1. 学校焼却炉の廃止までの経過
京都市では、平成9年7月23日付けの文部省による各都道府県教育委員会への通知文「学校におけるごみ処理等について」を受けて、平成9年8月28日、教育長名で全市の学校・幼稚園に、焼却炉の使用においては紙類の焼却に限ること及びごみの減量並びに分別の徹底とリサイクルの実施を要旨とする「学校におけるごみ処理等について」を通知した。10月1日に教育委員会と清掃局とで学校焼却炉廃止対策プロジェクトチームを発足、学校焼却炉の廃止に向け、検討が開始された。
学職労においても組合情宣「きょうと学職労」にて教育委員会の通知を踏まえ、ごみ減量と分別収集についての徹底を組合員に訴えるとともに、学校におけるごみ問題について組織内の研究機関である京都市学校用務研究会で教育委員会、校長会との三者の連携の下、研究を開始した。
その後、平成9年10月30日付で文部省から各都道府県に対して、学校焼却炉の使用を原則廃止する旨の通知が出され、京都市においても市民や児童・生徒の健康を守るため、平成10年4月1日をもって、学校焼却炉の使用の廃止が行われた。
教育委員会は平成10年4月10日までに全市の学校・幼稚園にごみ一時保管用のコンテナ設置を完了、13日から全校の可燃ごみの定期回収を開始した。
学職労では平成10年5月19日、「平成10年度第1回京都市学校用務研究会」を開催し、焼却炉廃止に伴う諸課題について協議。当日は教育委員会、校長会からの出席を要請し、各学校現場における様々な問題についての話し合いを行うとともに、今後の取り組みについて協議した。
そして、確認事項として、①回収業者は収集用トラックまでコンテナを移動するか、コンテナの配置位置まで校内に入り、積み込み作業を行うこと。②コンテナに付けてある鍵の開閉については、回収業者にも鍵を渡してあり、業者自身がごみの回収時に開閉することができること。の2点を確認するとともに、今後の予定として、コンテナ不足校へのコンテナの追加配分やコンテナ移動時に使う取手の取り付けなど、焼却炉廃止後の組合員の要望を申し入れた。また、ごみ集積場所に屋根を設置する工事についても、工事必要校について5月末から着工し、6月末に完了することを確認した。
現在、京都市では学校から排出されるごみを次のように分類し、全て業者による収集により処理している。①紙・布・ビニール・小型プラスチック類等の可燃物、②ガラス及び陶磁器の破片の類、③土砂及び瓦礫の類、④空き缶及び鉄屑の類、⑤大型ごみ、⑥学校給食の調理による残菜。この内、①、⑥については定期回収、その他については学校から業者に連絡し随時回収してもらうことになっている。
また、リサイクルが可能な古紙は分別収集を徹底し、リサイクルルートに乗せてごみの減量化に取り組むこととなっている。
2. ごみ減量化の取り組み
(1) ごみゼロの日の取り組み
京都市では平成10年、京都市自治100周年事業として、市民、事業者、ボランティア団体、行政のパートナーシップの下に、「世界一美しいまち・京都」を実現するため、ごみゼロの日(5月30日)から1か月間を「まちの美化推進月間」と位置付け、100万人の市民の参加を目指して「100万人のまち美化大行動」を実施した。「まちの美化推進月間」の期間中には、市民、事業者、ボランティア団体、学校を挙げて、町内、事業所、商店街、観光地、学校等の周辺清掃を実施するとともに、道路、公園、河川の重点清掃、違反広告物、放置自転車の一斉撤去が行われた。学職労においても、組合員に対し、学校内外の美化により一層努めるとともに、ごみの減量化を訴えた。この取り組みは平成10年度以降も、ごみゼロの日(5月30日)の取り組みとして、各学校等において環境教育の一環としても実施されている。
(2) 生ごみ堆肥化処理機の導入
京都市では学校におけるごみ減量・リサイクル及び児童への環境教育の一環として、学校給食から出る生ごみを分解して堆肥を生成する「生ごみ堆肥化処理機」を平成11年4月から小学校2校にモデル設置している。導入する機械は、給食の調理屑、残菜、残飯を微生物の働きにより発酵分解させ堆肥に変えるもので、自然に近い循環システムにより生成された堆肥を学校の畑や花壇に利用するなど、自然環境についての児童の体験的学習への活用をも図るものとなっている。
導入機器の使用は次のとおり。①処理方式…バイオ方式(有機物を分解する微生物の働きを利用。)②処理対象物…肉、野菜、骨、ごはん、パン等生ごみ全般。③処理能力…約48時間で堆肥化し、毎日生ごみを投入できる。
機器の操作は管理用務員が中心となり、教職員が行っているが、導入後約1年半を経過してのメリットとデメリットを尋ねると、メリットとしては、①子どもたちに対する環境教育に効果があった。②ごみの減量に繋がり、また、学校で必要とする堆肥を賄えることから、経費の節減にもなる、と言う答えがあった。また、デメリットとしては、①実施1年目であり、機器をうまく使いこなすことができなかった。②いれる野菜の種類によって使用する微生物の量も異なり、さらに出来上がる堆肥の性質も異なるため、注意が必要。③堆肥の性質のばらつきがあるため、その取り扱いが困難であり、使用しても根腐りを起こしたケースがあった、というものであった。
堆肥の取り扱いについては他都市でもたいへん苦労されているようだが、導入当初と比べると、ノウハウの蓄積によりある程度の改善はされているようである。
(3) その他
各学校において、牛乳パックの再生紙・トイレットペーパーへのリサイクル、廃油による石鹸づくり、空缶の回収、古紙の回収、使用済みテレホンカードの回収等、児童・生徒の環境教育の一環としても幅広く行われており、管理用務員もそれぞれの取り組みに大きく関わっている。
3. 最後に
焼却炉廃止から2年半が経過するが、廃止により無用となった焼却施設の撤去については、京都市ではまだ行われていない。(一部撤去されている学校もある) 他都市においても経費上の問題から、放置されているところもあるが、完全撤去となっている都市も多くある。京都市においても、児童・生徒の安全上の問題からも、早期の撤去を望みたい。
ごみ減量化・リサイクルについては今後とも各学校において分別収集を徹底するとともに、組合員に対しても環境問題についての研修を実施するなど、管理用務員としてだけではなく、21世紀に生きる人類共通の課題としての意識付けを図っていかなければならないと考えている。
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