注:分権ネットワークは、関東甲地連に所属する人口30万人程度以上の6単組で構成されている。宇都宮、横須賀、藤沢、相模原、八王子、町田の市職(労)が構成単組で、中核市や特例市を始めとした分権の現実的な受け皿問題や地方分権、自治・分権の課題について、地連レベルで交流・情報交換等を進めていくことを目的としてつくられた。(社)東京自治研究センターが運営に協力している。 |
まえがき
このレポートは、自治労関東甲地連内に設けられた『分権ネットワーク』(注)での環境自治体と市民参加のアンケート調査を基にまとめたものである。今年の7月1日には、東京四谷のプラザエフで『自治労関東甲地連分権ネットワーク交流報告集会』を開催してきた。
レポート全体を掲載するのは紙面の都合で出来ないため、今回の自治研集会のレポートは、環境自治体を目指していく上で重要課題である『下水道システムと廃棄物(ごみ)』について、分析したものを基本的にそのまま掲載している。
また、全体のレポートについては、(社)東京自治研究センター発行の『環境自治体と市民参加』を是非ご参照願いたい。なお、調査については府中市職の協力を頂いて府中市を加えて行った。
1. 環境自治体と下水道システム
(1) はじめに
公共下水道による汚水処理の役割は下水道法では、①水洗化による公衆衛生の向上、②排水処理による公共用水域の水質保全等と定めている。1970年代から1980年代にかけて『下水道は文化のバロメーター』と言うスローガンの基に公共下水道行政が展開された。高度成長とともに公共下水道事業は都市部を中心に飛躍的に全国に広がっていった。『汲み取りから水洗便所へ』と言うキーワードは、『汲み取り便所の悪臭やハエなどの発生による不衛生の解消』=『公衆衛生(環境)の向上』につながるものとして、地域住民を引き付ける魅力あるものに見えた。
今日、下水道システムの選択については『高度成長の終焉による国・自治体財政の逼迫』と『汚水処理システムの多様化』の中で、公共下水道事業以外の合併浄化槽(個人下水道)や農業集落排水事業を含めて、様々な自治体・地域で新たな試みが展開されている。
ここでは、公共下水道事業の普及状況、河川の水質改善状況や河川のあるべき姿、そして個人下水道として注目を集めている合併浄化槽等について検証しながら、環境自治体づくりへ向けた下水道システムのあり方について論じてみたい。
(2) 公共下水道(河川)政策の評価
① 公共下水道の普及状況とその限界
公共下水道の普及率(人口)は、全国平均で58%(1998年度 表-1参照)となっている。調査対象の自治体はすべて平均を上回っている。自治体の統計では普及率は、人口と面積に分類されている。
汚 水 処 理 施 設 の 比 較 |
1998年度 表-1 |
名 称
|
公共下水道事業
|
農業集落排水事業
|
合併処理浄化槽
|
所 管
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建設省
|
農水省
|
厚生省
|
普 及 率
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58%
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1.6%
|
6.3%
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普及人口
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7,311万人
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201万人
|
798万人
|
表-2及び図-1によれば、府中市を除く自治体では、人口普及率と面積普及率にはかなりの乖離がある。藤沢市、横須賀市、相模原市のように公共下水道の人口普及率90%前後の自治体でも、面積普及率は50%~60%となっている。
人口普及率を分子に面積普及率を分母とした比率を普及率乖離比として見てみると、府中市は1.0、藤沢市、相模原市、横須賀市、町田市は1.5~1.8となっている。八王子市は2.8、宇都宮市は3.5となっているが、これは両市が山間地域をかなり抱えていることに起因している。さらに、府中市を除く6市について、公共下水道事業としての都市計画決定区域に対する整備率を分母とした修正普及率乖離比で見てみると、宇都宮市の1.0、他の5市は1.2~1.5になる。いずれにしても、面積が広く人口密度の偏りが大きい自治体では、人口普及率が向上してもなかなか面積普及率が向上しないことを裏付けている。このことは、水洗化手法としての公共下水道政策に限界があることを示している。(表-3、図-2・3)
