旭川市の環境行政について

北海道本部/旭川市役所職員組合・清掃自治研

 

はじめに

  『快適でうるおいのある生活環境の創造のため、大量生産・大量消費・大量廃棄に支えられた社会経済・ライフスタイルを見直し、循環型の廃棄物処理を形成していく必要がある。
 ~中略~
 容器包装に係わる分別収集および再商品化の促進に関する法律にもとづいて一般廃棄物の中で大きな比率を占める容器包装廃棄物を有効に活用すること。
 ~中略~
 資源リサイクルを促進し、環境に調和した快適なまちの発展を継続的に可能とする真の資源循環型社会の形成を図るものである。』
 これは、99年6月に策定された「旭川市分別収集計画」(2000年~2004年)における計画策定意義の一部分です。
 旭川市は、96年1月より五分別収集が開始され5年を経過しています。
 しかし、分別そのものは一見順調に行われているように見えるものの内実の検証については行われていないのが現状です。
 このことから、清掃自治研としても、清掃現場からの意見として行政として環境問題をどのように進めるべきかを議論し、92年から自治研誌に掲載を行ってきました。

《自治研「あさひかわ」年度別掲載項目》
 92年 清掃自治研レポート(1)
    先進都市をたずねて 沼津・町田
    清掃自治研レポート(2)
    先進都市をたずねて 仙台
    「環境リサイクルまつり」を実施して
 93年 分別収集モデル地域アンケートを実施して
 94年 「リサイクル」は環境保全の第一歩
    新たなる清掃行政を求めて
 95年 容器包装リサイクル新法について
 96年 容器包装リサイクル法と今後の旭川の環境行政
 97年 旭川における環境行政について
 99年 旭川における環境行政の考え方
 特に99年(第10号)誌には、旭川市の廃棄物に関わる事項を項目別に網羅し、「環境保全・資源循環型社会」へ移行していくためのステップとして進言しているところです。
 しかし、行政としての旭川市の対応はソフト面・ハード面共に遅々として進んでいないのが現状であり、内実は法律が施行されたから、全国の同規模都市に遅れを見せないが為に、何とか体裁を取り繕うと言う姿勢が際立っているのが現状です。
 清掃自治研は、このような現状を踏まえながらも、旭川市が新たに開始予定のペットボトルの資源回収および粗大ごみの有料回収について記述するものです。

1. ペットボトル(PET)の資源回収について

 旭川市は2001年1月よりペットボトルの資源化回収を全市一斉に開始することとしていますが、その中間選別処理施設について問題が生じています。
 旭川市のペットボトル中間処理業務委託要領によると、中間処理施設に洗浄施設が設置されていないことが判りました。
 これは、(財)日本容器包装リサイクル協会の分別基準の概要に「ペットボトル」については「洗浄されていること」と明記されていることから、旭川市の資源化回収は最初の段階から「分別基準適合物」としてのペットの回収を諦めた資源化回収と言わざるを得ません。
 旭川市としては、ペットの洗浄については「排出する市民にお願いする」と説明されていますが、行政の立場として、きちんとした「分別基準適合物」として処理をする必要が求められます。
 96年より旭川市は5分別収集を開始し、資源物を選別処理しているところですが、選別施設のリサイクルプラザでは異様な臭いが充満しているのが現実です。
 これらは、びん・缶の中に異物が入っているのが原因で、一部分の排出者からの物と思われますが、分別回収開始に伴う住民説明会を実施したにも関わらず、びん・缶の洗浄が守られていないのが現実です。
 これらのことから、新たなペットボトルの選別施設には行政の責任として「洗浄装置」の設置を強く求めていかなければならないと思われます。
 リサイクル法は義務法ではありませんが、本市の場合アリバイ作りの資源化施設と受け取られても仕方のないことと思われます。

2. 粗大ごみの有料化について

 旭川市は、家電リサイクル法が施行されたのを機に、今まで無料回収していた粗大ごみを2001年4月から有料回収しようとしています。
 有料回収を実施する目的は、

 家庭から排出されるごみの発生を抑制し、減量化・資源化を推進することが重要な課題。
 将来、ごみ処理の有料化を考慮し、行政負担との調整を図る。
 処理費用の一部を住民に負担してもらうことにより、排出抑制や減量化・資源化の対象として有効であること。(粗大ごみ処理の有料化実施計画による)

