2025年度政府予算案・地方財政対策に関する談話(2025年1月8日)

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2025年度政府予算案・地方財政対策に関する談話(2025年1月8日)

2025/01/09

1月8日、自治労は2024年12月27日に政府が閣議決定した「2025年度政府予算案および地方財政対策」について、下記の通り談話を発出しましたので掲載します。(最下段よりWordファイルをダウンロードできます)


2025年度政府予算案・地方財政対策に関する談話

1.政府は2024年12月27日、2025年度政府予算案を閣議決定し、一般会計の歳出総額は約115.5兆円と過去最大、3年連続で110兆円を超える大規模な予算編成となった。コロナ禍以降、歳出構造を平時に戻すべきとの指摘も聞かれたが、コロナ禍以前の当初予算が100兆円を下回る水準であったことを思えば、ここ数年の予算編成を見ても、むしろ「大判振る舞い」の傾向が強く、政府が財政健全化に本腰を入れているとは言い難い。
 
2.歳出において際立つのは、防衛力整備計画対象経費である。社会保障費については、高齢化による増加分におさめる方針が取られているとはいえ、その伸びは約5,585億円であり、防衛費はそれを超える約7,498億円の伸びとなっている。改めて、今の政府が何を重要視しているのか問われる内容である。また歳入においては、税収も過去最大の約78兆4,400億円となったが、それにもかかわらず公債金は約28兆6,490億円となり、歳入を歳出がはるかに上回るという国債頼みの構造には何ら変化がない。なお、歳出における国債費も28兆2,179億円と過去最高となった。これは歳出全体のおよそ4分の1が借金の返済にあてられていることを示しており、日本の財政の硬直化が年々深刻化していく現れといえる。
 
3.政府自身が「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行するための予算と銘打ち、公務員・保育士の給与改善、公共調達への価格転嫁円滑化などに力点を置いていることは評価したい。これらの措置が地域公共サービス分野における実際の処遇改善に結び付くよう、自治労としても、引き続き、その実態把握と効果の検証に取り組んでいく。
 
4.石破内閣は地方創生を重要政策課題と位置付けている。このため地方創生交付金を倍増し2,000億円確保したことは、地方の自主性と創意工夫を促す施策として一定評価する。しかし、東京一極集中を是正するという目標に照らして、その財政規模が十分といえるのか、また施策としての継続性がどの程度担保されるのか不明である。地方創生という大きな課題を達成するならば、その施策も単年度では実効性に乏しく、より長期的に展開されるべきであり、地方からの期待も込めて、一層の対応を求めたい。なお、こうした交付金について歓迎はしつつも、各自治体においては、多角化また増大する行政需要に対応し得る、より自律的な地方財政の確立こそが真に求められているということも、あえて指摘しておきたい。
 
5.2025年度地方財政対策については、一般財源総額が交付団体ベースで約63.8兆円(前年比1.1兆円増)と前年度を上回る水準が確保されている。地方交付税総額は19.0兆円と対前年比0.3兆円増。臨時財政対策債の発行額が2001年度の制度創設以来、初めてゼロとなったことについては、起債に頼った国家財政の運営とは一線を画し、自治体をはじめとする地方財政関係者による、健全化に向けた長年の努力の結果として受け止める。地方財政全体での長期債務残高は171兆円に上ることから、地方財政がただちに盤石化したとまでは言えないものの、地方財政対策全般としては地方の要望にも応えるものとして一定評価する。
 
6.なお、与党税制改正大綱では、2025年度から所得税の控除額を103万円から123万円に引き上げることが明記された。これによる地方財政への影響は、地方交付税法定率分として0.2兆円程度の減少にとどまると見込まれている。しかし、現下の国会情勢に鑑みれば、その見通しは依然不透明である。税制大綱に基づき、いわゆる103万円の壁を178万円まで引き上げた場合、個人住民税における減収見込みは4兆円程度にまで跳ね上がる。そのうえ、ガソリン税の暫定税率廃止が実施された場合、国と地方を合わせ、さらに1兆5,000億円程度の減収となり、これまでの予算編成のあり方を根底から見直す必要が生じる。地方の声を含め、そのための熟議が尽くされたとは到底思えない。
 
7.この間の地方財政健全化にむけた、関係者の努力を無にすることがあってはならず、国として減税政策を行うならば、地方固有の財源まで棄損すべきではない。恒久的な減税政策を実施するのであれば、その補填措置も恒久化する必要があり、政府には地方交付税率を引き上げるなど、より抜本的な制度改定を行うことを求める。また、各政党に対しても、地方財政の自律性を最大限尊重する対応を強く求めていく。
 
8.一方、地方公務員の給与改定等分として0.8兆円が確保された。さらに2025年度の給与改定に備え、一般行政経費(単独)分として給与改善費0.2兆円も計上されている。追加財政需要分としてではなく、当初から常勤職員のみならず会計年度任用職員における賃上げも織り込んだ措置として、積極的に受け止めたい。賃上げにむけた社会的な好循環を構築する立場から、2025春闘への取り組みにつなげなければならない。
 
9.また、地域医療提供体制の確保にむけて新たな地方債制度の創設や建築単価の引き上げなどが行われているが、公立・公的病院全体の経営改善支援としては、まだ不十分と言わざるを得ない。とくに多くの医療関係従事者はその経営難に影響され、現下の賃上げ基調からも取り残されている。0.2兆円の給与改善費については地方公営企業分も一定見込まれていることから、賃上げの好循環につなげるための現場の取り組みと並行し、政府に対しては、公立・公的病院の経営改善にむけた特段の配慮を求めたい。
 
10.自治体DXの推進にむけて、デジタル活用推進事業債を創設したことについては、地方の需要に応えるものとして受け止める。しかし、その対象はシステム導入時の初期費用などとされており、実際には多くの自治体において、ガバメントクラウドの利用におけるランニングコストの増大が深刻な問題として顕在化している。こうした運営費に対する支援をいかに実施するのか、政府の責任として引き続き、追及する必要がある。
 
11.新しい地方経済・生活環境創生事業費(仮称)の内訳として、地方創生推進費1兆円が確保されており、旧まち・ひと・しごと創生事業費分と同額が今回も維持されることとなる。しかし地方創生推進費においては、地方の自主性・主体性を最大限発揮することを求めている一方、その一部において行革努力分による算定指標が引き続き採用されるとみられ、本来の趣旨と矛盾している。地方の自主性・主体性を求めるならば、国による政策誘導的な手法として用いることなく、一般行政経費として恒久化をはかるべきである。
 
12.2025年度地方一般財源総額は、「経済財政運営と改革の基本方針2024」における、前年度比同水準ルールにも即して確保されているが、実際には賃上げ基調や物価高騰にも対応した、より積極的な地方財政の確保が求められる。少数与党による国会運営となる中、野党側の存在感は飛躍的に高まっており、自治労としての考え方をいままで以上に反映させる土壌は整っている。このため、協力国会議員団、立憲民主党をはじめとする協力政党、地方3団体など広範な連携を取りつつ、地方財政確立の取り組みを強化する。
 
2025年1月8日
全日本自治団体労働組合
書記長 伊藤 功


2025年度政府予算案・地方財政対策に関する談話.docxをダウンロード  

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