2018/06/28
PSI-JC30周年記念イベントが6月22日(金)に自治労会館で開催され、PSI-JC加盟組合より約90人が参加した。
川本委員長(PSI-JC議長)のあいさつに続き、PSIのローザ・パヴァネリ書記長(見出し写真)。より「世界はどこへ向かうのか~むこう5年間のPSIの課題~」として講演を受けた。
講演の冒頭、ローザ書記長は「PSI-JCがこれまで日本国内における多くの公務サービス労働者のために職場、生活環境の改善にむけて取り組んできたこと、団結権、団体交渉権を勝ち取るために戦ってきたことに敬意を表する。」とあいさつをした。
その後、3点において日本の取り組みを評価した。
まず直近の話題として、「5月のILO総会の場で日本における消防職員および刑事施設職員の団結権、団体交渉権を獲得するためにともに活動をしてきた。結果として条約勧告適用委員会からも理解を示す旨のコメントも得ることができた。」として5月にスイスのジュネーブで行われたILO総会を振り返った。
一方で「この案件が取り上げられたことは初めてではない。1954年以来何度も議論がなされてきた。日本政府は本当にこれらの権利付与にむけ第87,151,154号を適用する意思があるのか。」と政府の姿勢について厳しく指摘した。その上で「一方でこれだけ多くの勧告がなされているという事は、労働者の権利のために戦っていくという皆さんの忍耐力がはっきりと示されたのではないか。」と取り組みを評価した。
次に、「PSIグローバル緊急サービス労働者ネットワーク」についてPSI-JCが先導的な役割を果たしてきた点について触れた。
「2011年の大震災、福島の事故の後、全消協のみなさんはファーストレスポンダー(緊急事態従事者)として対応する職員の権利、労働条件がいかに重要なのか、ということを訴えてこられた。全消協の村上会長、竹内事務局長はジュネーブで開催されたPSI世界大会でのパネルセッションやILOの三者構成専門者会議の場で重要な役割を果たされてきた。結果としてファーストレスポンダーの労働三権や、公務部門の基礎的な役割について、これらの会議の場でPSIの立場が反映されている。私たちも11月に開かれるILO理事会でこれらのガイドラインが採択されるような運動を強めていく。」と語った。
最後に国際的連帯、グローバルキャンペーンについて西アフリカのリベリアの例をあげPSI-JCが果たしてきた役割についてふれた。
「西アフリカのリベリアでは、エボラ出血熱の対応にあたった保健職員の劣悪な労働環境に抗議をしようとした労働組合のリーダーが職場を追放された。これに対して私たちは様々な取り組みを進めてきた。具体的には、すべての労働者が団結し、結社の自由がしっかりと保障されること、保健部門で働く労働者に対する権利侵害に対して国際的な注意喚起をすること、適切な公務、保健サービスのために質の高い人的資源が配分されることを主張した。リベリアの労働組合がILOに申し立てをした際は、PSI-JCも在日リベリア大使館に対して仲間の取り組みを支援する目的で抗議をしてくれた。こういった努力が実を結び追放されたリーダーは復職をすることができ、労働組合も認められることとなった。みなさんの非常に積極的かつ力強いサポートに感謝する。」と謝意を表した。
その後地域別、課題別に様々な観点から今後の世界のあり方について語った。
緊張関係にあったアメリカと北朝鮮が今や「親友」と表現できるほど距離を縮めていることにふれ、「横暴で独裁的な両国のトップの動向に世界の将来が委ねられている状況下では、もはや政治によりよい未来を構築するための長期的なビジョンを見出すことはできない」と懸念を示した。
アメリカについてはパリ協定、ユネスコや国連人権委員会からの離脱、保護主義的な貿易政策について指摘。EUについては、移民や難民に対する恐怖を用いて権威主義や非民主的主義的な政策を押し付けるポピュリストやレイシストの台頭により、従来の社会的な寛容性を背景とした福祉国家として存在し続けられるかの岐路に立たされていると評価した。
