2024/11/01
本部特別分科会の登壇者
集会2日目は、7つのテーマ別分科会、本部主催と開催県本部主催の2つの特別分科会を開催。フィールドワークやポスターセッションなどを通し、参加者は交流を深めた。
【本部特別分科会】持続可能な未来をめざし議論深める~地域から考えるカーボンニュートラル~
本部特別分科会は松江市内で開催し、110人が参加。温室効果ガス排出量を2050年に実質ゼロとする、カーボンニュートラルの実践について学んだ。(トップ写真)
冒頭、高村さんは自然災害が招く世界的な経済損失額などを例示し、温暖化対策の緊急性を訴えた。続いて、福岡県みやま市はエネルギーの地産地消と資源循環を、島根県美郷町は防災拠点での太陽光利用を報告。また中小企業を広く組織する産別JAMは、脱炭素化が雇用や価格に与える影響への懸念を示した。
パネル討論では石上委員長が「災害を招き、日常の屋外作業をも危険にする温暖化の防止は組合員の命を守る取り組みでもある」と指摘。飯塚市長は脱炭素化にむけた豊かな暮らしの実践、井上さんは雇用を損なわないカーボンニュートラル社会への公正な移行を訴えた。
最後に片山さんは、目標達成への社会的な運動の必要性を指摘。労働組合への期待を述べた。
【第1分科会】歩くことで新たな発見が松江の街を記録しながら闊歩~ようこそ島根へ~自治研入門リターンズ~
第1分科会は松江市内で開催し、76人が参加。まちづくりコーディネーターの伊藤知恵さん、島根県立大学岩本晃典助教のアドバイスのあと、16班、3コースに分かれて秋晴れの空の下へと繰り出した。
各班で、街での「気づき」の写真を撮り、アプリに投稿して記録、最後に参加者全体の報告会で気づきの共有を行った。
参加者からは「“歩く”ことで新たな発見があった」「地元の人との交流から街づくりについての思いを知れた」との報告があり、最後に「本日の体験、成果を持ち帰り、職場・組合・住民へとリターンする」ことを全体で確認した。
【第2分科会】デジタル技術の可能性を生かし公共サービスの充実を考えよう~地方を変える、AIの力~
第2分科会は松江市で開催し、268人が参加。自治体業務でのAI・デジタル技術の活用と運用の留意点について学んだ。
狩野英司さんは、AIの進化は著しく利便性が高い一方、あくまで人間の作業等を補完するツールとして、ルールを策定し活用する重要性を強調した。
事例報告では、高萩市(公共交通とAI)、横須賀市(チャットGPT活用)、越前市(メタバース活用)が報告された。
「AI・デジタル技術の自治体活用を考える」と題したパネルディスカッションでは「AI活用より人間にしかできないことが重要」「AIの情報を鵜呑みにせず、課題解決への活用を」「DX推進のみにとらわれず、何が公共サービスの充実につながるか考えるべき」との発言があった。
【 第3分科会】これからの職場のあり方《公務員を一度退職した外の視点から考える》~公務職場を魅力あるものにするために~
第3分科会では、近年公務職場の採用応募者が減少傾向にあり、若年層を中心に早期離職が増えていることを端緒に、公務職場を魅力あるものにするために何ができるかを主軸にセッションを行った。
リアルトークのコーナーでは、公務員を退職した経験がある3人が登壇。退職を決断した経緯、退職前後の心境の変化について話した。
役場とベンチャー企業の両方を経験し、現在は市役所で働く福井県大野市職労・吉村清香さんは「ベンチャー企業で行政と全く異なる価値観に触れ、良い意味で行政職員が社会に与える影響の大きさに気づけた」「以前と同じ仕事をしていても、一緒に働く仲間にやりがいを持って働いてもらうためには何ができるか、までを考えて動くようになった」と思いの変化を述べた。また、自ら学ぼうとする姿勢を持ち続けることで、公務の仕事を通して多方面に貢献できると強調した。
