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EYEマークというのは、目の形をしたマークのことである。このマークを所定の許諾文とともに本の奥付に載せると、その本を障害者福祉のために録音図書にしても差し支えないと著作権者が宣言したことになる。自治労京都府本部社会福祉評議会では、著者の方々に自著の奥付にEYEマークと許諾文を掲載していただくための取組み、すなわちEYEマーク推進運動を行っている。以下、その取組みの状況について報告する。なお、EYEマークの形及び許諾文の文言は資料1のとおりである。 1. 視覚障害者の読書の状況 視力に障害者のある人たちが、晴眼者が使う文字(墨字)で書かれた本を読むためには2つの方法がある。その1つは墨字を点字に翻訳する点訳である。他の1つは墨字を音声によって読む方法で、本を朗読して録音テープに吹き込み、録音図書を作成することを音訳(おんやく)と言う。 2. 音訳(おんやく)に対する法的制約 著作権法第37条で視覚障害者の読書に関する規定が定められている。同条第1項で点訳については誰がやっても差し支えないことになっている。ところが、音訳については同条第2項によって厳しい制限がなされ、原則として著作権者の許諾がない限りすることができず、例外として政令で定める施設が盲人のために行う場合のみ著作権者の許諾なしにしても差し支えないことになっている。この政令で定める施設として点字図書館は指定されているが、一般の公共図書館は指定されていない。これは、点字は盲人しか読めないが録音図書は障害者以外の者でも聞くことができるので、障害者のために作った録音図書が一般の人に出回って、本を買わずに録音図書を聞いてすますことになれば、財産権としての著作権を損なうことになることを恐れたものと考えられる。 3. 著作権者の許諾を得るための手続き 公共図書館では、視覚障害者から録音図書作成の依頼があると著作権者に許諾を求めるための文書を発送し、許諾を可とする回答があった後録音図書の作成にとりかかる。許諾を拒否されることは殆どないが、許諾の回答が遅れることはしばしばある。今をときめく人気作家ともなれば、超多忙なうえファンレターをはじめ郵便物が毎日山のように届く。障害者福祉に冷淡というわけではないが許諾の回答をすぐには出せない。その本が発行されて久しい場合は、著者の住所をつきとめるのに難渋することもあるし、各章を分担して執筆されている場合は、そのすべての人から許諾の回答を得なければならない。このような事情のため公共図書館の職員にとっては不本意ながら録音図書の作成が大幅に遅れることがある。 4. 著作権法改正の必要性 公共図書館が録音図書を作成するようになったのは、1970年代になってからである。したがって、すでに30年近くが経過しているが、当初恐れていたような事態すなわち公共図書館が障害者福祉のために作成した録音図書が一般の人に出回って、それを聞いた人が本を買わずにすます、といった事態は生じていない。これは、公共図書館の障害者サービスを受ける人のモラルの高さもさることながら、墨字の読める晴眼者にとっては本を目で読んだほうがてっとりばやく、テープを聞いてすますというしんき臭いことはする気にならないことによるものと思われる。 5. EYEマーク推進運動 以上の経過から関係者はその後著作権法の所轄官庁である文化庁に法改正のための陳情を繰り返したが、状況ははかばかしく進展しなかった。日本の官庁はどこでもそうだが、消費者よりも生産者の声に耳を傾ける傾向がある。文化庁も御多分に漏れず、生産者である著作権者の団体が法改正に難色を示してしいることから、いっこうに腰を上げようとしない。このような状況にしびれをきらした志ある人たちが1992年11月にEYEマーク・音声訳推進協議会を結成し、EYEマーク推進運動を始めた。EYEマークの形と許諾文の文言はその人たちの考案によるものである。この運動の趣旨は著作権者の人にあらかじめ自著にEYEマークと許諾文を掲載することによって、障害者福祉のために非営利で行う音訳についての事前承諾をしていただくことによって、障害者から録音図書の作成についてのリクエストがあったときはタイムラグなしに音訳ができるようにしようとするものである。 6. この運動の必要性 EYEマーク推進運動については、関係者の間で評価が分かれている。音訳をめぐっての法的制約については、あくまでも法改正という正攻法によって解決すべきであって、個別に著作権者の了解を得ようとする運動は脇道にそれた運動だとする意見がある。この意見を主張する人はさらに、EYEマーク推進運動が始まって8年もたつのに、EYEマークを載せた本の数はごくわずかで、1年間に出版される本の数の1%にも満たない現状では、今後の展望が持てないとしている。しかし、私たちは次に述べる理由によりこの運動は必要であると考えている。 (1) 法改正への動きの追い風を作ることになる。 (2) 法改正によってできる範囲はそれほど広くはない。 (3) 運動の進展の可能性 7. これまでの取り組みの経過 (1) 自治労の組織への提起 (2) 京都府議会における提起 (3) 関係団体への働き掛け (4) 世論への訴え 8. 今後の課題 (1) 図書館労働者への呼び掛け (2) 障害当事者への呼び掛け (3) 他の障害者団体との共闘 (4) その他の全国組織への働き掛け 9. 最後に 自治労京都府本部が再建されて今年で10年。社福評では、京都府本部障害労働者連絡会を結成するべく努力中である。EYEマーク推進運動を成功させることによってその気運を盛り上げたいと考えている。全国の仲間の皆様方の暖かい御支援を願う次第である。
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