1. ISO14001とは
(1) ISO14000Sは、1996年に発行された「環境マネジメントシステム」に関する国際規格で、地球的規模の環境破壊~地球温暖化・オゾン層破壊等~に対して、企業や行政の自主的な環境問題への取り組みです。
企業の活動では、原料の調達、製造工程、製品使用・廃棄等環境に負荷を与えることが考えられ、こうした環境への負荷を最低限に抑えることが地球環境を考える上で必要です。また、行政においても事務執行や施策の展開、サービスの提供において環境へ負荷を与えない観点を持たなければなりません。このような視点に立って、「環境マネジメントシステム」としてISO14001が規格化されています。
基本的な特徴は、
① 企業・行政(組織)の全体的なシステムであること。
② 将来にわたって持続するシステムであること。
③ PDCAのプロセスを重視すること。
*計画(Plan)
実施・運用(Do)
是正・予防(Check)
見直し(Action)
であり、各々の組織を単位とし、全組織あげての取り組みであることが必要とされ、また、イベント的によくありがちな1回限りのものではなく、将来にわたって持続させること(組織の構成人員が変わったとしても、継続し得ることが求められる)です。
さらに、PDCAという考え方に基づいて手順をマニュアル化することで、その過程が客観視されることになります。
(2) 認証取得に求められる事項は、ISO14001全体に示されていて、
○ 一般的要求事項
○ 環境方針
○ 計画~環境側面他
○ 実施及び運用~体制及び責任他
○ 点検及び是正措置~監視及び測定他
○ 経営層による見直し
となっています。もともと環境マネジメントシステムは、1992年のBSI(英国規格協会)のBSI7750、1995年のEUによるEMAS(環境管理・監査スキーム)が実施され、それを背景としてISO14001が規格化されており、その発想や構成はいわば欧州的で、マニュアルや文書管理、また用語においても馴染みにくさがあります。
その一つが『環境側面』という用語。『環境側面』は、環境ISOのキーワードの一つで、定義は、環境と相互に影響し得る、組織の活動、製品またはサービスのことを指します。その調査抽出と特定は、極めて重要な作業といえますが分かりにくい用語です。
また、認証の有効期間は3年であり、3年置きに審査を受けることになります。
2. 京都市山科区役所における認証取得に向けた取り組み
(1) 1999年1月4日、京都市長によって、京都市の3事業所(山科区役所・青少年科学センター・東部クリーンセンター)についてISO14001
認証取得宣言がなされました。
この時点から、各々の事業所において、認証取得に向けての具体的な準備が開始されました。
なお、山科区役所の概要については、以下のとおりです。
※ 所 在
地:京都市山科区椥辻池尻町14-2
※ 職 員 数:245名
※ 総合庁舎:1972年竣工
※ 業務内容:地域振興及び広聴、戸籍、住民基本台帳、市民税及び固定資産税の賦課・徴収、児童及び母子家庭等の福祉、国民健康保険、地域保健、介護保険、食品衛生及び環境衛生に関すること 等
※ 組 織:区民部(企画総務課、地域振興課、市民窓口課、市民税課、固定資産税課、納税課)、福祉部(福祉課、保護課、保険年金課、長寿社会課)、保健部(健康づくり推進課、衛生課)
認証取得までの山科区における主な取り組みの経過は、次のとおりです。
認証取得宣言
1999年1月4日
導入体制の確立
5月10日
初期環境調査
5月下旬~
環境方針策定-----------┐
目的・目標設定 ├-- 8月下旬完成
計画策定 --------------┘
計画の実施・運用 9月1日試行開始
点検・見直し
内部監査、経営層による見直し
10月下旬~
審査登録機関による審査 12月中旬
認証取得 2000年1月11日
山科区役所における取り組みの具体的な内容については、別紙・環境方針・各課の取り組み(企画総務課の場合)を参照。基本的には事務系の職場であるため、目に見えた変化が分かりにくい難しさがあります。
(2) 認証取得後の取り組みとしては、継続的改善状況のチェックとして、毎年審査登録機関(JACO-日本環境認証機構)の審査を受け、また登録の有効期限は3年であるため、3年目に審査を受けることになっています。
* 認証機関-1国に1機関。日本-財日本適合性認定協会(JAB)。
3. 労働組合の視点から見たISO意義と問題点
