白神山地の環境保全の現状と課題

青森県本部/青森県職員労働組合 

 

1. はじめに

 白神山地は、青森・秋田両県にまたがる約13万ヘクタールに及ぶ広大な山地の総称です。このうち中心部の17,000ヘクタールが1993年に世界遺産(自然遺産)に登録されました。世界遺産登録地域は、人為の影響をほとんど受けていない世界最大級のブナ原生林が分布し、その原生林には多種多様な動植物が生息・自生するなど貴重な生態系が保たれています。
 ツキノワグマ、イヌワシ等の大型哺乳類や鳥類からブナの落葉の下の微生物にいたるまで、ブナの森全体が博物館的様相を呈しています。この遺伝子貯蔵庫(ジーンプール)ともいえる自然環境が、世界遺産として普遍的価値を有していると認められたわけです。
 しかし、登録に際しては、ユネスコから我が国政府に対して、環境保全に関する改善勧告がなされた経緯がありました。その改善勧告では、世界遺産として登録されるためには、特に、次の3つの条件をクリアすべきであるとの提言がなされていました。
 ① 世界遺産推薦面積の拡大
 ② 当該地域の法的地位の格上げ
 ③ 保護管理体制の整備
 これに対し、我が国政府は、①の「推薦面積の拡大」については、林野庁の抵抗はありましたが10,000ヘクタールを17,000ヘクタールに拡大しました。結果的には3条件の中では、ユネスコ側が一番重要視していたこの推薦面積拡大が評価され、白神山地の世界遺産登録は実現しました。
 しかし、条件の②と③について、我が国政府は、「今後努力する」旨の回答をするにとどまっていました。そして、登録から7年を経た現在、政府は、ユネスコに対し、②、③の条件についても「概ねクリアした」と報告していますが、実態は、何も前進していません。
 このレポートでは、②の「法的地位の格上げ」の問題がどうなっているのか、そして③の「保護管理体制の整備」の現状について報告し、今後の課題を明らかにすることとします。