【第4分科会】ジェンダー平等の環境づくり知識から地域・職場での実践へ~もう知らないでは済まされないLGBTQ+~
第4分科会はLGBTQ+の理解を深め、どう行動すればいいかを学ぶ「実践編」として松江市内で開催。参加者は158人。
午前中の「SOGI理解増進法」についての講演は、トランスジェンダー女性の弁護士として活躍している仲岡しゅんさん(写真)。
「LGBTを特殊な人と決めつけないこと。『何をしてあげるか』ではなく、『何をしてはいけないか』を知ることが大事」と、性的少数者についての基礎的な理解と配慮を、わかりやすく説明。「SOGI理解増進法」については「ぶっちゃけ、出来の悪い法律。特に何かが変わるわけではない」とバッサリ。職場での差別事例を紹介しながら、自身の体験談も含めて、ジェンダーに平等な環境づくりを提起した。
午後の部は、政治、行政、性的少数者の差別禁止法等を求める市民団体、それぞれの立場のLGBTQ+当事者もパネリストに加え、自治研中央推進委員の楳田博之さん(自治労京都)をコーディネーターに、行政の現場に「SOGI理解増進法」をどう生かすか、参加者も交え議論を深めた。
【開催県本部特別分科会】世界遺産と伝統の価値感じる~世界遺産の町で学ぶ歴史と暮らし~
開催県本部特別分科会は、大田市「石見銀山世界遺産センター」に60人の参加を得て開催。好天に恵まれ、街並み散策のフィールドワークなどを行った。
「石見銀山遺跡とその文化的景観」は2007年に鉱山遺跡としてはアジアで初めて世界遺産に登録され、当時の面影を残す街並みには今も人々が暮らしている。
10月4日は参加者が、松江市での全体会から分科会会場の「商工会議所ホール」にバスで移動。交流会を行った。
翌5日は、分科会の目玉であった石見銀山の坑道跡「大久保間歩」限定公開ツアーが修繕工事によって突然の中止となり、見学先の坑道を急きょ変更をする一幕もあった。
にもかかわらず参加者からは、「世界遺産の価値を肌で感じることができよく分かった」「子どもの頃から郷土芸能に親しむ子ども神楽に感動した」「役員やガイドの方のおかげでとても奥深い歴史ある街並みを知る事ができた」「島根が大好きになりました」「今度は家族で来ます」等の声が聞かれた。
【第7分科会】循環型農村をめざす未来志向の地域づくり~中山間地域の地域づくり~
第7分科会は、サテライト会場・浜田市の「石央文化ホール」で開催し、約300人の参加者と「中山間地域の地域づくり」を考え討論した。
(一社)持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩所長から、地域の資源(食、エネルギーなど)の地産地消による「域内所得創出」、地域の「域内経済循環」をはかること、また、地域内外との連携による「ローカルコモンズ」をめざしていくという考え方や、事例などについての講演を受けた。
また、島根県立大学地域政策学部の田中輝美准教授からは、実践例などを交えて「関係人口」の考え方や、「関係人口」の効果として、地域住民の発見・誇り・知識につながり、地域住民がより主体的に変容し移住定住につながっていくとの講演があった。
それぞれの講演をはさんで、島根県邑南町が「地域運営の小さな拠点づくり」、岡山県西粟倉村が「村の環境資本から再エネ創出」、島根県知夫村が「人口増のキセキ」、高知県大川村が「継続から生まれた新たな出会い」と題し、取り組みの経過と工夫、効果や課題などの事例報告を行った。
分科会は、講師2人のコーナー、事例報告4地域と鳥取県日吉津村、広島県三次市、高知県いの町の3地域を加えた8つのコーナーを設けて「ポスターセッション」の時間を持つなど、参加者が自分の考えを話したり交流できるよう運営の工夫を凝らした。
(機関紙じちろう2024年11月1日号より転載)