また、DID地区人口比率(DID地区人口/総人口を%表示したもの)は概ね公共下水道の人口普及率と連動している。人口普及率が高い自治体では、公共下水道の人口普及率はDID地区人口比率に近づいていく。一方で、DID地区面積比率(DID地区面積/総面積を%表示したもの)は公共下水道の面積普及率と連動している。人口普及率が高い自治体では、公共下水道の面積普及率はDID地区面積比率に近づいていく。(表-4、図-5・6・7)
公共下水道事業では、公共下水道としての整備計画を予定している区域を都市計画決定区域と位置付けている。また、具体的な年限を定めた整備予定区域として認可区域と位置づけている。都市計画決定区域に対する整備率を見てみると、府中市を除いて40%~75%になっている。認可区域に対する整備率を見てみると、府中市を除いて町田市、八王子市が60%前後であり、宇都宮市、藤沢市、横須賀市、相模原市は80%~85%になっている。(図-4)公共下水道の事業開始が1960年代前半までに行われていることを考えると余りにも長期間がかかり、計画の妥当性に疑問を持たざるを得ない。
公共下水道事業も他の都市基盤整備を中心とした公共事業と同様に、第何次整備計画と言う形で進められてきた。しかし、公共下水道事業の進捗は現在の厳しい財政状況の中でかげりが見えており、予想以上に自治体財政を圧迫している。現在、計画人口を含めて、都市成長の限界が見えており、公共下水道未普及地域の水洗化事業にどう対応するのか、これまでの高度成長を前提とした公共下水道事業の見直しを含めて、下水道システムの選択は大きな課題となっている。
② 公共下水道と河川の水質保全 水質保全から親水、多自然型の川づくりへ
公共下水道事業の目的の1つに、公共用水域の水質保全がある。ここでは、代表的な事例として2つの河川水域(流域)について検証してみたい。第1番目の事例として、東京都町田市と神奈川県城山町に源流があり、城山町、相模原市、町田市、大和市、横浜市、藤沢市の境界を流れる境川(2級河川)の全流域を紹介する。2番目の事例として、町田市に源流があり町田市の下流で横浜市を流れる恩田川(2級河川 横浜市内で鶴見川に合流)の町田市内を紹介する。
第1番目の事例である境川は、全長52km、流域面積192km2の典型的な都市河川である。最上流域は自然形態で保全されているが、流域全体は極めて都市化が進展している。中流域には、大和市の公共下水道の処理場が2ヵ所ある。
上流域は、風戸橋のBODが1~2前後で推移していることからもわかるように、アブラハヤ等の生息も確認され大変きれいな状態に保たれている。中流域や下流域の水質の経年変化では、年々少しずつ改善の傾向にある。水質改善の原因は汚濁原因となっていた家庭や工場・事業所の排水が公共下水道の整備により改善したことが推察される。また、1970年代の最悪の状態は脱出し、水質改善により魚類も中流域では放流されたコイやフナ、下流域ではコイ、フナ、イナダ、フッコ、スズキ、ハゼ等が見られるようになった。河川法が改正され、治水一辺倒から親水・多自然型の川づくりの方向が打ち出されているが、現状の境川はコンクリート護岸等が大部分を占めている。多くの人が近づき、親しみ、遊ぶ川にはまだまだ近づいていない。また、川にはごみ等が散乱しており、今後はより一層の水質改善・保全を含めて、多くの人が親しめる川づくりへの転換が重要な課題である。
流域が狭くめぼしい湧水も少ない境川は、昔から流量の少ない川であり、飛躍的な水質改善は望めない状況にある。流量確保については、雨水の地下浸透や緑地の保全等による流域の保水能力向上へ向けた地道な施策が必要である。(表-5、図-8)
第2番目の事例である恩田川については、町田市内の小流域について検証してみる。町田市内の恩田川は延長約6km、流域1,827km2の小流域である。源流の一部は自然形態で残っている。水質については、かなり改善されている。特に全窒素については、相当改善されている。恩田川流域では下水道がほぼ100%普及しており、水質改善への公共下水道の貢献度は高いものがある。一方で、流域内には緑地保全区域や公園も多くあり、また湧水も豊富であることが飛躍的な水質改善につながっている。
