あ行
斡旋(あっせん)
労働争議の調整方法の一つ。労働争議の解決につき、当事者の自主的な努力に対して援助を与え、これを解決に導くことを目的として労調法及び特労法によって設けられた制度。争議当事者双方の主張の妥協調整をはかり相互の歩み寄りをつけると争議解決方法である。
黄犬契約(おうけんけいやく)(yellow-dog contract)
労働者が労働組合に加入しないこと、または現に加入している場合にはこれから脱退することを雇用条件とする労働契約のことで反組合契約と言われるこのような契約は、使用者の不当労働行為として禁止されており、(労働組合法7条1号)労働契約は無効となる。
か行
解雇
使用者が労働契約を一方的に解約すること。民法上は14日の告知期間をおけば解約できることになっているが、労働基準法で、解雇に係る民事的効力、解雇制限(労基法19条)、解雇の予告(労基法20条)の規定を設けて、労働者を保護している。
解雇権濫用の法理
解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされること。
解雇予告手当
使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に予告しなければならないが、30日前に予告しないときは30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。 これを解雇予告手当といい、労働基準法第2章第20条の手続きである。懲戒解雇で即時に解雇する場合も除外申請を労働基準監督署へ提出し認定されない限り、解雇予告手当の支払を免れるものではない。
家内労働法
家内労働者の労働条件の向上と生活の安定を図ることを目的としており、家内労働者の労働条件の最低基準を定めている。同法は、家内労働者と委託者との仕事についての委託関係を明確化するための、家内労働手帳制度、工賃の支払い方法及び最低工賃の決定、改正等のほか、安全及び衛生に関する行政措置について定めている。
過労死・過労自殺
業務による過重な負荷によって、血管の病変等が自然経過を超えて著しく悪化させ、脳や心臓の病気を発症した結果、死に至った場合を過労死と呼ぶ。また、業務による心理的負荷により、精神障害を発病し精神障害によって、正常な判断能力等が著しく阻害され、精神的な抑制力が著しく阻害されることにより、自殺すること過労自殺という。
完全失業率・完全失業者
完全失業率とは、労働力人口のうち完全失業者の占める割合で、労働力調査(総務省統計局)によって把握されている。完全失業者とは、労働力調査期間中(毎月末1週間)、1時間以上賃金等収入を伴う仕事をしなかった者(会社からら休業手当等を受けている者は除く)のうち、就業を希望し、仕事を探していた者、または仕事があればすぐつける状態であって、過去に行った求職活動の結果を待っている者をいう。したがって、実質的に失業状態にあるにもかかわらず就職活動をあきらめてしまった者は失業者には入っていない。
管理監督者(労基法第41条/労働時間等に関する規定の適用除外)
①会社の経営に参画できるか(経営者と一体的)、②自身の労働時間に裁量がきくこと、③一般の従業員より高賃金であること、という判例法理による基準があり、役職名のみで判断されるものではない。
機関会議
労働組合では様々な会議・集会がもたれるが、組合規約で定められている決議機関会議で大会、委員会(中央本部の場合は中央委員会)、執行委員会などを機関会議という。
希望退職
経営不振などにより、労働力の削減をはかる時、退職を希望する労働者を募ること。その対象範囲は、全従業員から募る、一定の年齢を設定してその上・下から募る、特定の部門だけから募る、特定部門において一定の年齢層を設定して募る、などいくつかのものがある。希望退職者については、退職金・その他について従来規定に定めたものより優遇して措置するのが一般的である。労組が存在する場合は、その実施の可否、実施する場合の対象範囲、人員数、優遇措置などについて、団体交渉で決定してから実施するのが一般的である。
クラフトユニオン
職種別組合、職業別組合、職能組合の意。同じ仕事をしている仲間達が企業(会社)のワクを超えて1つの労働組合に直接加入するというもの。アメリカやヨーロッパでは一般 的な組織形態である。日本での連合加盟組織では全日本海員組合や労働者供給事業をしている労供労連がクラフトユニオンに規定されている。
合同労働組合
企業の枠をこえて労働者を個人単位で組織している労働組合。主として中小・零細企業の労働者を対象としている。労働者ひとり一人が直接加盟の形式で参加する、というのが基本的組織形態である。
さ行
裁量労働制
業務の性質上、一斉始業・終業になじまず、かつ上司による指示や時間管理が困難な業務について、仕事のやり方を労働者本人の裁量に委ねる働き方をいう。働く時間は本人が自由に決定し、一日の労働時間は5時間でも10時間でも良い。賃金は、労使協定に定めたみなし労働時間に対して支払われる。
