1. 農業・農村の共通課題
① わが国では、高度経済成長したことにより国民経済に占める農業のウエイトは小さくなり、農家人口の割合も低下している。
② わが国では、農業の体験者は圧倒的に少なく、農業を知らない世代も増えている。
③ わが国では、都市地域はもとより地方においても農業は少数派となり、農業・農村についての理解と合意が得られにくくなっている。
この事態を打開し、農業・農村を維持・発展させるためには、農業・農村の果たす幅広い役割と価値について、各地域住民の理解と支持を得ることが不可欠である。
このため、農業を基幹とする町村は、時代の変化に応じた農業・農村の確立に努めるとともに、地域住民はもとより都市住民各層に対し農業・農村の理解を深め合意を形成する取り組みを強化する必要がある。こうした視点から、以下の課題について取りまとめることとした。
2. 新しい農業・農村の役割と理解の確立
(1) 農業・農村の現状
① 農業は農業生産を担う人が少なくなって来ており(女性の地位が低い、封建社会、花嫁不足等)本町を除く近隣町村では、農用地の遊休・荒廃化が徐々に広がってきている。(将来的には本町も同様となることが予想されるため、新規参入就農者の受け入れ体制の整備が必要と思われる)
② 観光・レジャー振興・農用地開発による自然環境(森林)破壊などが起きている。また、農業生産上でも農薬、糞尿の河川流入による汚染が問題となっている。
③ 農業に自信と誇りを持ち、企業的感覚で新しい農業経営の確立に努力する農業者も育ちつつある。(パソコン利用によるコスト計算・簿記、農業情報活用による就労施肥計画・系統外資材等の直接購入、有機栽培、野菜の直売等)
④ 農村環境と景観を保全し、美しいむらづくりに取り組む新しい動きも生まれてきている。(快適環境づくり~農家トイレの水洗化・緑のネットワーク、圃場内の粗大ごみの撤去)
農業生産活動は単なる食料生産にとどまらず、環境・資源の保全や快適で美しい農村の維持・創出の役割も担うために、経済的に成り立つ持続可能な農業を確立しなければならない。
(2) 新しい農業・農村の役割と理解の確立
① 食料生産としての農業の役割
世界の食料事情は中長期的にはひっ迫基調になるものとみられ、安全で新鮮な食料の安定的供給を確保するためには、農用地の確保及び自給率の向上(遊休地を解消した完全耕作・輪作完全実施・低農薬栽培・はね品の有効利用)により農業生産の安定に努めることが必要である。
② 多面的機能を有する農業・農村
農業・食料関連産業全体の生産は国民総生産の中では11%であるが、農業・農村が国土・環境保全など(水田や森林の貯水機能による洪水・表土流出防止、森林による温暖化防止・酸素の供給)の役割を果たしていることを農業者は自負し、その価値を含めるともっと漠大になることを広く農外者にも理解してもらうことが大切である。
③ 居住する・余暇を過ごす場としての美しい農村づくり
わが国は、急激な経済発展を遂げ豊かになったが、真の豊かさを実感できないとする意見や、「物の豊かさ」より「心の豊かさ」を求める傾向が強くなっている。
また、余暇時間の増大は、都市では満たされない「ゆとり」や「やすらぎ」「うるおい」を求めて緑豊かな美しい農村を訪れ滞在する人が増えている。
これに応えるために農村は、豊かな生活を実現するうるおいのある美しく快適な農村環境づくりが必要になってきている。
(3) 「農政の確立」と「農業者の誇り」
欧米諸国などでは、農業基盤が確立されているため、農業・農村の役割と価値が広く農外者にも理解・支持されており、農業者の地位は高く農業者自身も自信と誇りを持って農業に取り組んでいる。
わが国においてもこれが実現される時に初めて、真に豊かな生活、うるおいのある美しく快適な農村環境づくりが可能となるのである。
3. 農業・農村の理解と支持を得るための具体的方策
(1) 「美しい農村」づくりと都市との交流
① 「美しい農村」づくり
過疎・過密現象に歯止めをかけ、都市住民に親しまれる「美しい農村」を作ることが必要である。
