改正地方自治法の成立に関する談話(2024年6月19日)

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改正地方自治法の成立に関する談話(2024年6月19日)

2024/06/20

6月19日、自治労は「改正地方自治法の成立」について、下記の通り談話を発出しましたので掲載します。


改正地方自治法の成立に関する談話

1.6月19日、参議院において地方自治法改正案の採決が行われ、立憲民主党などが反対したものの、与党および一部野党の賛成により、政府原案のまま可決成立した。法案は公金収納事務のデジタル化、地域での生活サービス提供にかかる多様な主体との連携強化、大規模災害や感染症まん延時などにおいて、国の地方に対する「補充的な指示」を可能とすること、以上3点の改正からなる。しかし、いずれも地方自治また市民自治の観点から極めて問題ある内容であり、自治労として法案化前より総務省また与野党を問わず、その懸念を指摘してきたが、国会における有効な修正もなく、ほぼ当初案通りに成立したことは極めて遺憾である。
 
2.とりわけ、今改正において最大の焦点となった、国への「補充的指示権」の付与は、広範な社会的批判にもさらされている。原因は自治体に対する国の関与を必要最小限度にとどめるという従来の「一般ルール」を超え、国に自治体への指示権を与えるとしたにもかかわらず、その指示権がどのような状況で行使されるのか、全く説明されていないことにある。どのような事態か想定できないが、国に強い権限を与え、何らかの事態に幅広く備えようというのは机上の空論に近く、国の権限強化が必要だという法律の根拠である社会的事実、すなわち立法事実はどこにあるのか、政府はその説明責任をまったく果たしていない。
 
3.また、指示権を規定する議論において、与党側は国の無謬性を信じているかのように見える。災害等の際、事態の把握や緊急の判断を求められるのは当該の自治体であるが、被災地から離れた国の判断に誤りはないものとし、自治体が指示に従うよう義務付けることは合理的と言えるのか。国の判断が優先されることにより、当該自治体の主体性や自発性を損ないかねず、むしろ指示待ちの時間や実態にそぐわない指示が住民の命をも脅かしかねない。自治労としては各政党に対し、少なくとも自治体との事前協議について明文化するよう強く求めてきたが、与野党間の修正協議において、その案が採用されることはなかった。
 
4.どのような事態において行使されるのか明確でない補充的指示権が将来、実際に行使されるのかは推測の域を出ない。しかし、与党が強硬に法案を成立させようとする以上、指示権が現実には行使し得ないよう、高い制限を課すことが重要であり、自治労としてもこの間、そのための対応を行ってきた。当初は「平時・非平時」との表現で当該の事態が論じられていたが、最終的には「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と、より限定的な表現に変更されたことは取り組みの一定の成果と言える。
 また、国会においては岸まきこ参議院議員により、「指示の対象が自治事務である場合、代執行はできない」こと、また「実情を踏まえ対応が可能となるよう自治体の声を伺いながら各府省取り組む」旨の政府答弁が引き出された。加えて、衆議院では11項目、参議院では15項目となった附帯決議において、①当該事態に該当するかの判断にあたっては、自治体への速やかな周知と円滑な情報共有・意思疎通をはかること、②生命等の保護の措置に関する指示を行うにあたっては、自治体との十分に必要な事前調整、指示内容を必要最小限のものとすること、③指示を行った場合、その旨速やかに国会に報告すること、④同様の指示が再度行われることのないよう十分に事後検証し、迅速に個別法を整備すること、⑤経費、人材面について自治体を支援すること、⑥日常からの自治体における多様な職種の職員の充実を図ること、⑦応援の要求・指示や職員派遣の要請は個別法による措置を基本とすること、⑧その際は各大臣の独断とならないよう総務大臣も関与することなど、本来は条文上で位置付けるべき事項であるが、一定の歯止めとして附帯決議において明文化することができたのは関係者の協力による成果として受け止める。
 
5.また、国の補充的指示権が注目される中、自治労としては、公金収納事務のデジタル化についても問題点を指摘してきた。自治体情報システムの標準化などにより、すでに自治体には大きな負担が強いられているが、今改正は新たな負担を招きかねない。必要な財源については確実に国が措置すること、また過度な負担を強いることがないよう、その旨も附帯決議では明記された。
 
6.加えて今改正により、地域の生活サービス提供に資する活動を行う団体について、市町村長の指定により、行政財産の貸与や随意契約での事務委託が可能となった。これについては、地方議会の関与もなく、首長判断で指定が可能となっているため、現行の指定管理者制度より恣意的な運用を招きかねない。また、指定団体の優遇措置により、非指定団体との上下関係も招きかねず、市民自治の観点からも不適切である。指定に係る事前・事後のチェックなど地方議会の関与についても附帯決議では明記されたが、十分な審議となり得なかったことに大きな不満が残る。
 
7.今回、国の補充的指示権をめぐっては、国と地方の関係を地方分権改革以前の状態に巻き戻すものであるという危機意識が、多くの自治体関係者や有識者からあげられた。実際、法案には基本的に賛成を表明している全国知事会でさえ、地方自治の本旨や国と地方の対等な関係を損なう恐れを指摘している。しかし、数の論理により法案が成立した以上、現実に地方自治・地方分権の後退が起こらないよう、今後は我々の日頃の活動が問われることとなる。地方自治法改正議論で指摘された課題や危機意識を一過性のものとしないよう、引き続き、地方自治の確立にむけて取り組みを進める。
 
2024年6月19日
全日本自治団体労働組合
書記長 伊藤 功

240619_改正地方自治法の成立にあたって(自治労書記長談話).docxをダウンロード

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