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中札内村は、十勝平野の中央部に位置し、その基幹産業は農業です。 昭和40年代以降、中札内村農業は土地基盤整備が進展し、農地や農道が整備され、大型機械の導入による協同経営方式の労働生産性の高い農業へと転換していきました。 これにより、農業粗収益や労働生産性が飛躍的に向上していきました。 また、有機質土地還元システム(循環農法)を取り入れ、畜産団地による糞尿を畑地に還元して、さらに動物の骨を利用した飼肥料の製品化等、「中札内の土づくり」は昭和59年に朝日農業賞を受賞するなど、非常に優れたものであります。 ただ、農業が基幹産業であることは、役場職員の誰もが知っていることでありながら、はたして農業がどのようなものであるか、農作業とはどのようなものであるか、経験のない職員が多数いることも事実でした。また、若い世代の職員については、村民にどう顔を覚えてもらうか、どこかで出会ったら挨拶ができるかなどの点で、自治研推進委員会において検討すべき課題となっていったのです。 1995年、自治研推進委員会が中心となって、中札内村の基幹産業である農業を自分達で体験してみて、どんなことでもいいから感じ取ってもらいたい、また農家の方たちとのふれあうきっかけとして、役場職員としての自分の顔を覚えてもらうことを主な目的として、農作業体験が実施されました。8月から10月にかけての時期に、受け入れ先農家の意向を確認しながら、理事者、管理職も含めて広く職員に参加を呼びかけ、豆積み作業やニンジンの葉切り作業、いもの選別・袋詰め作業、大根抜き作業などの手作業を半日間、実体験してもらったのです。 その結果をアンケートしたところ、次のような声が組合員より寄せられました。 「農作業は、半日でもきついものだという事がわかりました。機械化が進む中で、豆積みだけは手作業できつい仕事だ …… と話されていたのが印象に残りました」 「普段は、家族2人で作業して、朝3時頃から始めることもあると聞いて、改めて農家の大変さがわかりました」 「人参収穫のお手伝いをさせていただきましたが、一定グラム以下の物は製品にならないため、畑にすき込む量の多さに驚きました。私も消費者のひとりとして、形や見映えばかりにとらわれていることに反省しています。地元産業を理解するうえでは貴重な体験をさせていただいたと思います」 「農政を担当しながら、種子馬鈴薯が20㎏入り袋で出荷されているとは知りませんでした。地区の離農者の「高い」農地を引受け経営面での苦労話を聞きましたが、悲観的でなく、それをバネにするという考え方に感心しました。ごぼう収穫の省力化については努力したいと思います」 「私は、今している仕事が大変だと思っていましたが、農作業している方は、もっと大変で苦労しているのだと思いました。楽そうに見えても、実際やってみると本当に大変で、半日でばててしまい自分が情けなくなりました。イモを規格内と規格外に分けている生産者の苦労が、ほんの少しだけわかったような気がします」 「初めて大根抜きを体験させていただき、ありがとうございました。当日は、お天気が幸いして、作業日よりとなり幸いでした。また、本当に短い時間でしたが、作業を通じて重労働を体験できました。農作業は、進み方が一目でわかるのでプレッシヤーも感じてしまいました」 「私が高校を卒業するまで実家は農家でした。手刈りでの豆刈りなど、すべてが手作業の時代です。当時と比べても豆積み作業は何十年経っても変わりませんね。半日でしたが、爽やかな汗をかかせていただきました」 このような内容のアンケート結果は、受け入れてくれた協力農家の方にお送りして、役場職員と農家の方とのふれあいの記録としました。 この年の参加者は、29名でした。これは全職員の約3割の参加数でした。 その年の総括において、次のような自治研推進委員会としての報告がなされました。 「今回、参加者の1次集約の段階において56名いた希望者が、2次集約時に38名に減り、最終的に29名の参加にとどまったことは、この活動が理解されていない面があるということに繋がると判断します。ただ、組合青年婦人部を通じて若い職員が多数参加してくれたこと、参加された方の感想が、大方の方が良いといってくれたことが収穫でした。 自治研のこの事業は、受け入れ先の確保の問題や体験者の取りまとめ等長期にわたり、苦難の連続でした。それでも、この事業に理解を示してくれた人が多く、決して悪いことではないように思います。 体験後の懇談会は、受け入れ先農家の方に負担をかけることになり、必要なしとの意見もあり、今後の検討課題であると思いました。 ただ、自治研推進委員会の取り組みとして、来年度以降も実施していくことを申し送りします。」 この総括を受けて、翌年以降も農作業体験は自治研推進委員会の事業として続きました。 1997年には、受け入れ先農家にお願いしていた夕食時における懇親会の設定をやめていただき、その代わり農作業中の休憩時間を長く取ってもらうようお願いするとともに、その休憩時間の中で懇親を深めるとともに、体験を通じて農業の大切さを肌で感じ取る、また会話を通じて農家の昔話を聞いてみるなどの機会を設けてみる試みがされました。 この年は、46名の参加者があり、この事業に対する組合員の理解度も高まってきたように思えました。作業内容も、受け入れ先農家側も考慮していただくようになり、キャベツ・いも選り・ゆり根掘り・豆積み等バラエティに富んだ内容となってきました。 1998年は、秋に台風の影響があり、収獲に遅れが出る等の悪条件が重なったのと、やはり、毎年実施することに対するマンネリ化と、休日に実施することにより組合員の疲れが溜まる等の理由からか負担も大きく、参加者は26名にとどまりました。 実施方法等も前年同様としたため、見直しの時期にきているという方向性も出されました。 1999年になって、自治研推進委員会では、継続事業として農作業体験を続ける一方、参加者の固定化と、体験希望者の減少、マンネリ化等により当初の目的からかけ離れてきたものとして、実施方法を見なおすとともに、組合員に対し事業継続の有無を問う次のようなアンケートを実施しました。
このアンケートの結果、参加したいと答えた組合員が55%と、過半数を超えたことから、継続実施することが決りました。 |