町田市内の恩田川流域では水質改善に伴い一部の流域で、アブラハヤやホトケドジョウの生息が確認されている。これは、流量の確保による飛躍的な水質改善の効果が大きいと考えられる。多摩川の支流野川では下水道の普及による水質改善以上に、都市化等が原因と考えられる流量の低下が河川環境の停滞を招いており、恩田川の小流域の水質改善は都市河川における水質改善の成功例と言える。
しかし、恩田川でも境川と同様に親水・多自然型の河づくりの区域が限られており、境川と同様に多くの人が親しめる川づくりへの転換が重要な課題になっている。 表-6・7、図-9・10・11参照
(3) 地域に適合した下水道システムの選択について
公共下水道事業による水洗化普及率向上に陰りが見えてきたことは前述した通りである。DID地区(50人/ha以上)を中心に人口密度が高い区域以外への普及は今後さらに長年の歳月がかかることが各種のデータから予想される。
そこで注目されるのが合併浄化槽(個人下水道)である。これまで、公共下水道以外の汚水処理施設(合併浄化槽と農業集落排水施設)は下水道類似施設として位置づけられ、公共下水道が普及するまでの『暫定施設』として扱われてきた。
しかし、1994年12月に建設省(公共下水道)・農水省(農業集落排水施設)・厚生省(合併浄化槽)の三省の定例協議(『汚水処理施設の整備等に係る関係連絡者会議』の場(以下、三省協議会と呼ぶ)が設置され、都道府県において各種汚水処理施設の総合的な構想を策定する『都道府県構想』についての基本方針『汚水処理施設の整備に関する構想策定の基本方針について』が1995年12月に三省の関係課長の連名で、都道府県に通知された。この枠組みにより、自治体の主体性で公共下水道・合併浄化槽・農業集落排水施設を選択することが出来るようになった。言い換えれば、合併浄化槽・農業集落排水施設について暫定施設にするかどうかは、自治体の判断に任されることになったと言うことである。
合併浄化槽事業のスタートは1987年である。同時に厚生省では合併浄化槽の設置について補助制度を開始した。合併浄化槽は、従来の単独浄化槽が便所の排水のみを処理するのに対して、風呂・台所等の雑排水を含めて処理する。合併浄化槽の処理水の水質については、公共下水道の下水処理場と同等のBOD20以下が達成されている。厚生省の補助制度で定めている補助対象区域は、現在では公共下水道の認可区域外と認可区域内の内で7年以内に公共下水道の整備が見込まれない区域となっている。また、合併浄化槽(標準家庭規模で横1.2m 縦2m程度)はかなり大きいために一定の設置用地が必要である。府中市を除く6市が何らかの形で合併浄化槽の設置・維持管理について補助制度がある。どうして、6市が合併浄化槽の補助制度をスタートさせたかは定かではないが、考えられる理由として、①公共下水道事業の遅れ、②全市的な市民の水洗化要望、③合併浄化槽は単独浄化槽では処理されない雑排水を含めて処理され、公共用水域の水質保全(悪化防止)に期待できること等である。しかしながら、各自治体の位置づけは生活排水対策として実施されており、単独浄化槽と同様に公共下水道接続までの暫定施設の印象が拭えない。その理由として十分な統計資料がないことで十分に説明ができる。
しかしながら、1993年に公共下水道計画を策定した秋田県の二ツ井町では、町長の交代により1994年に事業認可を得る予定であったものが、市民参加の委員会で公共下水道計画の見直しを行い、1995年度から合併浄化槽設置整備事業をスタートさせた。事業計画の変更を可能にした理由については、①町長のリーダーシップ、②高すぎる公共下水道の建設事業費、③多くの市民参加による合意形成、④三省協議会の設置の影響が考えられる。(表-8)
秋田県二ツ井町での下水道システム選択での予想事業費比較
|
表-8
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世帯数
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公共下水道
|
合併浄化槽
|
下水事業費
千円
|
1世帯当たり
事業費 千円
|
合併浄化槽
事業費 千円
|
1世帯当たり
事業費 千円
|
2,120
|
11,821,800
|
5,576
|
2,012,800
|
949
|
現在の公共下水道事業を見直し、合併浄化槽を正式に個人下水道として位置づけるには幾つかの障壁がある。制度・手続き的な課題としては、都市計画決定区域・事業認可区域の変更がある。市民側の課題として、①公共下水道と合併浄化槽の建設事業費の格差による不公平感の解消、②敷地内への設置への抵抗感の解消、③として①・②を含めた個人下水道制度の確立である。
