浦河ボランティア銀行と自治研活動について

北海道本部/浦河町職員組合


 浦河町の福祉全般について少しお話したいと思います。
 浦河町の人口は16,601人、1年間に新たに芽生える生命は170人前後、高齢化率は19.44%となっています。ご多分にもれず少子高齢化の道を歩んでいる状況です。
 又、福祉関連施設の整備状況に目を向けてみると知的障害者更生施設、身体障害者療護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、児童養護施設、町立4保育所、1僻地保育所、2民間保育所、在宅介護支援センター、老人保健施設、精神障害者共同作業所等々、各種施設の整備状況を見ると一定の水準に達していることがわかります。又、これに伴う各種ソフト事業も活発に行われ施設が十分利用されています。

≪浦河ボランティア銀行設立の背景≫
 このボランティア銀行事業については、平成9年4月より準備を進め、平成10年4月1日より活動を開始しました。(別添資料:北海道新聞切抜き)
 設立の目的は、ここ数年町内において高齢者、障害者の方々が在宅で暮らしていくための援助として行政サービスや民間サービスがたくさん行われるようになりましたが、このような方々がいつまでも住み慣れた地域で安心して生活し続けるためには行政サービスだけでは行き届かないところが出てくるだろう。という事で、町内にいる「ボランティアしたい人」と「ボランティアを受けたい人」を心と心で結びつける場として浦河ボランティア銀行を設立しました。発想は「サービスをしてもらう、してあげるではなく、あくまで地域がお互いに支えあっていく意識で活動したいということで住民が中心となって活動する住民参加型」を目指して設立されました。
 この事業は、日高管内で初の試みでもありました。実際の活動の内容としては、ボランティア活動をしたい町民が、希望するサービスや活動できる時間などを同銀行に登録。逆に受けたいサービスの希望を受け付けそのニーズに応じて登録者を派遣します。提供者は16歳以上の個人か団体で利用者は概ね65歳以上のお年寄りか身体障害者(年齢不問)となっています。サービスの内容は清掃、洗濯などの家事代行、庭の手入れや家族の留守時の見守り等となっています。
 サービスを受ける人は1時間につき
100円を銀行に支払います。提供者は1時間当たり1点を「通帳」に貯め本人と町内在住の親又は配偶者がその「貯蓄」でサービスを受けることが出来るというものです。

≪浦河町職員労働組合との関係≫
 労働組合との関係となりますが、当時、銀行が発足して間もなく利用者の登録はある程度出てきたものの提供者の登録が思うように進まずコーディネーター(利用者と提供者のコーディネートする人)が調整に困難を呈しました。その1つの要因に給食サービス事業の拡大がありました。(実施主体は町、委託事業者浦河町社会福祉協議会)この事業は当初、週1回 延3,544人分の給食を配送(配送・回収と声かけ)しておりましたがこれを週5回 延4,020人に拡大した事があげられます。これによりまずボランティアの提供者の人数が不足してまいりました。又、配送に使用する車も当然不足するようになりました。このような状況の中コーディネーターより『役場の組合で取り組み願えないか』という話がありました。執行部段階で種々検討致しましたが、先ず当時どのような参加とするべきかという問題がありました。年休を取って参加すべきかボランティア休暇で対処すべきか、ボランティア休暇を取得する場合、時間単位で取得が可能なのか、総務課とも協議を致しました。次に車の運転に伴い交通事故にあった場合の保険関係等々の問題が話題となりました。当時ボランティア銀行で加入してた全国社会福祉協議会の保険内容は対人事故が絡まないと保障対象とならないというものでした。例えば、冬期間に給食の配送車がスリップして車を破損した場合、保障対象とならない為自分の加入している保険を使用せざるを得ない状況でしたし、又ボランティア休暇中の事故については、公務災害とならない事等次々と課題が出始めました。組合(団体)として、損害賠償保険に加入可能かについて各損害保険会社と協議を行いましたが、組合としては結局加入は出来ませんでした。
 その間も何度も種々執行部の中で協議・検討を行ってきましたが、明確な組合としての方向を見出せず日にちだけが経過していきました。
 この種の問題を抱えたままでの見切り発車は組合としては絶対してはならないというのが執行部の一致した見解だったのです。

