環境保全への参加と協働

三重県本部/名張市職員労働組合

 

1. はじめに

 1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」が開かれ、世界の183ヵ国、約2万人参加のもとに地球規模の環境問題の現状、一国のみの解決では対処できない、グローバルな問題の解決をいかにすべきかが議論された。
 すなわち地球規模においては、フロン使用によるオゾン層破壊、化石燃料使用における地球温暖化問題、森林破壊、砂漠化、酸性雨などがある。
 たとえば、われわれが日常生活で使用、廃棄している木材1つとっても、これらの問題と切り離せないものとなっている。
 日本が世界の非難を浴びている熱帯雨林破壊問題、日本は、世界最大の熱帯木材輸入国である。その破壊面積は1,300万㎡といわれ、この木材貿易量は世界の40%にも上り、ヨーロッパ全体の輸入量に相当し、しかもそのことだけにとどまらず、地球温暖化の原因になる二酸化炭素の増加や局地的な異常気象にも大きくかかわっている。
 これらはわれわれが環境問題を見落し、人間の欲望をコントロールできずに根底的そして、泥沼的命題をつきつけている。
 今日の環境問題をひき起こしたのが、より快適な生活、利便性を追求することにより、急速な技術を要求を促し、そのことにより生ずるものが、ごみとなってわれわれの前に表出する。
 本来、環境問題の根底にあるのは「人の心」であり、物質的な豊かさを追求するあまり、人びとは心の「ゆとり」を失ってしまっているのではないのだろうか。
 大量生産・大量消費・大量廃棄のライフスタイルというものをどう変えていくのか、一自治体の取り組み、単組の活動を通して、議論を進めたい。

2. ごみゼロ、リサイクル社会にむけて

 名張市は、三重県の北西部、上野盆地の南西部に位置し、古くから伊勢参りの宿場町として、また近代においては、伊賀・大和の境界における地域経済の中心地であり、昭和40年代以降は、大阪へは約60kmという地理的背景により、桔梗が丘をはじめとする大規模な住宅団地が開発され、工業団地の造成や青蓮寺ダムの完成などとともに、急速に都市化が進み、人口増に対応した都市の基盤づくりがすすめられ、それとともに名張市のごみ排出量も増大しているのが実状である。
 では、ごみとは何かである。ごみはわれわれの生活とは切っても切れない関係にあり、人間が人間として生活している限り、必ずごみは排出され、出されたごみは何らかの形で処理、またはリサイクルされている。
 法的に定義すると、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では、廃棄物とは固形状又は液状の汚物、不用物」となっている。
 一般に、ごみということばから何を想起するであろう。台所のごみ、ごみ袋、ごみ箱、ごみの臭い、パッカー車、ごみの焼却工場などを連想するであろうし、生ごみのほか、不燃ごみ、粗大ごみ、資源ごみと大別されるであろう。また、ごみは固形状のものだけではなく、し尿、洗濯後の排水等も、一般廃棄物として含まれる。すなわち、われわれが日常生活のなかで不用なものとして捨てるものがごみといわれるものであろう。
 人間が生活している限りごみは必ず出る。このことは、年齢、地位、職業などに左右されない。1996年度には、一般廃棄物の発生量は、5,115万トンが発生し、国民1人あたりでは1,114kg/日となっている。1990年代以降はほとんど増加せず、排出量は横バイ状態である。
 次に、厄介な問題として、ごみに対する嫌悪感がある。ごみやし尿は誰もが嫌がるばかりでなく、これを処理する職務に対してまでも、偏見と差別があるのが現状である。快適な住環境をというニーズがあるなか、ごみをとにかく一刻も早く、家の中からなくなれば、車の中からなくなれば、ステーションからなくなれば、ここからなくなれば、後は無関心でいられるのが、ごみ問題の解決をよりいっそう難しくしている。
 自分が出したごみの行方に最後まで関心を持つことと、目の前からごみが消えればいいという思想の隔たりは大きなものがあり、使い捨ての生活を平気で続けていくこと、この思想を、元沼津市長の井出敏彦氏は「ごみかくし」と表現している。
 次に、昔も今も、人間が集中する場所では、ごみを処理するには、どうしてもお金が必要である。1996年度では一般廃棄物処理に2兆2,843億円となり、1tあたり44,700円の処理費用がかかっており、国民1人あたり年間18,200円に相当する。このほかにも産業廃棄物や事業系一般廃棄物の処理のために民間企業などが支出する費用があり、これらも合わせた日本の廃棄物処理の総費用は4兆円以上と推計されている。これはGNP(国民総生産)の約1%程度になり、その処理費用は年々増加している。
 名張市においては、1992年に名張市快適環境基本条例、同年水辺環境マップの作成、1994年なばり快適環境プランそして、1995年から1997年にかけて、快適環境資源情報集の作成がすすめられた。
 資源関連として、1992年よりびんと缶の分別収集を開始した。
 びんは白(透明)・茶・黒・青(緑)の4分別であり、缶はスチール、アルミの分別である。また、1995年には一般廃棄物処理基本計画を策定した。そして、1996年より、冷蔵庫、エアコンのフロンガス回収を開始し、同年ペットボトルの店舗店頭回収を実施し、公民館等での回収も行っている。2000年4月より、ごみゼロリサイクル推進室とISO14001への取り組みをはじめ、7月よりは、新聞、雑誌、ダンボール、及び古繊維類の資源回収を実施することとなり、その率先運動として、市役所各職場が紙類を6種類に分け、ごみ箱の大半を撤去した。

