食べ物は人間にとって一番大切な「命の糧」です。戦前の貧しかった食生活、戦後の食糧難の時代、現代は飽食の時代ともいわれ、「食」の急激な変化がこの20~50年の間にあった。さらに過去の歴史を顧りみるなら、人間は自分を取り巻く自然環境の中に存在する動・植物を自分の「食」とし、生命を次の世代へとつないできたが、何と言ってもこの全ての時代に共通する最低必要条件は「安心して食べられる」ということだ。戦後まもなく、子供達へ給食を提供するにあたり、全く何も無いなかから、学校給食の食材料の調達・献立内容・調理方法・配食方法・食べる器・洗浄方法などなどの多方面に渡った段取りが、諸先輩たちの並々なら努力と試行錯誤の繰り返しの中から、作られてきた。しかし、その当時は戦後の敗戦処理からの復興のため、アメリカに足かせをはめられ、何等自由のきかぬ中での学校給食の実施であったから、細部にわたった検討や将来的な対策などが、十分検討されずに文部省や学校給食会に引きずられてきた。学校給食の普及も完全な状況になった昨今、これからの21世紀を背負って立つ子供達への遺産として、もう一度学校給食について見直しをしておかなければならない。このことは、輸入自由化や日本の農業のいく末への不安、そして、なによりも先進諸国といわれる日本の食料自給率が、大変に低いという大きな問題を抱えており、いかに日本農業の崩壊をどこでくいとめるか、学校給食の改善が果たす役割は重要なものになってきている。その新たな仕事としての学校給食の改善が、調理員の努力にかかっていると考えられる。
1. 食材料の大切さ
健康に「食」が重大なかかわりあいがあることをだれも否定できない、毎日食べるものに、もし健康を脅かすようなものが含まれていたなら、それを食べ続けていると、いつかその影響が現れる事は確実。また偏った食生活が引き起こす病気も知られてくるようになり、とくに、子供達は大人と違って、食べ物から骨や肉や血を作っている過程にあるわけですから、その食べ物の原料の善し悪しが、その子の一生の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。その大切な時期の小学校6年間・中学校3年間に学校給食を食べる子供達に対して、私たちは最善と思われる給食を提供するための努力をしなければならない。食べ物の安全を脅かすものとして、食品添加物・農薬・化学薬品・養殖・輸入食品・放射能・放射線照射・環境ホルモン・ダイオキシンの汚染問題などがあり、学校給食で使用される食材料の購入にあたっては、日本体育・学校健康センターという、官僚・教育庁・校長の天下りの特殊法人の機関から購入しなければならないようなシステムになっている。
いかにもこの機関を通さなければ学校給食ができないという錯覚におちいり、そのため、その素材の点検・確認ができず、無添加といえども原料の添加物についての問題が残ってしまう。まだまだ、安ければいい・おいしければいいという風潮が蔓延しており、あらためて子供達の命と健康を守るためには、給食の食材はどうあるべきかに関心を持たなければならない。給食の中身というのは、それだけ大事なもので、安心して子供たちは給食を食べられないことにもなるし、拒否する権利さえ出てくる。(子供の権利条約)
2. 直営であるから可能な学校給食改善と働くことへの意識改革
そもそも、自治体が、保護者に成り代わって子供達に昼食を提供している、そのためには、安全な食材料で、給食を提供していく事を、責任を持って対応していかなければならない。人命を携わる業務として、大変重要な部分であるにもかかわらず、自治体の勉強不足も手伝い、臭いものに蓋方式で放置されてきた。しかし、子供の成長と健康を考える自治体も現れ、「無添加給食の日」や「無農薬・無添加給食の日」を設けているところや学校給食の食材を保護者に選定させているところもある。そして、地域の農家の助成や姉妹都市の支援などを考えながら、安全な食材料の供給経路が作り上げられれば、学校給食会の独占を阻むことができるかもしれないし、日本農業の活性化も夢ではなくなる。それには、安全物資選定委員会なるものを各自治体で設置し、給食関係者、学校関係者、保護者で形成し、地場産業対策・食品研究・契約栽培対策などを中心に展開し、農協や生産者と手を結び安全な農作物などの契約栽培を行い、地場で作れないものを姉妹都市で契約栽培を行っていくことなどを基本に、無添加食品などの物資の指定も行っていく。自治体の学校給食担当課や栄養士は、安全物資選定委員会が指定した一覧の中から物資を選んで使用していく。また、学校給食職場は、自治的な職場であり、毎日の給食作りが、自分達の考え方で出すことのできる職場で、切り方から作り方や洗浄方法、ありとあらゆる物まで自分たちで決められる自治的な職場である。管理職が、短期間の異動で交替を繰り返すばかりで、多くの問題を抱えている学校給食に対しては、雑務が多すぎて一定程度の最低限のことしか熟知できえない職場である。
