2025/01/08
「キモい」「コワい」と、とかく嫌われがちな生き物・ヘビ。しかし、その『素顔』を知る人は少ない。そこで、「動物のプロ」の自治労組合員に聞いてみた。自治労公立動物園労働組合協議会(公動協)の協力を得て、東山動物園でヘビの飼育員をしている茂野寛生さんにインタビューを敢行しました。
今回インタビューしたのはこの方
カピバラ、オオアリクイの飼育を経て、昨年から自然動物館で爬虫類を担当。メインの担当はカメ・トカゲ、副担当としてヘビを飼育。大学時代は、生物資源科学科で家畜(ブタ)を研究。一番好きな動物はコアリクイ。
(以下、インタビュー記事)
東山動物園で飼育員をしている茂野寛生です。2006年4月に名古屋市職員に採用され、今年で飼育員歴は18年。現在は自然動物館で働いています。
東山動物園は、全国的に見ても珍しい、市が完全直営している動物園です。ほとんどすべての飼育員が名古屋市の現業職員です。他の自治体では、飼育職を行政職の区分で採用していることが多いですが、名古屋市では現業職採用を継続しています。
ヘビも体調を崩す 「いつもと違う」を見極める
ヘビの副担当になって2年目です。初めはヘビが得意ではありませんでした。ヘビ特有の動きが苦手で、見ているだけで「うわぁ」と、少し抵抗感がありました。それでも毎日世話をしていると、だんだん慣れてきて、最近は「顔だけ見るとカワイイかもしれない」と思うようになってきました。
ヘビは他の動物と比べても、体調の変化がわかりづらい生き物です。室温は常に25~30℃に保ち、季節の変わり目は特に用心しないと体調を崩してしまいます。体調不良を見極めるポイントは「いつもと違う」です。エサを食べなかったり、隠れる習性のある子がだらんと人前に出ていたりしたら、「どこか悪いのかもしれない」と判断し、注意深く観察するようにしています。とにかく「観察」することが大事だと学生の頃から教えられてきたので、今でもその教えを心に置いて実践しています。
命に関わる仕事だからこそ、些細な変化に気づける心が大切
日々仕事をする上で意識していることは、「動物がなぜそういう動きをするのか、自分なりに仮説を立てて考える」ことです。飼育員の仕事は「命に関わる仕事」ですから、些細な変化も見逃さないよう、飼育業務にあたっています。
物心がついたときから動物が好きでした。子どもの頃に連れて行ってもらった豊橋総合動植物園のことをよく覚えています。
飼育員になって一番印象に残っていることは、ツチブタの繁殖に成功し、赤ちゃんの頃から生育に携われたことです。ツチブタは名前に「ブタ」と入っていますが、みなさんがよく知っている一般的なブタとは違い、日中は穴を掘って過ごし、夜間帯に活動します。東山動物園で生まれたツチブタ(あゆみちゃん)は、現在豊橋総合動植物園に移り、元気に過ごしているそうです。
これから飼育員をめざす方には、「動物が好き、という気持ちを強く持って、自分の興味がある場所に行って、発見や経験を積み重ねてほしい」と伝えたいです。そこでの経験一つひとつが、未来の自分を支える糧となるはずです。
名古屋市東山動植物園
愛知県名古屋市にある市営動植物園。1937年に開園。年間入場者数は、日本国内で上野動物園に次ぐ約265万人となっている。現在、飼育種類数は日本一で、アジアゾウ、コアラ、レッサーパンダ、コモドオオトカゲ(国内唯一の飼育展示)など約450種の動物が暮らしている(2024年3月31日時点)。ニシゴリラ「シャバーニ」(下写真)がイケメンゴリラとして有名。
(機関紙じちろう2025年1月15日号より転載)