意識調査を通した公務労働とサービスに関する公民意識比較の試み

群馬県本部/自治研推進委員会


1. 取り組み経過

 この取り組みは、1997年に連合群馬官公部門連絡会が、民間労組役員を対象に実施した、「公務労働とサービスに関するアンケート調査」において、回答の多かった指摘事項について、自治労群馬県本部組合員の意識調査を行い、照らし合わせることを課題として実施したものである。
 行政改革論議の最中に、ともすると公民反目に向きかねない状況下で、民間労組調査が行われ、相互理解への一つの素地が開かれた。
 これを受けて、誤解や偏見を拭い去り、自己改革へとつなげる一歩として、また、今後の連合全体の活動への参考資料を提供する意味で、この取り組みが行われた。
 あわせて、至近の課題である介護保険、男女共同参画に関する設問を加えて調査を行った。
 作業主体は、自治労群馬県本部労働政策局自治体政策部の専門委員会である自治研推進委員会があたり、委員会での検討、自治研協力者の助言を経て、調査内容を決定した。
 調査実施期間は、2000年4月5日~27日にかけて実施した。
 配布にあたっては、自治体51単組の組合員の10%、1,825名を対象に調査を依頼し、回収は32単組1,392名、回収率は76.3%であった。
 調査対象者については、できる限り、職種、年齢を分散するよう調査依頼し、以下基本項目の集約のとおり、ほぼ構成実態を反映したものとなっている。

2. 集約結果・分析

(1) 基本項目
 ① 職種別集約と割合

行政職場(非現業) 988 71.0%
行政職場(現業) 127 9.1%
社会福祉職場(保育所) 39 2.8%
社会福祉職場(保育所以外) 29 2.1%
衛生医療関係職場(病院の医療技術者) 1 0.1%
衛生医療関係職場(保健所・保健センター等) 90 6.5%
学校教育関係職場(学校給食職場) 30 2.2%
学校教育関係職場(学校給食職場以外) 24 1.7%
清掃職場 25 1.8%
10 上記以外の職場 39 2.8%

 ② 県(企業局を含む)・市・町村別の集約人数と割合

512 36.8%
562 40.4%
町村 318 22.8%

 ③ 性別の集約人数と割合

389 28.0%
999 72.0%

 ④ 年齢層別の集約人数と割合

19歳以下 5 0.4%
20~24歳 85 6.1%
25~29歳 275 19.7%
30~34歳 246 17.7%
35~39歳 216 15.5%
40~44歳 244 17.5%
45~49歳 182 13.1%
50~54歳 104 7.5%
55歳以上 36 2.6%

(2) 課題項目
  各設問の内容及び回答状況(円グラフ)と、行政職非現業とそれ以外の職種別、県・市・町村別、年齢層別の回答状況(一覧表)を以下課題ごとに掲載した。
  設問については、9課題・31問で、回答は、1.思う、2.思わない、3.一部思う、の選択式とし、前・後半でそれぞれ自由意見欄を設けた。
  以下のまとめにあたっては、回答3・「一部思う」の含む範囲が広すぎ、態度保留的要素が多分にあったと思われるが、ここでは消極的な肯定としてまとめた。

課題1  ― 給与・退職金削減はNO ― 
  課題1の行政改革については、問5【行政のスリム化】・問6【人員見直し】・問7【給与・退職金の削減】・問8【外部監査導入】で質問し、問5・6・8については、肯定の回答が多数を占めた。この項の全質問において県職が、市・町村職の肯定の回答を上回っている。
  問7については、県職の63%から町村職の76%まで、回答2の否定が多数を占めている。年齢層でみると、世代を追って否定が上昇している。
  問8については、行政職非現業以外の肯定的回答が行政職非現業を上回っているが、その他の質問では、行政職非現業の肯定的回答が上回っている。

課題2  ― 地方分権で大きな変化ない ― 
  課題2の地方分権については、問9【行政の効率化が進む】・問10【地方文化を大切にする社会づくりができる】・問11【地域特性にあった行政サービスが向上する】・問12【ニーズが増え住民負担が増える】で質問したが、問9~11では、県・市・町村別にみると、問11で県職の回答1の肯定が、否定を上回った以外は、回答2の否定が肯定を上回っている。問12では、肯定が否定を上回っている。

課題3  ― 民間委託に柔軟姿勢、管理運営までは疑問 ― 
  課題3の公・民の役割分担、民間委託については、問13【民間委託】・問14【管理・運営まで民間委託】・問15【住民との責任分担を変える必要性】・問16【行政サービス向上のための住民負担増】で質問し、問14については、非現業職以外が、回答1の肯定よりも回答2の否定が大きく上回り、非現業職より率でほぼ2倍と意識の開きが大きいが、非現業職以外でも回答3の「一部思う」を含めると、肯定的回答が60%以上となっている。