このためには居住場所としての農村の生活環境を整備するとともに、余暇利用としての環境や景観に配慮した農村整備が必要である。
さらに、農業生産を中心とした付加価値を高める加工・販売や都市との交流、観光、地場産業の振興により農村経済の多角化、活性化を図ることが不可欠である。
農村において住みよい地域社会、農村環境を作るためには、住民の期待とニーズに応えた土地利用計画の整備、環境・景観保全、生活環境の整備などを総合的に実施する必要がある。
● でんぷん廃液臭害、ポテトチップ工場の油煙害・臭害の解消。
● 牛の糞尿堆積処理問題・散布による害の解消。
● 防風林伐採による風・雪害が起きているので、防風林を守り育てる運動の実施。
● 独身住宅がなく早急な建設が望まれる。(定着、自立できない若者が多くなる)
● 消費者又は商人のニーズに添った商店または消費者の差別化をより進めるために、個人店舗の専門店化と個人店舗の集積した総合店舗の建設が必要。
● 若者及び家族連れで楽しめる所がない。他町村では農業振興とともに一般住民が楽しむための施設等を河川敷を活用し進めているが、本町においては農用地が少ない関係でほとんどが農業施設及び牧草地としての利用である。今後においては、バランス良い利用が望まれている。(サイクリングコース、ローラースケート場、ラジコンカー・飛行機練習場、カイト場、キャンプ場、サッカー・野球場)
● 集客性のない祭りは思いきって中止することも大切。
● 全町民が一斉に休む日を設定しその中でお祭り等(七千人祭、町民運動会)を実施してはどうか。
● 施設(管理も含めて)が中途半端なものが多い(パークゴルフ場、トレセン、緑風荘、ピア21、士幌高原、朝陽公園・キャンプ場)ので、計画的に充実した施設となるように設備投資をする必要があると思われる。
● 町外者から見ると、士幌高原、朝陽公園、佐倉山はかなりの人気が期待できる所と思われるので、2・3日滞在できる設備が充実した施設が欲しいところである。(スカイスポーツ、ホーストレッキングコース、オートキャンプ場、森林浴公園)
● 町内外者問わず、いつでも見学・試食・購買できる(札幌ビール工場、ニッカウイスキー工場の様に)ミニ観光見学コースの設定とその体制づくりが必要。(ポテトチップス、コロッケ、ミニトマトジュース、ステーキ、花きをベースとして)
② 都市との交流
農業・農村に対する都市住民の理解を深めるとともに、地域資源の整備活用による地域の活性化を図るため、都市と農村との交流が必要である。
【農業農村体験型】都市住民、学童等に農村体験をしてもらい、農村に対する理解の促進と農業の振興を図り、地域の活性化を図る。
【産地直送型】都市の消費者ニーズに則して新鮮な地場産品の直送販売・朝市を行い地域農産物の販路拡大と地域活性化を図る。
【特別町民制度型】都市住民に第2のふるさとを体験してもらうため、地域特産品の送付、施設に対する優待等により、都市住民を特別町民として待遇する。
【姉妹都市提携型】交流効果の定着を図るとともに、各種イベントを総合的に行うことによって地域の活性化を図る。
いずれの場合でも基本は人と人との心の交流である。交流を通じて都市住民が農業・農村を身近なものとして親しみ、農村を「大切にしよう」「支援しよう」という考えとなる意識づくりが必要である。
したがって、都市との交流においては、都市住民のニーズを具体的に把握するとともに、農村側が主体性を発揮することが重要である。
(2) 住民合意による「美しい農村」づくり
農村地域においては都市住民のやすらぎの場として、農地の確保と美しい景観づくりを行うことが重要であるが、公益的土地利用と農業的土地利用の計画・調整について、地域住民と合意形成を進めることが大切である。
こうした合意形成を進めるためには、住民参加による直接的な対話・交流や農業を理解するためにも農業体験がまず重要であり、地域住民各層に呼びかけ実施する必要がある。
【補足説明資料】
|