公立病院の経営・人員・労働環境の改善にむけて~2025年度地域医療セミナーを開催

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公立病院の経営・人員・労働環境の改善にむけて~2025年度地域医療セミナーを開催

2025/02/25

2月22~23日、東京・TOC有明にて「2025年度地域医療セミナー」を開催した。テーマは「地域医療構想の現状と2040年にむけた今後の展望~医療現場の労働環境改善を考える~」。会場には42県本部から約380人が集まった。初日の全体会はウェブを併用して行い、オンライン参加者は約70人だった。

 初日の全体会では、まず平山春樹事務局長が衛生医療評議会をめぐる情勢と課題を提起。コロナ関連の補助金の支給が終わり、多くの公立病院が赤字経営に陥っている中、経営難を理由に人件費を抑制する傾向にある。人員確保が必要な医療現場にとっては負のスパイラルになりかねず、医療機関、とりわけ公立病院に対する財政支援が急務であるとし、春闘にあわせて各職場の課題について要求を出していこうと述べた。
 全体会の概要は以下のとおり。
全体会の様子

■全体会・講演

講演①「新たな地域医療構想について」 
厚生労働省 医政局 地域医療構想推進室長 堤 雅宣さん
これまでの2025年にむけた「地域医療構想」では、必要な病床数と入院機能の調整に重点が置かれてきた。しかし、2040年にむけた「新たな地域医療構想」では、入院医療に加え、外来・在宅医療や介護との連携が一層求められている。また、多様な就労形態の普及や健康寿命の延伸を背景に、医療現場での人材確保が深刻な課題となっている。とくに、地域ごとの医師偏在も依然として問題であり、各地域の実情に応じた具体的な計画の策定が必要不可欠だ。

講演②「公立病院における医療DXの推進について」
島根県公立邑智病院副院長(兼)事務部長、企画調整課長事務取扱 日高 武英さん
公立病院の経営の赤字化が進む中、邑智病院はDXの活用を通じた業務の効率化、企業会計の理解、各部門の活性化・質の向上のための取り組みを重ね、経営改善を実現してきた。導入した物資搬送用ロボットは患者にも人気となり、話題になっている。一方で “病院をわが家のように考え”助け合い、教えあうことも働きやすい職場づくりにつながり、質の高い病院経営に大切である。

■全体会・報告

「能登半島地震で見えた医療現場の課題と公立病院の役割」 
石川県本部 珠洲市職員組合(珠洲市総合病院)菊谷 祐介さん
非常時の対応は訓練とは違い、想定外の役割も担わなければならない実態があり、道路崩壊による患者搬送は大きな問題だった。自らも被災者であるにもかかわらず、医療従事者として市民・患者のために対応を続けた経験をお話しいただき、日頃の備えの重要性を改めて共有化した。

■国会レポート

自治労協力国会議員 岸まきこ参議院議員
全体会の最後には、組織内国会議員の岸まきこさんが会場に駆けつけ、国政での取り組み報告を行った。能登半島の復興には継続的な取り組みが必要であること、地域医療を維持するために公立病院の経営問題への対策が不可欠であることなどに触れ、これからも衛生医療評議会とも意見交換を行い政策に反映していきたいと述べた。
 


 2日目は、3つの分科会に分かれて議論を深めた。概要は以下のとおり。

■分科会

①看護師分科会:「看護師あるあるから職場の課題を考えよう」

グループワーク時の様子と講師陣

 本来は時間外勤務として申請されるべき始業前残業や休憩中の待機、患者や患者家族からのハラスメントなど、看護師の職場の「あるある」について共感しながら、改善のための考え・方法を学んだ。
 看護問題対策委員の問題提起に続き、元奈良労働基準監督署長である尾形メンタルサポートの尾形賢一さんが「労働基準監督署の役割と医療現場の課題」と題した講演を行い、長時間労働がもたらす健康へのリスク、時間外労働の上限規制や宿日直許可基準などを説明した。参加者からは、これは時間外労働に当たるのか?など質問もあった。
 課題提起と講演を受け、グループワークを行い、意見交換をはかった。

 
②医療政策分科会:「みんなで学ぼう、公立病院の経営改善」

講師の合谷貴史さん(左)と実習に取り組む参加者たち

 公立病院の経営改善について、NPO法人病院経営支援機構理事長の合谷貴史さんが講演を行った。公立病院のほとんどが赤字経営のなか、人件費削減と経営形態の見直し論が強まっている。公営企業のひとつである自治体病院は、公共性と経済性の両立が求められる。公共性という点では不採算医療を行うという性格、一方で、独立採算制を基本とした組織運営のため利益の確保も必要だ。経営データを読むポイントについて実習を交えて学習した。

 
③コ・メディカル分科会:「医療技術職の労働環境改善とキャリアアップ戦略」

パネルディスカッションの様子(左)とグループワークでの意見交換の様子

 医療技術職(コ・メディカル)は医療を支える重要な役割を担っているにもかかわらず、賃金や人員確保の課題が多い。よりよい労働環境やキャリアアップの形成をはかるため、以下のテーマについてコ・メディカル委員会のメンバーが問題提起をした。
 
・医療技術職のポストの課題
・人員要求の仕方について
・中途採用者の前歴換算について
・給食調理員の現場課題と取り組み
 
提起のあとパネルディスカッションを行い、その後グループワークで意見交換と交流をはかった。

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