2. 環境保全の現状

 ユネスコの提言にあった「当該地域の法的地位の格上げ」とは、具体的には、「世界遺産保護法(仮称)を制定し、その法に基づいて世界遺産登録地域を保護管理してほしい」という意味でした。これに対し、我が国政府の回答は、「当該登録地域は、すでに国内法で手厚く保護されており、その法律の上にさらに法律を制定することは、屋上屋を重ねるに等しく無駄である」というものでした。
 政府のいう国内法というのは、「自然環境保全法」、「自然公園法」、「森林法」、そして「文化財保護法」のことを指します。政府の主張は、「現行法律の運用で、世界遺産登録地域の保護管理は、万全を期すことができる」というものです。したがって、「新たに世界遺産保護法を制定する必要はない」というわけです。
 それでは、世界遺産登録地域の保護管理の現状をみてみることにします。
 世界遺産登録地域は、一部が国定公園に指定され、自然公園法により保護管理がなされています。そして大部分の地域は、自然環境保全地域に指定され、自然環境保全法により保護管理がなされています。
 また、登録地域の全域が、水源かん養保安林に指定され、森林法により保護管理がなされています。
 さらに、登録地域には、クマゲラをはじめカモシカ、ヤマネ等何種類かの天然記念物が生息していますが、これらの天然記念物は、文化財保護法により保護管理がなされています。
 前述したこれらの法律に基づき、環境庁、林野庁、文化庁、県が保護管理を実施しているわけですが、各省庁と自治体の役割分担がきちんとなされているわけではありません。
 また、それぞれの管理主体によってなされている事業や各種の処置や措置のすべてが、法律に根拠を有しているわけでもありません。
 いくつかの例をあげれば、秋田県内の登録地域にあっては、コアゾーンヘの立ち入りを禁じていますが、青森県内にあっては、27ルートについて、コアゾーン内への立ち入りを認めています。このように両県の措置に違いがありますが、このことは、国(環境庁、林野庁)が、青森県と秋田県では違う対応をしていることを意味しています。こうした措置も特定の法律に根拠を有しているわけではないため、それぞれの県の関係機関連絡協議会で勝手に決定した結果が、このような措置の違いとなって露呈したものです。
 原生自然環境保全地域の場合は、法律で「立ち入り」が禁じられていますが、単なる自然環境保全地域(白神山地は世界遺産登録後も単なる自然環境保全地域のままである)の場合、立ち入り制限はできません。貴重な植物の採取の制限が可能なだけです(白神山地の場合、108種の貴重な植物について、採取が制限されている)。
 もっとも、世界遺産だからといって、単純に「立ち入り制限」を課すことは、環境保全の方法としてベストとは言えません。なぜなら、人間は、すばらしい自然環境を直接見たり、触れることによって、はじめて感動し、その保護の大切さを痛感することになるからです。
 したがって、秋田県の関係機関が実施している「立ち入り制限」に対しては、単純に賛成することはできません。まして、現行法を改正して、「立ち入り制限に法的根拠を与えよ」というつもりは毛頭ありません。
 白神山地世界遺産登録地域の一部は、国定公国に指定されていますが、全国の国立公園28ヵ所、国定公国55ヵ所には、国民が自由に立ち入りし、自然を満喫できるよう、数多くの遊歩道が建設されています(自然公園法では立ち入り制限を課していないから)。このことを、考えれば「立ち入り制限」が愚策であることはすぐ理解できるはずです。
 また、サガルマータ国立公国(エベレスト山を含む)をはじめ世界各地の世界遺産のほとんどでは、立ち入り制限を課してはいないそうです。
 現代においては、自然環境の破壊が一層深刻になり、白神山地においても「入り込み者数が増大しても、自然環境を守るにはどうしたらいいか。」が問われていることは確かです。しかし、そのための対処の仕方が、「立ち入り制限」一辺倒なのでは、すばらしい自然環境を次代に残すことができたとしても、「宝の持ち腐れ」のようなことになってしまいます。
 なぜなら、「白神山地は、どのような普遍的価値を有しているのか。なぜ次代に残さねばならないのか。」を理解するには、直接見たり、触れたりする経験が不可欠だからです。
 したがって、単純に「立ち入り制限」を課すことよりも、国、自治体が一体となって啓発・啓蒙に力を注ぎ、環境学習等の「別の対策」を講じることが、はるかに重要なはずです。
 青森県側(津軽森林管理署)の対応にもいろいろ問題があります。
 青森県側は、27ルートについて立ち入りを認めていますが、なぜか、奥赤石林道から「クマゲラの森」を経由して、赤石川二股まで続くルートに関しては、実質的な意味で「立ち入り制限」の措置が講じられています。
 なぜなら、津軽森林管理署が、奥赤石林道入り口に、頑丈なゲートを構築し、林道に車が入れないようにしているからです。この林道封鎖の地点(ゲート)からは、バッファーゾーンまででも10㎞以上離れています。これでは、コアゾーンの「クマゲラの森」どころか、バッファーゾーンにたどり着く前に疲れて歩けなくなるでしょう。