≪ボランティア銀行と浦河町職員労働組合の今後≫
 平成12年4月1日より公的介護保険制度が施行となりました。
 ボランティア銀行もこの制度により設立当時とは様変わりせざるを得なくなり、「高齢者自立支援団体 ポエム」を設立し介護保険のいわゆる漏れた方々に対して有償奉仕団体を設立し、それ以外の活動をボランティア銀行で継続していく事となりました。前記の諸問題についてですが、車については、昨年度途中、軽自動車のリース車で対応、又保険についてはボランティア保険と移送サービス保険で対応可能となりました。その後も一労働組合がこのような事業に参加することの是非について執行部で検討致しました。
 これらを整理し取組課題としてのメリットとデメリットについて整理すると次のようになります。
メリット①  『労働運動のみが組合運動ではなく地域や民間活動との関わりが自治研活動の本旨であること、それにより労働組合の存在意義について理解を深めてもらうことができること』
メリット②  『介護保険の導入に伴い相互扶助の意識を高め労働組合として、自主福祉活動の取り組み成果として位置づけられること』等があげられます、
 デメリット及びリスクとして
 ① 『組織として取り組む以上組合員の安全(交通事故等の保険問題等)を確保しなければならないこと』
 ② 『組合として取り組むとした場合』コーディネーターから労働組合に依頼があった場合、組合が人の配置を決めなければならない新たな負担が生まれる。(個人個人に参加の依頼は出来ても最終的に強制は出来ない事)
 労働組合という団体としてではなく、個人登録にした方がよいのではという話にもなり、様々な議論をしていく中で最後は労働組合で加入する意義は? という問題も浮き上がってきました。しかし実は最も重要な事は、これを持続継続させなければならないことが基本にあるのです。

≪中間的まとめ≫
 「ボランティア」の語源を紐解いてみると、ラテン語のvolo(ボロ):自発的行為を行う人のことを指すようです。一方西欧では正規軍の補完的役割を担うという軍隊用語であったようです。
 個人の自発的行為を何故組織で? という課題は先にも述べましたが(ポエム)の抱える現実的課題に目を向けると実は無視できないというのも事実なのです。
 我が国では、無報酬と自発性に重きが置かれた社会貢献活動という意識が相変わらず強く、むしろ社会における循環性や多様性などが本来言う「ボランティア」としている西欧から見ればますます我々自身の意識レベルを切り替えなくては、組織の組合員に「取り組んでみよう」という呼びかけをストンと落とせないのが現実ではないでしょうか。
 しかしそうかと言って、執行部の誰か彼かが人の配置に奔走するのも正直言って非現実的で、今時頓挫しているというのが実態なのかもしれません。
 今後は、例えば個人の基本的意思を最大限尊重し、例えば自分の車を給食の配送に使用した時のガソリン代を組合が組合員に対して補助をすることなどは可能ではないか等、活動に組織が参加するというより参加した組合員に対しどう支援していくかという観点での取り組みができないか等課題提起し、今レポートのまとめとします。
 又、「ポエム」に対し給食サービス等で構造的問題が内包されていないか等の分析・評価について、客観的立場で意見を述べる機会に参加する等、とりわけボランティアとして活動している人たちが抱えている課題解決に向け、労働運動を通じた学習能力を生かす側面的支援などを行えないかについても同じく課題提起し中間的まとめとします。

≪参考資料≫

当初登録者数

  個 人   団 体 
利用登録 12
提供登録 9

平成12年5月8日現在登録者数

  個 人 団 体
利用登録 19 2
提供登録 15 4

平成11年度延べ利用者数
 延べ利用者数  978人
 延べ利用時間 1,301時間

[資料]  平成10年3月27日 北海道新聞、平成12年3月11日 北海道新聞