最近、国や自治体では財政の健全化、限られた財政の中での効率・効果的な事業執行等を目的に、政策評価・事業評価制度導入が始まっている。この中には、計画策定後であっても事業執行が進捗しない事業について再評価を行う傾向が出てきている。これまで見てきたように、水洗化や公共用水域の水質保全を目的に行われてきた公共下水道事業についても、見直しをする時期に来ているのは明らかである。地域に適合した下水道システムの選択・見直しを市民参加で行うことは新たな分権化の時代の幕開けを飾るにふさわしいものである。
写真[公共下水道事業と親水施設づくりで蘇った恩田川]
2. 環境自治体と廃棄物(ごみ)
(1) はじめに
厚生省の統計(表-9 1995年データ)によれば日本全体の廃棄物の内、11.4%が一般廃棄物で88.6%が産業廃棄物となっている。廃棄物(ごみ)は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により、「家庭やオフィスなどから出る廃棄物」は一般廃棄物と定義され、処理・処分は各自治体(市町村)の責任とされている。「事業活動から出る廃棄物」は産業廃棄物と定義され、処理・処分は、そのごみを出した排出者(事業者)の責任とされている。廃棄物問題は焼却処理過程から出されるダイオキシン類等が環境に及ぼす影響への不安、最終埋立地の確保の困難や、瀬戸内海の豊島での産業廃棄物処分問題をみるまでもなく極めて深刻である。
本来は、産業廃棄物問題を含めて論じるべきであるが、産業廃棄物の処理業者の許認可や指導業務が基本的に都道府県事務になっていることもあり、市町村事務になっている一般廃棄物の処理・処分の状況から、今後の廃棄物(ごみ)行政のあり方について論じてみたい。
種 別
|
産業廃棄物
|
一般廃棄物
|
合 計
|
重量 万t
|
39,400
|
5,069
|
44,469
|
比 率
|
88.6%
|
11.4%
|
100.0%
|
注:データは厚生省発表のもの(98年発表・95年度データ)
|
(2) ごみ処理・処分状況について
一般廃棄物(ごみ)の総排出量(処理対象量に集団資源回収量を加えた量)については、厚生省から全国統計が出されている。最新のものは1998年発表でデータ(表-10)は1995年度(平成7年度)で、1人1日当たり1,105gとなっており、調査した7市のうちで3市(宇都宮市、藤沢市、横須賀市、1997年度のデータ)が上回っている。これは、都市部では事業系のごみ排出を含めて相対的に排出量が多いためと考えられる。逆に、リサイクル率(総資源化量/総排出量の%表示)では、7市全てが全国平均の9.9%を上回っており、中規模都市では一定のリサイクルが進んでいることが推察される。リサイクルが進んでいる理由としては、ごみの分別収集の効果があげられる。表-11・12、図-12・13参照
種 別
|
資源化量リサイクル率
|
非資源化量
|
合 計
|
重量 万t
|
502
|
4,567
|
5,069
|
1人1日当たり量 g
|
109
|
996
|
1,105
|
比 率
|
9.9%
|
90.1%
|
100.0%
|
注:データは厚生省発表のもの(98年発表・95年度データ)
|
表-13は、2000年4月時点で取り組まれている分別数である。藤沢・横須賀・八王子で廃プラスチックを含めた分別が始まっている。ステーション(ごみ集積所)で、紙・布・廃プラスチックを含めた全種類の分別収集を実施しているのは藤沢市のみとなっている。
紙パック・トレイ・ペットボトルの拠点回収については自治体によって取り組みが分かれている。また、生ごみの収集についてはコンポスト等の補助を全市で行っているが、収集・処理は実施されていない。
藤沢市と町田市が実施したごみの成分分析からは、紙類・プラスチック、生ごみへの対応が、さらにごみ減量・リサイクルを推進する大きなポイントになっている。
(3) 資源循環・環境保全型社会へ向けて
1997年の容器包装リサイクル法施行による分別の義務化により、少しずつリサイクル・資源化が進んでいる。現行の容器包装リサイクル法では、「消費者が分別排出」し、「市町村が分別収集」し、「事業者が再商品化(リサイクル)」するという役割分担になっている。リサイクルは、Reduce(減量)・Reuse(再利用)・Recycle(再商品化)の総合的な政策・施策が重要であるが、現行の容器包装リサイクル法では、生産の場でのごみの発生抑制が充分に機能しているとは言えない。例えば、ペットボトルの500mlビンの大量普及などが典型である。500mlビンの収集・リサイクルは極めて低い状況にあるといわれており、商品の製造責任強化の改正などによる再利用容器への転換などが重要である。また、資源循環型の社会づくりのための再資源化産業・システムの健全育成・発展なども引き続きの重要な課題であろう。幾つかの課題別に整理を行うこととする。