 したがって、奥赤石林道の封鎖は、実質的な意味で「立ち入り制限」とみなさなければなりません。しかし、この「林道封鎖」という措置も法律に基づく措置ではなく、この国有林林道の所有者である津軽森林管理署長による恣意的な措置にすぎないのです。
 津軽森林管理署では、「林道封鎖理由」を、当初は、「入り込み者の環境破壊から世界遺産を守るため」としていました。しかし、自然保護団体から、「国有林の別の場所では、今も世界遺産から10㎞以内のブナ原生林に、新たに林道を数路線建設しているが、これらの林道を建設しても世界遺産は守れるのか。」と指摘されると、奥赤石林道封鎖の理由を変えました。
 「奥赤石林道は、林道内に崩落箇所が多く、通行車両の安全確保が困難なため。」というのが現時点の理由です。しかし、林道封鎖理由の変更は、法律に根拠を有しない措置の場合、署長の恣意でコロコロ変わることをあらためて示してくれたにすぎません。
 署長は明らかにしていませんが、多分、この林道封鎖の本当の理由は、林道起点(ゲート設置箇所)からバッファーゾーンまでの10㎞間において、過去のブナ原生林の伐採(というより乱伐)が、あまりにひどかった(当然、そのこと故に世界遺産登録地域から除外された)ので、「恥ずかしくて誰にも見せられない」ということなのでしょう。
 また、この林道封鎖は、別の問題をも引き起こしました。世界遺産への入り込み者だけでなく、地元住民(鰺ヶ沢町赤石川流域住民)までもが入山できなくなってしまったからです。ここの住民は、明治になってから設置された林野庁よりも、はるか以前から(数千年前から)この山に入り、山の幸の恩恵を受けてきました。したがって、地元住民に与えた影響は甚大でした。怒りが爆発してしまった地元住民は、これまでに何度もゲート及び鍵を破壊してきました(犯人は不明。津軽森林管理署は、破壊されるたびに新しく作り直してきた)。
 一方、現行法に基づく行為でも問題が発生しています。現行法(森林法)は、世界遺産といえども例外扱いにするわけではないからです。なにしろ森林法は、世界遺産をも念頭に置いて制定されたわけではありません。
 現在では世界遺産であるブナ原生林は、世界遺産登録以前から水源かん養保安林に指定されていました。そして森林法では、保安林であっても許可を受ければ伐採できるのです。したがって、しかるべき法的手続きをとれば(伐採許可申請書を提出し、伐採許可を受ければ)伐採は可能です。
 水源かん養保安林の指定は、農林水産大臣の権限ですが、伐採許可の権限は、大臣から都道府県知事に委任されています。したがって、国有林の所有者である林野庁(津軽森林管理署)であっても、保安林の伐採に際しては、知事の許可が必要です(この知事権限は、県の農林事務所長に委任されている)。
 世界遺産登録時に、環境庁と林野庁は、「ユネスコ」に対して、「世界遺産保護法という新たな法律制定をしなくても、日本にはりっぱな現行法(自然環境保全法、自然公園法、森林法、文化財保護法)があるので、自然環境の保全は大丈夫です。」と大ミエを切りました。ところが、登録から数年後、この現行法に基づいて(というよりも現行法を利用して)、「世界遺産のブナの木を10本ほど切りたいので許可してほしい」という許可申請書が、実際に、青森県知事あてに提出される事態が発生しました。
 平成10年に、秋田県知事(自然保護課)から青森県知事あてに、世界遺産登録地域内のブナ林の伐採許可申請が提出されたのです。秋田県(自然保護課)がブナの木を伐採したい理由は、「自然保護課の建設した展望台から青森県側のブナ原生林を見るために、展望台そばのブナ10数本が邪魔になるので切らせてほしい。」というものでした。
 秋田県(自然保護課)は、青森(鰺ヶ沢町)・秋田(八森町)両県の県境に、ブナ原生林を展望するための展望台を建設しました。これは、秋田県民に青森県側(鰺ヶ沢町)のブナ原生林を見てもらうための展望台でした。秋田県側の八森町のブナ林は、青秋林道が県境まで建設された時点で皆伐され、姿を消していたからです(当然、八森町の世界遺産登録面積はゼロ)。
 伐採許可の権限を、青森県知事から委任されている西地方農林事務所長は、困惑しました。まさか、隣県の知事から世界遺産のブナの木の伐採許可申請書が提出されるとは考えたこともないからです。しかも、その伐採理由が、「展望台のそばのブナが邪魔になって、眼下に広がる広大なブナ原生林と岩木山がよく見えない」という理由なのですから。
 農林事務所が県治山課保安林班に相談したところ、「森林法だけで判断すれば、水源かん養保安林を構成している数10万本のブナの木のうち、10数本のブナ木を伐採しても、水源かん養機能が損なわれることはない。つまり、伐採許可をせざるを得ない。ただし、伐採対象が、世界遺産のブナであることを考慮すれば、こうした森林法による判断以前に、環境庁や林野庁が「世界遺産の保全管理はいかにあるべきか」という面から判断すべきではないか。」というものでした。
