2020/11/11
駒村康平慶応義塾大学経済学部教授
社会福祉評議会は、2020年10月17日に「自治労2021年度くらしとこどもの福祉を考える全国集会」、11月1日に「2020自治労全国介護・地域福祉集会」を実施した。新型コロナウイルス感染症の拡大を鑑み、今年の両集会は、各県本部をサテライト会場としてウェブ形式で開催した。
自分と自分の家族だけが幸せになれる社会はない!
「自治労2021年度くらしとこどもの福祉を考える全国集会」の全体会の講演では、駒村康平慶應義塾大学経済学部教授に「子どもの貧困は何をもたらすか?―神経社会政策試論と『社会のしんがり』を増やすためには―」と題してお話いただいた。駒村先生は、貧困の世代間連鎖についてあらゆる角度から指摘され、子どもの貧困、貧困連鎖の防止のための地域政策を提言された。また、格差を小さくするには他者を信頼できる社会が必要であり、南極の過酷な状況の中、仲間で支え合って子育てをするコウテイペンギンに例え、「自分と自分の家族だけが幸せになれる社会はない」と訴えた。第1分科会「生活保護・生活困窮者自立支援」では、梶野友樹厚生労働省社会・援護局課長より、行政説明「生活保護を巡る状況について」、村上浩勝グリーンコープ生活協同組合くまもと常務理事より、講演「生活困窮者自立支援および生活保護における効果的な家計改善支援事業の取り組み」をお話いただいた。
第2分科会「児童相談・社会的養育」では、金子正厚生労働省こども家庭局家庭福祉課虐待防止対策推進室長補佐による行政説明「児童虐待防止対策強化の現状と課題-子ども家庭総合支援拠点」、大場信一社会福祉法人北翔会理事長による講演「児童相談所・一時保護所職員の人材育成について」、石川浩子認定特定非営利活動法人青少年の自立を支える会ファミリーホームはなの家代表による講演「『はなの家』から見えるファミリーホームの現状と課題」について、それぞれ講演を受けた。
集会には39県本部275人が参加し、例年以上の多くの人に参加いただき、多くの課題について共有した。
超高齢社会はファミレス社会※、大介護時代をどう生きるか!
「2020自治労全国介護・地域福祉集会」では、樋口恵子NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長が「2040年 超高齢社会に向けた私たちの構想・私たちの状況」と題して講演を行った。樋口理事長は、女性高齢当事者の視点でユーモアを交えながら、大介護時代を迎える高齢社会においてどう生きるか、地域包括ケアシステムのあり方を含めて提言された。
※ファミレス社会とは、ファミリーレス(家族がいない)社会の略
樋口恵子NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長
地域包括システムは、システムではなくネットワーク!
福祉の範疇を超えている地域生活課題をどう解決するか?
また、古都(ふるいち)賢一日本福祉大学客員教授が、「これからの社会保障・社会福祉」と題する講演を行った。古都先生は、平成から現在までの社会福祉政策を振り返りながら、地域生活課題が複雑・多様化する中で社会保障と社会福祉の制度の枠を超えた問題が起きていること、またこの限界を乗り越え、地域包括ケアと地域共生社会の実現には、地方自治体が地域課題に主体的に取り組むことが重要であり、自治体職員の役割が重要であることなどを提言され、自治労へ熱いエールをいただいた。
古都(ふるいち)賢一日本福祉大学客員教授
そのほか、竹林厚生労働省老健局総務課長から、「介護保険制度をめぐる国の考え方や施策について」と題する行政説明も行った。
集会には37県本部207人が参加し、地域共生社会の実現にむけた取り組みについて共有した。
新型コロナウイルス感染症の影響で、今後も集会・会議の運営が読めない状況にはあるものの、本部社会福祉評議会は、福祉現場の声を吸い上げ、組合員に役立つ情報や場を提供していく。