(1) 地球環境問題に対する自治労の取り組みは、1991年10月の自治研全国集会における『環境自治体づくり』の提起以降、環境の視点に立ったまちづくりや、環境にやさしい事業活動がなされてきています。
また、今後環境自治体づくりの運動をさらに発展させていくには、環境の視点からまちづくりをすすめ行政のあり方を改革する「環境主義」と同時に、市民との連携・共同行動を推進し、新しい社会関係を築いていくことが提起されています。
こうした観点から、ISO14001認証取得について検討してみる必要があります。
(2) ISOの認証取得状況は、1999年10月1日現在、世界で11,977件、うち日本が2,531件(京都市内21件)、地方公共団体は26件となっており、ある種ブームのように現在も取得件数が増えていると考えられます。この背景には、企業としては、特に海外での取引に有利・企業のイメージアップ等があり、自治体としては、環境問題への自治体としての姿勢を示すこと等があげられます。
ISOの考え方は、先に述べたように、継続性を重視することやその組織のその時点での力量に応じた計画と実践が重要とされるため、どのような組織・事業所でも入りやすい点も特徴の一つです。労働組合の環境問題への取り組みが、『地球環境問題』や『環境主義』等、大上段に方針を構えて、いきおいその場限りの運動になっているとすれば(若干言い過ぎですが)、それぞれの職場組織の中で、多少の意識をもってできるところから実践をしていく、さらにその実践がマニュアルによって管理され、常に一人一人に意識されることになれば、その意義は十分見出だすことができます。ISOは、環境問題へのアプローチの一つの手法として、あるいは、『環境自治体づくり』に向けて有効なものと考えられます。
(3) 「市民との連携・共同行動を推進し、新しい社会関係を築いていく」ためにも、自らが、しっかりと意識を持った環境問題への取り組みをしなければなりません。
ところが、我が自治労京都市職本部にも言えることだが、立派な『環境主義』の方針とは裏腹に、書記局では、コピー用紙の無駄遣い、電気のつけっ放し、空き缶の無分別収集等、まさに地道な身の回りからの環境問題への取り組みが不十分です(人に厳しく自分に甘い)。
山科支部の取り組みは、そうした意味では、あまり大層な方針を掲げてはいません。支部ニュース(⇒別紙)によって、一定の見解を示し、職場の中でともに実践をしていくスタンスで側面的な協力を行ってきました。そうした中で、例えば、コピー用紙の節約・再利用や、缶ビンの分別収集等それまで何も考えずにごみ箱へ捨てていたのが、「チョット待った」と心の中で環境を意識するようになったことは、重要な意味があると思います。
(4) 幾つか問題点を指摘すれば、省エネへの矮小化、継続するがゆえのマンネリ化、コンサルタントへの依存等が考えられます。
京都市には、エコ・オフィスプランがもともと策定されていますが、これはどちらかというと無駄をなくす、節約する、電気を消すといった窮屈な取り組みで、「節約」という観点だけでは一面的で、例えばその事業所の特性を損なう場合も考えられます。ISOについても、単なる省エネへの矮小化には、注意する必要があります。
「継続性」は、ISOでの最大の特徴であるといえますが、これも組織構成員の意識を含めて継続していかなければ意味がなく、時の経過とともにいずれISO担当者だけの取り組みに陥ってしまう危険性があります。その時にこそ、労働組合が『環境主義』の実践の立場で支えていくことが必要です。
また、昨今行政施策の様々な分野でもコンサルタントへの依存の比率が高くなってきているようです。コンサルタントから専門的な分野で、専門知識を得ること自体に問題があるとはいいませんが、ISOのような未知の分野での「助言」についての依存とその費用効果については、しっかりと判断し自覚的に対応する必要があります。
(5) いずれにしても、環境問題への取り組みは、方針や計画そのものに目的があるのではなく、いかに日常的に実践していくかが問われます。ISO14001認証取得は一つのきっかけ(しかし重要な)にすぎません。地球環境にやさしく生活をすることができるかは各人の意識、それを包括する地域、企業や行政等の組織が密接に関わりあって実現していくものと思います。
JACO登録証
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