しかし、学校給食というものは、次世代を担う子供の健康と命に大きくかかわっており、片や日本農業や食糧自給率から発生する日本の飢餓の問題(一部では疑問しているが)など、学校給食を改善していくことによって、種々様々なことへ影響を及ぼしていくことがわかってきた状況にあります。「学校給食改善」のためには現場の間題点をさらけ出し、それを1つ1つ解決していくことが大切であり、たとえば新規採用者に未経験の者が多い場合には、調理の基本的なマニュアルを作成し、未経験者が配置されても困らないようなシステムを作る努力が必要。また、調理の質の向上のための措置と、個々の職員の才能を引き出すための、三期期間を有効利用した研修や講習の提案、そして、住民・保護者への講習も実施とともに、学校給食改善のための全国的な調査と情報収集を進めていく。
3. 将来の納税者のための学校給食への転換
学校給食に、行政はもっと門戸を開いて、物資選定、物資購入、献立作成などに保護者を参加させるべきで、実際に行政が真剣に学校給食に対して考えているならば、まず第一番目に「子供の命と健康を考えるはずである」が、給食の中身の食材料について選定基準なるものを持っている所が、果たしてあるのだろうか。
食品添加物の問題にしても、おそらく基準が国によって作られているので、その許容範囲ならば安全として考えている。しかし、1つの食品に数十種類の添加物が入っている場合の複合汚染については、まったく考慮していないし、食品添加物すら知らない行政の管理職が存在するのである。やはり、自治体の行政の中で3~4年で異動しなければならないということで、なかなか腰を据えて仕事ができない宿命もあり、「これが学校給食だ」というものが、未だに見えてこないし「永遠のテーマ」としてある、ならば各地域で種々様々な学校給食の在り方を考え、それを実践していく中で互いに競争しあって、良い点は見習い、悪い点は改善していくなど、「これが学校給食だ」というものを造り出していくことが、21世紀の新しい業務・職種として現れてきたのではないだろうか。子供は、地域で取れた物で育て、全国的に同じ物を食べさせて一律に育てる必要ないのであって、地域の実情にあった子供達の真の健康と命を育てていく工夫がほしい。現場と学校と地域が、1つになって子供達のために全力を尽くしていく姿こそ、古くて新しい「学校給食の在り方」ではなかろうか、学校給食の改善とともに地域の食生活の改善を図り、それぞれの人間を改善していくことが、21世紀を背負って立つ子供の命と健康を守るために、我々にできる作業ではなく仕事ではないだろうか。行革や合理化に対して、一時の特効薬的な解決策ばかりを探求するのではなく、常日頃からの活動として「直営だからこそできる対策」を職場からつくりだし日々実践していき、これからの学校給食の在り方を早急に地域でどうしていくのか、はっきりすべき時ではなかろうか。それらの中心として給食現場に調理員がいるのであって、それらの活動(子供たちのための学校給食をどう進めていくかの研究・調査活動)を行政と地域とで保障していくことも必要である。
「学校給食の改善」は働くものの意識改革も同時並行して行わなければ、まったく意味はなく地域を変え国を変えて、子供達の住みよい社会を作り上げていくという、とてつもない考えである。それは、調理現場からどんどん地域に出ていって、家庭や保護者の現状を把握しながら、地域食をどう生かしていくかにかかっている。地場の野菜・米を使用し地域の活性化をはかり、輪入自由化に向けての対応としては遅いかもしれないが、学校給食が一番のはけ口として狙われており、それぞれの地域での学習や阻止の取り組みが必要になってくる。そのためには現場の調理員が、自ら学習や調査をしながら今後の学校給食の在り方を作り上げることが急がれる。
4. 学校給食行政21世紀に向けて
(1) 再度基本方針づくり
児童数減や輸入自由化の悪影響を考える中で、新たな方向性を見い出だす。市内の子供達の発達環境の現状の悪化、子供の体力・活力の低下、心身発達のアンバランス、孤立、没個性、仲間への思いやりの欠如などに問題が生じているため市、家庭、学校が協力して重点的に対策を進めていく、これらと関連して学校給食現場においても子供達の健全な育成に寄与し、子供達が、これからの高齢化社会を支えられるように施策を練っていく。
(2) 給食職場の機構改革
