評議会発
物価上昇分の賃上げを! 2023春闘討論集会を開催
自治労全国一般評議会は、12月18~19日、2023春闘中央討論集会を開催し、対面・ウェブあわせて約80人が参加した。1泊・懇親会ありの従来の日程での開催は、実に3年ぶり。会場には約30人が集まった。
冒頭、福島議長はあいさつで、物価上昇は世界で同様だが日本だけ賃金が上がらないのは政治の責任が大きいとしつつ、英国や米国では賃上げを求めてストを決行しているのに対し、日本の労働組合の声が小さいとも述べた。反戦平和については政府が「反撃能力」の保有を認め憲法改悪を進めようとする現状に改めて強い危惧を示した。2023春闘については「中小企業には、物価上昇を反映した要求に堪え得ることが難しいところもあると思うが、しっかりと要求を掲げてたたかっていこう」と述べるとともに、春闘を通じた組織強化・拡大の重要性にも触れた。
本部を代表してあいさつを行った藤森副委員長は「民間、とりわけ中小企業にとって価格転嫁が重要。自治労は、物価上昇を踏まえた賃上げを労働組合全体で勝ち取ることが2023春闘で重要としている。自治体職場は新規採用者の組織率が危機的な状況。春闘期に対策を強化する。来年4月は統一自治体選挙。我々が支援する候補者を1人でも多く当選させ、国政に影響を与えるべく積極的な取り組みを」と述べた。
公共民間評議会の橋本議長は連帯のあいさつで「物価上昇により実質賃金が下がっている中、春闘の意義と原点を再確認し、中小労働運動、賃上げ交渉を進めよう。1年のたたかいのスタートは春闘であり秋の確定闘争の起点。民間が春闘で賃上げを勝ち取ることが、自治体賃金にも影響する。自治労の民間部門部隊として全国一般と公民評の役割は大きい。労働三権がある私たちは権利を余すところなく駆使していかねばならず、駆使できるための組織強化が必要」と述べた。
<2023春闘方針草案、春闘調査報告>
賃金引き上げや労働条件の改善にむけた2023春闘方針草案の提案と、2023春闘にむけた賃金実態調査と、賃金・労働条件調査(5年に1度実施)の結果報告を、亀﨑事務局長が行った。
春闘方針(草案)で示された賃上げ要求額は、連合方針を踏まえた上で、物価上昇と格差是正分を加味し16,500円以上に設定(前年は13,500円)。ほか、草案では、雇用の安定・確保、定年延長、反戦平和を中心とした政策課題の取り組み等について提案された。
草案への質疑応答では、要求金額の根拠、今般話題になっている賃金のデジタル払いの問題点や考え方を問う発言、「インフレ手当」についての事例や春闘方針に反映してはどうかという提案、長距離ドライバーの実態と課題、政府が誘導する労働移動ありきの賃上げへの警鐘、「戦争できる国づくり」に進む政府への厳しい意見などの発言があった。
春闘方針は、本討論集会での意見を踏まえ、2023年1月の地方労組代表者会議で提案し決定する。
■ 講 演 ■
1.「物価上昇の中での2023春闘」(18日)
講師:(独)労働政策研究・研修機構(JIPT) 松上 隆明さん
─厳しい物価上昇が続く中、春闘にどのように臨むか。統計データを用いながら2023春闘の課題を解説いただいた。
日本の労働運動は、長年、使用者に睨まれない程度の要求額に甘んじている。25年間も実質賃金が下がり続けているのは日本だけ。欧米のインフレ率は日本以上だが、物価上昇に応じた賃上げがあれば問題は大きくならない。
「物価(インフレ)手当」を支給している企業もあるが、これは組合要求でなく、ほとんどが企業側からの提案。賃金を上げてしまうと後で減額できないためだ。賃金が上がらないのは非正規の増加、賃金表がない中小企業の昇給の値切り、大手でも査定を理由に賃金上昇が抑えられている、こうしたことが背景にある。
連合の中でも、産別によって要求額に違いがあり足並みがそろわない現状に触れつつ、大手産業・企業が春闘を引っ張っていくという形は変わり目に来ていると述べ、どの産別が前に出て引っ張っていくかが2023春闘の鍵と述べた。
また、労働運動としては中小共闘や非正規の共闘が今こそ重要として「全国一般の皆さんには(2023春闘で)“暴れて”ほしい」とエールを送った。
2.「ハラスメントとは何か?職場・組合としての対策」(19日)
講師:連合総合政策推進局長 井上 久美枝さん
─今日、セクハラ、パワハラをはじめ、マタハラ、カスハラなどハラスメントは多岐に渡る。職場、組合としての対策について講演をいただいた。
2019年にハラスメント対策関連法案が成立。井上さんは政府の審議会委員として法案議論にかかわってきた。
この法で、パワハラの防止措置/取引先や顧客等からの迷惑行為に対する取り組みの明確化/国、事業主、労働者の責務の法制化/ハラスメント相談を理由とする不利益取扱いの禁止─が定められた。
パワハラについては、3つの要素(①優越的な関係を背景とし、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた、③労働者の就業環境が害される)がすべて満たされたものについて認定される。しかし、ハラスメントと認定されるか否かだけでなく、幅広く相談に応じる姿勢や仕組みが大切だとし、相談を受ける側のきめ細やかな研修の必要性も説いた。
<各地方からの報告>
関西ブロックからは、毎年秋に行っている労働相談による組織拡大の取り組みについて報告があった。ブロックでフリーダイヤルを設け、各県につながるようになっている。事前案内は街頭行動でティッシュとあわせてビラを配布したほか、新聞記事にも掲載。相談件数は、奈良ほか各県で数件の相談があった。過去には、相談を受け自治労県本部の組織拡大専門員と協力して対応し、全国一般の支部が結成したこともあったという。報告とあわせ、専従者の維持が難しくなっている現状についても触れた。
集会のまとめとして、福島議長は、職場での日々の交渉の積み重ねが春闘に結び付くこと、全国一般と自治労県本部や公民評との運動連携強化、そして労働組合の団結が春闘には不可欠であることなどを述べた。久しぶりの懇親会の場でも職場のさまざまな話を聞けたことにも触れた。
最後に2023春闘で物価上昇を勝ち取る決意をこめた団結ガンバローで集会を締めくくった。