 西地方農林事務所は、秋田県に対し、県治山課保安林班の解釈を伝えました。あわせて、「ブナ原生林の所有者である、津軽森林管理署長の同意書が必要だが、署長はブナ伐採について同意しないだろう。」と付け加えました。
 ところが、驚いたことに、秋田県(自然保護課)が反論するには、「すでに津軽森林管理署からは、伐採についての同意書をもらってある。それだけでなく、同意書を発行してもらうに際しては、津軽森林管理署の担当者だけでなく、環境庁の担当者と秋田、青森の森林管理局(分局)と両県の自然保護課の担当職員にも現地調査への同行を願った。そして、関係機関による現地調査の結果が“伐採もやむを得ない”というものだった。」とのことでした。
 西地方農林事務所では、ただちに自然保護課(青森県の)に電話し、ことの真意を確かめたところ、「現地調査に同行していないし、ブナの伐採に同意したこともない。」とのことでした。しかし、その他の関係機関のメンバーは、確かに秋田県(自然保護課)の現地調査に加わり、ブナの伐採に同意した(やむを得ないと判断した)ことがわかりました。
 西地方農林事務所は、県治山課保安林班の指導(法律解釈)で、「森林法上は、秋田県知事の伐採許可申請に対して、“許可しなければならない”」ことは承知していました。しかし、同時に、世界遺産であるブナの伐採を、森林法の条文だけで解釈することに大きな疑問を持っていました。当然のことながら、伐採を許可した場合の県民(国民といった方がいいのかも)のリアクションも、よく承知していました。つまり、森林法に基づき適正に判断しただけなのに、西地方農林事務所長すなわち青森県知事が、自然保護団体やマスコミに袋叩きされることになるであろうことをです。
 そこで、西地方農林事務所は秋田県(自然保護課)を説得しました。伐採許可した場合、それが森林法上適法であっても、伐採許可した青森県(西地方農林事務所長)だけが、国民から糾弾されるだけでなく、その伐採許可を申請した秋田県(自然保護課)、並びに、伐採について同意書を送付した津軽森林管理署(つまり林野庁)、さらに現地調査に同行した世界遺産センター(環境庁)もすべて世論の批判にさらされることになることを説明しました。
 そして、今一番良い選択は、「秋田県(自然保護課)が申請を取り下げることである。」と説得したのです。秋田県はこの説得を聞き入れて、ブナ林の伐採許可申請を取り下げしました。そのために、マスコミで袋叩きされるような騒動にはなりませんでした(秋田県能代市の地元新聞には報道されたが)。
 一連のこの出来事で、考えねばならないのは、環境庁と林野庁の考え方です。「現行法で世界遺産を守る」としたことの結果が、このような事態を招いたという認識がまるでないからです。もともと世界遺産を対象に制定された法律ではない法律を都合よく利用して、「世界遺産の自然環境を守るどころか、自然破壊に手を貸している。」という認識がないのです。
 世界遺産登録時に、なぜユネスコが、「法的地位の格上げが必要」と提言したかがわかるような、法的現状が続いているわけですが、当事者である環境庁と林野庁にその自覚が欠落していることが問題なのです。
 同じことが、管理主体のことでも言えます。本件の17,000ヘクタールのブナ原生林の管理にしても、環境庁が主体なのか、林野庁なのか県なのかがはっきりしないのです。
 世界遺産センターやビジターセンター等の箱物にしても、国の管理、県の管理、町村の管理とバラバラです。役割分担さえきっちり整理されていればそれでもかまわないのですが、管理の一貫性を保ち、関係機関の調整を図る主体がどこなのかはっきりしません。
 自然観察歩道等の道路や標識、看板の設置や管理にしても、同じように管理主体はバラバラです。
 管理主体のことにしぼっても主張したいことはヤマほどあります。しかし、ここでは、国立公園28ヵ所、国定公園55ヵ所の中で、世界遺産に登録されたのは、屋久島と白神山地しかないことを考えれば、当然、国立公国管理事務所(現在は国立公園・野生生物事務所と名をかえている)よりも大きな建物に多くの職員が勤務してしかるべきはずです。しかし、環境庁の世界遺産センターには、現在、2~3人の職員しかいないことを指摘しておきます。
 また、環境庁自身が施工しなければならない歩道工事や標識設置工事等が、青森・秋田両県に施行委任されており、両県職員が県費ではなく、国費で工事を施工している事実も、環境庁の当事者能力欠如の例として指摘しておかねばなりません。
 林野庁にしても、本来、森林法並びに国有林野法に基づいて、自分の山(国有林は)は、自分で守る(パトロール)べきなのに、環境庁の委託を受けて国有林のパトロールを実施しています。こうしたばかげた事実もあわせて指摘しておきます。
 前述したとおり、「管理主体のあるべき姿」のことでもまだユネスコの提言が、未だに何も解決されてはいないのです。

