2016/11/09
総務大臣会見・消防職員に関する定例協議(10月31日)
1.高市総務大臣と自治労四役との交渉
自治労は10月31日、総務大臣との定例会見を行った。自治労側からは、川本委員長、荒金副委員長、杣谷副委員長、仙葉副委員長、福島書記長、青木書記次長が出席、総務省からは、高市総務大臣、髙原公務員部長ほかが出席した。
● 川本委員長が別紙の要求書を高市総務大臣に手渡し、「引き続き緊張感と信頼感を持ったパートナーとして活発な意見交換をさせていただきたい」と述べた上で、次の2点について、以下の通り要請を行った。
(1)地方交付税・地方財政の確保について
総務省が8月末に公表した平成29年度予算の概算要求のうち、地公交付税に関しては、今年度1.3兆円の「前年度からの繰越分」がゼロになることを主たる要因として、出口ベースでは約16兆円・前年比約7千億円マイナスとなっている。
この背景には、やはり経済状況の変化があるものと思うが、地域経済の回復の足取りは遅く、むしろ東京と地方の格差は拡大している。地域経済ということでは、人口減少・雇用対策のほか、保育、介護などの社会保障制度の充実、防災・減災対策、環境・地域交通対策などを含めた行政サービスを拡充していくことが重要であり、総務省には、財政需要を的確に地方財政計画に反映していくとともに、一般財源総額を確実に維持・確保することを強く要請しておきたい。
2020年度まで基礎的財政収支を黒字化させる目標を、政府が堅持する一方、消費税10%への引上げが2年半先送りされているが、そもそも増税によって賄う予定であった社会保障の充実策の実施のための財政負担等を、自治体に転嫁することのないよう、さらに、保育士、介護職員の人材確保のための処遇改善に必要な財源についても、政府・総務省として確保していただくようお願いしたい。
また、トップランナー方式等の拡大は、民間委託等の政策誘導を行うものであり、結果として、地方財政の圧縮につながっていくものと認識している。コスト削減の取り組み事例として情報提供することの意義は否定しないが、1700ある自治体が実際にどのような形でサービスを提供するかは、全国一律ではなく、提供主体を含め、様々なあり方があって良いと考える。自治体ごとに取り巻く環境が異なる中で、コスト面ばかりを重視したトップランナー方式等を拡大することが必ずしも住民にとって良い選択でない場合もある。自治体の判断を尊重していただきたい。
いずれにしても、公共サービス維持・拡充のためには、交付税・地財確保が極めて重要である。今後、財務省との厳しいやり取りも想定されるが、高市大臣のご奮闘・ご尽力を強く期待している。
(2)臨時・非常勤等職員の処遇、不安定雇用の改善について
総務省調査では、臨時・非常勤職員は、前回2012年から4.5万人増えて64.5万人となっている。財政難の下の採用抑制の中で、正規職員からの置き換えが進められてきたことが増加の主要因だが、勤務時間、また仕事内容に関しても、正規職員と同等または近い働き方をしている臨時・非常勤職員が多く存在し、一般行政、教育、保育等々の現場に欠かせない存在となっている。その一方、劣悪な処遇、そして法律自体の建てつけの問題もあり、年度末の雇止めなど不安定雇用に置かれる実態にある。
現在、政府では同一労働・同一賃金の実現に向けた検討を進め、それに並行して、総務省の研究会でも検討が行われ、年内を目途に報告が取りまとめられる予定である。自治労としては、要請書に記載の通り、法律と実態との乖離の状況および臨時・非常勤職員が担っている役割も踏まえ、今日的な実態に即した抜本的な法改正が必要であることを訴えてきた。9/20の記者会見では、高市大臣より「研究会報告、民間の働き方改革の議論などを踏まえ、臨時・非常勤職員の適正な任用、勤務状況の確保に向けて、しっかり取り組みたい」と言及されているが、大臣のご英断のもと、真にこれら職員の処遇改善、雇用安定、ひいては公共サービスの質の向上につながる、法律改正をも含む措置を実施いただくようお願いしたい。
● これに対し、高市総務大臣は、以下の通り回答した。
(1)地方交付税・地方財政の確保について