課題4  ― 意識変わればサービス向上 ― 
  課題4の行政サービスと財源については、問17【無駄な支出の排除】・問18【公務員の意識変化によるサービス向上】・問19【ふるいものを廃止して財源確保】で質問し、総じて肯定的であり、問18については、30歳未満層の半数近い49.7%が回答1の肯定となっている。

課題5  ― 労働条件の変化肯定 ― 
  課題5の事務事業の見直し、機構改革(とその影響)については、問20【社会変化にともなう職場・労働条件の変化】・問21【民間に比べ恵まれている】・問22【既得権安住で、積極性がない】・問23【民間の経営感覚導入】で質問したが、問20に対しては、回答1の肯定が60%~70%台が多くを占めるなか、非現業職以外及び50歳以上の世代の肯定は、50%台である。問22に対しては、非現業職で25%、非現業職以外が18%、50歳以上の世代が16%、その他は20%台と、回答1の肯定の回答率が低い。

課題6  ― 前例・慣習にこだわりすぎ ― 
  課題6の公務・公務員像については、問24【態度が横柄】・問25【前例や慣習にこだわりすぎ】・問26【税金で仕事をしている意識が希薄】で質問し、問24に対し、回答2の否定が全ての比較で40%以上を占め、問25に対しては、回答1の肯定が県職で51%、以下40%台となっている。問26についても、各種比較で33%から50%と幅があるものの、回答2の否定が比較的高率となっている。

課題7  ― 行政サービス向上へ組合も努力を ― 
  課題7の組合の課題については、問27【積極的に行政改革を提言すべき)】・問28【行政サービス向上に努力すべき】・問29【公民交流の場を増やし、民の実情を知る必要がある】で質問し、問28に対しては、回答1の肯定が町村職で48%、30歳未満層で49%、その他は5O%台となっている。その他についても、回答1が比較的高率となっている。

課題8  ― 介護保険機能に疑念 ― 
  課題8として「介護保険は有効に機能すると思いますか」問30で質問したが、全ての比較において回答2の否定が40%台を占めた。

課題9  ― 女性の登用を積極的にはかるべき ― 
  課題9として「女性の登用を積極的にはかるべきだと思いますか」問31で質問し、市職で回答1の肯定が50%となっている。

3. 連合調査との対比

 連合調査で、地方自治体が進めるべき行政改革の優先順位について回答の多かった、「行政の効率化」・「民間チェック方式」・「スリム化」・「意識改革」については、本調査では、公、民一致の状況である。
 行政サービスと税負担について連合調査で回答の多かった「サービス向上のための受益者負担」についても本調査では、公、民一致。
 行革に伴う労働条件変更についても、本調査では、大きな意識の開きはなかった。
 民間委託についても、本調査では、ほぼ一致している。
 地方分権については、連合調査が、「身近なサービス」・「無駄の排除・効率化」を求めているのに対して、消極的ながら、これに応える回答となっている。
 公務労働の印象については、連合調査で回答の多かった「コスト意識が低い」については、消極的ながら一致、「前例や慣習にこだわりすぎ」についてはほぼ全面一致であるが、「態度が横柄」については、44%が否定した。
 以下連合調査結果(10%未満の回答は割愛した)

4. 特徴的な意見

 人員問題に関しては、「業務内容を同時に見直す必要性」や、「適正配置を考えるべき」など、条件整理を主張した意見がめだった。
 地方分権については、「財源を含めた分権の働きかけ」など、充実に向けた条件の必要性に関する意見がめだった。
 その他、「公、民以外のNGOなどの活用が今後必要」にみられるよう、新しい領域に対する意見もあった。
 また、民間対比にかかわっては、「既得権に安住は公務員だけではない」、「公務員の労働状況があたり前」、「公務員には、民間にはない精神的負担、倫理上の問題など大変さもあると思う」など、風当たりに対するさまざまな思いがうかがえた。
 政策課題として設問した介護保険については、『他の制度も含め、有効に機能「する」かどうかではなく、いかに有効に機能「させる」かを考えるのが自治体労働者の仕事』との意見があった。
 また、女性登用についての項では、「女性の登用ではなく、能力のある人の登用が必要」など、男女の区別は必要なく、実力主義で平等に行う必要性の意見が大半を占めている一方、賃金不平等の是正を求める意見があった。
 他にも多くの示唆に富んだ意見が出されている。今後、分類し、評価に結びつける作業を検討したい。

5. まとめ

 連合アンケートが契機となり、自己対象化をはかるはじめての試みとして、十分とはいえないながら、公務員意識を照らし出す調査となった。
 県本部運動に対する示唆、今後の方向を示すものとして、活用していくこととしたい。
 また記入回答では、140件の貴重な意見が寄せられたが、この種の取り組みを組合が行うことへのためらいも伺えた。
 意見として指摘もあったが、「回答の選択肢が抽象的」であった点や、「質問の主旨が具体性に欠けた」点は否めず、回答者の真意をすいあげるには、不十分な内容であったことは、今後改善すべき課題となった。各単組・組合員のご協力に心より感謝申し上げます。