 同計画によると、2001年4月から「特定家庭用機器再商品化法」(以下家電リサイクル法)の施行に伴い、家電主要4品目(廃テレビ・廃洗濯機・廃冷蔵庫・廃エアコン)について、製造業者等の再商品化や小売り業者の引き取りが義務付けられ、消費者はその処理費用を負担することとなり、行政サービス向上に配慮し、住民の公平性や適正処理確保の必要性を踏まえ、処理コストについて一定の市民負担の導入により、ものの大切さや市民のごみ処理に対する関心を高め、効果的な排出抑制と減量化・資源化を一層推進するため、有料性による戸別収集を実施する。
 また、粗大ごみの基本定義として

 製品としての形状があること。
 家庭から排出される耐久消費財等。
 一辺または直径50㎝以上250㎝未満、重量が100㎏未満のものとされ、料金は一律1点650円と規定されている。

 この定義からすると、家庭から排出される一般の粗大ごみについては、洋服タンスからテレビ台・電話台まで一律料金であり、行政サービスとしての市民負担の公平性が求められるとは考えられない。また、粗大ごみの例外的取り扱いとして、家電リサイクル法の対象機器の中で、著しく破損・腐食しているものは製造業者の引き取り対象とはならないため、市で回収・埋立処分することとなるが、その際は大きさや重量に関係なく粗大ごみとして取り扱うこととしている。また、リサイクル可能な家電対象機器で、業者が引き取り義務の無いものについては、大きさおよび重量に関係なく粗大ごみとして回収・埋立処分をする。と定義づけている。
 ここには、大きな問題が包含されている。
 第一に、あらかじめ再商品化するとして製造業者に処理費用を支払っている場合であっても市で回収する事もできるとされているが、排出する市民が処理費用を支払っていることを認知せずに排出した時は新たに処理費用として市の定律料金1個に付き2,800円が必要となり、重複支払の可能性があること。
 第二に、家電リサイクル法の対象機器として小売業および製造業者に引き取り義務があるとされているが、法の義務として整然と履行が可能なのか。
 第三に、粗大ごみを回収・処理する上で、電話受付時および回収時でのトラブル発生がおきないか。である。
 また、処理困難物とされている種類の中で「廃スプリングマットレス」については、販売業者が引き取らなかった場合、市で回収・処分を実施するとしているが、分別マニュアル冊子や中園処分場の計量棟の看板にも「処理できないごみ」「搬入できないごみ」と明記されていることから、今回、処理困難物として粗大ごみ扱いをする意図が不明確である。
 ごみを処理するのに費用が掛かるので、市民にも応分に負担をしてもらうと言う考え方は、粗大ごみだけに限る事柄ではないと思われます。
 ごみ処理について全面有料化を示唆するものではありませんが、有料回収に踏み切る時点においては、現状の清掃工場の売電費やリサイクルプラザの売益費を市の一般会計に繰り入れるのではなく、資源循環型社会を築くための施設整備や、環境保全に利用することなど、市民に見える状況を作ることが重要であり、ただ、集めて処理しているのではなく、市民協同の形で『資源循環型社会』を求めて行く必要があると思います。

3. 資源化施設の分散について

 現行の資源物選別施設のリサイクルプラザは近文町に設置されていますが、ペットボトルの選別処理施設はリサイクルプラザから離れた「永山町」に設置が予定されています。
 他都市の例でも、ほとんどが一地域に資源化施設としてまとめて建設されています。
 旭川市は、今後増える事が確実な資源化物の処理施設について、資源化施設の分散をどのように考えているのか、甚だ疑問としか言いようがありません。
 言葉的に「資源循環型社会を求めて」とアピールしていますが、資源化施設が分散していることにより、ごみ処理に関心のある市民の見学にも支障が出てくるのは明白です。
 資源化施設の設置については、総合的な視野を持った一元化が求められ、排出する側・処理する側、共に学習できる施設の建設が必要となり、共に学んで行くことが、資源循環型社会の構築の一助となることは間違いのないことと思われます。