3. ごみ減量とリサイクルへの提言

 ごみを減量化することは、ある意味においては、今までの価値観や生活スタイルに変化を及ぼさなければならない。そしてリサイクルの技術においては市民レベルではどうしてもできないので、これは完全に企業へもどさなければならない。
 最近使われることばに、4つのRというものがある。
  ① Refuse  リフューズ  ごみを発生源でたつ、すなわち生産段階で、極力ごみになるものを作らないこと。
  ② Reduce  リデュース  ごみを減らす、ごみになるものを家へ持ち込まないこと。
  ③ Reuse  リユーズ   ものを捨てないで生かして使うこと。
  ④ Recycle リサイクル  再資化すること、もう一度資源になるよう努力すること。
 まず、リフューズであるが、これは市民段階では非常にむずかしいものがあるが、日常生活の中で、本当に必要なのかじっくり考えた上で、徹底的に検討し、企業側に提言していかなければならないだろうし、企業側も技術の問題もあろうが、ISOなどの取り組みを積極的に進めなければならない。
 次にリデユースである。これは市民段階からの働きである。普段スーパーやコンビニなど手ぶらで買い物に行く人が多いが、そこでもらうレジ袋は、年間国民1人あたり、150枚消費している。またポリ袋はタダのように勘違いしているが1枚5円前後の値段が、商品にはねかえってきている有料のものである。買い物に行く時には、買い物袋を持参する行動が必要であり、以前にはよくあった風景であった。またトレーなどは回収行動の前に、必要かいなかを見極めなければならない。トレーもダイオキシンを発生するものが多いのである。また、日常生活の中で、一番ごみになるのは、食品ごみであり、年間1,600万tにもおよぶ、このごみを減量するには、「環境家計簿」を利用し、冷蔵庫の中からはじめなければならない。衝動買いや、テレビ、新聞、チラシにまどわされず、必要以上のものを買わないことであり、家族構成から見てスーパーなど郊外型、パック型ではどうしても無駄が多い時は、個人商店で買う方が便利であるし、スーパー等でも小分け売りを要求しなければならない。
 リューズであるが、現在びんなどはワンウェイ方式が多いが、一昔前の日本においてはリターナブルとして、ビール、お酒などは、デポジット方式として、酒屋さんなどが回収していた。繰り返し使えるものが、大量廃棄のラインに乗っている。空びんは買った店に引き取ってもらうべきである。洗剤、シャンプー等も、容器を再度利用できる詰め替え用商品、あくまで合成洗剤でないものを購入する。不用になった古着は、ゆずったり、バザーやフリーマーケットに出し、バザーやフリーマーケットの情報も市の広報に載せている自治体もある。また、修理代の方が新品購入より高くつく場合が多い電気製品も、故障した時のことを考え、少々高くてもアフターサービスがきっちりした店や、すぐ修理に来てくれるお店で買った方が長く使え、後々得をする。それからデザインなどがよく変わるものなどは、レンタルやリースを活用することにより、家から廃家電として排出を少なくすることができる。
 最後にリサイクルであるが、言い古された言葉であるが、資源には限りがあり、快適や利便性を追求するあまり、使い捨て商品が氾濫し、もったいないという気持ちが薄れ、バブル崩壊、オイルショックなどがおきた時に、大きなつけとしてわれわれの生活に返ってくる。新聞、雑誌、ダンボールの古紙、アルミ、スチールの空缶、空きびん、古布、プラスチック、ペットボトル、トレーなど再び資源に戻さなければならない。そのためには、集めるリサイクルだけでなく、「使うリサイクル」の推進が社会的課題である。資源循環型社会をめざす中で、分別回収は地域により様々な回収方法が考えられ、多くなればなるほど、手間と費用がかかる。しかし、そこにおける方法としては、地域のコミュニティーづくりを構築した水俣市の取り組み(ごみ諸会議)など工夫が必要であり、永続牲がなければならないし、前にもいったように、自分が分別し、出した資源ごみが、どこに行ってどういうふうにリサイクルされているのかについても関心がなければ、リサイクルされ商品などになって生活の中に戻ってきていることに関心をもったり、その再生品を積極的に購入することはなく、分別、リサイクル、再利のリサイクルの輪が途切れてしまうことになる。リサイクルはあくまで処分量(焼却、埋め立て)の減少にはつながるが、排出量の抑制にはつながらない。しかし現段階の取り組みとして、ごみの減量化、資源エネルギーの節約、環境負荷の減少、ごみ処理コストの削減などを考慮してすすめていくべきである。

