、東京都内の自治体のホームページ開設状況は後掲<参考資料>の通りであるが、このうちの大半がここ一両年に開設されたもので、区市町村の全般的広報から個別事業・事業所の情報提供まで、その態様はますます豊富となってきている。本年7月の住民投票の結果を踏まえ、2001年1月21日の合併に向かって準備を進めている東京都田無市・保谷市では合併協議会がホームページを開設し、万余のアクセスを得ている、というケースもある。ちなみに両市の合併後の新市名『西東京市』もホームページ上最多数の投票があったとのこと。また、科学館や博物館、動物園や水族園(これは外郭団体の公園協会が開設している)へのアクセスはこの夏休み、膨大な数にのぼっているとのことである。
 余談であるが、東京都内の自治労関係の組織でホームページを開設しているところは、自治労中央本部関係を除くと、東京自治研究センター、介護労働者の組織化に取り組んでいる東京ケア・ユニオンの2組織のみである。

3. 自治体ホームページの課題と可能性

 自治体ホームページの開設・維持管理にあたって自治体担当者・技術者ともに指摘する課題は個人情報の保護とセキュリティの問題である。先の"I Love You"ウイルス事件では東京都関係のシステムが軽微な被害を被ったことが報告されているが、今のところ自治体ホームページに関しての深刻なウイルス感染やハッキングは発生していない模様である。ただ公共性をもつ情報を管理している以上、警戒を怠ってはならないことは言うまでもなく、具体的には自庁のホームページであっても朝夕の点検をまめに行うこととのアドバイスを得た。
 個人情報の保護に関しては、例えば住民基本台帳ネットワーク化と同様の問題が所在している訳で、情報管理にあたるものの倫理はもちろん、条例の整備による保護策の確立も検討されなければならない。
 ホームページの豊富な態様については前述したが、双方向性のコミュニケーション手段としてのインターネットのもつ可能性は、自治体の情報の発信・受信のあり様を根本的に再編することともなっている。都市計画法の改正により市区町村で取り組まれている都市計画マスタープランの策定については、神奈川県大和市が初めてホームページを開設して市民意見の集約にあたったことが知られているが、98年には東京都杉並区でも都市計画マスタープランに関してホームページを開設し、万余のアクセス、数百件の意見が寄せられたという経緯がある。(杉並区ではインターネットによる意見も含め、マスタープラン策定に関わる区民意見集をまとめている。)
 これらの経緯は、1つには市民参加の新たな形態を生み出している、ということを意味している。基本構想や都市計画マスタープランなどの自治体の基幹的計画策定への市民参加は、様々な手法が模索されているが、インターネットは極めて有効に機能したことが大和市や杉並区で実証された訳で、全国の自治体でも是非取り組んでもらいたい課題である。
 2つには、当然ながらアクセスしてくる市民はその自治体の行政区画内の住民に限定されるものではなく、したがってその自治体の情報や施策に関わろうとする市民は、ボーダーレスな、グローバルな市民として登場してくるのである。個別自治体の意思や施策はもはや自分の行政区画内で完結するものではなく、課題によっては全国に、全地球に発信するものと位置づけなければならないだろう。インターネットはそういう可能性を持っているのである。
 さて、最後に私たち自治労の組合では…。本部と県本部、県本部と単組との間のEメール等は急速に拡大していますが、インターネットというツールは私たちと市民・市民社会の双方向のコミュニケーションに併せて大きな可能性を有していることも忘れないようにしたいものです。

<参考資料>

東京都内の自治体ホームページ一覧 (2000年7月現在)

■区市町村
 ● 特別区協議会
 ● 23特別区(全区で開設)
  千代田区  中央区  港区  新宿区  文京区  台東区  墨田区  江東区  品川区  目黒区  大田区  世田谷区  渋谷区  中野区  杉並区  豊島区  北区  荒川区  板橋区  練馬区  足立区  葛飾区  江戸川区
 ● 市町村総合事務組合
 ● 市町村(27市の内19市が独自開設)
  八王子市  立川市  武蔵野市  三鷹市  府中市  調布市  町田市  小平市  日野市  東村山市  国分寺市  国立市  田無市  保谷市  清瀬市  東久留米市  武蔵村山市  多摩市  稲城市
 ● 西多摩ネットワーク(西多摩地域広域行政圏…4市3町1村が参加)
  青梅市  福生市  羽村市  あきる野市  瑞穂町  日の出町  奥多摩町  檜原村
 ● 島嶼部(伊豆七島・小笠原の全て)
  大島  八丈島  利島  新島  式根島  神津島  三宅島  御蔵島  青ヶ島  小笠原
 ● 田無市・保谷市合併協議会
 ● 多摩交流センター
 ● 東京都三多地域廃棄物広域処分組合
 ● 多摩六都科学館
■東京都各局(ほとんどの局・室で開設されている)
 政策報道室  財務局  主税局  生活文化局  環境局  都市計画局  福祉局  高齢者施策推進室  衛生局  労働経済局  中央卸売市場  住宅局  多摩都市整備本部  建設局  港湾局  交通局  水道局  下水道局  東京都教育委員会  選挙管理委員会事務局  人事委員会事務局  都立大学  東京消防庁  警視庁
■東京都各部各所各課

● 政策報道室 計画部 調査部
● 総務局 都立科学技術大学 東京都職員研修室
● 生活文化局 ニューヨーク事務所
東京都消費者生活総合センター
東京都青少年センター
● 環境局 都立環境科学研究所  
● 福祉局 障害者福祉会館  
● 高齢者施策推進室
都立多摩老人医療センター
東京都老人医療センター
介護保険
● 衛生局 くらしに役立つ衛生情報
獣医衛生の窓
医療福祉部結核感染症課
AIDSニュースレター
東京都府中小金井保健所
都立駒込病院
都立荏原病院
都立梅丘病院
保険医療情報センターひまわり
食品衛生の窓
東京都の心の健康センター
今こそストップ! 薬物乱用
東京都三鷹武蔵野保健所
都立大塚病院
都立豊島病院
都立府中病院
都立衛生研究所
都立保健科学大学
● 労働経済局 東京都産業振興ビジョン
都立商工指導所
都立農業試験場
家畜保健衛生所
都立産業技術研究所
都立食品技術センター
都立畜産試験場
都立水産試験場
● 建設局 葛西臨海水族園
注:上野動物園・多摩動物園・神代植物園等のホームページは外郭団体の公園協会が開設している。
● 教育庁 都立学校100校プロジェクト 高尾自然科学博物館