平成29年度地方財政収支の仮試算においては、地方団体に交付される出口ベースの地方交付税が0.7兆円の減、臨時財政対策債が0.9兆円の増という大変厳しい状況にある。
このように大変厳しい状況にあるが、年末の地方財政対策に向け、社会保障をはじめ地方団体が必要な行政サービスを確実に提供しつつ、安定的に財政運営を行っていけるよう、地方の一般財源総額をしっかりと確保するとともに、特に地方交付税総額が適切に確保されるよう努めてまいりたい。
地方財政が依然として厳しい状況にある中で、引き続き行政の効率化を進めるため、昨年8月に総務大臣通知を発出し、民間委託等の業務改革の推進に努めるよう各地方団体に要請した。
こうした中で、地方交付税の算定においても、平成28年度に検討対象の23業務のうち、多くの団体で業務改革に取り組んでいる16業務について、トップランナー方式を導入した。
図書館管理等の残り7業務については、現在、地方団体及び関係省庁からヒアリング等を行っているところであり、年内に結論を得るよう、適切に検討してまいりたい。
また、地方交付税は一般財源であることから、業務をどのような手法で実施するかは、地域の実情等を踏まえて、地方団体において自主的に判断されるものと考えている。
(2)臨時・非常勤職員の処遇改善について
臨時・非常勤職員等の任用・勤務条件の確保については、総務省として、平成26年に通知を発出し、各地方公共団体に必要な対応を要請している。
この通知のフォローアップも含めた臨時・非常勤職員等の実態調査について、私から指示を行い、平成28年4月現在で実施し、9月に速報値を公表した。
この調査結果や、民間における「同一労働同一賃金」の議論、国における取組などを踏まえ、臨時・非常勤職員等の任用・勤務条件の在り方について、検討を行うため、本年7月から研究会を開催している。
現在、この研究会において、必要な検討を行っているところであり、総務省としては、年末に予定されている研究会の報告などを踏まえ、臨時・非常勤職員等の適正な任用・勤務条件の確保に向けて取り組んでまいりたい。
● これに対し、川本委員長は、「熊本地震では、住民の生命・財産を守る拠点としての自治体庁舎など公共施設の脆弱さが露呈した。改めて、復旧の拠点としての公共施設の重要性が認識されたところであり、緊急防災・減災事業債の恒久化、要件緩和など、制度の拡充をお願いしたい。あわせて、復旧・復興のマンパワーである職員が働き続けられる環境の整備が重要であり、メンタルヘルス対策の実施・拡充もお願いしたい」と再度要請した。
最後に、川本委員長は、「財務省が財政制度等審議会による独自の試案で地財計画の歳出規模が1兆円程度上回っているとの試算を提示したことについて、高市大臣は10月28日の会見で、財務省の試算と総務省の試算は真逆であり、その手法について疑義を感じていると的確に言及されているが、私どもも認識は同じ。地方自治体が必要な行政サービスを提供できるよう、一般財源総額の確保に向けて、引き続き大臣の奮闘をお願いしたい」と要請し、締めくくった。
2.自治労委員長と総務大臣との消防職員に関する定例協議
● 引き続き、消防職員に関する定例協議として川本委員長は、以下の通り要請した。
大規模自然災害に備え「消防力」の確保が重要である。平成27年度・消防施設整備計画実態調査では、消防庁「消防力の整備指針」に基づき各消防本部が設定した目標に対する整備率が公表されているが、職員の整備率は77.4%、人口10万人未満の消防本部では66.1%である。厳しい財政状況が背景にあると考えられるが、乖離の状況を埋めていくことが重要である。
また、消防職員の労働環境は、女性活躍推進、ワークライフバランス、労働時間の縮減、さらには働き方の改革などが叫ばれる一方で、仮眠室やトイレ等が男女共用のままなど庁舎施設の未整備、産休・育休への理解が十分でないことも背景に、女性職員は全体の約2%にすぎないのが現状である。「休憩」と称した無賃金での拘束時間が長時間に及ぶことは大きな問題で、こうしたことも要因ではないかと思う。高齢化進展のもと救急搬送人員の増加が続き、無賃金の休憩時間の確保さえ十分出来なくなることが危惧される。職員確保とともに、現在の働き方についても、見直していくことが重要ではないか。消防職員のモチベーション向上につながる労働環境の整備に向け、政府としても検討し、対策を講じていただきたい。