4. 名張市職労の取り組み

 昨年よりマスコミをにぎわした「環境ホルモン」とくに、Pc食器からのビスフェノールAが給食職場を中心として、「食」の安全に関わるものとして大きく取りあげられた。
 その中にもう一つ、給食職場に関係深い「環境ホルモン」が存在した。それがノニルフェノールである。これは、合成洗剤の成分として、界面活性剤などに使われ、厚生省も内分泌撹乱作用が疑われる化学物質としてあげている。とくに合成洗剤は皮膚に障害を与えるだけでなく、合成洗剤で洗った食器、食物には合成洗剤が残留していて体内に入り、肝臓に負担をかけ、発がん推進の補助、奇形の原因物質であるという学者がいることから、自治労三重県本部が開発した、リンピアヘの取り組みをすすめた。学校はもとより庁舎内、出先機関での使用、年末、メーデー等の行事においての配付をすすめた。これは、伊賀地方が淀川の最上流部にあり、隣県の滋賀県が琵琶湖の水質保全として、早くからせっけんを使用し、同じ淀川水系の県として、市民に広げる前に組合員に理解してもらうために行った。まだ全域的な取り組みにはすすんではいないか、このことにより環境問題への関心が高まることを期待し、新たな取り組みを含め活動していくことを検討している。

5. おわりに

 1970年の廃棄物処理法制定以降、数多のごみ問題に関する法律がつくられ、改正されてきた。家庭で、地域で、職場であふれるごみ、そして行き場を失ったごみもある。先の国会ではごみ政策の基本法となった循環型社会法など5つのごみ関連の法律が成立した。それは取りもなおさず、ごみの減量、リサイクルが国際的な潮流であり、世界の焼却工場といわれる日本が、ダイオキシン輸出国にならないための施策である。
 では、われわれはどれくらい、環境のことを考え、行動しているのかを、商品を購入した時、廃棄する時もなければならない。すなわち、環境を考えずに経済優先で進んだ20世紀、投棄場所に過疎地が狙われている、産業企業の無責任さ、大量消費社会のひずみが露呈したと言われている香川の豊島の産廃問題は、多くをわれわれに教示してくれたし、それからさかのぼること、日本は、環境問題の大きな事件として、水俣病を経験している。そこでは、水俣病の貴重な経験を教訓とした地域づくりが行われ、市民、企業、行政一体となった環境再生への協働作業がすすめられている。環境問題を考えて行くとき、そのはじめとして、自治体が市民にいろいろな場を提供し、場を提供するよう、自治体の労働組合として、援助、協働していかなければならないし、一市民としての意識を高めなければならない。

位置、面積、気侯
 位 置  北緯34度37分27秒
       東経136度6分40秒(市役所庁舎)
 海 抜  225.9m(市役所庁舎)
 面 積  129.76㎡
 広ぼう  東西10.55km  南北13.10km

 標高は最高877m、最低162mで山地が多く、気候は山間盆地特有の典型的な内陸性気候です。年間降雨量は1,300mm前後、年間を通じて西風が常風で、特に冬季に強い風が続くことがあり年間数日の積雪をみることもあります。
 比較的寒暖の差は大きいものの年平均気温は約15℃と全般的に温暖です。
 市域の約3分の1は、赤目一志峡県立公園及び室生赤目青山国定公園に指定されている地域です。

図1 名張市(三重県)の地図

環境家計簿

廃棄物の分類

広報なばり