① 分別収集の細分化と徹底とごみ減量・資源化に向けて
人類史上にも例のない極めて深刻な産業公害に苦しんだ水俣市では、現在「資源ごみ」・「埋立ごみ」・「有害ごみ」・「粗大ごみ」・「燃やすごみ」の5種類を21に分別する「5種類21分別」の収集を行っている。水俣市では、「決められた日に、決められた場所で市民が自らごみの分別を行います」また、「ごみを出す日は地域住民のコミュニケーションの日です」として、取り組まれている。水俣市でも、課題は収集の時間帯に参加しにくい市民をフォローしていくことであると言われている。
7市でも半透明収集袋への変更や、廃プラスチックや紙類の効率的で有効な収集を含めて、分別収集の徹底・実施が検討されている。特に、廃プラスチックについては、幾つかの自治体での収集・中間処理(圧縮等の処理)へ向けて具体化が進んでいる。しかし、中間処理施設建設やリサイクルへの資源循環については、地域住民の合意形成、現行の焼却施設の安定焼却のためのカロリー確保や、リサイクル手法・再商品化の販路を含めて様々な問題が山積している。
表-14は、藤沢市と町田市が実施した可燃ごみの成分分析結果である。成分分析は、分別収集の達成度を見る上で重要な手法である。成分的には藤沢市、町田市とも同じ傾向にある。家庭系ごみの大きな比重を占める生ごみ対策を今後、どうしていくのかも重要な課題である。生ごみの対応については、コンポストや家庭用小型ごみ処理機への補助が中心に行われている。府中市などでは事業系の生ごみについての収集・堆肥化事業がスタートしたが、廃プラスチックのリサイクル同様に、他成分の混入など幾つかの課題が指摘されている。
自治体名
|
生ごみ(厨介)
|
紙類
|
プラスチック
|
繊維類
|
その他
|
水分
|
町 田 市
|
44.5%
|
19.1%
|
16.3%
|
2.3%
|
17.8%
|
-
|
藤 沢 市
|
湿ベース
|
11.7%
|
21.7%
|
10.4%
|
1.3%
|
5.4%
|
49.5%
|
乾ベース
|
23.1%
|
43.2%
|
20.6%
|
2.6%
|
10.5%
|
-
|
注:町田市の資料は98年度のもの10ヵ所の平均
注:藤沢市の資料は97年度のもの
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今後のごみ減量化・リサイクルの大きな比重は、「紙類」・「プラスチック類」・「生ごみ」の減量とリサイクルであることは論を待たない。分別・収集・処理・処分側の課題だけではなく、市民のライフスタイルや製造者の責任の問題についても、もっと深化した議論をしていくべきである。
② 環境保全型ごみ処理行政実現に向けて 脱焼却システム実現を目指して
ごみ問題が、極めて深刻な社会問題となっている理由は、(ア)ごみの最終処分場の確保が困難になっている。(イ)焼却場や最終処分場での排ガスや焼却灰・埋立物が環境に与える影響等である。今回の調査・分析では、量的な側面を中心に論じてきた。もちろん、ごみの量的側面からの分別・減量・リサイクルが最終廃棄物の縮小や環境負荷の軽減につながることは事実である。
厚生省の1998年度の発表(データは1995年度のもの)では、一般廃棄物最終処分場の残余容量は全国平均で8.5年(前年度8.7年)となっている。首都圏では、残余年数が4.8年(前年度5.2年)とさらに深刻な状況にある。今回の調査でも、宇都宮市と藤沢市を除くと基本的に自区内処理を達成出来ていない。埋立地確保は、引き続き深刻な状況にある。
7市の自治体では焼却場でのダイオキシン対策などに積極的に取り組んでいる。しかしながら、処理・焼却の過程で発生するダイオキシン類を始めとする汚染物質の影響は、将来的に継続するものであり、技術による解決には限界があることは間違いない。幾つかの比較的人口規模の小さな自治体で実践段階に入っているごみ処理での「脱焼却」システム実現へ向けて、行政・専門家・市民も真摯な努力を行うべき時代に来ている。
表-15[ごみ処理における焼却と埋立量]・図-14[ごみ処理における焼却量・埋立量]
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