2025/03/19
3月13日、衛生医療評議会は第3回レベルアップ講座をオンライン開催し約100人が参加。衛生医療職場における若手育成について、講演とパネルディスカッションを通して学びを深めた。
冒頭、平山春樹衛生医療評議会事務局長より、基調提起と情勢報告を行い、評議会組合員アンケート調査結果から見える現場の課題を共有するとともに、医療崩壊を防ぐために必要な財源確保、医療従事者の処遇改善、カスハラへの対策の必要性を訴えた。
続いて、講座を主催する保健部会のメンバーが問題提起を行った。委員からは、離職する人が多く離職させないための方策が必要であること、どうやって後輩を育てていくかなど、現場の問題意識を提起した。
提起を受け、法政大学キャリアデザイン学部キャリアデザイン学科・上西充子教授が「現在の若者の考え方と人材育成」と題し講演を行った。

上西先生によれば、働き方や職業観については、時代による価値観の変遷だけでなく労働市場の影響も大きいという。データを見ると医療・福祉における離職者(学卒3年後)の割合に大きな変動はない。
その上で、「今、働き続けている自分たちの同世代にも離職者はいた。仕事を続け経験を重ねてきたことにより、現在の感覚や働くことについての意識が形成されている。そのことに本人たちは無意識な場合が多い。経験による差が世代間の感覚差になっている」と指摘。若者の職場適応については、若い職員同士のつながりを形成する期間や、先輩が付き添って仕事を教える期間を持つなど「クッション期間」が重要であり、上司・先輩職員については新人への声かけや丁寧な指導など、相手をきちんと見た上での対応が必要であると説明した。
また、上西先生は、相手の思考の枠組みを縛り、心理的な葛藤に押し込める悪意をもった言葉を「呪いの言葉」と呼ぶ。たとえば職場で「嫌なら辞めればいい」「みんな我慢している」などが「呪いの言葉」に当たり、これは本来向かい合って解決すべき問題から目を逸らせるための「悪意」による言葉であるという。
「みんな我慢しているんだから」と言いくるめられてみんなが不払い残業を認めてしまったら、問題は改善されない。どうすれば状況を変えられるか。声をあげ、問題を可視化することが必要だ。そこには労働組合の果たす役割も大きいということを認識する必要がある。
講演に続いて保健部会メンバーによるパネルディスカッションに移り、参加者からの質問や意見を受けながら進行した。メンバーからは「昔は飲み会の場で仕事を褒めてもらったこともあるが、今はそうした機会がない」、「看護師として患者さんに『傾聴』を意識しているのに、後輩に対してはそれができていなかったのかもしれない」などの声があがった。

参加者からは「先輩や上司がパワハラを意識しすぎるあまり、仕事を振れない。振っても断られるので育成がうまく進まない」といった悩みや、「新人や異動してきた職員に対し、何でも相談しやすい『心理的安全性』を大事にしている」などの発言があった。
上西先生からは「相手を認めたうえで仕事を与えているんだということを伝えるのが大切」とのアドバイスもあった。
講座を終え、参加者からは「後輩の成長を期待して仕事を振ってみたい」「組合目線だけでなく、いろんな視点で課題をとらえることの必要性を痛感した」「パネルディスカッションでは現場の具体的でリアルな声を聞けてよかった」などの感想が聞かれた。
※講座の内容は、後日、動画のアーカイブ配信でご覧いただけます。
閲覧方法はご所属の組合または県本部までお尋ねください。