自治労都本部は本年2月以降、町田市や多摩市などの障害者グループやその支援者とともに「石毛えい子とわくわくバリアチェック隊」を結成し、衆議院議員の石毛さんとともに、町田市と多摩市でバリアチェック活動を行い、ちょうど国会に提案されていた「交通バリアフリー法」案の審議に反映するとともに、両市長に対し駅周辺の改善要望を提出してきました。今後もその活動を継続することにしていますが、これは6月までの活動の報告です。
1. あなたもできますバリアチェック
まず、「チェック隊」の中心メンバーが、まちをウォッチしながらチェックポイントやチェックする場所を決めます。
○庁舎、公共施設
○駅および駅周辺
○道路
つぎに、チェックする主役を決めます。たとえば私たちは次の方々と活動しました。
○車椅子利用者
○下肢障害者
○聴覚障害者
○視覚障害者
○ベビーカーと一緒の人
○妊娠している人、重い荷物をもっている人
○高齢者など
そして、チェック隊を編成します。なくてはならないメンバーは、①チェックの主役、②主役が気づいたことをチェックリストに記入する人、③コース誘導者、④全体の安全を見守るリーダーです。1回のチェック隊に、チェックの主役は何人いてもかまいません。
ここにのせたチェックリストは、基本的には車椅子利用者と視覚障害者用につくってあります。ただし、たとえば車椅子利用であっても、電動車椅子と手動車椅子とでは、それを利用する人の要望や意見は異なる場合があります。視覚障害者の場合も同様に、白杖を利用する人と盲導犬を利用する人、弱視の人では異なることがあります。
ですから参加者、特に記入者は、チェックリストの各項目はあくまで「参考事例」として考えてもらいます。それぞれの場所で、車椅子利用者、聴覚障害者、視覚障害者、乳母車利用者等から、具体的な意見等を聞き取り、リストの余白に記入します。リストにない事項も指摘されると思いますが、それらも余白のどこかを利用して必ず記入します。
チェック・グッズとして、次のようなものを使います。
○レベル(勾配)測定器
○メジャー(3.5m用など)
○クリップボード・筆記用具
さいごに忘れてはならないこと。バリアチェックは、わいわいと、楽しくやると継続して取り組めます。
2. わくわくチェック隊が発見したこと・これから考えなければならないこと
2月12日の町田駅周辺のバリアチェックとシンポジウムにアメリカから連邦運輸省のマイケル・ウインターさんが参加しました。これを機会にバリアチェック隊を結成し、以下のように取り組んできました。21回にわたるこの活動にはのべ600人が参加しました。
1) 2月12日(土) 町田駅および駅周辺から市民フォーラム(マイケル・ウインターさんと)
2) 3月 5日(日) 多摩センター駅および駅周辺
3) 3月11日(土) 小田急カリヨン広場~街中~町田駅周辺
4) 3月12日(日) 多摩センター駅、多摩都市モノレール・多摩センター駅
5) 3月18日(土) 町田駅周辺~原町田商店街~カリヨン広場~JR町田駅
6) 3月19日(日) 多摩そごう前~落合団地~豊ヶ丘団地~そごう前
7) 3月25日(土) 永山駅および駅周辺~永山図書館~永山北公園~永山駅
8) 3月26日(日) 町田・藤野台団地
9) 4月 1日(土) 聖蹟桜ヶ丘駅周辺
10) 4月 2日(日) 町田市山崎シーアイハイツ~JR町田駅
11) 4月 9日(日) 多摩そごう前~鶴牧団地~そごう前
12) 4月16日(日) JR成瀬駅
13) 4月23日(日) 多摩センター駅周辺
14) 4月30日(日) 小田急町田駅周辺
15) 5月 7日(日) 聖蹟桜ヶ丘駅周辺
16) 5月14日(日) 都営成瀬住宅周辺
17) 5月21日(日) 諏訪団地周辺
