2016/07/11
1.7月10日、第24回参議院選挙の投開票が行われた。まず、この間、全国各地で、組織内候補・政策協力候補をはじめ全ての推薦候補への支援に、ご奮闘を重ねていただいたすべての皆さんに深く敬意と御礼を申し上げる。
2.立憲主義否定・民意軽視の安倍・自民党による「一強政治」から、民主主義を取り戻す闘いとして、民進党を中心とする野党が選挙区候補者の一本化を図るなど、「野党共闘」のもと進められた選挙戦であった。
民進党は、前回参議院選挙(17議席)を上回る32議席を確保したものの、伸び悩み、改選47議席から勢力を後退させ、社民党は1議席を確保したが吉田党首が議席を失う結果となった。その一方で、自民党は56議席、公明党は14議席を確保し、引き続き、与党で参院過半数を維持するだけでなく、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党などを含めた改憲勢力が、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を上回るという、極めて厳しい結果となった。
3.2012年の総選挙により民主党が野党に転落して、3度目となる国政選挙であったが、依然として民進党の支持率は十分回復しておらず、第24回参議院選挙は、連合・自治労にとって、引き続き、厳しい選挙戦となった。比例代表議席の獲得についても11議席と、連合組織内候補12人が議席を奪い合う結果となった。
このような状況の中、比例代表では、自治労の組織内候補「えさきたかし」は18万4千余の個人票を獲得し、議席を死守することができた。選挙区では、組織内候補「イハ洋一」(沖縄選挙区)、政策協力候補「宮沢ゆか」(山梨選挙区)も激戦の中で議席を獲得することができたが、「横山たつひろ」(福井選挙区)については、奮闘及ばず、議席獲得には至らなかった。
厳しい選挙戦ではあったが、前回2010年の個人票を大幅に上回る18万4千余の得票数で、組織内候補「えさきたかし」の議席を守り、自治労の政治的影響力を維持することができたのは、ひとえに、県本部・単組(たんそ)・組合員が、支援いただいた産別・団体の皆さんとともに、最後の最後まで諦めずに、取り組みを重ねた成果である。しかし、獲得票が目標に及ばなかったことは重く受け止めなければならず、改めて、組織と運動の点検・強化を図りながら、今回の成果を、次の闘いにつなげていかなければならない。その闘いは今日から始まる。
4.民進党など野党4党は、今回の参議院選挙において、限界を迎えている経済政策「アベノミクス」を転換し、公正な分配と格差是正を実現していくこと、そして、改憲勢力に3分の2をとらせないことを最大の課題として取り組んできた。しかし、「同一労働同一賃金」実現や「給付型奨学金制度」創設に象徴されるように、これまでの連合や民進党の主張を政府・与党が真似て政策・公約に掲げる露骨な「争点つぶし」や、「憲法改正は選挙の主要な争点ではない」とする与党の「争点隠し」、野党共闘は政策もバラバラの「野合」であるとの表層的な批判を繰り返すことにより、本来、論戦が繰り広げられるべき税や社会保障などの政策課題、「立憲主義」「平和主義」「民主主義」の根幹である憲法のあり方について、議論が掘り下げられなかったことは極めて残念である。
5.衆参ともに改憲勢力が3分の2を占めたことで、安倍首相は「これからは憲法審査会でいかに与野党で合意をつくっていくかだ」と表明しており、秋の臨時国会以降、衆参両院の憲法審査会の議論に影響するのは必至の情勢で、改憲項目の絞り込みに向け、各党による協議の加速を狙う構えである。また、今のところ「解散は考えていない」と表明しているものの、年内にも解散総選挙が行われる可能性も否定できない。
今回、32の一人区のうち、民進党を中心とする「野党共闘」が獲得したのは11議席にとどまったが、候補者の一本化が進められなければ、より劣勢に追い込まれていたのは明らかであり、「野党共闘」の枠組みを積極的に受け止める必要がある。マスコミの調査では、「安倍首相の下での憲法改正」について、反対が賛成を上回っており、立憲主義否定・民意軽視の安倍・自民党による「一強政治」に歯止めをかけていくことが求められていることから、引き続き、民進党を中心とする野党の協力・連携が必要なことは言うまでもない。
6.今回の参議院選挙で、安倍・自民党の一強体制が継続されることとなったが、6月の沖縄県議選、参議院選挙と同日に行われた鹿児島県知事選においては、野党が勝利しており、こうしたことは、必ずしも国民が安倍政権が進める政策を信任しているわけではないことを示している。憲法改正以外にも、限界を迎えている「アベノミクス」、歴代政権が禁じた集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の本格運用、原発再稼働・エネルギー政策、TPP等々、課題は山積しており、民進党を中心とする野党には安倍政権を追及していくことが求められる。民進党には、こうした課題について論戦を展開していくとともに、引き続き、民進党が中心となって野党の協力・連携を強めていくことを強く期待したい。
自治労は、協力国会議員との連携のもと、「共生と連帯に基づく持続可能な社会」の実現と地域公共サービスの発展・強化、分権・自治の推進など、政策実現に改めて邁進していく。また、国民多数に対応した「中道」「リベラル」な政治勢力の拡大に向け、引き続き、尽力していく決意である。単組(たんそ)・県本部、組合員の皆さんのより一層の結集をお願いする。
2016年7月11日
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 川本 淳