中東地域においては戦争、紛争の広がりにより危険な状態となっており、アフリカ地域については未だ多くの人が暴力や搾取によって苦しみ続けているとした。
アジアについては大半の国では経済成長が見られてきたが、労働者の権利においては改善が見られず、不平等が解決されていない状況にあるとし、中国は新自由主義、新植民地主義といった政策をかかげながら台頭をしてきていると警戒感を示した。
また貿易政策について、多国籍企業に有利になるような貿易協定が広がりを見せているが、労働者の権利に影響を与えるだけでなく、公共サービスへのアクセス、中小企業、ローカル経済への影響は計り知れない、とした。
他にも富の集中、租税回避の流れは働く者に重い税負担を課すものであるとコメント。
また世界銀行やIMFをはじめとした緊縮財政政策による公務サービスの民営化、PFI、PPP、AI化、男女間賃金格差など幅広い課題についてふれた。
最後に「PSI-JCの団結はすべての労働者、組合にとって非常によい例となると信じている。皆さんがそれだけの能力、ポテンシャルを持っているからこそ、ここまで結集を強化できた。ここを一つの出発点として、日本国内だけでなく、地域、グローバルなレベルでも活動を広げ模範を示していただきたい。」と今後の更なる期待を述べ講演を終了した。
(ローザ書記長を囲んで記念撮影)
どこまで知ってる?組合で何ができる?ハラスメントやLGBT~PSI-JC男女平等セミナー~
記念イベントの終了後、PSI-JC女性委員会・ユースネットワークは、2018年度男女平等セミナーを開催し、PSI-JC加盟組合より74人(うち女性41人)が参加した。セミナー冒頭、青木真理子副委員長(PSI-JC女性委員会議長)が開会あいさつおよび提起を行った。
青木副委員長はこの間の財務事務次官のセクハラ問題に関わる発言を例に、日本におけるハラスメントの認識、対策を提起した。またILO総会での「仕事の世界における暴力とハラスメント」条約採択にむけた取り組みを紹介した。
(「働きやすい職場づくり」について青木副委員長(PSI-JC女性委員会議長)より提起)
その後グループに分かれ職場の現状、課題、その解決方法を考えるグループ討論を実施した。討論後は数グループが討論の内容を発表し全体で共有をした。
(「自分の職場ではこんなことがあって・・・」熱心に意見を交わす参加者たち)
セミナー2日目の6月23日は、昨年に引き続き増原裕子(ますはらひろこ)LGBT法連合会/株式会社トロワ・クルール代表取締役を招き「LGBTQIとは」として講演を受けた。LGBTに加えてQ(クィア/クエスチョニング)I(インターセックス)といった言葉の解説から始まり、「LGBTQI」は人口の7.6%存在していること、性的指向(Sexual Orientation)。や性自認(Gender Identity)をSOGIと呼び、これらに関する差別的な言動(SOGIハラ)に対する社会的な認知が進みつつあることなどを学んだ。また、同じ差別を受ける事例でも国籍、身体的な障害と比べ家族からのサポートも受けにくく、カミングアウトが難しいなど、自身の体験を交えて語る増原さんに多くの参加者の理解が進んだはずだ。
(講師の増原裕子さん)
セミナー後は再びグループに分かれ、
「職場で働く仲間からのカミングアウト、自分ならどう受け止める、どう対応する」
「自分がLGBTQIの当事者だったら、職場でカミングアウトしたいか。その理由は」
「職場で働く仲間からのカミングアウトを受けて、労働組合で何ができるか」
の3テーマについて、ワールド・カフェ方式でメンバーを入れ替えながら自由に対話を行った。
最後に佐藤良太青年部長(PSI-JCユースネットワーク共同議長)が2日間のまとめを行いセミナーは終了した。
昨年より参加者も増え盛況なセミナーとなった(写真中央:青木副委員長と増原さん)