18) 5月28日(日) 町田駅~原町田商店街付近
19) 6月11日(日) 町田駅周辺
20) 6月16日(金) 町田駅周辺
21) 6月21日(水) 聖蹟桜ヶ丘駅周辺・町田駅周辺
これらの活動を通して明らかになった課題や、今後のバリアフリーのまちづくりに向けた課題などを提起していくのが、この報告の目的です。
(1) 明らかになった課題
① 基本的(根本的)なバリアがあること
ア バリアを生む構造(地形、まちづくりの歴史的な経緯等)
● 多摩丘陵を切り開いて造成した多摩ニュータウンが宿命的に持つ、高低差の激しいまちの構造
● 町田駅(JRと小田急)両駅の高さ(改札口など)の違いや周辺のビル群の高さの違いなど、駅および駅周辺のまちづくり計画の不ぞろい
イ 駅構造物のバリア
● 当初計画になかったエレベーターやエスカレーター設置
● 視覚障害者が転落しやすいホームの構造
② 障害当事者等の参加がないため、施設を改善しても役に立っていないこと
ア 点字ブロックの分かりにくさ
● かまぼこ型の誘導ブロックや丸くて感じにくい警告ブロック
● 舗装と同一の色
イ 券売機のバリアフリーの不徹底
● 点字案内が逆さまに貼ってあるところ(小田急)
● 複数枚の表示、おとな・こどもの表示などに点字案内がない(京王)
● 車椅子では手が届かない構造
ウ 案内表示(サイン)の見にくさ
● ユニバーサル・デザインの欠如(誰にでも見やすいものになっていない)
● 自治体、鉄道会社によって異なる表示方法
③ 人のモラルに問題があること
ア 放置自転車がバリアに
● 点字ブロック上に自転車が放置
● 車椅子で入れる公衆電話のまえに放置自転車
イ 商店街の看板や商品がバリアに
(2) 早急に改善を求める必要のある個所(これらはあくまで例示である)
① JR町田駅
● エレベーターの設置個所に問題がある。
● エレベーターが狭く、使いにくい。
② JR成瀬駅
● 改札からホームまでは階段しかないこと。
③ 小田急町田駅
● 券売機の入場券点字案内が逆さに貼ってある。
● 券売機が車椅子利用者に利用しにくい構造である。
④ 京王多摩センター駅
● エレベーター設置個所の案内表示の改善が必要である。
● 障害者用トイレが開けづらい。
⑤ 小田急多摩センター駅
● エレベーターが設置されていない。
● 券売機の入場券点字案内が逆さに貼ってある。
⑥ 京王永山駅
● 車椅子で改札を通る場合、駅員と逆の方にあるため、駅員を呼ばなければならない。
⑦ 小田急京王永山駅
● 券売機の数が少ない。
⑧ 多摩都市モノレール・多摩センター駅
● エレベーター前に、近畿日本ツーリストのパンフ置きがあり、障害になっている。
● 券売機の障害者割引は、インターフォンで呼ばなければならない。
⑨ 町田駅周辺
● モノべイヤー(車椅子リフト)の運行時間に問題がある ― エレベーターの設置が急務である。
● 第1踏み切りの開く時間が短く、下肢障害のある人や車椅子利用者など、障害のある人には危険である。
● 車椅子で入れる店が少ない。
● 小田急前のタクシー乗り場や丸井前の歩道切り下げに改善の必要がある。
⑩ 町田市民フォーラム
● 玄関入り口前の道路との段差を解消すべきである。
⑪ 成瀬駅周辺
● 横断歩道の盲人用押しボタンに点字表示がない。
● 成瀬市民センターのエレベーター前には、「(誰か)一緒にエレベーターに乗って下さい」と点字表示がある ― 視覚障害者には誰か付き添っていなければならないことだとしたらおかしい。
⑫ 多摩センター駅周辺(両駅からパルテノン多摩までの通路)
● エレベーターが1ヵ所だけであり、構造的にも車椅子利用者がスロープを昇り降りするのは大変である。
● 視覚障害者を誘導するものが何もない。