消防職員の団結権に関わって、ILOは、第87号条約第9条を根拠に団結権から除外することが不適当である旨、1973年の勧告以降、繰り返し指摘してきている。消防職場は、依然としてパワハラ・いじめ等、職場環境をめぐっては改善すべき課題が多く、対等な労使関係を構築していくことが必要である。残念ながら廃案になったものの、総務省として検討会を設置し、公労使で検討を進め、2012年の第181国会に、消防職員に団結権を付与するとした地方公務員制度改革関連2法案を提出した経過・実績を大事にしていただきたい。消防職員の団結権付与は、ILOから再三再四、改善勧告を強く受けている問題であり、自治労だけではなく、連合、そして国際社会からの要請である。引き続き、ご対応いただくよう強く要請する。
● これに対し、高市総務大臣は、「私の会見および財務省との協議についても注視・激励いただき、感謝する」と述べた上で、以下の通り回答した。
「消防職員の労働環境」については、全国の消防吏員に占める女性の割合は、平成28年4月1日現在で2.5%となっており、警察や自衛隊といった他の分野と比較しても低い水準となっている。
そのため、現在、女性消防吏員を目指す学生に積極的にPRしたり、消防署の女性専用の施設の整備を特別交付税により支援したりすることによって、女性消防吏員の活躍推進を積極的に進めている。
女性消防吏員を増やしていくためには、女性も含めた消防職員が安心して働くことができる環境を整備していくことが重要と考えている。
御指摘のあった消防職員の休憩時間については、待機場所の指定はあるものの、基本的には自由な時間として使用することができるものとされている。職員が健康的に勤務するためには休憩時間の適正な確保は 不可欠であり、消防庁としても特に過重な勤務となっている救急隊員について、適正な労務管理の対応方策を示すといった取り組みを行っている。
消防職員の勤務条件の改善については、消防組織法に基づき各消防本部に設置される消防職員委員会が活用されている。
この消防職員委員会は、ここ数年、ほとんどの消防本部で開催されており、平成27年度は全ての消防本部において開催された。
消防職員委員会における審議件数は、制度がスタートした平成8年度以降、毎年5,000件程度あり、このうち約4割の意見が「実施が適当」と判断されている。
また、平成26年度において「実施が適当」と判断された意見のうち約6割が既に実施されており、職員の勤務条件の改善に一定の成果を挙げていると考えている。
今後とも、この制度が適切に運営されるよう、各消防本部に対し適切な指導・助言を行ってまいりたい。
消防職員が、その職務を適切に遂行し、住民の安全と安心を守っていくためには、まずは消防職員自身の健康管理・安全管理が重要である。消防職員の勤務環境の整備に、引き続きしっかりと取り組んでまいりたい。
「消防職員の団結権を含む地方公務員の労働基本権の在り方」については、国家公務員制度改革基本法附則第2条において「国家公務員の労使関係制度に係る措置に併せ、これと整合性をもって、検討する」こととされている。
国家公務員の労働基本権の在り方については、安倍総理からも「多岐にわたる課題があることから、これまでの経緯などを踏まえ、引き続き慎重に検討する必要がある」との認識が示されているところである。
このため、消防職員の団結権を含む地方公務員の労働基本権のあり方については、今後とも、国家公務員についての動向を踏まえ、関係者のご意見をよく伺いながら、対応してまいりたい。
また、消防職員委員会についても、今後とも適正に運営され、勤務条件等のより一層の改善が図られるよう、地方公共団体に対し、指導・助言を行っていく考えであるので、課題や改善点などがあれば、教えていただきたい。
最後に、川本委員長から、引き続きの協議を要請し、定例協議を締めくくった。