組織内の体制強化をはかり円滑な運営で合理的な業務の遂行を行っていく。職員の士気・意欲の向上をはかる工夫、市民サービスの向上などの推進、職員の資質を高めるような職場環境の整備をはかるため給食職場内の風とうしを良くするためにもの横のつながりを強化し、職員の声・提案が実践できる職場環境をつくる。そして、食に関連した地域教育、市民サービスなどの企画立案、実践に向けて新たに係を設ける。
(3) 地域教育(食教育・健康教育)の強化をはかる
地域住民に対して学校給食づくりだけではなく、ゆりかごから墓場までといわれるぐらいの今までにない、給食職場からの行政サービスを提供していく。(料理講習・食の情報提供・子供の健康などなど)
市民と市政の間の情報ネットワークの整備・充実を求める中で、ソフト面での情報として、生きることの大切さ・食べることの大切さ・健康であることの大切さなどなど市民の健康保持増進に貢献する。学童向け事業の整備として、家庭、地域との緊密な連携により適切な対応を行い、子供の生活環境のなかで食や健康に関する改善をはかる。
(4) 給食行政進行会議の設置
給食職場に給食行政進行会議を設け、山積した課題を具体的に実施できるよう調査・研究を進め、子供達の将来を考えた「学校給食の在り方」を方針化する。
(5) 運営委員会、物資購入部会の強化
給食主任の学校内での地位向上など専門分野のレベルアップをはかる。子供の健全育成と生活環境の改善に向けた施策の体系として、給食課と学校・家庭の横のつながりを緊密にし、次世代の武蔵野市民の健全な育成を目指した市の総合的な方策の推進に参加する。そのため、学校での給食主任の地位向上は必要不可欠な問題であり、給食主任なくしては、充分な対応ができ得ない。そして、現状の子供達の体力強化、心身の発達、栄養教育など、子供達の発達環境の正常化に向けて学校側の希望する給食に関する施策を運営委員会で論議し、長期計画と活動体制を樹立し、学校と給食現場の溝を解消していく。
(6) 給食行政進行会議の設置
給食現場に調査・研究機関を設け、それらに題材を与える場として進行会議を設置し、ここを中心に長期計画から給食行政全般にわたる事項の企画立案されたものを検討し、実践に向けた段取り行わせる。さらに、分散している職場の情報交換から、給食課の取組みや考えが職場末端まで伝達できるようにしていく。
(7) 事務事業の見直し
高度情報網の中で、学校給食もあらゆるデーター収集、調査、報告が増大し、備品・消耗品管理などあらゆる点での業務が増えつつある。さらに、子供達の健全育成に向て、市保健センターとの連携や21世紀にむけて、どうしても合理性を持ち、機能的なものの必要性が問われるはずであり、どういう形態が望ましいのか早急に見直しを行うべきである。また、給食課内に新たな係を設置し、職員への教育・地域への教育の展開や栄養相談コーナー・食品検査などの業務を行う。
主 な 食 材 料 の 問 題 点
パ ン |
……輪入小麦の残留農薬 |
米 |
……残留農薬 |
牛 乳 |
……高温殺菌 |
牛 肉 |
……抗生物質 |
豆 腐 |
……凝固剤・消泡剤の発ガン性と原料の大豆の残留農薬、遺伝子組み換え |
鳥 肉 |
……抗生物質と成長剤 |
豚 肉 |
……抗生物質と調整剤 |
野 菜 |
……農薬・放射線照射・化学薬品 |
うどん |
……漂白剤・品質改良剤 |
チーズ |
……重合リン酸塩・調整剤・防腐剤・着色料 |
たまご |
……抗生物質・合成ビタミン |
果 物 |
……農薬・放射線照射 |
ハム類 |
……化学調味料・発色剤 |
魚 |
……プロピレングリコール・養殖 |
練製品 |
……重合リン酸 |
缶 詰 |
……甘味料・酸化防止剤 |
小麦粉 |
……農薬・殺虫剤・漂白剤 |
三 期 期 間 の 研 修 内 容
① それぞれの職場・職種に必要な免許取得のため研修や講習
② 職員による職員への研修や講習
③ 調理のイロハ、調理理論、調理実技
④ 給食従事者としての心構え
⑤ 食べる側から見た給食
⑥ 物資の検品法・点検法
⑦ 他市給食施設見学と報告会
⑧ 衛生講習(食中毒事例)
⑨ 調理機器の点検・整備方法
⑩ 食品栄養学・食品衛生学
子供達を取り巻く環境整備
当面の具体的な取り組み
(1) 米飯増
(2) 安全な食材料確保のための生産計画表、無添加食品一覧表づくり、供給路の調査と確保
(3) 学校、家庭との連携強化
(4) 保護者向け懇談会、各種講習会の実現
(5) 栄養相談コーナーの設置
(6) 食堂の設置(全校生徒収容)
(7) 陶磁器食器等安全な食器の導入
(8) 石鹸づくり(安全衛生体制の確保が条件)
(9) 労使協議会設置と活性化(子供たちのための学校給食づくりのために)
(10) 食品検査・衛生検査設備の充実
(11) 広報の活用
(12) 調理員・栄養士のクラス訪問
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