【巳年企画】ヘビを「怖い」と感じるのはなぜ?人間の脳に宿る“危険察知システム”の起源を探る

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【巳年企画】ヘビを「怖い」と感じるのはなぜ?人間の脳に宿る“危険察知システム”の起源を探る

2025/01/08

多くの人が「怖い」と感じるヘビ。なぜそう感じるのか。ヒトの感情メカニズムに焦点を当て、「比較認知科学」という学問領域で研究をしている名古屋大学・情報学研究科の川合伸幸教授に話を聞いた。

川合 伸幸(かわい のぶゆき)名古屋大学情報学研究科教授。日本学術振興会特別研究員、京都大学霊長類研究所研究員などを経て、現職。専攻は比較認知科学・認知科学・実験心理学。主な著書は「コワイの認知科学」(新曜社)、「怒りを鎮める うまく謝る」(講談社)など。

-先生の研究によると、「ヒトには先天的にヘビを危険と察知するシステム」がある、とのことですが、なぜそんな機能が備わっているのでしょうか?

 およそ6500万年前にサルが出現してから、サルはヘビに襲われて命を落としていました。約5500万年前には、温暖化によって樹冠が出現し、木の上で暮らす霊長類が飛躍的に進化しました。我々の祖先は、その進化の過程で「視覚を良くして、天敵を早く見つけて逃げる」ことで生き延びてきました。

 ヘビにかまれると命を落とす危険があるため、ヒトはヘビの体表のウロコを見ると、大脳皮質の一部である視覚野とその奥底にある神経核で、その独特な「ウロコ」の情報を受け取り、これを「危険なもの」と判断・察知できるよう脳を発達させました。ヘビを怖いと思わない人であっても、この危険(ヘビ)に対する「防御反応」が脳内で生じることが研究によって明らかになっています。つまり、防御反応は万人に見られるが、それを脳がどう解釈するか(ヘビを怖がるか怖がらないか)は人それぞれ、気質によって異なる、というわけです。

-実際にどんな実験で検証したのでしょうか?

 海外の研究では、まだヘビを怖いものと認知していない生後6カ月の赤ちゃんでも、ヘビに対して強く反応する(強い脳波を出す)という研究結果が得られています。また、クモやゴキブリといった多くの人が嫌う生き物への脳の反応と、ヘビを見たときの反応を比較した場合でも、ヘビへの反応の方が強かったり、試しにヘビのウロコを画像加工で消して、滑らかにして被験者に見せてみると、ほかの生き物への反応と大差がなくなったりします。さまざまな実験を通して、人間の脳には「ヘビのウロコを即座に見つけ、危険と察知するシステム」がある、という結論に至りました。

 世界保健機関(WHO)の発表によると、現代でもコブラやマムシなどの毒蛇にかまれて命を落としている人が、世界で毎年8万人超もいます。危険から身を守るために必要な機能が、祖先から代々伝わっていると考えてよいでしょう。

(機関紙じちろう2025年1月15日号より転載)

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