裁量労働制は当初、研究開発、取材・編集、デザイナーなど高度に専門的知識を有する業務に限定されていたが、対象業務が拡大されている。
最低賃金法
最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならない。①労働条件の改善を図り、②労働者の生活を安定させ、③事業の公正な競争の確保に資するとともに国民経済の健全な発展に寄与する目的で最低賃金法が制定された。
産業別最低賃金
関係労使が基幹的労働者を対象として、地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めるものについて設定されている。産業別最低賃金は、(1)関係労使が(2)労働条件の向上または事業の公正競争確保の観点から(3)地域別 最低賃金より金額水準の高い最低賃金を必要と認める場合に設定される。
就業規則
就業規則とは工場、事業場における労働者の賃金、労働時間などの労働条件及び服務規律、あるいは職場の慣行を成文化したものをいう。労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業場の使用者に対し、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ること(第9章第89条)、常時各職場の見易い場所に掲示するなどして労働者に周知すること(第12章第106条)の義務を負わしている。
整理解雇の4要件
経営の合理化や経営上の必要から余剰となった労働者の削減を目的とする解雇を整理解雇といい、このためには「4要件」を充足する必要があることが、判例で確立されている。具体的には、①人員整理の必要性、②解雇回避の努力義務、③被解雇者選定基準の妥当性、④手続きの妥当性、を満たすことが必要とされている。
た行
団体行動権(争議権=スト権)*労働三権のひとつ
労働者が自らの労働条件を向上させるために、使用者に対して、要求を獲得するための闘争手段として、ストライキ、時間外労働拒否、集会、その他の争議行為をなす権利。憲法第28条で「団体行動をする権利」として保障している。これに基づき正当な争議行為は労働組合法で刑事上の免責、民事上の免責がある。
大会
労働組合法第2章第5条6項には「総会(大会)は少なくとも毎年1回開催すること」と明記されている。当該労働組合の最高決定機関。大会では、付議事項として、運動方針、予算、役員人事などの案件の決定し、また年度の活動・会計報告などを行うことになっている。
団体交渉権*労働三権のひとつ
労働者が団体交渉をする権利。労働者が個々に使用者と労働条件を契約すると、雇う者と雇われる者として労働者が不利になる場合が多いので、労働者が団結の力を発揮して、集団的に交渉するなかで対等な交渉を担保するために認められている。憲法第28条及び労働組合法はこれを権利として保障している。労働組合が団体交渉を申し込んだとき、使用者は正当な理由なしに拒否した場合は不当労働行為にあたる(労組法第2章第7条)。
地域別最低賃金
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、すべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、都道府県ごとに47の最低賃金が定められている。
チェック・オフ
労働基準法に定められている制度で、組合費の徴収方法として、使用者が労働者に賃金を渡す前に賃金から組合費を差し引き、一括して組合に渡すこと。チェック・オフ(組合費天引)を行うためには、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは、労働者の過半数を代表するものとの書面による協定が必要である。
定期昇給・ベア
定昇(定期昇給)は、年齢・勤続が1歳・1年増すことによる昇給のこと。、ベア(ベースアップ)は、各年齢ポイントの賃金額を底上げすること。定昇は賃金カーブ上の移動だが、ベアは賃金カーブそのものの上方移動である。「賃上げ」という場合は、通常この定昇とベアの合計金額を言う。
同意約款
会社が組合員の人事決定などにおいて、あらかじめ組合の同意を得なければならないことを規定した労働協約。同意約款がある場合、組合の同意を得ることなく行った解雇等の処分は一般に無効と解される。ただし「同意拒絶権の濫用」とされた場合は、この限りではない。
な行
は行
変形労働時間制
法定労働時間は、労働基準法第32条に規定されるとおり週40時間労働制、1日8時間労働制の原則がとられているが、特定の週及び特定の日に法定労働時間の枠を超えて労働させることがあるとしても、一定の期間を平均すれば法定労働時間内の範囲内にあるという場合には、法定労働時間を超えたとの取扱いをしない制度。
