2024/03/05
2月23~24日、東京・TOC有明にて「2024年度地域医療セミナー」を開催した。テーマは「成長し続ける地域医療をめざして~人員の確保と労働環境の改善にむけて~」。会場には約370人が集まり、コロナ禍前並みの参加者数となった。初日の全体会はウェブを併用して行い、ウェブでの参加は約80人だった。
※セミナーの内容は、期間と公開範囲を限定して、動画配信をしています。閲覧方法等は、ご所属の組合事務所までお問い合わせください
初日の全体会は、まず平山事務局長の提起を受けた後、城西大学経営学部教授の伊関 友伸さんによる講演「アフターコロナの時代の自治体病院経営」を行った。混乱するコロナ禍初期において積極的に患者の受け入れに当たった自治体病院の役割の大きさを改めて伝えるとともに、アフターコロナにおいても公立・公的病院の地域で果たす役割は重要であり、効率や経営論の観点だけでなく必要な機能を保つための人員確保が必要であると述べた。
続いて、NTTデータ経営研究所の土屋 裕一郎さんから「医療現場におけるデジタル技術(AI・ICT)活用の展望」について講演をいただいた。少子・高齢化により労働人口が減少する中で、医療現場においてもAI・ICT化が求められている。国内外のデジタル技術の活用事例の紹介、Chat GPTの実演を交えて講演を行った。
公立病院の再編統合についての現場報告として、自治労広島県職員連合労働組合から桒田 博正さんが「広島県立病院再編統合に対する取り組み」を報告した。広島県の医療課題として、若手医師の減少や急性期病床の過剰と回復期病床の不足などがあり、これらの解決のために県立病院と複数の民間病院を統合し、機能集約した新病院の新設が進められている。統合・再編成に際し、職員の身分や賃金・労働条件について当局と組合での話し合いが重ねられている状況について報告した。
この後、自治労協力国会議員・参議院議員の岸 まきこさんが会場に駆けつけ、活動報告を行った。医療現場の課題について評議会との意見交換の実施や、能登半島地震の被災地に派遣されている医療従事者の労働時間やメンタルヘルスの課題、育児中の夜勤免除の課題について厚労省に提言したことなどを報告した。また、診療報酬改定内容について、今後の国会で現場の賃上げに本当につながるかを注視・議論していきたいと述べた。
2日目は3つの分科会に分かれ、それぞれ講演、パネルディスカッション、グループワークなどを行った。
看護師分科会
日本看護協会の奥村 元子さんから「タスクシフト/シェアに向けての業務負担軽減」について講演を受けた。看護師は夜勤や「前残業」を含む時間外労働が多く激務であるが、看護師が専門性を要する業務に専念できるようタスクシフト/シェアを進めることが重要である。タスクシフト/シェアの先進的な事例紹介を交えながら、業務の見直しや働き方の効率化の必要性を説明した。
講演の後、看護問題対策委員から提起があり、その後グループワークで現場課題を共有し解決にむけた議論を行った。
講演の後、看護問題対策委員から提起があり、その後グループワークで現場課題を共有し解決にむけた議論を行った。
医療政策分科会
総務省自治財政局 準公営企業室の齋藤 聡さんが「公立病院経営強化の方策」について講演を行った。民間病院では採算のとれない地域や特殊部門に係る医療を担うなど、公立病院が果たす役割は大きいが、それゆえに経営状況は厳しくなり、公立の病院数と病床数は減少を続けている。そうした中、公立病院の経営強化プラン策定が求められている。経営の強化、地域医療に果たす役割などについて説明した。
また、再編・統合の渦中にあった3つの現場からの報告を行い、報告を受けてパネルディスカッションを行った。
コ・メディカル分科会
「時間外労働」「労働時間管理」「労働と自己研鑽」「宿日直制度」の4つのテーマについて、コ・メディカル委員会の幹事が解説し、それを受けパネルディスカッションとグループワークを行った。実際の働き方と法律で定められている内容とのギャップを理解したうえで、改善につなげていくことが必要であることを共有化した。