2019/05/20
宇野二朗横浜市立大学教授(写真)から、ドイツの再公営化事例からみるこれからの地方公営企業について講演を受けた
公営企業評議会は5月17~18日,仙台市・東京エレクトロンホール宮城およびハーネル仙台にて水道・下水道・工業用水道・公営電気事業の各政策に対する取り組みを意見交換する合同政策集会を開催し,38県本部179人(男性176人,女性3人)が参加した。
冒頭、下村議長の主催者あいさつの後、杣谷副委員長があいさつとして、人材確保等を求める現業・公企統一闘争への結集、単組活動の活性化、市民へ安心安全なサービスを提供するという公営企業の使命が危うくなっていることに言及し、公営企業の存続にとっても7月の参議院議員選挙の取り組みが重要であることを述べた。さらに地元宮城県本部の伊藤委員長から、歓迎のあいさつとともに、宮城県が計画している水道・下水道・工業用水道一体のコンセッション方式導入に対し、住民を巻き込んだ学習会を開催するなど取り組みを強化し、地域住民とともに公共サービスを守り、安易な民営化を許さないたたかいを進めるので全国からの支援を、と訴えた。
続いて、宇野二朗横浜市立大学教授から、「再公営化の動向からみる地方公営企業の展望」と題し、ドイツの「再公営化」された地方公営企業の形態などの事例を挙げて、「民営化」の評価と「再公営化」の理由を踏まえて、今後の地方公営企業はどのようにあるべきかについて講演を受けた。ドイツにおいて再公営化のきっかけはさまざまであるが、再公営化に至る理由として、品質や技術上の問題から再公営化が行われる例は見られず、民間企業が利益を上げ、それが配当に使われるのであれば、再公営化してその利益を行政の他事業や市財政に使うことを選択する、料金値上げ・高水準が直接的な問題として前面に出るが、その背景には財務・契約内容の不透明さがあること、民間企業と自治体との政策的・手法の違いから、意思決定が遅くなる、市民の「公営」に対する一般的な支持が存在することが挙げられると説明。再公営化には技術的理由はないので、再公営化後も事業運営面での変更はなく、また利益が適切に分配・利用されるように他事業との複合化をすることがあげられると説明した。宇野教授は、今後、地方公営企業の意義を強めるために、住民との信頼関係を築き関心を高めること、地域社会への貢献、とくに自分の市町村だけではなくより広域な地域への貢献が必要であり、他事業との連携で新たな付加価値への挑戦をし、地域内での資金の循環の可視化と強化という地域志向型経営が必要であると述べ、また、こうした地域志向型公営企業を担う人材として、お互いが学びあえる職場とし、若者がそこで働きたいと思える職場、若者を育てることのできる職場づくりが重要であると助言した。
その後参加者から、①民営化の期間中の水道職員の配置、②民営化しても料金を自治体が管理するなどで料金高騰を招かず成功している事例はあるのか、③他事業との連携・統合において、職員は複数の事業の技術を持っているのか、などの質問が出された。
休憩をはさんで、石川局長が基調提起を行い、住民のためのライフラインとして低廉でサービスを提供し続けるために、公営企業を担う労働者として事業継続のための手法や体制を議論する必要があり、災害に対する人員体制の確保と実効性ある訓練や業務継続計画の見直し、事業の持続的運営のための料金、事業規模の見直しが必要であると述べ、コンセッション方式は民間が運営することのリスクが大きいことから導入は反対すること、広域連携は事業統合ではなくまず共同発注や施設の共同化を優先すること、広域的事業統合など経営形態の変更や労働条件の変更に対し、現業・公企統一闘争に結集し、課題解決にむけ事前の交渉が重要と訴えた。
続いて、大場水道副部会長、村木下水道部会長、河野ガス・県公企部会長が、それぞれ部会の活動報告を行った。
2日目は、第1分科会(水道)、第2分科会(下水道)、第3分科会(県公企)の3つの分科会に分かれ、分野別の政策について討議した。第1分科会では、厚生労働省水道課林課長補佐から水道法改正を踏まえた水道行政について講演を受け、その後、改訂作業の終盤を迎えた「住民のための水道政策」について大場水道副部会長が改訂のポイントを説明した。第2分科会では、「下水道事業を取り巻く現状と情勢」と題して国土交通省下水道部石井下水道事業調整官が講演、その後、「住民のための下水道政策」の改訂のポイントを村木下水道部会長が説明した。第3分科会では、北海道企業局労の寺崎公二さんが、北海道胆振東部地震での道営工業用水道施設の被害状況と対応について報告し、その後、各県の工業用水道事業、公営電気事業の現状と組合の活動について報告がされた。
公企評各部会の活動を報告 上から大場水道副部会長、村木下水道部会長、河野ガス・県公企部会長