3. 環境保全の課題

 世界遺産登録時に環境庁と林野庁は、「世界遺産保護法を制定しなくとも現行法で世界遺産を守る」とユネスコに回答しましたが、回答とはウラハラに、その現行法を逆手に利用して、登録地域の自然破壊(ブナ林の伐採)に手を貸しているありさまです。また、管理主体のことに関しても問題は何も解決してはいません。
 一連のこれまでの経緯で明らかになったことは、「現行法では世界遺産を守れない」ということです。
 当然のことながら、現行法で無理なら新しい法律を制定するか、現行法を世界遺産を守れる法に改正(グレードアップ)するしかありません。それが、環境庁、林野庁が今真っ先にしなければならないことです。
 そして、新法制定にしろ、現行法改正にしろ、「管理主体のあるべき姿」を内外に明示し、国と自治体だけでなく、民間も含めて、世界遺産の環境保全のための役割分担を明らかにすることが今後の課題ということになります。

4. おわりに

 白神山地は、ブナの森全体が遺伝子貯蔵庫であり、博物館的様相を呈していることに最大の特徴があります。この特徴を活かして「白神山地を丸ごとエコミュージアム」として利用することが、世界遺産を保全し、利用するための考え方として最善ではないでしょうか。
 白神山地には、数千年前からブナの森とともに生活してきた文化がありました。山棲みの人達(樵、炭焼き、猟師:マタギ)の文化です。この地域の伝統的な文化は、「山の神の恵みを貪ることはしないで、必要な分だけ神からいただく」という考えに立脚していました。このような伝統的な文化のおかげで、数千年前から現在にいたるまで、ブナ原生林が残ったのです。そうした意味で、世界遺産に登録された白神山地は、「自然と調和のとれたふるさとづくり」のための学校でもあります。白神山地を訪れた人々が、世界遺産に直接接することで、人間らしさを取り戻し、「自分と自然(すべてのもの)との関係のあり方、社会と自然(すべてのもの)との関係のあり方」を学び、その成果を自分の周りの人々に、そして世界に向けて発信してほしいものです。
 白神山地が本当の意味で環境保全の情報発信基地となれば、法律など不要になるかも知れません。前述した現状報告の例でいえば、森林法上は、適法だからといって、世界遺産のブナを伐採したのでは、法律では罰せられなくても、罰則よりもはるかに厳しい世論のリアクションにさらされることは確実です。多くの人が、すでにそのことに気づいています。白神山地が本当の意味で環境保全の情報発信基地となれば、ますます多くの人が気づくようになるでしょう。秋田県(自然保護課)だっておそまきながら気づいてくれました。気づいていないのは国(環境庁、林野庁)です。これからは、一番肝心な環境庁と林野庁に気づいてほしいものです。
 環境庁と林野庁が「屋上屋を重ねることになる世界遺産保護法などいらない」と主張しつづけるのであれば、それはそれで構いません。しかし、現行法を改正もしないで、世界遺産を対象としていない法律の条文を、無理矢理都合の良いように解釈し、自然破壊に手を貸すような愚は、今後はやめにしてもらわなければなりません。そして、どこが世界遺産を管理しているのか、最終的な責任は、どの省庁が担うのか全然わからないような現状は、一刻も早くあらためてもらわねばなりません。
 これらのことを、自治労が国民とともに主張し続ければ、環境庁、林野庁も重い腰を上げざるを得ないはずです。自治労青森県本部と県職労は、その主張を続けて今後も運動を展開します。