それぞれの変形労働時間制の要件は、以下のとおり。
①1か月単位の変形労働時間制
就業規則等により各日、各週の労働時間を具体的に定める
②1年単位の変形労働時間制
労使協定の締結と届出が必要
1週48時間、1日9時間(変形期間が3ヵ月以内は1週52時間、1日10時間)が限度
③1週間単位の非定型的変形労働時間制
労使協定の締結と届出並びに労働者への事前の書面通知
1週42時間 1日10時間が限度
④フレックスタイム制
就業規則に規定するとともに労使協定を締結
ま行
民事上の免責
労働者が就業規則や労働協約に定められた労働時間に働かず、使用者が損害をこうむった場合、普通には民法上の債務不履行として損害賠償の対象となるが、労働組合法第2章第8条は、労働組合及び組合員が正当な争議行為の結果として、使用者に損害を与えても、不法行為ないし債務不履行を理由として損害賠償の責を負わないことを定めている。
や行
ユニオン・ショップ
企業に「採用された後は一定期間内に一定の労働組合に加入しなければならず、そして当該組合からの脱退又は除名により組合員資格を失ったときは解雇される」という協定をユニオン・ショップ制という。組合としては、加入のオルグをしなくても一定期間後に自動的に組合員になるので、団結力が希薄になる側面もある。
(関連)クローズドショップ=「一定の労働組合に加入している労働者でなければ採用せずかつ当該組合からの脱退または除名により組合員資格を失ったときは、解雇する」という協定のこと。
(関連)オープンショップ=労働者が労働組合に加入するか否かは自由であること。
ら行
労働委員会
労働者の権利保護と同時に労使関係の安定をはかるために紛争の解決にあたる行政機関。労働者・使用者・公益を代表する委員で構成されている。中央労働委員会(中労委)と都道府県ごとに設置されている都道府県労働委員会とがある。その機能は、斡旋、調停、仲裁等の調整的なものと、労働組合の資格審査、不当労働行為の判定などの判定的なものとがある。都道府県労働委員会の命令に不服がある場合、中央労働委員会に再審査申立てができる。
労働三権
団結権、交渉権、団体行動権は、憲法28条で、勤労者の団結する権利及び団体交渉その他団体行動をする権利が保障されている。
労働協約
労働協約は「使用者と労働組合との間の書面による協定」(労働組合法第14条)のことで、労働協約の締結能力をもつ労使両当事者が署名し、または記名押印することによってその効力が生じる。この要件と形式を備えていれば、記載事項や名称は自由で、「協定」とか「覚書」、「確認書」等の名称であっても法律上はすべて労働協約と認められる。
労使協定
労働協約が労働組合法上の規定であるのに対し、労使協定は労働基準法上の規定となる。使用者と事業場の過半数の労働者で組織された労働組合または過半数を代表する者との間で締結する文書。労使協定には、いわゆる三六協定(時間外・休日労働に関する協定)や二四協定(賃金控除協定)、変形労働時間制に関する協定、年次有給休暇の計画的付与に関する協定など、労働基準法に定められている。また、労使協定には、行政官庁への届出が必要なものと必要ないものがある。
労働組合法
【目的】
①労働者が使用者との交渉において対等の立場にたつことを促進することにより労働者の地位を向上させること。
②労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出すること、その他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し団結することを擁護すること。
③使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉及びその手続きを助成することを目的とし、労働組合、組織、不当労働行為、正当な組合活動に対する民事上・刑事上の免責、労働委員会などについて定めている。
労働債権
企業が労働者に支払うべき賃金や退職金など、労働者が受け取る権利をもつ債権のこと。企業が倒産すると、未払い賃金や退職金は「労働債権」として、企業に支払い義務があり、他の債権に優先して支払うことが法律で定められている。
ただし労働債権は、取引先への未払い代金など担保のない一般債権より優先されるとはいえ、担保付きの債権や税金より支払い優先順位が劣り、現実には、労働債権を支払う前に、金融機関など大口債権者が会社資産を差し押さえて債権回収してしまう、税金・社会保険料の未納分が優先されることによって労働債権の確保が厳しい実態にある。
労働三法
労働者の生活と働く権利を保障するために制定された法律を総称して労働法というが、その中で「労働組合法」、「労働関係調整法」、「労働基準法」を労働三法と呼んでいる。