2023/11/30
京都交通労働組合は、バス・地下鉄の運転者や駅務員、事務、技術(車輌整備、保線、電気など)の職員1583人(2023年4月1日現在)が加入している。写真は、バス運転者で常任執行委員の杉本真彦さん(左)、村川拓也(右)さん。
京都交通労働組合の仲間は、今まさに観光客急増の渦中にいる。日本を代表する観光地として旅客対応に奮闘しながらも、地域住民のため「くらしをささえる公共交通確立キャンペーン」の取り組みを行っている。
現状について京都交通労組の執行部は、「観光客が戻ってきて非常にうれしい」「バスを待っている観光客をもっと乗せてあげたい」「観光公害という言葉に市民の不安感が広がっており、プレッシャーを感じる」と話す。
コロナ禍に見舞われた22年度は、旅客数減少による減収を理由に複数のバス路線が減便し、観光路線バス(急行)も運休となった。旅客の戻りを予想した組合は、当局にダイヤの復活を要求したが、先行きが不透明であったことから23年度も減便・減休ダイヤを改正せず、人員を確保しないまま現在の観光客数を迎えた。
その結果、車内の大混雑やバス停の長蛇の列など、市バスをめぐる「オーバーツーリズム」を招くこととなった。コロナ禍前の水準に戻りつつある旅客数に対応するため、臨時便の増便や接客応対の増加など、バス運転者の努力でどうにか乗り切っている状態だ。
このような未曽有の事態に直面しながらも、日常的な利用者を確保し経営安定化につなげるキャンペーンにも力を入れている。京都交通労組は、職員から利用者に感謝を伝え、バスや地下鉄のトイレ清掃などを行う「エンパワメント活動」を続けている。この活動により、社会資本を支える職員として一人ひとりが意識を高め、質の高いサービスの提供を行う。このような職員を見て、京都市営交通のファンや利用者が増え、公共交通と職場を守ることにつながる。
全国各地で人員不足によるバス路線の減便・廃止が社会問題となっている。慢性的な人員不足に加え、運輸業界の「2024年問題」により、人員不足は戦後最大の危機と言われるほどだ。同業種内で人材の取り合いの激化が予想される。
現場の組合員は地域のために奮闘している。公共交通を守る人員・予算確保のために自治労70万人の力で国への働きかけを強めなければならない。
運輸業界の「2024年問題」とは?
働き方改革関連法を踏まえ、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が改正され、2024年4月からトラック、バス等のドライバーの労働時間の上限規制が強化される。一人当たりの労働時間が規制されることにより、労働環境は改善されるものの、慢性的な人員不足の深刻化や物流の停滞、コスト増などの問題が発生する。これを「2024年問題」と呼ぶ。また、バス運転者においては、運転に必要な大型二種免許の交付件数が10年前と比較して半減し、保有者の高年齢化も進んでいる。公共交通維持のための人員確保が重要となる
取材:2023年10月24日
機関紙じちろう2023年12月1日号より転載