● パルテノン多摩までの主要な行き先に案内が必要である。
● 雨水排水溝が視覚障害者、車椅子利用者ともに問題がある。
⑬ 永山駅周辺
● 両駅改札からのペデストリアンデッキから、健康ランド側にはスロープがない。
● 駅周辺の電話ボックスに車椅子利用のものが1つもない。
● 駅前ビル(グリナード永山)併設の超長スロープは自転車くらいしか利用しない ― エレベーターの設置が必要である。
● グリナード永山下の車椅子利用者用トイレの扉が重い。
⑭ 聖蹟桜ヶ丘駅周辺
● バスターミナルの下水の蓋や道路の排水桝に車椅子のタイヤがはまってしまう。
● 車椅子対応の公衆電話に車椅子で入っても出ることができない。自転車が放置されている。
● 道路の交差点の誘導ブロックが遠回りになっている。
● 周辺は大型ショッピングしか利用できない ― ハートビル法施行後の建物でも車椅子で入れないところがある。
● 車椅子で土手(大栗川)に上がれない。
⑮ 永山北公園
● 橋から公園入り口に車止めがあるが、坂(橋)のカーブで通りにくい。
● トイレの周辺に放置自転車が多いこと。またドアーが手動で開けにくい、古くて汚いなど、ほとんど利用されていない。
● 入り口そばの遊び場への上り口(スロープ)が急で、かつまた角に雨水桝が落込んでいるなど、車椅子では上りにくい。
(3) 抜本的なバリアフリーに向けて
① 駅舎
● 全駅・全ホームにエレベーターを設置すること。
● ホームの抜本的改善(ホームドアまたはホーム柵の設置)を図ること。
● 電子案内(聴覚障害者等)を改善すること。
● 事故時の聴覚障害者対応の改善を図ること。
② 駅周辺
● 案内表示の改善をユニバーサルデザインの観点からすすめること。
● バスターミナルへの移動手段を改善(エレベーター設置等)すること。
③ 道路
● 道路構造令の抜本的な改正(歩車道分離のあり方など)を行うこと。
④ 障害者誘導手段
● 視覚障害者誘導の音声誘導システムをすすめること。
● 点字ブロックの全国統一化(共通化)をすすめること。
● 交差点案内の抜本的な改善を図ること。
● 主要施設に手話可能職員等を配置すること。
⑤ 公共施設
● バリアフリー・マニュアル(基準)を改善すること。
● 改善計画の年限を明示すること。
⑥ 民間施設
● ハートビル法を改正し、すべての対象建物を拡大すること。
● 既存建物の改善を明示すること。
⑦ 公園・河川(堤防・河川敷)
● ユニバーサル・デザイン化をすすめること。
⑧ 住宅
● 住宅改善のための補助制度を充実すること。
● 公共住宅のバリアフリー化をすすめること。
● 民間住宅の改善施策をすすめること。
(4) 自治体条例と自治体計画
「交通バリアフリー法」の主な内容は以下のとおりです。
①国 ― 基本方針の策定
②市町村 ― 基本方針に基づく基本構想の作成
③公共交通事業者、道路管理者、公安委員会 ― 基本構想に従って具体的な事業計画の作成と、バリアフリー化のための事業実施
④自治体 ― 駅前広場、道路、通路、駐車場等について、基本構想に従ってバリアフリー化を実施
以上のように、町田市や多摩市の基本構想、事業計画が大変重要になります。当然、現在策定されている「福祉のまちづくり条例」の見直しも課題になってきます。
今回のバリアチェックには、多くの障害者団体、個人、自治労東京都本部に結集する自治体職員が数多く参加しました。自治体の計画をつくり、事業を実施し、施設を管理する者と、施設を利用する者が一緒にチェック活動を行ったことは、今後の上記の構想や計画策定に向けて意義あるものでした。
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